
目次
- 1987年に建材店から建設廃棄物処理事業へ 廃棄物処理の売上急拡大で事業転換を決断
- 廃棄物の収集運搬から中間処理、最終処分を一貫対応できる事業者として顧客の信頼を高めた
- 汚泥のリサイクルにも取り組み、リサイクル関連設備が事業の強みになっている
- 大切にしている言葉は「つながる。」 人や社会とつながる経営が成長を支えてきた
- 価格競争をしない浜橋工業が経営効率化を狙いに、ITインフラの全面刷新を決めた
- 「やはり最後は人ですかね」 ITインフラは価格よりも提案内容で評価
- セキュリティーの不安解消によって事務管理部門の負担が軽減 ホームページには問い合わせページと採用特設サイトも設けた
- 3Kイメージ払拭のために、ICTを活用した廃棄物のスマート処理も考えていく必要がある
- 産業廃棄物処理事業は循環型社会構築に必要不可欠。社会の信用を高め、人に優しい環境企業を目指す
京都府京都市伏見区に本社を置く株式会社浜橋工業は、1987年から40年近い歴史を持つ産業廃棄物処理事業者である。自社で中間処理施設、最終処分場を保有し、産業廃棄物の収集・運搬から中間処理、最終処分までを一貫して受託できる能力を持ち、顧客の厚い信頼を得ている。最近は産業廃棄物の減少を背景に競争が激化している中で、ITインフラの全面刷新によって事務管理業務を効率化する一方、ホームページを一新して営業力の強化と将来の人材確保を目指している。(TOP写真 浜橋工業が大切にしている言葉「つながる。」を前面に出し、京都らしさも演出した新しいホームページの表紙)
1987年に建材店から建設廃棄物処理事業へ 廃棄物処理の売上急拡大で事業転換を決断

浜橋工業は1976年に個人商店の浜橋建材店として創業した。濱橋知子代表取締役の父・利章氏は十人兄妹の末っ子だったが、祖母の「濱橋家の男は親方にならなあかん」という教えを守り、長男が経営していた壁土・瓦土の製造販売会社勤務を経て、建材販売事業者として独立した。
浜橋建材店が建設現場にセメント、砂、ブロックなどを納入した際に、建設現場で発生した「ごみ(廃棄物)を持って帰ってくれないか」と頼まれるようになり、注文を受けた建設資材配達と廃棄物回収の往復の商売が始まった。1987年のことで、同年に社名を浜橋工業に変更した。すると、段々と扱う廃棄物の量が増えて売上も伸びたため、1990年には株式会社組織に移行し、事業の主体を建設廃棄物処理事業に移した。1971年に廃棄物処理法が施行されていたものの、建設廃棄物を含めた産業廃棄物処理への関心が高まる前のことだ。
廃棄物の収集運搬から中間処理、最終処分を一貫対応できる事業者として顧客の信頼を高めた

産業廃棄物処理の基本的な流れは、①排出事業者から廃棄物を受け取り、処分する施設や業者に運ぶ収集運搬、②廃棄物を減容・無害化・資源化する中間処理、③中間処理した廃棄物を埋め立て処分する最終処分となる。産業廃棄物処理事業者は、収集運搬業者と処分事業者に大別され、処分事業者は中間処理事業者と最終処分事業者に分けられる。排出事業者は、廃棄物を排出するたびにマニフェスト(管理票)を廃棄物の種類別に交付。運搬、処分の工程ごとに処理工程が完了した際に排出事業者と前工程の事業者にマニフェストの中のそれぞれの処理工程の管理票に署名して送付することが法律で義務付けられている。
浜橋工業は、1990年に京都府、滋賀県の産業廃棄物収集運搬業の許可を得たのを皮切りに、福井県と三重県を含めた近畿地区一円に事業区域を広げ、産業廃棄物収集運搬から中間処理、最終処分まで一貫して対応できる事業者として成長してきた。多種多様な産業廃棄物を早期に適正処理するために、電子マニフェスト管理システムやデジタルタコグラフを採用。蛍光灯や乾電池などの水銀仕様製品や石綿などの特別管理産業廃棄物についても収集運搬許可を取得しているほか、地下鉄のトンネル掘削現場から出る汚泥のリサイクルにも取り組んできた。
汚泥のリサイクルにも取り組み、リサイクル関連設備が事業の強みになっている

