マスク製造
(画像=InkheartX/Shutterstock.com)

新型コロナウイルスの影響で、マスクの超品薄状態はいまだに続いている。そんな中、国内や海外でマスク製造とは異業種の企業が生産に名乗りをあげ始めた。感染拡大が止まらない今においては「救世主」とも言える存在だ。今回は、最近のマスクにおける状況をまとめて紹介しよう。

シャープ:いち早い動きで注目、既に個人向けにも販売開始

電機大手のシャープは、日本の国内企業としていち早く不織布マスクの製造に乗り出したことで注目を集めている。三重工場における液晶ディスプレイを製造していたクリーンルームを活用して3月24日から製造をスタートし、4月21日からインターネットで販売をスタートした。

シャープのマスク製造は日本政府の要請を受けてのものだ。生産すること自体は2月28日に決定しており、個人向けマスクの販売に先立って3月31日から政府向けに出荷を開始していた。

マスクの製造能力はいまのところ1日15万枚で、計画では今後1日50万枚を製造できるまでに生産能力を高める考えだという。ちなみに個人向けの販売価格は1箱50枚入りで2,980円(税抜・送料別)となっている。

パナソニック:クリーンルーム活用して生産、まずは「自給自足」へ

シャープのライバルであるパナソニックも、マスク製造に着手することを発表している。報道発表によれば、パナソニックグループのコネクティッドソリューションズ社のクリーンルームを活用する形で生産体制を整えるとのこと。

まずはパナソニックの社員が、自社生産のマスクを使う「自給自足」を目指す。社内向けのマスクを生産するということは、社員が一般市場からマスクを購入する必要がなくなる。そのため、間接的にマスク不足の問題の緩和に貢献する形となる。その後、医療現場への医療用マスクの生産も検討していく考えのようだ。

パナソニックは自律移動が可能な空間除菌ソリューションとして、「HOSPI-mist」というロボットを提供することを発表している。HOSPIは既に医療機関における薬剤の搬送などで活躍実績があり、このHOSPIに除菌剤噴霧機能を搭載されたロボットがHOSPI-mistだという。

トヨタ自動車:「医療用防護マスク」を製造し医療機関に提供へ

自動車メーカー最大手のトヨタも医療用防護マスク(医療用フェイスシールド)の製造に名乗りを上げた。

4月7日の報道発表における説明では、愛知県にあるトヨタの貞宝工場で3Dプリンターなどを使って1週間で500〜600個を生産し、医療機関に提供していく考えだとされている。トヨタのアメリカ拠点でも、新型コロナウイルスに対応したマスク生産の準備をしていることが明かになった。

トヨタグループの自動車部品大手デンソーについては、パナソニックのようにマスクの自給自足に向けた動きが明らかになっている。自動車メーカーではトヨタのほか、日野自動車やダイハツ工業もマスク生産を検討中だ。

大手企業だけではなく各地の地場系企業も続々参入

シャープやパナソニック、トヨタなどの大手企業だけではなく、各地方の地場系企業によるマスク生産も盛んになってきた印象だ。例えば、女性用下着を製造している愛知県名古屋市の渡辺商店は布製マスクの生産を既に開始しており、インターネットを通じて販売している。

福岡県那珂川市に本社を置く岡野は博多織の着物などを製造している企業だが、既に手拭いを使った自社製マスクの販売をスタートしていることで注目を集めている。伝統的な手法による繊細な柄も注目を集め、公式サイトでは既に「SOLD OUT」となっている人気ぶりだ。

海外では高級ブランドのほかアップルも生産を開始

海外では、高級ファッションブランドがマスクの生産に乗り出す事例も。例えば、世界におけるラグジュアリー複合企業として有名なケリンググループは、傘下の「イヴ・サンローラン」と「バレンシアガ」の両ブランドでマスクの製造を開始することを既に発表している。

また米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、医療者向けの防護マスクを1週間に100万個製造することを既に明らかにしているのだ。生産はアメリカと中国の工場で行い、アップルはフェイスシールドの製造方法や材料などに関する情報も既に無償公開している。

そのほか、シャープやトヨタといった製造業の企業がマスクの生産を開始した事例は、枚挙にいとまがない状況になりつつある。世界的にマスク不足の解消に向け、協力の輪が広がっている状況であると言えよう。

とはいえまだまだマスクは足りていない

世界では異業種企業がマスク製造に乗り出す事例が目立っているが、医療現場や食料品を販売するスーパーなどの小売店、一般家庭ではまだまだマスクが足りていないのが現状だ。

医療機関そして一般市場にマスクが十分に供給されるようになるには、まだまだ予断を許さない状況であることに変わりはない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)