定置用蓄電池,ESS,世界市場,2019年
(写真=Soonthorn Wongsaita/Shutterstock.com)

2025年の定置用蓄電池(Energy Storage System)世界出荷容量を69,892MWhと予測

~再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電力系統用ESSの需要増加が成長を牽引する見通し~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2019年の定置用蓄電池(ESS)世界市場を調査し、設置先別及び需要分野別、電池種別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

定置用蓄電池

1.市場概況

定置用蓄電池(ESS:Energy Storage System、以下ESS)は、従来の停電など非常時に備えたバックアップ電源向けというイメージから脱却し、電力系統の周波数調整向けや再生可能エネルギーの導入拡大に伴う出力安定化対策向け、大口需要家のピークシフト/ピークカット向け、鉄道車輌のエネルギー回生用途向けなど、幅広いアプリケーションに採用が拡大し、本格的な立ち上がり期を迎えている。

2018年のESS世界市場規模(メーカー出荷容量ベース)は、前年比265.5%の9,909MWhとなった。従来のバックアップ電源向けに加え、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電力系統の安定化対策、電力の安定供給の実現、さらに大口需要家の電気代削減に向けた電力の自家消費の最大化を目的とする需要が市場成長を牽引している。平均すると電力料金は上昇する流れにあり、米国ではESSに貯蔵された余剰電力を電力卸売市場に接続させる動きがあり、また、日本ではこれまで太陽光パネルの普及拡大を支えてきたFITの買取期間が終了となるユーザーが2019年から出始めるなど、ESSの導入を促す方向へ外部環境が変化しつつあることが需要の拡大に繋がっていくと考える。

2.注目トピック

経済合理性が成立する構図は描けず、それでもESSは「行くしかない市場」

再生可能エネルギー(以下 再エネ)の導入拡大に伴い、ESSへの需要は拡大傾向にあるものの、「電気を貯めて使う」ことで経済合理性が成り立つ構図は実際には描けておらず、依然として政策による補助金サポートがESS導入に大きく貢献している状況にある。
但し、低炭素社会への移行に再エネの大量導入は不可欠であり、その再エネの拡大がもたらす様々な問題の解決にはESSは欠かせない存在である。ESS市場の成長性を見込んだ世界有数プレーヤーの市場参入も相次いでおり、今後の電池生産量の増加やESS関連メーカー間の競合激化等による電池のコストダウン等により、これまで採算性の観点からESS導入において足かせとなっていた価格が更に下落すれば、政策優遇による後押しがなくてもESSを導入する動きが活発化すると期待されている。

3.将来展望

2020年以降、FIT買い取り価格の下落による余剰電力の自家消費を目的とする需要や、電力網の老巧化や人口密度の低い電力網インフラの拡充が困難な地域における電力の安定供給のための需要などが拡大することから、2025年のESS世界市場規模(メーカー出荷容量ベース)を69,892MWhになると予測する。そのうち、2025年における住宅用ESS世界市場規模は、メーカー出荷容量ベースで11,943MWhになると予測する。