京都府長岡京市の中間処理施設には、汚泥を脱水して再利用する汚泥のリサイクル設備がある。通常の固化とは違いコンクリート固化という許可を保有しており、時間経過による再泥化の心配もなく品質が安定し強度のあるリサイクル品が出来る。現在はこの設備を活用してコンクリートブロックや地盤改良材に汚泥をリサイクルしているが、「汚泥も処理できるのなら、まとめて廃棄物処理をお願いしたいという依頼が多くなっており、このリサイクル設備によって弊社は大きな信頼を獲得したと思います」と、総務部の福田佑規氏は話してくれた。
大切にしている言葉は「つながる。」 人や社会とつながる経営が成長を支えてきた

「当社は幅広い廃棄物処理に対応できる許可と設備と技術を持っているのに加えて、人材が強みなんです」。2021年に経営を引き継いだ濱橋知子社長はこう言い切る。
同社が最も大切にし、従業員に訴えている言葉は「つながる。」である。「美しい地球が次世代へ〝つながる〟 ピンチをチャンスに変える〝つながる〟ビジネス 人と人のこころが〝つながる〟 私たちが大切にしている言葉です」ホームページのトップページにこう記している。
浜橋工業が事業区域を拡大してきた中で、「お客さまがお客さまをつないでくれるということが多々ありました」と、濱橋社長は振り返る。顧客の紹介で事業を広げてきたわけで、まさに「つながる」歴史が同社の成長を支えてきたといえる。
「商売もそうやけど、結局は人と人とのつながりやと思います。挨拶はもちろんのこと、常に『ありがとう』という感謝の気持ちを持つことが大事です。世の中には当たり前なことは何一つありません。従業員には感謝の気持ちを持って、自分を磨く努力を怠らないようにと伝えています。また子や孫の次世代へ受け継がれるよう、より安定した環境を残していきたいと考えます。」濱橋社長はこう話し、人の心をつなぎ、事業をつなげてきた従業員に感謝している。
価格競争をしない浜橋工業が経営効率化を狙いに、ITインフラの全面刷新を決めた

近年の産業廃棄物処理業界は、廃棄物が減少傾向にある中で事業者間の競争が激化し、価格競争が激しくなっている。そんな中でも、浜橋工業は価格競争をしない方針を打ち出している。顧客からは「『最近は安い業者も来るけれども、うちは浜橋さんにお願いするよ』と言っていただけることも多く、感謝しています」(福田氏)というが、業界環境が厳しくなっているのは事実だ。
競争力強化を目指して経営効率化を進める中で浮上してきたのが、基幹ITインフラの更新問題だ。中核のサーバーが更新時期を迎えていたことに加えて、これまでにシステムの構築・管理を任せていたシステム会社はトラブル時などのレスポンスが悪い上、設定を変更したくても浜橋工業では一切手を付けられない状態だった。そのため、システムの全面刷新を決め、2025年初めにシステム会社5社によるコンペを実施して、新しいシステム会社を決めた。
「やはり最後は人ですかね」 ITインフラは価格よりも提案内容で評価

新たに契約したシステム会社は、「一番しっかりした提案・見積を出してくれました。やはり最後は人ですかね」と言って、濱橋社長はチャーミングな笑顔を見せた。新たに契約したシステム会社の提案力、技術力もさることながら、人とのつながりを大切にする浜橋工業の面目躍如(めんもくやくじょ)ともいえるエピソードだ。
2024年6月には、サーバーとネットワーク、セキュリティーシステムを一新し、パソコンも8台入れ替えた。特にセキュリティーシステムは、BCP対策を含めて大手ゼネコンのサプライチェーンを担える体制を再構築した。同時にホームページ作成ソフトも導入し、2025年4月から新しいホームページに切り替えた。
セキュリティーの不安解消によって事務管理部門の負担が軽減 ホームページには問い合わせページと採用特設サイトも設けた


