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遺産分割の方法

1. 遺産分割とは

まず、「遺産分割」とは何か?について確認してきましょう。

被相続人(亡くなった人)の遺言が無かった場合には、相続が発生すると、遺産は一旦、相続人全員の共有財産となります。

ここから被相続人が残した遺産の分配について相続人間(民法で定める法定相続人)で協議を行い(これを「遺産分割協議」といいます。)、相続人全員の同意で個々の遺産につき誰が何を取得していくかを確定させていきます。

この手続きを「遺産分割」といいます。

相続人には、民法で定められている法定相続分がありますが、相続人同士の合意があれば、必ずしも法定相続分通りに分ける必要はなく、自由に分割することが可能です。

また、相続財産が債務が多ければ、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に相続放棄をすることができます。

※民法では親族関係の近い順に相続分を多く定めており、子供が複数いれば均等にという配分になっているのですが、多くの家庭ではこの通りに相続することは適当とはいえないのです。よって、その相続人ごとの被相続人への貢献度や、過去に被相続人から受けた援助などを考慮して足したり引いたりといった調整をしているのです。

参考 >>
遺産分割ってどう行うの?

2. 遺産分割が必要ない場合

相続が発生すれば遺産分割が必ず必要とはいうわけではなく、遺産分割を必要としない場合もあります。そのケースを見ていきましょう。

2-1. 遺言書がある場合

遺言書があれば、遺言書に記載通りの分割が行われるため、相続時に問題となる遺産分割協議をする必要がありません。

遺産分割協議がまとまらず「相続が争続に発展する」といったトラブルを未然に回避することができます。

ただし、相続発生後に遺言書に記載の無い遺産が見つかれば、その遺産については遺産分割協議を行っていく必要があります。

2-2. 相続人が一人の場合

遺相続人が一人の場合にも遺産分割は不要です。全ての遺産についてその相続人が相続していきます。

2-3. 相続人が誰もいない場合

誰も相続人が居ない場合にも遺産分割は不要です。

この場合の相続財産は「相続財産法人」と呼ばれる財産の集合体にされた上で管理処分され、債権者や受遺者に対して弁済等を行い、最終的な残財産については国庫に帰属することになります。

参考 >>
相続人が誰もいない場合、財産はどうなるの?

3. 遺産分割の目安となる法定相続分

遺産分割は相続人間の話し合いで決めていくことになりますが、法定相続人が相続する目安として「法定相続分」という割合を定めています。

相続人が配偶者だけならば、すべての遺産を相続しますが、子どもがいる場合は、配偶者と子どもで2分の1ずつ分けます。

子どもが複数いる場合は、2分の1を子どもたちの数で均等に割ります。 その他主な法定割合は下図をご参照ください。

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ケース5のように、第一順位の子どもが亡くなっている場合は、相続権が孫に移ります。

これを「代襲相続」といいます。

また、被相続人が特定の相続人に虐待を受けたなどで、遺産を相続させたくないという場合、相続権をはく奪する「廃除」を行うことができます。

上記のように、法定相続分は相続人の順位や組み合わせによって割合が変わります。

法定相続分は遺産分割の目安であって、法定相続分で分割を求められるものではありません。

遺産分割をスムーズに進めるために、民法で定めた遺産分割の目安となる割合になりますので、相続の際には法定相続分を確認していきましょう。

参考 >>
法定相続分とその割合を詳細に解説!

4. 遺産分割協議の準備

遺産分割協議は一般的には被相続人(亡くなった人)の遺言書がなく、かつ相続人が自分たちで自由に遺産の分け方を決めたい場合に行うものです。

遺産分割協議が有効に成立するためには法定相続人全員がその内容に合意する必要があり、できればすべての相続財産につき一度に済ませた方がよいため、協議を始める前にはそれなりの準備が必要になります。

4-1. 遺言書の確認

相続では、亡くなった方が遺言書を残している場合にはその内容が法律に優先することになります(遺言書がある場合、遺産分割協議は基本的に必要ないということになります)。

相続に関するルールは民法という法律で決まっていますが、法律の内容はあくまでも遺言書がない場合に適用されるものという扱いになっているため、何よりもまず遺言書の内容の確認から行わなくてはなりません。

◼︎遺言書が後から見つかったらやり直しになることも

もし遺産分割協議を行った後になって「実は遺言書が残されていた…」ということになるとせっかく行った遺産分割がやり直しということになってしまいますから注意しておきましょう。

自筆証書遺言は亡くなった方が自分で保存しているのが普通ですから、家族が探さなくてはなりません。

一方で、公正証書遺言や秘密証書遺言は公証役場のデータベースに登録されていますから、問い合わせをすることによって遺言書の有無を確認することができます。

4-2. 法定相続人の確定

遺言書の有無を確認したら、誰が相続人なのか?つまり法定相続人の確定をしていきます。

相続人は3人しかいない、などと思い込んでいても、たまに自分たち兄弟の知らない異母、異父兄弟などが出てくることもあるのです。

中には結婚前の子供の存在や前妻との子供の存在を隠している親もおり、「まさか父に自分たち以外の子供がいるなんて思わなかった」と驚く人もいます。

相続手続き全般において、戸籍によって法定相続人をもれなく確認するという作業は欠かせないものであり、全部の手続きに先だって行うべきものです。

具体的にどのように戸籍を集めるのかというと、最初に「被相続人の最後の戸籍謄本(つまり死亡の事実とその年月日が記載されているもの)」を本籍地の市区町村役場で取得します。

そして、ここから過去に向かって遡るという作業をするのですが、「出生から死亡までのすべての戸籍」というと「現在のものを取ったら生年月日も死亡日も書かれているからこれで足りる」と思い込んでしまう人もいます。

しかし、戸籍を遡るという意味は、役所による戸籍の改製(たとえばコンピュータ化や法律改正などを原因として作り直されること)、結婚、転籍、養子縁組などさまざまな要素で移動している被相続人の戸籍の変遷をすべて追いかけて出生までたどり着くということです。

80代くらいで亡くなった人であれば平均で5、6種類程度は出てくることが普通です。

これらの戸籍を確認し、法定相続人全員の確定を行いましょう。

参考 >>
遺産相続が起こったら相続人の確定が重要!

