
使い慣れたLINEアプリを開けば、誰でも簡単にブロックチェーンアプリを操作できる。そんな画期的なプラットフォームが登場し、市場規模を急速に拡大させています。
そのサービスの名は、「Dapp Portal(ダップポータル)」。2025年1月に、LINEヤフーのグループ会社であるLINE NEXT Inc.からリリースされました。わずか3ヶ月で4,800万回の利用回数に達し、グローバルで700万人超のユーザーが利用しています。
ただ、このプラットフォームは単にDApp(分散型アプリ)を扱いやすくする役割だけに留まらないとのこと。Dapp Portalの活用は、あらゆる業種の法人にとって大きなビジネスチャンスになると事業責任者は語ります。果たして、Dapp Portalにより企業にどのような価値がもたらされるのでしょうか。
そこで今回はLINE NEXT Start株式会社と、事業パートナーである0x Consulting Groupからお話を伺いました。インタビューを通じて、Dapp Portalの事業活用や今後のビジョンに迫ります。
栗原 俊幸(くりはら としゆき) LINE NEXT Start株式会社 Web3Business 日本事業統括本部長 日本市場におけるDapp Portalの事業拡大を統括。前職ではゲームプロデューサーやVR事業部ディレクターとして活躍し、2018年にLINE株式会社(現:LINEヤフー株式会社)へ入社。学生の頃からプログラミングに触れており、IT業界で15年以上のキャリアを持つ。 |
中田 翔平(なかた しょうへい) 0x Consulting Group PTE.LTD. Chief Strategy Officer / Head of Token Economics Consultant トークンエコノミクス設計のスペシャリスト。2018年に国産ブロックチェーンゲームに関心を持ち、ブロックチェーン取引所の開発に参加。その後DeFiとGameFiのシミュレーターを作成し、投資によって約3億円の利益を出す。その知見をもとに「Akiverse」や「NOT A HOTEL」などの有名プロジェクトに企画、設計、レビュー、アドバイスを行う。 |
小林 憲人(こばやし けんと) 株式会社NFTMedia 代表取締役 2006年より会社経営。エンジェル投資を行いながら新規事業開発を行う株式会社トレジャーコンテンツを創業。2021年にNFT Mediaを新規事業として立ち上げる。「NFTビジネス活用事例100連発」著者。ジュンク堂池袋本店社会・ビジネス書週間ランキング1位獲得。 |
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Web3業界に至るまでの歩み

Web3Business 日本事業統括本部長
栗原 俊幸氏(写真中央)
小林:まずは栗原さんご自身について、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。
栗原:LINE NEXT Start株式会社の栗原です。
私は2018年にLINE社へ入社し、2020年頃からVVID(ビビッド)というデジタルトレーディングカードのサービスに携わりました。しかし半年ほど経過したタイミングで、VVIDはサービス終了となってしまいます。
そこで、LINEのグループ会社で暗号資産を扱うLVC株式会社(現:LINE Xenesis株式会社)へと異動になりました。当時はNFTブームが到来し始めた時期であり、VVIDもNFTと近しい特徴があったためです。これ以来、Web3の事業領域に携わるようになりました。

Chief Strategy Officer / Head of Token Economics Consultant
中田 翔平氏(写真右)
小林:続いて、0x Consulting Group PTE.LTD.の中田さん、自己紹介をお願いします。
中田:0x Consulting Group PTE.LTD.で、Chief Strategy OfficerとHead of Token Economics Consultantを務める中田です。
私は中学生の頃からゲームのプログラミングが好きで、大学卒業後はエンジニアの道を選びました。社会人になってからは電気自動車のナビを開発したり、自動改札機のサーバーを開発したりしましたね。関西では、当時私の設計したサーバーが今でも現役で動いています。
Web3に興味を抱いたきっかけは、2018年ごろに流行した「CryptoSpells」というNFTゲームです。これ以降ブロックチェーンの世界に熱中し、DeFiやGameFiが流行りだした2020年頃には、プロジェクトのトークノミクス研究に没頭しました。そして、投資シミュレーションシステムを自作してその指示通りに売買したところ、100万円の原資から3億円ほどにまでに資産額を伸ばせたのです。
小林:めちゃくちゃ伸ばしましたね(笑)。

