コロナウイルス
(画像=Andrii Vodolazhskyi/Shutterstock.com)

新型コロナウイルスの感染拡大にともない、飲食や旅行、ホテル、イベントなどのビジネスが圧迫されている。それに対しオンラインサービスや宅配、通信、医療関連などは拡大を続けている。

コロナ不況下でも伸びているビジネス、ポストコロナでさらに加速すると予想されるビジネスから、「未来のビジネス」が見えてくるかも知れない。

コロナ不況下・ポストコロナ、最大の勝者は「デジタル関連」

人や物の移動が制限される中、最大の勝者は実店舗ではなくオンラインをベースとする、あるいは実店舗とオンラインの両方で商品・サービスを提供しているビジネスだ。

分かりやすいのは、デジタル関連のビジネスが挙げられる。オンラインショップ(オンラインでの注文・配達を導入しているスーパーや小売店を含む)、デジタルメディア、SNS、エンターテイメント(オンラインゲーム、ストリーミング)など、様々な商品・サービスの需要が拡大している。

例えば、ウォルト・ディズニーに着目してみよう。3月以降、世界各地のテーマパークを閉鎖している同社は、自宅に待機する10万人の従業員への休業手当を4月末で打ち切るなど、苦戦を強いられている。

その一方で、新しい動画配信サービス「Disney+(ディズニー・プラス)」は、スタートから約5カ間で契約者数が5000万に達するなど、予想を大きく上回るパフォーマンスを見せているのだ。

従って、ネットだけで完結するデジタル関連のビジネスは、これからより加速することになるだろう。

大手IT企業が続々と雇用拡大

こうした潮流を反映するかのように、飲食や旅行産業などで大量リストラが展開されているのとは対照的に、IT企業は雇用を大幅に拡大している。

実店舗の閉鎖や欠品などで注文が殺到したAmazonも、コロナパニックで雇用を拡大したIT企業の一つだ。同社は3月中旬、米国で10万人(正社員・パート)の大規模な採用に踏み切った。

募集業務は、商品の発送をサポートする配送・物流のほか、エンジニアや機械学習サイエンス、ハード開発などのIT分野。さらには編集・執筆・コンテンツ管理といったメディア、財務・会計、HR(人事)など、広範囲にわたる。

Appleや Google、Facebookといった競合も、データ・サイエンティストやソフトデザイナー、サイバーセキュリティの専門家などの雇用枠を広げている。

外出自粛で注目される「リモート・コミュニケーション」

新型コロナ騒動を機に実際にリモートワークを体験し、「遠隔から十分出来る仕事を、今までわざわざ出社して行っていた」と、目からウロコが落ちた人も多いのではないだろうか。この点については、同じ見解を示す雇用者も多いはずだ。パンデミック終焉後も「ポストコロナ時代の新たな働き方」として、リモートワークは定着すると予想される。

コロナ以前から、日本でもSlackやChatwork、Zoomなどがビジネス・コミュニケーション・ツールとして普及していたが、遠隔からのチームワークを劇的に効率化するAsana(アサナ)、インストール不要のWeb会議システム「Calling (コーリング)」など、リモートワークをさらに効率化するための商品・サービスが急速に注目を集めているのだ。

これらの商品・サービスはビジネスだけではなく、教育現場でも教師間あるいは教師と生徒間のコミュニケーション・ツールやリモート・レッスン・ツール(オンライン授業)として、利用が活発化していくことが予想される。

子どもから大人まで楽しめる「オンライン学習」

学校や大学、塾、習い事など学習の場の臨時閉鎖にともない、欧米を中心にオンライン学習の需要が加速している。

ユネスコの4月20日のデータによると、世界191カ国が全国規模で学校を閉鎖しており、世界の全学生の91.3%にあたる15億 7527万以上の学生が影響を受けている。「学校に行けない、外にも遊びに行けない」という状況は、勉強の遅れだけではなく学習意欲の低下や精神的ストレスの原因にもなる。

そこで、学習の習慣を維持させると同時に学力をつけさせる意図で、オンライン学習を導入する学校が増えている。システムは様々だが、生徒がオンライン学習サイトにログインして問題や課題に取り組み、教師がモニタリング後、アドバイスや次の課題について連絡するといった手法が用いられている。

また専門的な資格は取得していないが、得意分野や専門知識を教えるスキルがある一般人と、手頃なコストで興味のある分野について勉強したい学習者のマッチング・プラットフォーム「Outschool」のようなサービスも人気だ。

3~18歳の米学習者を対象としており、義務教育における必須科目のほか、「荒野でのサバイバルスキル」「フォレンジック・サイエンス(法科学)」など、1万種類を超えるビデオ対応のライブクラスから、好きなものを選べる。

さらに自宅で過ごす時間が増えたことで、語学や楽器の演奏、オンラインで習い事を始める大人も多い。教室に通う必要がなく、世界中どこからでも参加可能なオンライン学習は、今後も年齢や国を問わず、利用者が増え続けるだろう。

「リモート医療」が新しい常識に?

感染防止対策として、マスクや消毒用アルコールジェル、ハンドソープ、使い捨て手袋などが世界各地で品不足となったが、これらのビジネスはパンデミックの終焉とともに、ある程度需要が落ちつくと予想される。

ポストコロナで加速するのは、リモート医療ではないだろうか。インターネットを利用して遠隔地から医師の診断やアドバイス、を受けれるというもので、通院の必要がないため患者側の負担が軽減され、病院側も業務の効率化が図れる。

日本ではインフルエンザなどの感染病でも、病院で診察を受ける文化が定着していたが、感染拡大のリスク防止策としても、症状によってはリモート医療が常識となる可能性が高い。

「未来のビジネス」についてご紹介したが、今後、ポストコロナ市場の需要に応えるべく、他にも様々な新しいビジネスが登場しそうだ。

文・アレン・琴子(英国在住のフリーライター)