矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

2019年度の国内eラーニング市場規模はユーザー数の着実な増加、提供サービスの多様化を受け市場拡大を継続

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)では、国内eラーニング市場について調査を実施し、BtoB、BtoC各市場の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

eラーニング市場規模推移

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1.市場概況

2019年度の国内eラーニング市場規模は、前年度比7.7%増の2,354億円を見込む。内訳は、法人向け(企業・団体内個人を含む)のBtoB市場規模が684億円(前年度比5.2%増)、個人向けのBtoC市場規模が1,670億円(同8.8%増)であり、両市場ともに拡大を継続させる見込みである。

BtoB市場は、景況感が良好な状況で推移したことによる企業の人材育成に対する投資の活性化や、働き方改革関連法の施行による企業の業務効率化を追求する動き、学習形態の一つとしてeラーニングが一般化する環境などもあって、当該領域におけるユーザー数は着実に増加したものとみる。ただ、競合状況の激化等からLMS(学習管理システム)、学習コンテンツでは価格の下落傾向も一部ではみられており、提供事業者側の課題も散見される。

一方、BtoC市場は、スマートフォン、タブレット端末やSNSを活用した学習スタイルの浸透、情報通信技術の向上による提供サービスの進化、AI(人工知能)を用いた学習サービスの登場などを受け、ユーザー数を着実に増加させるとともに個人の学習形態の一つとして、eラーニングを一般化させる環境を進行させている。また、学習コースの一部に動画による解説やオンラインによるコーチングを組み込むなど、学習理解を深めるためのツールとしてeラーニングを融合させる学習サービスは増加傾向にあり、サービスの多様化がますます進展する環境にある。ただ、個人を対象とするeラーニングは、インターネット上に氾濫する無償の学習サービスとの差別化をどう図るか、事業としての収益性をどこに求めるのか、といった課題も抱える。

2.注目トピック

アダプティブラーニングの領域をはじめ、AIを活用したサービス展開が活発化

ここ数年において、AI技術(機械学習、音声認識、自然言語処理等)を活用した学習サービスの展開が活発化している。現状では、学習者の学習理解度・習熟度をAIが分析し、学習者個々に最適な学習を提供するアダプティブラーニング領域のサービスや、語学習得、試験問題の予想、学習アドバイス・学習に対するモチベーション維持、などの領域でAIを活用した学習サービスの提供が進んでいる。

今後、AIを活用した学習サービスが浸透していくことによって、学習の効率化(学習時間の短縮)、個別最適化といったサービスの特長が認知されていくことや、講師・指導者の負担軽減といった観点から、学習塾・予備校などを中心にAIを活用した学習サービスのさらなる需要の高まりが予想される。また、英語学習では、効率性、手軽さといった点や、公教育における2020年度からの小学5・6年生の英語の教科化、文部科学省が推進するGIGAスクール構想※なども後押しとなり、AIの音声認識技術を活用した英語学習サービス需要の高まりが期待される。

※児童生徒一人一台の学習者用コンピューターの実現とそれを活用するための高速ネットワーク環境等の整備

3.将来展望

2020年度の国内eラーニング市場規模は、前年度比4.5%増の2,460億円を予測する。当年度は、BtoB、BtoCともに新型コロナウイルス感染症の影響によって遠隔教育の需要が高まり、eラーニングのユーザー数を増加させるものとみる。

ただ、BtoB市場では、業績悪化の懸念から企業の人材育成投資費用の抑制が想定されることや、LMS(学習管理システム)、学習コンテンツの価格下落傾向もあって、金額ベースの伸びはユーザー数の伸びに比例しないものと考え、2020年度のBtoB市場規模は、前年度比0.9%増の690億円を予測する。

一方、BtoC市場では新型コロナウイルス感染症の終息による社会生活の安定化の見通しがつきがたく、不確実性の要素が多い状況にある。こうした影響によって、対面授業が行えない学習塾・予備校等では、映像授業の配信や双方向性のあるWeb授業のサービス提供が活発化するものとみられることから、eラーニングによる学習への影響は比較的軽微になるものと考え、2020年度のBtoC市場規模は、前年度比6.0%増の1,770億円を予測する。