4-3. 相続財産の調査と財産目録の作成

法定相続人全員が確定したら次に(もしくは戸籍収集と同時並行で)行わなければならないのが相続財産の調査と財産目録の作成です。

遺産分割協議の後でまた被相続人名義の財産が出てきた場合は再度遺産分割協議をしなければならなくなりますから、最初の段階でなるべく漏れなく探し出しておかなければならないのです。

◼︎財産目録を作る理由

遺産分割協議の前提資料とするため

相続財産の内容が一目でわかる財産目録が遺産分割の話し合いの際にあれば、相続人間の協議もスムーズに進められ、円滑にまとまりやすい。

相続税申告の要否、あるいは相続税の納付額を明確にするため

相続税の申告が必要となった場合、必ず相続財産の一覧表を作成する必要があるので、きちんとしたものをつくっておけば転記するだけで済む。

◼︎無用なトラブルを避けられる財産目録

財産目録とは、被相続人の相続税さんがどれくらいあるのかを一覧にしたもの。

遺言書が無い場合、遺産の分割をするためには、相続人全員で話し合う遺産分割協議が必要です。

その際に財産目録があれば、遺産が一目でわかり、隠し財産の有無など無用なトラブルを避けられます。

また、相続税の申告が必要となった場合、必ず相続財産の一覧をつくる項目があるため、あらかじめきちんとした財産目録を作っておくと手間が省けます。

作成する際には、不動産や預貯金、その他の資産などのプラスの財産と負債などのマイナスの財産をしっかり調査し、評価額を算出。

取得した固定資産評価証明書や残高証明書などを添付し、くれぐれも記載漏れが無いようにしておきましょう。

この財産目録にはきまった書式はありません。下の図を参考に準備しましょう。

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◼︎専門家からのアドバイス

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司法書士:田中 千尋
財産目録の漏れには要注意

最終的に遺産分割を確定させるためには、この財産目を雲すべての遺産が漏れなく記載され、各相続財産の評価額もきちんと確定しておく必要があります。万が一、財産目録に記載している財産に漏れがあり、評価金額も途中で変更になってしまうと、決まるはずの遺産分割協議も決まりませんし、相続財の申告後に漏れが発生すると、追加納税のほか、延滞税というペナルティも発生してしまうので注意が必要です。漏れがちな項目としては、家庭用財産、車、ゴルフ会員権等、未収となっている給与・地代・家賃・公租公課、被相続人のお金を原資とした子や孫の預貯金通帳、その他還付金等(高額療養費、介護保険、後期高齢者など)、海外財産などがあります。

5. 遺産分割協議を行う

遺産の内容が確認でき、相続人となる人が確定したら、遺産分割協議を行います(遺言書がない場合)。

法定相続人全員が参加して行わなくてはなりません。たとえ1人でも認知症で意思表示ができなかったり、行方不明になっていたりする人がいればその時点で成り立たないことになるのです(このような場合は成年後見人や不在者財産管理人など、代理人を立てる手続きが準備されています)。

遺産分割協議書には相続人全員が実印を押して印鑑証明書をつけなければ各相続手続きができませんので、兄弟が音信不通になっているような状況であっても連絡を取ることが第一歩となります。

ただし、遺産分割協議では必ずしも全員が顔を合わせて協議を行わなくてはならないというわけではなく、分割案を郵送等のやりとりで書面によって意思表示をしてもらうことも問題はありません。

遺産分割協議では、互いの譲歩や自重がとても重要です。

相続財産をめぐっては被相続人の生前は仲の良かった親族同士で骨肉の争いに発展する…というようなケースも決して珍しいことではないためです。

親族同士では感情のもつれがあってどうしても協議が先に進まない…というような場合には、弁護士に間に入ってもらうことも検討してみると良いでしょう。

6. 遺産分割の方法

遺産に現金などが豊富にある場合は、比較的スムーズに分けることが出来るでしょう。

しかし、そういうケースばかりではありません。

遺産分割では、いかに公平に遺産を分割出来るかが重要になります。

遺産分割の方法として、次の3つの方法があります。

◼︎① 現物分割

土地建物は妻に、現預金は息子にというように、現物のまま分割する方法です。わかりやすい方法ですが、必ずしも公平になるとは限りませんので、争いになる可能性があります。また、現物分割の一種として、共有分割もあります。 分割が難しい場合などに、複数の相続人が遺産を共有する方法です。ただし、将来的に権利関係が複雑になる可能性があるため、あまりお勧めは出来ません。

