Airbnb
(画像=Tero Vesalainen/Shutterstock.com)

新型コロナウイルスの感染拡大で、民泊仲介の世界最大手の Airbnbが深刻なダメージを受けている。海外旅行者や 国内旅行者が 激減し、同社の売上の大半を占める手数料収入は悲惨な状態となっているとみられる。資金調達も発表しているが、復活の青写真はあるのだろうか。今回は、 新型コロナウイルスの影響を受けるAirbnbの今後について掘り下げていこう。

Airbnbの歴史、創業からIPO計画まで

米サンフランシスコで2008年に創業したAirbnbは、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げた企業だ。「民泊」や「ホームステイ」という概念 は既に欧米や日本など世界にあったが、Airbnbは民泊を通じて誰でもすぐにお金を稼げるプラットホームを作り、ユーザー数を右肩上がりに増やしてきた。

世の中で「シェアリングエコノミー」(共有経済)が注目された時期が 重なっていたことも大きい。ライドシェアで世界最大手となったUberのように、Airbnbは民泊で世界最大手となり、いよいよ今年IPO(新規株式公開)する計画だった。

米調査会社のCBインサイツによれば、Airbnbの時価総額は180億ドル(約1兆9,000億円)に上り、世界のユニコーン(時価総額が10億ドル以上の非上場企業)においては5位。Airbnbは上場に向けてコンプライアンス(法令遵守)強化にも取り組んでおり、2020年はAirbnbにとってさらなる飛躍の年となる予定だった。

新型コロナショックで大打撃、資金調達を発表

飛躍に向けて邁進する の中、 「新型コロナショック」が起きた。感染拡大の防止に向け、各国で外出自粛や入国制限などの措置がとられたことで、海外旅行をする人が激減した。海外旅行をする人が激減したということは、民泊を利用する人も減ったということだ。これにより、Airbnbの売上高は激減することになった。

こうした中でAirbnbは、資金調達を4月に入って相次いで発表している。これまでに明らかになっている資金調達は10億ドル(約1,070億円)が2回で、いずれも未公開株式投資会社のSilver Lakeなどから調達した形となっている。

このような 資金はどのように使われるのか。もちろん、一部を運転資金に充てることも検討してはいるだろうが、報道によると Airbnbの創業者で最高経営責任者(CEO)であるブライアン・チェスキー氏は、ホストの救済などに充てることを明言しているようだ。

実は今回のコロナショックでは、Airbnbはほかの宿泊予約サイトに比べてホストに対する支援策を強力に打ち出している状況だ。詳しく解説しよう。

ホストに対する支援策、他社より手厚い印象

Airbnbはこれまでに、新型コロナウイルスの感染拡大によってキャンセルの影響を受けたホスト向けの支援スキームと、民泊による売上が著しく低下したホスト向けの救済基金の2つを発表している。前者は2億5,000万ドル規模、後者は1,700万ドル規模のものだ。

前者の支援スキームは、一定条件に該当するキャンセルについてホストが受け取るはずだった金額の25%をAirbnbが補填するというもので、3月14日から5月31日の予約が対象となっている。

後者のホスト向けの救済基金は、宿泊実績が優良な「スーパーホスト」などを対象としたもので、売上の低下状況などを鑑みて最大で5,000ドルの救済金を振り込むという内容だ。この救済金は返済が不要で、ほかの宿泊旅行サイトの対応と比べてみると特に手厚い支援策という印象を受ける。

さらにAirbnbは、民泊仲介とは別のコンテンツとして展開していた「体験」仲介サービスについて、「オンライン体験」というコンテンツを新たにスタートさせた。専門的なスキルを持った人がインターネットを通じて体験コンテンツを提供するというもの だ。

これまでの体験サービスは感染拡大防止の観点から一時的な休止を発表したが、体験ホストは「オンライン体験」を通じて売上を得ることも可能になってくる。

ホスト救済はアフターコロナ期を見据えたもの?

ホストに対する支援、新たなコンテンツの提供開始……。こうしたAirbnbの動きを分析すると、Airbnbの今後の青写真がおぼろげながら見えてくる気がする。

アフターコロナ期における需要の回復を見越し、いまは民泊や体験を辞めるホストを限りなく少なく押さえる 。これによって、売上のV字回復のスピードを確保しようと努めているのではないだろうか。

ただ、新型コロナウイルスの感染の終息がいつになるのかは依然不透明な状況で、Airbnbにとっての苦しい状況がいつ終わりを迎えるのかはまだ分からない。この期間をまず何とか耐え抜けなければ、その後のV字回復も見込めない。

Airbnbについては、契約社員や派遣社員のレイオフに乗り出したことも報じられている。チェスキーCEOにとっては苦渋の決断だったと考えられる。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)