
2025年5月のNFT市場は、月間取引高が約4億7,600万ドルと前月比でおよそ28%増に転じ、年明けから続いていた下降トレンドに初めて歯止めが掛かりました。
購入アドレス数は100万件を突破し2024年5月以来の高水準を記録した一方、出品アドレス数は32万件台まで減少。
「買い手が増え、売り手が減る」 という需給の偏りが、相場を底堅く支えたとみられます。
本レポートでは、この回復局面をチェーン別・マーケットプレイス別・主要コレクション別に分解し、国内動向も交えて多角的に整理していきます。
本レポートの全体概要
・月間取引高は約4.76億ドルへ反発し、取引件数・平均額ともに回復基調 ・購入者数は100万超に拡大、売却者数32万人台で需要の割合が拡大 ・イーサリアムは取引高1.4億ドルで首位を継続、ビットコイン(Ordinals)が約7,600万ドルで回復傾向に ・マーケットプレイスはOpenSeaが取引高6,850万ドル・ユーザー24万人で圧倒Courtyardが約6,900万ドルでトップ、CryptoPunksが高額売買で存在感を示す ・国内発NFTの取引高首位はMoriusa、メルカリNFTでの取引額は低調に推移 |
市場概要
2025年5月のNFT市場は、年初から続いた縮小傾向に歯止めが掛かりました。
CryptoSlamによると、月間取引高は約4億7,600万ドルとなり、4月比でおよそ28%増加しています。
月間取引件数(Total Txns)は622万件と今年最多を更新し、市場全体の取引活動が明らかに活発化しました。平均取引額(Avg Sale)も76.5ドルと若干の持ち直しを見せています。

動きが顕著だったのは参加者構成の変化です。購入者数(Unique Buyers)は前月比67%増の約103万件に膨らんだ一方、売却者数(Unique Sellers)は32万件程度にとどまりました。
市場関係者からは「回復基調にはあるが、2021–2022年の過熱相場とは異なる冷静さが必要」との声も上がり、慎重な姿勢を示す人が多いようです。
5月の高額取引上位15件のうち13件をCryptoPunksが占め、レガシーコレクションの存在感が際立っています。具体的には、CryptoPunk #3609 が440ETH(約1.5億円)で落札されたほか、複数の個体が約150ETHで取引されました。

こうしたブルーチップの高額売買が総取引高を押し上げる一方で、全体では小口取引が伸びた結果、平均単価が過度に上昇せず安定している模様です。
また、5月はWeb3市場での大規模なハッキングや詐欺被害による報告も減少しており、セキュリティ面の不安がやや後退しています。さらに、暗号資産全体の上昇基調(BTCは月間11%高、ETHは43%高)が投資家心理を改善し、NFT市場の回復を後押ししました。
以上のように、5月のNFT市場は高額取引の復調と小口参加者の増加が両輪となって取引高を持ち直し、セキュリティ面でも落ち着きを取り戻した月となりました。
チェーン別動向
5月のチェーン別取引高では、イーサリアムが約1億4,100万ドルと前月から3割近く伸び、首位の座を維持しました。

ビットコインは約7,600万ドルまで回復しポリゴンを逆転して2位へ浮上、Ordinals市場の広がりが数字に表れています。ポリゴンは7,240万ドルと若干の減少を見せたものの、RWA系プロジェクト「Courtyard」の継続的な需要で依然3位をキープしました。
ゲーム特化のImmutableは3,318万ドルと前月比で約28%増加し、Guild of Guardiansなどのタイトルが牽引しています。Avalancheは「XSY Deposit」と呼ばれるNFTコレクションの取引が影響し3,120万ドルまで急伸、単月成長率では主要チェーントップとなりました。
ユーザー数ではBaseが14.5万人で最多、次いでイーサリアム6.4万人、ApeChain5.5万人と前月と同じような並びになっています。

まとめると5月は、イーサリアムの取引高回復とビットコイン(Ordinals)の躍進を軸に、ImmutableやAvalancheなど用途特化型のチェーンが頭角を現した月と言えます。
マーケットプレイス別動向
マーケットプレイス市場では、OpenSeaが取引高6,850万ドル(全体29.9%)・ユーザー数24.0万人(69.1%)を記録し、4月に続いて両指標で首位を守りました。
2月にベータ版が公開された「OS2」は正式リリース前ながら話題を呼び、BaseやPolygonといった低手数料が特徴のチェーンからライトユーザーを呼び込んだことで取引件数が底上げされています。