◼︎② 換価分割

遺産の一部または全部を売却し、お金に換えて分割する方法です。公平な分割が可能ですが、時間や費用がかかります。

◼︎③ 代償分割

不動産や事業用資産などを、特定の相続人が相続分を超えて取得する代わりに、超過した分をお金で他の相続人に支払う方法です。現物資産を残すことができますが、超過分を取得する相続人に支払能力があることが前提となります。以上のように、現物分割が原則ですが、相続人の意向や、相続財産によっては換価分割や代償分割を活用して、公平な遺産分割を考えていきましょう。

7. 相続財産の管理方法

相続人が複数おり共同相続した場合、遺産分割されるまでは、すべての遺産は相続人で共有していることになります。

相続人のそれぞれの所有権は、相続分に従って持分として各相続人に帰属します。

遺産分割までの相続財産の管理には、①共同で管理する方法、②相続人間の合意の上、相続人の1人を管理者とする方法、③家庭裁判所により相続人以外の第三者を選任し管理する方法などがあります。

仮に相続人の1人が他の相続人の合意なく不動産を処分してしまった場合には、他の相続人の持分は保護され、第3者が移転登記をしたとしても、その登記の抹消登記することが出来ます。

また、金融資産の様な分割が可能な遺産でも相続人全員の同意がない限り、自分の持分の請求をすることは出来ません。

8. 遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書に必ず書いておきたいのは、「被相続人の氏名、死亡日、最後の本籍」、「被相続人が死亡したので相続が発生し、法定相続人全員で話し合った旨」、「財産の内容と相続する人の氏名、続柄」、「協議の成立した日付」です。

そして最後に各相続人が署名と実印での押印を行います。

財産の特定方法ですが、なるべく疑義が生じないように明確に記載しなければなりません。

不動産であれば登記簿を見ながら書く方がよいでしょう。

土地の場合は「所在」「地番」「地目」「地積」を、建物の場合は「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」を記載します。

預貯金の場合は「銀行名」「支店名」「口座の種類(普通、当座など)」「口座番号」を記載します。

残高は記載しなくてもかまいません。

他の財産も同様に証券などに書いてある情報をなるべくしっかり記載して特定できるようにしましょう。

どの財産かはっきりわからないような書き方をしてしまうと、相続手続の関係先から作り直しを要求されるおそれもありますので、いったん作成したものをしっかりチェックしてから署名と押印に移りたいものです。

遺産分割協議書には法定相続人全員の実印押印が必要となります。

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(画像=相続サポートセンター ※遺産分割協議書サンプル)

◼︎ポイント

遺言書がないとき、または一部の財産しか記載されていない場合に作成する
書式は特に決まっていない。手書きでもパソコンでもOK被相続人の名前、相続日(死亡日)、協議した相続人を明記相続財産について具体的に記載する

代償金が発生していた場合は、支払期限を明確に

相続人の名前・住所・実印が必要

相続人の人数分作成し、各自が保管する

◼︎どんなときに必要?

不動産等の相続登記、銀行預貯金の払い戻し、名義変更
法定相続分とは異なる割合で相続する場合、これがないと手続きができない
相続税の更生請求
相続税の還付を受ける 際の書類として使用

9. 相続人の一部と連絡がとれない場合

遺産相続は、最終的には相続人となる人全員が遺産分割協議を行い、相続の内容を定めた遺産分割協議書に署名捺印を行うことによって完了します。

遺産分割協議書には必ず相続人全員の署名捺印が必要になりますので、相続人の中に連絡が取れない人がいるような場合には問題となります。

また、遺産相続については遺言が残されていたものの、相続財産のすべてについては遺言が定められておらず、一部については被相続人の意思が不明となっているような場合にも相続人全員が集まっての遺産分割協議が必要となります。

例えば、遺産のうち土地や建物については遺言が定められていたものの、現預金については遺言では何も定めていないというような場合、この現預金については相続人全員が集まって遺産分割協議を行う必要があるのです。

9-1. まずは連絡を試みるのが先決

相続人のうち音信不通となっている人がいる場合にも、なんとか連絡をとって遺産分割協議に参加してもらうのが大原則となります。

具体的には戸籍謄本ををたどって音信不通者の現在の本籍地を探したり、戸籍の附票を取得して現在の居住地を突き止める方法が考えられます(戸籍の附票には本籍地に関する手続きを行った後の住所移転の履歴が記載されます)

9-2. どうしても連絡を取ることができない場合の処置

上記のような手段をとっても音信不通者と連絡を取ることができない場合には、次のような方法によって遺産分割協議を開始する方法があります。

1 家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう

当分帰来する見込みがない音信不通者の場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。

この「当分帰来する見込みがない」というのは数日間の音信不通などでは認められない可能性が高く、数か月~数年以上にわたって音信不通の状態が続いていることが条件となることが多いです(ただし、生死不明であることは必要ではありません)

不在者財産管理人は音信不通となっている人の財産権を確保するために選任されますから、相続人となる別の親族が不在者財産管理人となることはできません(音信不通となっている人と利害が対立するためです)

親族が不在者財産管理人に選任される可能性もありますが、その場合の親族は相続人となる資格がない人に限られます。

2 家庭裁判所に失踪宣告を出してもらう

すでに何年間も音信不通の状態が続いている…というような場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てを行うことも一つの手です。

失踪宣告の条件は2種類あり、1つは「7年間以上音信不通の状態が続いていること」です(これを普通失踪といいます)

もう1つは災害などで音信不通になった後、1年以上が経過した場合です(特別失踪といいます)

利害関係人(相続の場合は別の相続人)が家庭裁判所に対して申し立てを行い、失踪宣告が出た場合には、その音信不通となっている人は法律上死亡したものとみなされます。

失踪宣告後には音信不通となっている人を欠いた状態でも相続財産について遺産分割協議を行うことが可能になります。

ただし、失踪宣告を受けた人に子供がいる場合には、その子に相続権が認められることになりますから、その子を遺産部活協議に参加させなくてはなりません(代襲相続といいます)

10. ※遺産分割協議書と知らずに署名させられる?