中田:この時の実績が高く評価され、0x Consulting Groupではトークンエコノミクス設計のプロとして活動しています。
小林:ゲームに熱中した経験から、Web3の世界に飛び込んだんですね。
誰もがDappを楽しめる時代へ
小林:次に、LINE NEXT Startの事業概要を教えてください。
栗原:LINE NEXT StartはLINEヤフー傘下の企業であり、Web3やブロックチェーン領域の事業を展開しています。
LINEグループにおけるブロックチェーン事業の歴史は古く、2018年ごろまで遡ります。これまでにプライベートチェーンを立ち上げたり、トークンを発行したりと、Web3をマス層のユーザーへ広めるための活動を続けてきました。
そして、これらの事業によって得た知見をベースとして2025年1月22日にリリースしたのが、Dapp Portal及びMini Dappです。このDapp Portalを普及させるため、パートナーである0x Consulting Groupの支援を受けながらエコシステム拡大に取り組んでいます。
小林:Dapp Portalについて、サービスの概要を教えていただけますでしょうか。
栗原:Dapp Portalとは、マス層のユーザーに対して気軽にDAppを楽しんでもらうためのプラットフォームです。そもそも、DApp(Decentralized Application)とはどのようなものか、ほとんどの人が認識していないのではないでしょうか。
小林:そうですね。「DAppとは何だ?」となりますね!
栗原:DApp(Decentralized Application)とは、分散型のアプリケーションを指します。従来のブロックチェーンゲームもDAppの一種ですが、仕組みが複雑で一般のユーザーにとって気軽に遊べる代物ではありませんでした。
そこでDAppをより身近な存在にすべく開発されたのがDapp Portalです。 このプラットフォーム上で展開されるDappは、「Mini Dapp(ミニダップ)」と呼ばれます。
通信アプリのLINEには、ブラウザへのアクセスを可能にする「LIFF(LINE Front-end Framework)」という仕組みがあります。このLIFFを活用して構築したMini Dappは、LINE上で簡単に操作できます。
エコシステム全体からユーザーを送り込む

小林:事業者がDapp Portalを活用すれば、マス層向けのDAppを提供できるようになるのですね。これにより、事業者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
栗原:事業者にとってのメリットは、巨大なマーケットにアクセスできる点です。
Dapp Portalは全世界に向けて提供しているサービスであり、日本のみならず世界中からアクセスできます。ユーザー数も多く、グローバルで700万人超を誇ります。
プラットフォーム自体も急速に成長しており、2025年1月22日のリリースからわずか3ヶ月ほどで4800万回の利用回数に達しました。このようにエコシステムの経済規模が大きい点は、事業者にとって大きな魅力です。
小林:私もMini Dappの「Bombie(ボンビー)」に夢中になって、気づけばレベル200になるほど徹底的に遊びました。
栗原:相当やり込んでいますね(笑)。
中田:新たにDappをリリースした際に、Dapp Portalのエコシステム全体からユーザーの流入が見込める点もメリットです。
これには、Dapp Portalに備わっている「KAIAリワードミッション」が重要な役割を果たしています。このリワードミッションとは、提示された課題の達成によって暗号資産「KAIA(カイア)」が手に入る仕組みのことです。
Dapp Portalのトップ画面には、リワードミッションの一覧が掲載されています。

中田:ここで新たに登場したアプリの操作を促す動機づけがされているため、リリース直後のMini Dappであってもユーザー数を大きく伸ばせるのです。このように、Dapp Portalではエコシステム内でお互いのユーザーが回遊する設計になっています。
小林:配布される「KAIA」の原資は、どこからもたらされるのでしょうか。
栗原:Kaia WaveというKaiaブロックチェーンの運営組織から拠出されます。
エコシステム内でのアプリ開発を促進するため、審査を通過したMini Dappに対してプロモーション費用の一環として「KAIA」が支給されています。
中田:市場に放出された「KAIA」が価値を維持できるように、Dapp Portalでは需給の観点でも綿密に設計されています。
Dapp Portal上のさまざまなゲームでは、時間の短縮や装備の強化のための課金が可能です。この時に「KAIA」での支払いができるので、一定数のユーザーは「KAIA」を買い求める仕組みになっています。
小林:「KAIA」に需要が生まれた結果、市況価格が下支えされるということですね。
Mini Dappをきっかけとして生まれる顧客との接点

小林:ゲーム開発とは無関係の企業であっても、Dapp Portalへ参入する意義はあるのでしょうか。
中田:LINE公式アカウントのフォロワー数を大きく伸ばせるため、新規顧客を増やす上での意義は大きいです。
例えば食品メーカーの場合、Mini Dappとして調理に関するゲームアプリを提供できます。このアプリを多くの人が遊ぶと、結果として食品メーカーが運営するLINE公式アカウントのフォロワー数増加に繋がります。
Dapp Portal上に展開すべき理由は、圧倒的な集客力を誇っているからです。Dapp Portalにおいて初期にローンチされた32タイトルでは、平均ユーザー数が150万人に達しました。これだけの潜在顧客を自社のLINE公式アカウントへ呼び込む動線がMini Dappの投入によって生まれるため、大きな可能性を秘めているといえるでしょう。
小林:ブランドとの接点が増えるので、多大な広告効果が見込めますね。
次回予告
前編では、お二人のキャリアやDapp Portalの概要についてお伝えしました。後編では、活用事例や導入までの流れをより詳細に深堀りします。
具体的には、Dapp Portalの強みを活かす使い方、0x Consulting Groupのサポート体制、そしてWeb3業界全体の課題と展望について、お二人の豊富な経験と鋭い洞察から紐解いていきます。
また、変化の激しいブロックチェーン業界で両氏が大切にしている価値観や、これからWeb3に挑戦したい企業や個人へのアドバイスなど、実践的な知見も満載です。中田氏、栗原氏が描くDapp Portalの未来の姿をぜひお楽しみに。
関連リンク
・Dapp Portal公式サイト ・Dapp Portal公式X ・0x Consulting Group公式サイト ・0x Consulting Group公式X ・0x Consulting Group 中田 翔平氏X |