
7月6日、広島、岡山、愛媛など14府県で300人を越える犠牲者(災害関連死含む)を出した西日本豪雨(平成30年7月豪雨)から7年、被災地は祈りに包まれた。2018年7月、日本付近は太平洋高気圧の上層にチベット高気圧が張り出し、記録的な猛暑となった。そこに前線が停滞、東海から西日本にかけて15個もの線状降水帯が発生した。気象庁は「海水温の上昇によって発生した水蒸気が流れ込み続けた」ことが要因であると説明した。
広島や岡山では土石流や河川氾濫が同時多発的に発生、倉敷市真備地区では高梁川の水位上昇により“バックウォーター現象”が発生、支流の河川堤防が決壊、3日間にわたって約1200ヘクタールもの地域が水没した。災害耐力、処理能力を越えた豪雨は西日本各地のライフラインの機能を奪い、最大8万戸が停電、26万戸が断水した。
想定外の豪雨が常態化しつつある日本では都市の水害リスクも急速に高まる。国土交通省によると2012年から2021年の10年間に発生した水害の被害総額は4兆円、そのうち3割が内水氾濫による。とりわけ、社会機能が集中する都市部ではその比率は逆転する。2019年の台風19号では多摩川の水位が上昇、下水管や排水管から水が市街地に逆流、マンションの地下設備が冠水、電力の供給が断たれた。人気エリア武蔵小杉を象徴する“タワマン”の想定外の被災に水害に対する都市の脆弱性を実感した読者も少なくないだろう。
今年も暑くなりそうだ。東京は今日(7月9日)で3日連続の猛暑日、北日本から九州にかけて猛烈な暑さが続く。大気も不安定になっており局地的な豪雨への警戒が呼び掛けられる。インフラの更新、災害耐力の強化は必須だ。とは言え、「気候変動を踏まえた洪水に対応した国管理河川の整備完了率」は国土交通省が設定した目標に対して31%(2023年度)、「災害等発生時における安定給水のための大口径水道管路の整備完了率」は同33%(2024年度)にとどまる。古今東西、治水と利水は名君の条件だ。はたして令和の英傑はどこにいる?
今週の“ひらめき”視点 7.6 – 7.10
代表取締役社長 水越 孝