特定の相続人だけが有利となる内容が書かれている遺産分割協議書などには、そう簡単に他の相続人が署名や押印などしないと思われる方は多いと思います。
しかし、元々の親族間の信頼があるためか、「手続きを進めるために必要な書類」などと説明され、それが遺産分割協議書と認識しないまま署名、押印してしまうことは実際に多く見られるケースです。

いったん作成された遺産分割協議書の効力を後から争うのは、とても困難な場合が多いため、遺産分割協議書の作成はもちろん、署名押印を求められた際にその内容が妥当かについても弁護士などの専門家に相談してみるのがよいでしょう。

11. 申告期限までに遺産分割協議が間に合わないとき

申告期限までに遺産分割協議が間に合わないときは、未分割という形で申告します。

未分割で申告する場合、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの各種特例を適用せずに申告することとなります。

つまり、内容的には特例を適用できるはずなのに、未分割であることが原因で当初の申告で多めに税金を支払わなくてはいけないということが起こります。

そして、申告時に所定の書類を提出し、申告期限から3年以内に遺産分割協議を確定させ、改めて申告することではじめて特例が適用されます。

そこで、当初申告で納めすぎていた税金が戻ってきます。

12. 遺産分割をしないままにするとどうなるか?

「いつまでたっても話し合いに応じない相続人がいる」

等の理由から遺産分割を確定できないとどうなるかを見ていきましょう。

① 名義変更ができない

不動産の名義変更はもちろん、銀行預金の名義も口座凍結のまま預金引き出しができなくなってしまいます。

そのほか株式や債券といった金融商品も同様です。凍結されている口座は10年経つと、債権は消滅してしまいます。

② 不動産を売却しようとしても売却が難しくなる、権利関係が複雑になる

不動産については名義書き換えの期限はありませんし消滅もありませんが、いざ不動産を売却しようとすると、相続人全員の共有財産となっているため、相続人全員の合意が必要になってきます。

これが次の相続、また次の相続ともなれば権利関係が複雑怪奇化し、トラブルの種となってしまいます。

被相続人が残してくれた遺産を分割せず放置してしまうと、手続きができなくなったり、将来トラブルを引き起こす原因にもなってしまいますので気をつけましょう。

遺産分割で揉めやすいポイント、トラブル解決法

13. 遺産分割の調停事件は増加している!

弁護士関与した遺産分割調停事件の推移を見ていきましょう。

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遺産分割で揉めている調停事件は年々増え続けており、ここ4年間を見れば2千件ほども増えております。

このデータに反映されない顕在化していない遺産分割のトラブルについても予想以上に増えていることが予測されます。

普段から仲の良い親族同士だから、遺産分割協議もすぐに済むだろうと考えていたら、想像以上にこじれてしまった…ということはよくあることです。また、遺産分割トラブルが発生するのは遺産が少ないケースが8割となっています。

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なぜ遺産が少ないケースで遺産分割が揉めるのでしょうか?

一般の人が誤解しやすいのが「もめるのはお金持ちだけではないか?」ということです。

むしろお金持ちであれば誰かが自宅を相続しても他の兄弟は代わりにその他の財産を相続すればよいため、解決方法の選択肢は多いといえるのです。

しかし自宅不動産しか相続の対象になるものがなければ、自宅を相続する者が他の兄弟に代償金を支払うことができないのであれば自宅を売る以外に方法がなくなります。

いまどき「長男だから全部もらって当然だろう」という考え方は通用しないわけです。

ここからは遺産分割で揉めやすいポイントを紹介しながら、遺産分割をスムーズに行う方法について解説していきます。

14. 平等に遺産分割すれば争いなど起きないのでは?

14-1. 遺産分割協議は「法」より「理解」

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14-2. 法で割り切れないからこそ話し合いが大切

「遺産相続争いなんて、お金持ちだけの話でしょう?」なんて思っている方、多いのではないでしょうか。

平成27年の法改正によって、実は一般家庭にも「相続税」は身近なものになっています。

現代は「長子が家を継ぐ」という風習も薄れ、価値観も多様化しました。核家族化、配偶者の有無、介護等々、一人ひとりを取り巻く環境が異なるため、考え方も人それぞれ。

きっちり「法定相続分どおりに分けよう」という人もいれば、「すでに持ち家があるから、土地を相続するより現金がいい」という人もいるでしょう。

もちろん、遺言書があればそれに従うのが一番ですが、実際に遺言書が残されているのは全体の1割程度と言われています。

血族といえども、別々の生活を営んでいて、事情は人それぞれです。法に厳格になるよりも、各々の状況を考え、譲り合いと思いやりを持って協議に臨みましょう。

14-3. 遺産分割のポイント

◼︎生前贈与・援助

生前に行われた贈与や金銭的な援助、また数値にできない教育や世話といった「愛情」に関する対応の差は、感情的になりやすいため、もめる原因に

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◼︎介護・同居家族の配慮

高齢化社会で大きな問題となっている「介護」。同居はもちろん、介護のために実家に通うなど、こうした負担は経験しないとわかりにくいものです

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◼︎遺言書の内容

基本的には遺言書どおりにすればいい……と思いきや、その内容が突飛であったり、そもそも有効な内容でなかったりと、意外と問題が隠れています

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◼︎建物・土地の有無

「建物」や「土地」というのは意外と厄介で、お金と違って単純に割ることができません。ある程度の規模を相続するとなると、代償金が必要になることも

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◼︎家業の有無

ひとことで「家業」と言っても、事業形態はお家それぞれ。特に自営業の場合、「親から継ぐ」という志ももちろん、金銭的にも「大きな相続」になります

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◼︎専門家からのアドバイス

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弁護士:川﨑 公司
遺産分割協議は「人」と「人」が行うもの