新しいITインフラの稼働によって、「事務管理部門の負担は大幅に軽減した」(福田氏)という。従来は、京都市伏見区の本社と長岡京市の中間処理施設との間の人事関係書類や納品関係書類を、紙でやり取りしていた。システムのセキュリティーに不安があったためだが、今はすべてデータでやり取りしており、いつでも必要な時にどちらの拠点からでも閲覧できる。新たに入れた記憶装置にSSDを採用したパソコンは動作が早いため、「ストレスなく仕事ができる」と事務部門のスタッフから高く評価されている。
ホームページは事業概要や保有設備中心の内容を全面的に見直し、京都らしさを感じさせる画像を使って演出した上で、新たに問い合わせページと採用特設サイトを設けた。取引先から「ホームページをしっかりしはったね」という評価の声をもらうほか、以前は機能がなかった問い合わせも最初の2ヶ月で5件ほど寄せられ、新たな取引につながることが期待されている。採用特設サイトでは、「産業廃棄物処理業のイメージを変えたい!」とのメッセージを掲げ、若い人に向けて「環境企業」をアピールしている。
3Kイメージ払拭のために、ICTを活用した廃棄物のスマート処理も考えていく必要がある

今後のICT化について濱橋社長は、「少子化の時代にあって、現場作業をする人材が減っていきます。すでに土木建設現場などでは重機の遠隔操作で工事が行われていますが、廃棄物処理業界でも現場の機械化、自動化を考えていかねばならないと考えています」と話す。「きつい、汚い、危険」の3K職場の代表のように思われている産業廃棄物処理業界は、常に人材確保の問題を抱えており、将来はさらに深刻化することが懸念されている。3Kイメージを払拭(ふっしょく)していくためには、ICTを活用した廃棄物のスマート処理にも舵を切っていく必要があるというわけだ。
産業廃棄物処理事業は循環型社会構築に必要不可欠。社会の信用を高め、人に優しい環境企業を目指す

産業廃棄物処理事業は、地球環境に配慮した循環型社会を構築する上で不可欠な存在である。しかし、社会的には「ごみを扱う汚い仕事」という認識が根強く、必要不可欠な存在であるにもかかわらず、処理施設は迷惑施設と捉えられがちだ。こうした中でも浜橋工業は、社会や人とのつながりを最も大切にして歩んできた。廃棄物の中に捨て猫を発見したことを機に、今や数十匹に増えた保護猫活動もCSR(企業の社会的責任)活動の一環と捉えている。
「産業廃棄物処理業界は、世界にとって最重要課題である環境問題と真摯(しんし)に向き合い、徹底した廃棄物の再資源化を行い、環境保全を推進することが役割です。そのためには、社会全体の『つながる』も私たちの仕事であり、社会の求めに応えていく業界、企業として、社会からの信頼を高めていかなくてはいけないと強く思っています」。濱橋社長はこう話して、同社と業界の未来に思いを巡らせる。
そして、ICT化を含めて設備を整えながら、人とのつながりを大切にする従業員を採用・育成し社会的要請に応えていく、人と地球に優しい環境企業を目指している。

企業概要
会社名 | 株式会社浜橋工業 |
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住所 | 京都府京都市伏見区深草大亀谷大山町77番地の2 |
HP | https://hamahashi.co.jp/ |
電話 | 075-641-3773 |
設立 | 1990年5月(創業1976年3月) |
従業員数 | 25人 |
事業内容 | 産業廃棄物処分業、産業廃棄物収集運搬業、特別管理産業廃棄物収集運搬業、建設業など |