2019年の国内アフェレシス(7品目)市場規模は前年比0.3%減の174億円
~国内市場は成熟しているものの、持続緩徐式血液濾過器および腹水濾過器などの患者数や適応例が増加の見込~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のアフェレシス市場を調査し、市場規模推移、品目別の動向(適応疾患、患者数等)、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
国内のアフェレシス(7品目)市場規模推移・予測
1.市場概況
アフェレシス(Apheresis)とは、血液浄化療法の1つで、臓器や免疫機能の不全などにより引き起こされる急性腎障害(AKI)に対し、体外循環により血液中の病因関連物質や細胞を除去し、病態の改善を図る治療法である。本調査では、アフェレシス療法に用いられる血液浄化器のうち、血漿分離器、血漿成分分離器、選択的血漿成分吸着器、持続緩徐式血液濾過器、腹水濾過器、吸着式血液浄化用浄化器、血球細胞除去用浄化器、および血液を循環・分離・返漿させるポンプの役目を持つ血液浄化装置の調査を実施した。
2019年の国内アフェレシス市場規模(血液浄化装置を除く血液浄化器7品目合計、メーカー出荷金額ベース)は、前年比99.7%の173億8,000万円であった。品目別構成比率をみると血球細胞除去用浄化器が最も高く、また全般的に7品目とも市場は横ばい傾向で推移しているが、持続緩徐式血液濾過器や腹水濾過器などは伸長している。
2.注目トピック
患者数の増加傾向により、持続緩徐式血液濾過器市場は拡大の見込
持続的腎機能代替療法は体外血液浄化療法の一種であり、主に急速に腎臓の機能が低下した急性腎不全等の重症の患者に対して適応される治療法である。体外循環により血液を持続緩徐式血液濾過器に通し、急性腎不全の患者の腎臓に代わり病態を改善するものであり、適応疾患として、腎不全や重症急性膵炎、劇症肝炎、術後肝不全、急性肝不全などが挙げられる。
持続緩徐式血液濾過器に使用されている膜素材は、PAN(ポリアクリロニトリル)やPMMA(ポリメチルメタクリレート)、PS(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)、CTA(セルローストリアセテート)である。膜素材により特徴があり、参入メーカーにより取扱いしている膜素材が異なる。持続緩徐式血液濾過器の市場は、対象疾患の患者数が増加傾向にあり、今後も微増基調で推移していく見込みである。
3.将来展望
2020年の国内アフェレシス市場規模(血液浄化装置を除く血液浄化器7品目合計、メーカー出荷金額ベース)は、前年比98.4%の171 億1,000 万円になると予測する。2020年度には診療報酬改定が予定されており、一部の品目において償還価格の引き下げが見込まれているものの、アフェレシスは主に治療法が確立していない疾患を対象としており、需要の変動が少ないことからも市場としては横ばいの見通しである。
2021年以降も各品目としては横ばい推移を見込んではいるものの、品目別構成比率の高い血球細胞除去用浄化器で主な治療用途である潰瘍性大腸炎において薬物治療が増える見込みとなっており、2022年の国内アフェレシス市場規模は2019年比4.1%減の166億7,000万円になると予測する。