人はそれぞれ価値観や考え方が違うことがあり、それは血を分けた家族であっても同様です。遺産分割協議は人と人が行うもの。「法律に従ってきっちり財産を分けよう」と頑なになるより、「完璧な平等はありえない」と相続人全員が知ったうえで、相続人それぞれの実情に合わせて柔軟に話し合って決めることが大切です。そのうえで、相続人だけで協議を進めようとしている一方でも、「プロに一任する」ことを視野に入れておくのが良いでしょう。第三者の専門家を挟むことによって、互いの意見を取り交わしやすくなるほか、後の紛争防止の意味合いでもその効果は大きいものです。時間にも余裕ができますし、不備がなくスムーズな協議を行えるでしょう。

14-4. 平等に遺産分割すれば争いなど起きないのでは・まとめ

・完璧な「平等」はありえない
・協議が長引くときは専門家へ!

15. 生前の贈与・援助は相続にどう関わる?

15-1. 生前に受けていた援助が平等とは限らない

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15-2. 過去の不満が爆発することも!

昨今は一人っ子の家庭が増えていますが、今相続に関わる世代は兄弟がいる人も多いでしょう。

長子相続の意識が薄れ、価値観が多様化、そこに法改正……今の世代は特に「争族」が起こりやすいと言っても過言ではありません。

兄弟間で起こりやすい相続問題として「生前に受けた贈与・援助・対応の差」があります。特に数値化できる「お金」に関しては、誰がいくらもらったのかを明確にしておくのも大事です。

また、生前贈与は相続財産に含まれます。贈与を受けていた、また子ども時代に優遇された自覚があるなら、率先して他の兄弟に譲るようにするのもよいでしょう。

相続をきっかけに「お前は末っ子だからと甘やかされていた」「ほかの兄弟はみんな私立に行ったのに、私だけが公立の学校だった」などなど、当時言えなかった不平不満が爆発し、「兄弟げんか」に発展することも稀ではないのです。

15-3. 生前贈与と遺産相続

※法定相続分どおりに相続した場合

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「教育」「愛情」などは主観になるので推し量るのが難しいですが、せめて明確に出る金額だけは相続の際に加味すると良いでしょう。

また、生前に資金援助などを受けていた場合は隠さないのが無難。

万が一裁判になって発覚すると、不利になることがあります。

◼︎専門家からのアドバイス

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弁護士:川﨑 公司
兄弟でも「お金」が絡むと人が変わる?

遺産分割協議は多くの場合、各相続人の意見が一致せず決裂します。もともと仲の良かった兄弟であっても、月日の経過とともに生活上の背景からお金が必要になり、お互いにより多くもらいたいという主張をすることもあります。また、子どもの頃からくすぶっていた不満が相続を機に噴出することも珍しくありません。「長男だから全部もらって当然」という考え方は現代では通用しません。さらに「遺産などいらない」と言っていた兄弟の言葉を信じていたら、いざ相続が始まるとまったく別のことを言い出すこともあります。「実は親父はこの土地を俺にくれると言っていたんだ」などと言われても「死人に口なし」ですから、こうなると泥沼化は避けられません。

15-4. 生前の贈与・援助は相続にどう関わるの・まとめ

・生前に受けた援助の差は遺恨の原因に
・生前贈与を受けていた場合は自ら申告

16. 同居していた家族は尊重される?

16-1. 介護した人は遺産を多くもらえる?

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16-2. 法で保証されない「貢献」は相続人同士の情でカバー

政府の方針で、家庭での介護が推奨されている今日。

高齢社会において「介護」は、様々な面で大きな問題になっています。

施設に入れればまだマシなほうで、実家で介護を行うとなった場合、どうしても同居家族に負担がかかります。

同居家族がいない場合は、介護のために実家に通う、また転居せざるを得ない人も出てくるでしょう。

こうした「親への貢献度」も「親からの愛情」同様、数値に表しにくく、本人以外には推し量るのが難しい事柄です。

そして法的には「介護をしたか否か」は相続にはなんら影響を与えません。

さらに言えば、お嫁さんなど直属の血縁でない人が介護を行っていた場合、相続人ではないので相続することすらできないのです。

法で貢献が保証されないのなら、情で労うのが円満相続の道。介護を担った相続人へ多く相続できるよう、話し合いをし、遺言書を作成してもらうとよいでしょう。

16-3. 同居家族の介護・家事手伝いをどう考えるか

◼︎相続人が同居していた場合

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貢献度を考えて割合を変えるのもあり

介護・同居の負担は、外から量るのが難しいもの。普段から様子を尋ねるなどしておくと、お互いに状況がわかりやすく、話し合いもしやすいでしょう。

◼︎相続人でない人が介護をしていたら?

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法的には遺産を相続することはできない

法律上、遺産を相続できるのは血族のみとなります。義父母の介護をいくら熱心にやろうと、「お嫁さん」が遺産を相続することはできないのです。

◼︎遺言に記されていればOK!

