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古くから童話「分福茶釜」のゆかりの地として知られる群馬県館林市で不動産業を営む有限会社つつじ不動産は、創業から20年余り、館林の地にしっかりと基盤を築いて売買や賃貸、リフォームといった業務を展開している。多くの物件を扱い顧客も大勢いることから、情報の漏洩(ろうえい)を防ぐためにネットワークの出入り口を見張るUTM(統合型脅威管理)を導入して、セキュリティーの強化を進めている。(TOP画像:ひとり1台のパソコンを使える環境を整えたつつじ不動産の本社事務所)
明治以降に製粉と織物の町として大いに栄えた館林市は、2003年に日清製粉の工場が閉鎖となって企業城下町としてのにぎわいが薄れても、埼玉や東京へと出やすい立地からベッドタウンとして大勢の人が暮らしている。「コロナの時も、テレワークになって仕事ができて家族もいっしょに暮らせる広い家が欲しいと、住み替えを希望するお客さまで不動産取引が増えました」と、つつじ不動産の針谷美之代表取締役は振り返る。
2003年に独立して創業し、一生懸命に会社をアピールして取引先を増やしていった

コロナが収束してテレワークを解除する動きも出ているが、経済活動が活発になってくれば様々な企業の工場が稼働している群馬県への人の流入も増えていく。「人が動けば不動産の需要も伸びます。そこでしっかりとお客さまをつかんでいければと考えています」(針谷社長)と、これからの活況に期待する。
地場の不動産業というと、長い時間をかけて築いた地主や家主との関係をベースに、賃貸物件を管理したり土地や家屋を売買して収益をあげているイメージがある。2003年創業とまだ新しい同社の場合は、まっさらの状態でスタートした。「群馬銀行を退職して子育てをした後で、仕事に戻ろうとして就職したのが不動産屋でした」(針谷社長)。その後別の不動産業で何年か働いた後、転職しようとしたものの「40歳を超えていて、なかなか就職口が見つかりませんでした」(針谷社長)。
それなら自分で会社を立ち上げれば良いと、経験のある不動産業に活路を求めて同社を創業した。「しばらくは物件を預けていただける家主さんもいませんでしたが、タオルを作って配布し、訪問もして会社のことを伝えたことで、解体やリフォームを任せていただけるお客さまが出てきました」(針谷社長)。そうした取引を足がかりにして賃貸から売買、自社物件の獲得まで業容を広げていった。
UTMを導入してセキュリティーを固め、NASも入れて情報の共有化を実現
「こうなってくると、やはり心配なのがセキュリティーです」(針谷社長)。万が一、ウイルスへの感染によって顧客に関する情報が漏れてしまったら、会社としての信頼が大きく損なわれるからだ。データが破壊されてしまうような事態が起これば業務にも支障が出る。こうした事態を防ぐため、「以前からウイルス対策ソフトを導入して危険なメールは弾くようにしていましたが、それでも巧妙にくぐり抜けてしまうメールもありました」(針谷社長)。気付かないでスパムメールを開いてしまうようなこともあって、より強固なガード力を持ったセキュリティーを構築したいと考えていた。
そこで2025年3月にUTM(統合型脅威管理)のシステムを導入し、ネットワーク上でデータが出入りする場所のガードを固めてセキュリティーを向上させた。「どのような情報を遮断するかをチェックできるようになっていて、危険なフィッシングサイトに誘導するようなメールに警告が出るようにしています。あまりチェックを入れすぎると、業務で閲覧しなくてはならないサイトも見られなくなってしまうので、今は探りながら設定を進めています」(針谷社長)
リモートで作業できる環境を作り、出社しなくても優秀な人材を確保
自社で保有している情報をどれだけしっかりガードしても、不動産関係のポータルサイトに出している情報が、先方の不手際から漏洩してしまう可能性はあるという。「少し前に、情報を出しているある会社が漏洩を起こしたので、取引をやめました」(針谷社長)。すべての情報発信を自社から行うことが難しい状況で、高い情報発信力を持つポータルサイトの利用は避けられない。自社のガードをしっかりと固めつつ、取引先も同じようなセキュリティー力の高いところを選んでいくことで、顧客を守り自社の信頼を守っていく。
NAS(ネットワークHDD)を使った情報の共有化も行っている。以前から、ネットワーク上のボックスに情報を集約しており、バージョンが代わるたびに更新して、快適に業務を行える体制を整えてきた。「物件情報や契約情報をまとめて入れています。リモート環境で仕事をしている人が作成した契約書を、事務所で仕事をしている人が更新したり、保険の契約書を共有したりといったことができます」(針谷社長)
従業員の中に、遠隔地からリモートで作業している人がいることもあり、NASを使った情報の共有化は効果を発揮している。「事務所まで通える人がパソコン操作のスキルを持っているとは限りません。下手に扱って壊れてしまっても困ります。リモートで仕事をできる環境があれば、スキルがあっても遠くて通えない人に働いてもらえます」(針谷社長)。人手不足の時代の人材確保にも役立っているようだ。
自社ホームページを持ちながら不動産ポータルサイトを積極活用して作業効率を高める

不動産業向けに賃貸物件を管理するシステムがソフト会社から発売されており、同社でも以前に5年ほど利用していた時期があったが、今は使っていない。新しいスタッフが、すべて同じレベルのパソコン操作スキルを持っているわけではないため、十分に使いこなせていないと判断したからだ。そのため現在、物件に関する情報の作成は、不動産関係のポータルサイトが提供している機能を使って対応している。
「チームでの業務を支援するグループウェアも導入してみたが、1年間私ともう1人くらいしか入力しない状態が続いたため、利用をやめました」(針谷社長)。誰がどのような業務をこなしているか、どこに出かけているかといった情報の把握が必要な時もあるため、今後は使い勝手の良いグループで管理できるスケジュール管理システムを探し、導入していきたい考えだ。
ホームページについては、幾つかアドレスを持っていて、その中には過去に始めた事業で今は多忙もあって手が回らないため、「事業を継いでくれる人ができて時間を回せるようになれば、手を入れてもっと活用していきたいと考えています」(針谷社長)と語った。
地元プロバスケットボールチーム「群馬クレインサンダーズ」のオフィシャルパートナーになったり、ホテル誘致など地元盛り上げを支援

同社では地域を盛り上げたいという思いから、2024年に太田市に拠点を置くプロバスケットボールチーム「群馬クレインサンダーズ」のオフィシャルパートナーになった。「群馬クレインサンダーズ」のオーナーは不動産大手のオープンハウスで、専用アリーナのネーミングライツもオープンハウスの中核企業が取得している。
「ホテルの誘致も進めたいですね」(針谷社長)。館林市内に幾つかホテルは存在するが、結婚式や大人数での会合を開けるほどの規模を持つところは少ない。首都圏に近いにもかかわらず、近隣の太田市や足利市に比べてにぎわいに欠けている。その状況を変えるには、何か核となる施設が必要といった考えから、地元のにぎわいの復活に市を挙げて取り組んでいって欲しいと訴える。
地元への貢献とビジネスの推進を進める針谷社長は地元への熱い思いを語る。同社が館林振興の立役者になる日を期待したい。

企業概要
会社名 | 有限会社つつじ不動産 |
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住所 | 群馬県館林市本町4丁目1番2号 |
HP | https://tsutsuji13.com/ |
電話 | 0276-71-1235 |
設立 | 2003年6月 |
従業員数 | 5人 |
事業内容 | 不動産売買・賃貸 |