2位はBlurで取引高5,500万ドル(24.0%)と前月比12.6の増加を見せたものの、ユーザー数は9,900人(2.8%)にとどまり、高額トレーダー偏重の構図が続きました。
Magic EdenはOrdinalsとSolanaの両輪で4,920万ドル(21.5%)/6.4万人(18.5%)を確保し、Blurと僅差の3位に着地しています。

ロイヤリティ面ではPolygon系RWAコレクションの伸長を受けたDewが130万ドル(市場シェア39.4%)でトップの座を守る形となりました。
総じて5月は、「高額取引はBlur、裾野の広さはOpenSea」という二極構造がより鮮明に表れた月でした。Magic Edenはマルチチェーン戦略で粘りを見せたものの、OpenSeaに一極集中する傾向が強まっており、OS2正式ローンチ後のシェア動向が引き続き注目されます。
主要NFTコレクションの動向
5月の取引高トップはCourtyardで約5,900万ドル。カードを「焼却→現物交換」する RWA 型モデルは健在ですが、取引高は前月比で1割弱減少しました。2位のDMarketは約3,800万ドルと小幅なマイナスにとどまり、依然120万件超の高い取引件数を維持しています。

3位にはAvalanche上のXSY Depositが約3,000万ドルで初登場しましたが、実質50件の大口移転に集中しており、例外的なランクインと言えるでしょう。
対照的にGuild of Guardians HeroeとBRC-20 NFTsがそれぞれ約2,300万ドル/2,264万ドルで続き、ゲーム系・Ordinals 系の堅調さを示しました。CryptoPunks は“Zombie #644”などの高額売買が寄与し、約2,000万ドルで6位をキープしています。
下位では Pudgy PenguinsとDoodlesが8位・9位に入り、リアルグッズ展開やリブランディング効果で取引高が2割〜2倍近く伸長。BAYCは全体順位で10から11位へと降格しましたが、前月比25%増と取引高は増加しています。
総じて5月は、RWA系のPolygon銘柄とゲーム特化チェーンの活況、ブルーチップの再評価が重なり、新旧コレクションが横一線で注目を集めました。
国内のNFT市場動向
国内市場では、Moriusa(もりうさ)が取引量775ETHで2か月連続の首位を維持しましたが、4月比では約-6%と減速し、フロアも0.30ETHまで軟化しました。

2位のMurakami.Flowers Officialは60.63ETHで、前月(89.09 ETH)比およそ3割の縮小です。CNPシリーズもCNP本体が 17.47 ETH(前月31.74 ETH)、CNP REDが 4.02 ETHとなり、いずれも取引量を減らしました。
一方、SNPITのSnpitCameraNFTが取引数355件で4位に入り、MoreKudasaiは高フロア(0.46 ETH)を維持したままTOP10に返り咲き。取引件数は少ないながらも、長期ホルダーの厚みを示しました。
メルカリNFTの日次取引額は、1月末の3万ドル超まで記録していましたが、5月は数十〜数百ドルの低水準で推移しました。

ウォレット不要・円建てという参入ハードルの低さは評価される一方、国内オンチェーン市場との資金循環が弱く、継続的な流動性の確保が課題に浮上しています。
5月のNFTニュース5選
ここでは、2025年5月に話題になったNFT系ニュースの中から、特にインパクトのあったものを5つに厳選してご紹介します。
・OpenSea、OS2を正式リリース!SEAトークンの示唆も ・CryptoPunksがIP移管を発表 ・国内発NFTマーケットプレイス「tofuNFT」、5月末でサービス終了 ・東武トップツアーズ、「無限フルーツチケットNFT」を発売 ・ポケモンオマージュNFT「Supremon 151」が即売、フロア価格は2ETH超に |
各ニュースの概要を見ていきましょう。
OpenSea、OS2を正式リリース!SEAトークンの示唆も

OpenSeaは、5月30日に次世代プラットフォーム「OS2」を正式に公開しました。
19チェーン対応のマルチチェーンUIや手数料ゼロのトークンスワップ機能を備え、β版段階から話題だったXP制度も本稼働。
公式の声明で独自トークン「SEA」の発行に言及したことで、ユーザーと開発者の双方から注目を集めています。
詳しくはこちら▼
OpenSea、OS2正式リリース。公式がSEAトークンのローンチを示唆
CryptoPunksがIP移管を発表