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法定相続分よりも多く相続させたいなら、その旨を遺言書に明記しておけばOK。遺贈(無償で遺産を譲ること)として相続人でない人に残すことも可能です。

16-4. 寄与分の主張

寄与分とは、簡単に言うと「亡くなった人の生前に特別な貢献をした人には、その分だけ多く遺産相続が認められる」というルールのことです。

ただし、実際には寄与分を認めてもらうためには「特別な寄与」があったものと家庭裁判所に認定してもらうことが必要です。

具体的には単純に介護をしていたというだけでは足りないことがほとんどです(裁判所は、子供が親の介護をするのは当然のことという判断をする傾向があります)

亡くなった人の財産を運用してその価値を増やすのに貢献したといったように、目に見える形で経済的な利益をもたらしたことが寄与分を認めてもらうための条件となることが多いです。

16-5. 相続人以外の人に寄与分は認められる?

例えば長男の嫁が義理の親の介護をするといった場合のように、血縁関係はなく、法律上は相続人となる権利のない人が被相続人の介護を担当するというケースも少なくないでしょう。

このような場合、何らかの形で介護を担当した人に財産を取得させることができないか?が問題となります。

亡くなった方が遺言で「介護を担当してくれた人に一定額の財産を渡す」という意思表示をしてくれていればもっとも問題は少なく済みます。

しかし、このような遺言がない場合には、相続人となる権利のない人は寄与分を認めてもらうことは難しいというのが実際のところです。

16-6. 「長男の嫁の寄与分」は長男が受け取ることも

ただし、上記の例のように長男の嫁が介護を担当していたというような場合であれば、長男の嫁には寄与分は認められなくとも、その夫である長男に対して寄与分を認めるという形が認められる可能性はあります。

しかし、例えば介護施設の職員のように、亡くなった人とまったく関係がない人の場合はやはり寄与分を認めてもらうことは難しいですから、遺言の形で被相続人自身に生前の意思表示をしておいてもらうのが先決ということになるでしょう。

16-7. 特別受益者についてのルール

上では家族などがなくなった人に対して貢献をしたケース(寄与分)について解説させていただきました。

一方で、亡くなった人の側から、一部の相続人に対して生前特別扱いのような形で金銭その他が渡されていたような場合にはどうなるでしょうか。

このようなかたちで生前贈与を受けた人を「特別受益者」と呼びます。

相続人となる人の中に特別受益者がいる場合、その人が他の相続人と同じように遺産を相続できるとした場合には、相続人間で不公平感が生じる可能性があります。

◼︎専門家からのアドバイス

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弁護士:川﨑 公司
「介護の貢献度」をどう考えるか

兄弟間の争族でよくあるパターンとして、親の介護を一手に引き受けた兄弟が取り分を多く主張するも、ほかの兄弟がそれを認めないというものがあります。「兄弟のなかで誰かだけが同居した、または介護をした」というケースでは、「介護の貢献分」という金額で折り合いがつかないのも珍しいことではありません。このような事態になったら、長期化する前に弁護士や裁判所の手を借りることが早期解決への道です。介護を受けている親の側も「うちは子どもたちの仲が良いから大丈夫」などと思わずに、生前に専門家に相談し遺言を残しておくことが大切です。

16-8. 同居していた家族は尊重される・まとめ

・「労働」は法的には相続分に加味されない
・苦労を労う思いやりは忘れずに!

17. 遺言書は絶対?

17-1. 遺言書を開けたらとんでもない記載が!

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17-2. 不当な遺言書でも最低限の権利の主張を

遺産分割協議でもめないために、被相続人の意思である「遺言書」を残すのはとても有効な手段といえます。

基本的に相続において、亡くなった被相続人の意志は何よりも尊重されるものであり、優先すべきという考えがあるためです。

専門家の下でつくる「公正証書遺言」であればほぼ問題はないでしょうが、被相続人が個人で作成する「自筆証書遺言」では、ときに驚きの記述がなされていることも。

法定相続分から逸脱した内容に「こんなの不当だ!」と思っても、有効な遺言書を覆すことは難しいのが現状。ただし、最低限の権利を主張することは可能です。

遺言書自体は普通でも、実際に残っている遺産とかけ離れているときもあります。

考えたくはありませんが、同居家族などによって使い込みや財産隠しが行われている場合もありますので、そのときは「お金の動き」を調べる必要があります。

17-3. 遺言書の内容に不当を感じたら

前提として「有効な遺言書」は覆せない。ただし……

◼︎遺産分割の割合が極端に多い・少ない

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いくら有効な遺言書であれ、遺産分割の内容が法定相続分よりも少ない場合、法定相続分の1/2までは「遺留分」として他の相続人に請求することができます。

◼︎書いてある内容より遺産が少ない

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遺言書が書かれた日から目減りした分は考慮されず、相続時点のもので計算します。ただし、不自然なほど減っている場合、他相続人による財産隠しや使い込みの可能性があります。

◼︎生前に聞いていた内容と違う

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口約束ではなんの根拠もないため、遺言書が有効となります。書面で残しておけば、遺言書の日付よりあとの場合、新しい書面が有効となります。

◼︎書いてない遺産が出てきた!

