
2025年4月のNFT市場は、月間取引高が前月比でおよそ13%減少するなど、依然として低迷が続きました。
一方で、実物資産と連動するRWA系NFTが取引ランキングを席巻し、市場の中で新たな注目分野として浮上しています。
本レポートでは、2025年4月のデータを基にNFT市場の現状を整理し、今後の動向を展望します。
本レポートの全体概要
・2025年4月のNFT市場取引高は約3.7億ドル、前月比約-13%で4か月連続の減少 ・CourtyardやDMarketなど“実需型NFT”が市場全体を下支え ・イーサリアムのシェアが縮小し、ImmutableやFlowがプラス成長を記録 ・OpenSeaがOS2の影響で取引高・ユーザー数ともに首位へ復帰 ・上位NFTコレクションではRWA・ゲーム系が引き続き好調 ・国内では「Moriusa(もりうさ)」NFTが圧倒的首位、低価格PFPが活性化 ・メルカリNFTは累計取引1.3万件を突破、日本円決済でライト層を取り込み |
市場概要
2025年4月の取引高は約3億7,312万ドル(前月比-13.3%)となり、4か月連続の減少となりました。平均取引単価も77.54ドルと3月の80.83ドルからわずかに下落し、単価縮小が取引高減少に拍車を掛けています。

一方で、ユニークバイヤーは60万0,877人(+1.1%) と微増し、参加者そのものは横ばい〜やや増加傾向を示しました。対照的に ユニークセラーは34万0,148人(-14%) と大幅に減り、「買い手優勢・売り手不足」の構図が鮮明です。取引件数は481万1,781件(-9.6%)と減少幅が取引高より小さいことから、小口・低額の売買が相対的に増えたと考えられます。
4月は実物資産と連動するCourtyardやゲームアイテム特化のDMarketが取引ランキング上位に入り、「実需型NFT」のセグメントが市場全体の落ち込みを部分的に下支えしました。反面、PFP系ブルーチップのフロア価格は軒並み低調で、CryptoPunksやBAYC などの大型コレクションは高額取引が散発的に出るものの、流動性は縮小傾向が続いています。
チェーン別動向
2025年4月のチェーン別NFT取引高は、イーサリアムが約1.1億ドルで首位を維持したものの、前月比-42.89%と急減してシェアをさらに縮小しました。

ポリゴンはCourtyardが牽引したものの7,400万ドル(-44%)と失速し、ビットコインも取引件数は横ばいながら平均単価下落で-19.41%です。
一方、Immutable(+2%) と Flow(+13%) は『Guild of Guardians』やNBA Top Shotなどゲーム/スポーツIPが下支えし、主要チェーンで唯一プラス圏を維持しました。ゲーム特化のMythosもDMarketの影響で136万件超の取引件数を保ったものの、取引高は-約23%に留まります。
なおNFT Pulseの月間ユーザーデータでは、Baseが16.9万人で最多、Solana5.4万人、Polygon4.6万人と続き、手数料の低いチェーンに日常的なミントや小口取引が流入する傾向が見られます。


4月は、高額・希少性主導のイーサリアムに対し、低コストで実用重視のチェーン群がユーザーベースを広げる、という棲み分けが一段と鮮明になった月でした。
マーケットプレイス別動向
2025年4月のマーケットプレイス別動向では、OpenSeaが取引高5,200 万ドル(全体25.5%)・ユーザー数26.5 万人(66.7%)で両指標とも首位を奪取しました。
OpenSeaが今年2月にリリースした新バージョン「OS2」では、XPシステムが導入されトークン発行が噂されたことで、BaseやPolygon、Apechainなど低手数料チェーンのライトユーザー流入を後押ししました。

Magic Edenは取引高4,440万ドル(21.8%)ながらユーザー7.5 万人(19%)にとどまり、Ordinals やSolanaの取引でボリュームを確保する構図が続きます。Blurは取引高4,220万ドル(20.7%)を維持したもののユーザーは 9,400 人のみで、アクティブ層がOpenSeaに流れたことが予想できるでしょう。