5月13日、BAYCを手がけるYuga Labsは、CryptoPunksのIP(知的財産権)を、新設の非営利団体「Infinite Node Foundation」に譲渡すると発表しました。
創設者のMatt Hall氏らも財団に参画し、保全と文化的継承を掲げた長期ロードマップを提示。
ブルーチップNFTの将来像を巡り、業界内で大きな話題となりました。
詳しくはこちら▼
CryptoPunks、Yuga LabsからのIP移管を発表─デジタルアート保存と拡張を掲げ新章へ
国内発NFTマーケットプレイス「tofuNFT」、5月末でサービス終了

日本発のマルチチェーンマーケットプレイス「tofuNFT」が5月31日で運営を終了しました。
公式の告知によると、市場の冷え込みと運営コストの上昇が今回の決断に至った理由に挙げられていました。
GameFiの特需を追い風に急成長した同社の撤退は、競争が激化するマーケットプレイス事情を象徴する出来事となりました。
詳しくはこちら▼
NFTマーケットプレイス「tofuNFT」、5月31日にサービス終了を発表
東武トップツアーズ、「無限フルーツチケットNFT」を発売

旅行大手・東武トップツアーズは、茨城県八千代町と連携し「無限フルーツチケット」と呼ばれるデジタル住民票NFTを、5月30日から販売し始めました。
購入者は毎年1,000円相当のフルーツと地域施設の割引特典を無期限で受け取れ、転売ロイヤリティは町財源に還元されます。
全部で1,000点の販売でしたが、注文殺到で早期完売を達成。
実際に無限フルーツチケットが使用可能になった6/2(月)初日に町を訪れ、1,000円相当のメロンを受け取った方もいるとのことです。
NFTを活用した持続型の地方創生モデルとして注目されています。
詳しくはこちら▼
東武トップツアーズ、茨城県八千代町と「無限フルーツチケットNFT」を販売
ポケモンオマージュNFT「Supremon 151」が即売、フロア価格は2ETH超に

フランスのデジタルアーティスト8TH PROJECT氏が5月27日に公開したNFTコレクション「Supremon 151」は、ミント価格を0.019ETHに設定し、見事、全151 点が即完。
初代ポケモン151 体をスプレマティスム(幾何学と限定色のみで構成する抽象芸術)で再解釈した独創性が話題を呼び、72時間で二次流通取引高は148ETH、フロア価格は一時2ETHを突破しました。
6月10日時点でもフロア価格は2ETHを維持しており、直近でリリースされたアート系NFTの中ではトップクラスに高い水準で取引が行われている模様です。
詳しくはこちら▼
ポケモンオマージュNFT「Supremon 151」が即売、フロア価格は2ETH超に
まとめ
2025年5月のNFT市場は、取引高・取引件数ともに年初来で初めて増加に転じ、低価格帯の参加拡大とブルーチップの高額売買が同時に進んだ月となりました。CourtyardやDMarketといった実物資産・ゲーム系コレクションが上位を占める一方、CryptoPunksが高額取引をけん引し、用途の明確さとブランド価値の双方が評価を集めています。
チェーン別ではイーサリアムが約1.4億ドルへ回復して首位を維持し、Bitcoin Ordinalsが7,000万ドル超で2位に浮上しました。PolygonはRWA需要で踏みとどまったものの順位を一つ落とし、ImmutableとMythosはゲーム需要を背景に伸長しています。
マーケットプレイスではOpenSeaが取引高6,850万ドル・ユーザー数24万人でトップを堅持し、Blurは高額トレーダー中心に取引高を伸ばしました。Magic EdenはOrdinalsとSolanaの両輪で3位を守り、ライトユーザーとヘビートレーダーの棲み分けがより明確になっています。
国内ではMoriusaが首位をキープする一方、0.05 ETH前後のコミュニティ系NFTが件数を押し上げました。メルカリNFTは取引件数が微増し、オンチェーン市場との相互流入が次の課題となっています。
過去のレポートはこちら
参照元
・https://dappradar.com/ ・https://www.cryptoslam.io/ ・https://www.nftpulse.org/ ・https://dune.com/denze/courtyard ・https://nftranking.jp/ ・https://dune.com/konityan/merukarinft |