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遺言書にない通帳や金券が出てきた……ということも時にあり得ます。書かれている分は遺言書通りに分割し、新たに見つかった分はまた別に遺産分割協議を行います。
> まず遺言書が有効か否かを確認しよう

◼︎専門家からのアドバイス

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弁護士:川﨑 公司
確実な遺言書が円満相続のカギに

遺言書を残す方法として多く使われているのが「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2つです。ただ、自筆証書遺言は保管場所が自宅などになるため、隠匿や改ざんなどがなされるおそれがあります。確実に保存するには公証役場で作成する「公正証書遺言」がおすすめです。遺言書を残すことは、確実な被相続人の意思の実現や紛争の防止を中心にメリットがたくさんあります。もし後で気が変わってもつくり直しができますので、最初の遺言書作成は早いに越したことはありません。とはいえ、突飛な内容は逆に相続人同士の紛争の種となりますので、税理士、司法書士、弁護士といった専門家のアドバイスの下で、法的にも内容的にも妥当なものをつくることが大切です。

17-4. 遺言書は絶対・まとめ

・遺留分(法定相続分の1/2)の請求は可能
・書面と実情の不自然な差異は調査が必要

18. 建物や土地はどうやって分ける?

18-1. 家を分けるといったって……

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18-2. 分割できない相続は「代償金」を活用する

相続できる遺産が持ち家しかない場合、まさか「家」を分解するわけにはいきません。

遺産が分けることのできない「物」のときはどうすればよいのでしょうか。

同居親族がいる、または賃貸で暮らしていた人が戻ってきて居住する場合、ケースによっては「小規模住宅地等の特例」が適用されます。

しかしそうすると、居住する人が遺産である住宅をすべて相続することになります。

家に限らず、遺産の多くを相続した人は他の相続人に「代償金」を支払うことで、不公平を解消することができます。

多くを相続した相続人が、その分を相続とは別にお金で支払うということです。

住居の相続については、二次相続のことまで考えておくのがよいでしょう。

また各々の事情があって、誰も不動産を相続できないときは、住居を売却して現金化し、分割するのもまたひとつの手となります。

18-3. ※不動産を共有とすることの問題点

不動産の分割には共有という方法がありますが、1個の不動産を複数の相続人で共有とした場合には、不動産の管理や処分をめぐる法律関係が複雑になってしまうというデメリットがあります。

具体的には、不動産を共有とした場合、その処分や収益化にあたっては共有持ち分の全員の同意や、過半数の持ち分を持つ人の同意という形で法律行為をすることになります。

例えば、被相続人が住宅を建てて居住していた土地を長男と次男で共有としたけれど、長男は賃貸アパートに建て替えて収益を得たいけれど次男は親の家にそのまま居住したい…といったような場合、将来的に兄弟間でトラブルが生じる可能性があります。

18-4. 相続できる遺産が実家住居のみの場合

◼︎住居に住み続ける人がいる場合

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◼︎専門家からのアドバイス

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事情があって偏りが出るときは準備を怠らない

何か特別な理由があって、誰かひとりにだけ相続させるという場合、紛争の要因をなくすために生前から「遺言書による遺産分割方法の指定」をしておくとよいでしょう。また、誰かひとりにだけ不動産を相続させるといった事情があれば、他の相続人に対して不公平にならないよう、死亡保険金をかけ、死亡した時にすぐ代償金として使える現金を準備しておくというのもひとつの方法です。最低限、遺留分の代償金が支払えるだけの額を残せると安心です。親の側が全員に対して、はっきりとした意思表示をしておくことは紛争の予防策となります。もちろん、遺言書だけでなく、口頭で説明しておくのも大切です。

18-5. 建物や土地はどうやってわける・まとめ

・相当する現金を支払うことで清算する
・二次相続を考慮した分配もひとつの手

19. 家業を継承するには?

19-1. 「家業」によって対処はまるで変ってくる

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19-2. 「家業」も家と同じく分割できない遺産

被相続人の行っていた「家業」を相続するというのは、家の歴史を継ぐことでもあります。

責任はもちろんですが、金額の面でもとても大きな相続となります。

法人の役員といった職は、あくまで本人と会社との契約のため継ぐことはできません。

ただ、株主やオーナーなどの「経営者」としての役割りや、自営業は財産として継ぐことができます。

しかしどちらにも共通するのですが、これらは「ある程度まとめて相続しないと意味がない」ものでもあります。

株なら経営権を保てるだけの額、自営業なら「店」に関わるすべての財産。つまり、相続人がひとりであるとか、他にも遺産があれば問題ありませんが、そうでなかった場合、遺産分割が大変難しくなってくるのです。

「家業を継がせたい」と思うのであれば、生前から贈与や遺言書の作成、名義変更などの準備を進めておくとよいでしょう。

19-3. 「家業」を引き継ぐには

◼︎法人

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◼︎個人事業

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つまり・・・他の相続人に代償金を支払う可能性が高い生前贈与や遺言書などで対策が必要

◼︎専門家からのアドバイス

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「代償金」は裁判のタネになりやすい

ひとりの相続人が大きな遺産を受け取る場合、「代償金」が発生することがままあります。しかし、親族間の債権・債務関係は甘えが生まれやすく、紛争のきっかけになることも多いのです。代償金は分割払いにすることも可能ですが、そのために滞納する者も多く、そのまま不払いになることもあります。差し押さえや競売を行うこともできますが、これでは草葉の陰の被相続人も悲しむことでしょう。推定被相続人が生前に取れる対策としては、生前に代償金を支払うであろう相続人を、生命保険の受取人にしておくのがおすすめです。生命保険は相続財産にはならないので、全額受取人の財産となり、代償金の支払いに充てることができるのです。

19-4. 家業を継承するには・まとめ

・ひとまとめに相続しないと「家業」を保てない
・生前贈与か遺言書を用意してもらうのが◎

20. 相続でもめるとどうなるの?