総じて4月は、OS2のローンチを追い風に「ユーザー数・取引高ともにOpenSeaへ資金とトラフィックが集中」した月となりました。
Magic EdenやBlurは依然高額トレーダーを抱えるものの、全体ボリュームではニッチ領域に後退し、OpenSea一極化の傾向が強くなったと言えます。
主要NFTコレクションの動向
4月の取引高トップは前月と同様、 Courtyardで約6,500万ドル。取引件数は50万超で、カードを「焼却→現物交換」できる仕組みが継続的な売り買いを生みました。2位の DMarketはゲームスキン需要で約4,000万ドルを確保したものの、前月からわずかに減速。

対照的にCryptoPunksは取引145件・取引高1,900万ドルと件数は少ないものの、希少個体として知られるエイリアンパンクス(#3100)が4,000 ETHで動くなど高額取引が複数あったことでランキング3位へ滑り込み、ブルーチップの希少性が改めて示されました。
続くGuild of Guardiansやビットコイン系 ?? BRC-20 NFTs は1,600万~1,300万ドル規模で、ゲーム系・Ordinals系の底堅さを印象づけています。
6位以降ではリアル展開で話題のPudgy Penguinsが700万ドル前後で健闘。反面、BAYCは取引高が500万ドル台にとどまり、PFPブーム期ほどの勢いは見られません。

総じて、「リアル資産×Polygon」「ゲームアイテム×Mythos/Immutable」「希少ブルーチップ×高額取引」 の三軸が市場を牽引。
大量取引を背景にした実需型コレクションと、限定的ながら高単価のクラシックNFTが共存する構図がいっそう鮮明になった月でした。
国内のNFT市場動向
2025年4月の国内NFT市場では、リリース直後のPFP系コレクション「Moriusa(もりうさ)」 が3取引量823 ETHと圧倒的首位を獲得しました。

「Moriusa(もりうさ)」は、エンターテインメント企業STPRが手がけるNFTコレクションです。
発行数2,222体がすぐに完売した後、平均価格は0.38ETH・フロア0.52ETH まで上昇し、Murakami.Flowers OfficialやCNP系列を大きく引き離しています。
リリース前後には発行先となるOpenSeaが大々的に取り上げ、海外からの注目度も高いことが伺えます。
— OpenSea (@opensea) April 24, 2025
上位常連組では、Murakami.Flowersが2位を堅持したものの前月比で取引量が約10%の縮小。CNP/CNP REDは高価格帯の売買は限定的でしたが、合計54ETHと堅調に推移しています。一方、Snap to EarnのSnpitCameraNFTや、ストーリー性のあるジェネラティブ作品SOUENなど低単価コレクションが再び注目を集め、「0.05ETH 前後で手に入る国産NFT」がコミュニティの裾野を広げています。
メルカリNFTの現況
Web2層向けマーケットのメルカリNFTは、リリースから約3か月で総取引件数13,228件・累計160ETH(約 39万ドル)に達しました(Dune Analytics “@konityan” ダッシュボードより)。


出来高は2 月初旬のピークから大きく減少したものの、取引自体は行われており、「日本円決済+ウォレット不要」という設計がライトユーザーを継続的に呼び込んでいる様子がうかがえます。コレクション別ではMoriusaがメルカリ経由でも転売が行われ、オフチェーン層とオンチェーン層の橋渡し役になりました。
4月のNFTニュース5選
ここでは、2025年4月に話題になったNFT系ニュースの中から、特にインパクトのあったものを5つに厳選してご紹介します。
1. 東京ドームNFT企画第1弾にCNPが登場、コラボNFTを数量限定配布 2. NTTドコモグループ、新入社員に入社証明書NFTを発行 3. トランプファミリー、モノポリー風のWeb3ゲームを開発中か 4. NFTチケットのチケミー、日本2.5次元ミュージカル協会に加盟 5. ソニー銀行、「たすきNFT」をSony Bank CONNECT™で配信開始─千葉銀行との提携施策で地域鉄道をデジタル化 |
各ニュースの概要を見ていきましょう。
東京ドームNFT企画第1弾にCNPが登場、コラボNFTを数量限定配布

東京ドームが新たに展開するNFTプロジェクトの第1弾として、国内で人気のNFT「CNP」とのコラボが4月26日より始動。
来場者特典としてCNP限定NFTが数量限定で無料配布され、NFT保有者向けの追加特典やCNPキャラクターの着ぐるみが登場するなど、ファン層との接点創出に注力した施策として注目を集めました。
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東京ドームNFT企画第1弾にCNPが登場、コラボNFTを数量限定配布
NTTドコモグループ、新入社員に入社証明書NFTを発行

NTTドコモグループ23社は、2025年度の新入社員約1,500名に対し、SBT形式の「入社証明NFT」を発行。
クリプトリエが提供するNFTビジネス活用プラットフォーム「MintMonster」と連動し、メタバースやAR体験を通じた双方向参加型の施策として実施されました。
NFTを通じて社員の一体感や体験価値を高める試みです。
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NTTドコモグループ、新入社員に入社証明書NFTを発行
トランプファミリー、モノポリー風のWeb3ゲームを開発中か

米メディア「Fortune」の報道によれば、トランプ大統領とその関係者がWeb3ゲームを開発中とのこと。 ゲームは不動産売買をテーマにしたモノポリー風で、NFTやDeFi要素を取り入れる構想とされています。
公式発表はされていないものの、ミームコイン「TRUMP」などすでに展開中の“トランプ経済圏”との連携が期待され、Web3業界でも注目を集めました。
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トランプファミリー、モノポリー風のWeb3ゲームを開発中か
NFTチケットのチケミー、日本2.5次元ミュージカル協会に加盟

NFTチケットの発行・管理サービスを手がけるチケミーが、日本2.5次元ミュージカル協会に4月正式加盟。
舞台・ライブ業界との連携を強化し、NFTチケットの実用化をさらに加速する姿勢を見せています。
不正転売の防止、ファン向けのコレクション性、海外観客対応などに活用され、今後の導入事例にも注目が集まります。
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NFTチケットのチケミー、日本2.5次元ミュージカル協会に加盟─舞台業界の課題解決と国際展開を後押し
ソニー銀行、「たすきNFT」をSony Bank CONNECT™で配信開始─千葉銀行との提携施策で地域鉄道をデジタル化

4月25日、ソニー銀行はスマホアプリ「Sony Bank CONNECT™」で、千葉銀行と連携した「たすきNFT」の配信を開始しました。
対象は小湊鐵道・いすみ鉄道を走る房総横断鉄道で、3Dモデル化された車両のNFTを無料で楽しめる施策です。
地域の交通資源をNFTで可視化することで、観光促進や地元経済の活性化につなげる狙いがあります。
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ソニー銀行、「たすきNFT」をSony Bank CONNECT™で配信開始─千葉銀行との提携施策で地域鉄道をデジタル化
まとめ
2025年4月のNFT市場は、取引高・平均単価ともに下落傾向が続いた一方で、実需を伴うNFTプロジェクトの存在感がより明確になった月となりました。CourtyardやDMarketなど、実物資産やゲームアイテムと結びついたNFTが上位を占め、用途の明確さがユーザーの支持を集めていることがうかがえます。
チェーン別ではイーサリアムが取引高首位を維持するもシェアは縮小し、ImmutableやFlowなどが独自のユースケースで健闘。マーケットプレイスではOpenSeaがOS2のリリース効果を受けてトラフィックを集め、Magic EdenやBlurとの差を広げました。
国内では「Moriusa」NFTがリリースされ、海外コレクターからの注目度も高いことで話題に。メルカリNFTなどWeb2型プラットフォームもユーザー獲得を進めており、NFTの入り口が広がりつつある状況です。
4月の市場は、価格指標だけでは測れない“利用価値”を軸にしたNFTの進化と、従来の取引型NFTとの二層化が進んだ月でもありました。5月以降も、用途や体験と結びついたプロジェクトの成長が鍵となるでしょう。
過去のレポート記事はこちら
・【2024年12月】NFT市場動向|11月は回復の兆しを見せる!? ・【2025年1月】NFT市場動向|12月はブルーチップNFTが市場を牽引! ・【2025年2月】NFT市場動向|1月は市場が大きく縮小、売上高は24%マイナスに ・2025年2月NFT市場動向レポート|取引高は12月から60%超のダウンを記録 ・2025年3月NFT市場動向レポート|第一四半期で市場全体63%縮小 |
参照元
・https://dune.com/konityan/merukarinft ・https://dappradar.com/ ・https://www.cryptoslam.io/ ・https://www.nftpulse.org/ ・https://dune.com/denze/courtyard ・https://nftranking.jp/ |