20-1. 相続人同士で意見が合わない場合はどうする?

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20-2. 終わらない協議を専門家にゆだねるのも手

遺産の分割内容は、まず相続人同士による「遺産分割協議」で話し合われます。

これで全員が納得できれば一番なのですが、遺産の内容や各々の家庭環境、その他事情によって成立しないことも多々あります。

当事者同士で結論を出すのが難しい場合、また成立した内容に納得がいかないときは、家庭裁判所へ申し立てることによって専門家が仲立ちをしてくれます。

相続人の申し立てに応じて「遺産分割調停委員会」が作られます。

調停委員は相続人全員の意見や経済状況などを聞き取り、分割内容を提案します。

ただし、あくまで「提案」のため、強制力はありません。不服があれば次は「審判」へと移ります。審判では、裁判官によって最終的な判断が下されます。

応じない相続人には「履行勧告」が出されることも。

「裁判所」というと構えてしまいがちですが、第三者の目を通して相続を見つめ直す手段として活用されています。

20-3. 遺産分割調停・審判の流れ

1.家庭裁判所に申し立て

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2.調停委員会の聞き取り

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3.調停

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◼︎専門家からのアドバイス

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調停は審判に入る前の準備期間

遺産分割協議は当事者だけでは感情的になりがち。こじれそうになったら、冷静な第三者である家庭裁判所に委ねてしまうほうがよい場合もありあます。そして調停を少しでも有利に進めるためにも、あらかじめ法律家に主張方法などを相談しておくのもよいでしょう。さて、通常遺産分割は協議、調停、審判と段階的な制度が存在しますが、最初から審判を申し立てることも制度上は可能です。ただ、実務では「調停で解決できればそのほうが望ましい」と考えられています。そのため、こじれた内容でいきなり裁判を申し立てたとしても、まずは、職権で調停に付されることになるのが通常です。

20-4. 遺産分割でもめるとどうなる・まとめ

・家庭裁判所で専門家の判断を仰ぐ
・調停は「提案」、審判は「最終判定」

21. 遺産分割調停・審判になったらどうなる?

21-1. 遺産分割調停とは

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21-2. 調停が始まればひと安心?長引くとデメリットも

遺産分割協議がにっちもさっちもいかない…ヒートアップした議論を落ち着かせるためにも、専門機関による「調停・審判」はとても有効な手段です。

冷静に状況を判断してくれますし、専門家が出した提案ならと、意地になっていた人も聞き入れやすくなります。

ただし、調停・審判にはいくつか覚悟しておかねばならないことがあります。

まず調停期間中は遺産の使用が制限されるため、これらを使うことはできません。

また審議は短くても2~3カ月、基本的に平日に行われます。

勤めている人はその都度休みを取らねばならず、度重なる審議に精神的な疲労も大きいでしょう。

長引けば相続税の申告期間である10カ月以内に終わらないこともあります。

調停を乗り切るために、弁護士などに依頼して代理人となってもらい、相続に関する調査や、審議での主張方法の助言を受けるなどの助力を得るのもよいでしょう。

21-3. 遺産分割調停のメリット・デメリット

○ 調停期間中の制限

・預金・土地など、遺産の使用が禁止・制限される
・審議は基本的に平日に行われる

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○ 調停にかかる期間

・早くて2~3カ月、長いと1年以上かかる
→相続税申告期限(10ヶ月)に間に合わないことも!

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○ 審判

・拘束力のある審判書が発行される
・取り決めに従わないと「履行勧告」が出される

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ただし …… 結局法定相続分で審判されることが多いため、
労力に見合わないことがほとんど

◼︎専門家からのアドバイス

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意外と重要な「担当調停員」の良し悪し

調停では、2名の調停員が間に入って話し合いを整理してくれます。調停とは「和解の場」であり、調停員は中立の立場から話し合いの手助けを行うだけで、最終的に「どこで折り合いをつけるか」は当事者に委ねられています。あくまで「話し合い」なので、全てを法で解決するわけではありません。調停員が人間関係のバランス感覚に優れた人、社会常識がある人、魅力的な人に当たると、話し合いがスムーズにまとまることは多いです。弁護士としては、「どんな調停員にあたるか」ということは調停における大きな関心事の一つです。

21-4. 遺産分割調停・審判になったらどうするの・まとめ

・遺産使用や拘束時間などの制限が発生
・円滑に進めるため、専門家への相談も◎

22. まとめ

以上、遺産分割の大まかな流れと、遺産分割協議をスムーズに進めるために知っておくと役立つポイントについて解説させていただきました。

普段から仲の良い親族同士だから、遺産分割協議もすぐに済むだろうと考えていたら、想像以上にこじれてしまった…ということはよくあることです。

亡くなった人との感情的な関わりが強かった人ほど、遺産分割についてもこだわりを捨てるのが難しいものであることは理解しておきましょう。

親族同士だけではうまくいかなった話し合いであっても、他人である専門家に間に入ってもらうことがスムーズにまとまるという側面があります。

遺産分割でもめることが予想される場合には、弁護士や司法書士といった法律の専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。

専門家の事務所では初回の相談料は無料で受け付けてもらえることが多いですから、相続人の人数やおおまかな遺産の内容をまとめた上で相談してみると良いでしょう。

参考 >>
遺産相続で揉めないために。遺産相続争い、トラブルについて

(提供:相続サポートセンター