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株式会社H-PLAN(エイチプラン)は群馬県前橋市を本拠に、一般個人客向けの規格住宅の建築に特化した事業を展開している住宅会社だ。いわゆるZ世代でもとりわけ最新トレンドに敏感で自らのライフスタイルや趣味にこだわりを持った客層に完全にターゲットを絞り込み、SNSによる積極的な情報発信を駆使して顧客獲得につなげている。また、少人数の組織ゆえに業務の電子化を図り、生産性の向上にも取り組む。(TOP写真:吉岡町大久保に開設している「KIVACO」のモデルハウス)
フランチャイズ加盟で危機を脱し、セミオーダー型の自社商品と併せて事業展開 売上の95%超は一般個人向け

H-PLANは2010年11月の設立で、住宅会社2社で新築住宅に携わってきた萩原祐司代表取締役がその経験を生かし、一念発起して立ち上げた。しかし、一般的な新築主体の住宅会社として独立したものの現実は厳しかった。「紹介された案件が一巡してしまうとその先が進まず、低迷から脱しようと下請け工事などでしのいできたものの、事業継続すら危うい状況にまで追い込まれた」と萩原氏は振り返る。
H-PLANがこの最悪の事態を切り抜ける転機となったのは2016年、BETSUDAI Inc. TOKYO(東京都港区)が全国で展開する規格住宅ブランド「LIFE LEBEL」のフランチャイズチェーンに加盟したことだった。
H-PLANは、LIFE LEBELの商品ラインアップの一つで、凹凸のないキューブ型のシンプルな建物をベースにした規格住宅「ZERO-CUBE」を主体に扱う。萩原氏は「加盟して数年後にZERO-CUBEがスマッシュヒットし、それ以降はZERO-CUBEと自社のセミオーダー型のオリジナル規格住宅『KIVACO』に特化することに踏み切った」と語る。
実際、「フランチャイズ加盟後は業績が上向き、現状は高止まりしたまま推移している」とし、フランチャイズ加盟が起死回生のきっかけとなったと話す。その結果、現状は「売上の95%以上が一般のエンドユーザー向けの規格住宅が占める」と言う。事業項目に掲げるリフォームは「人手がなく年1件だけと決めている」との徹底ぶりだ。
規格住宅はタイムパフォーマンス重視の客層にメリット 住宅営業支援システムの導入で商談をさらにスムーズに

購入契約者にとって規格住宅が持つメリットは、タイムパフォーマンス(タイパ)に極めて優れた点にある。注文住宅と違って規格住宅は一定の規格モデルに沿って契約者の意向を織り込み建てられるため、住宅会社と契約者との打ち合わせの回数や時間が大幅に減らせる。萩原氏によると「当社のお客様はとにかく打ち合わせにあまり時間を割きたくないのが本音で、注文住宅のように『一から全部』打ち合わせるのではなく、基本モデルから自分用にカスタマイズしていくケースが大半。いわば基本モデルに契約者の好み、意向に応じて手を加えていくセミオーダー型で、お客様にとっては大幅に打ち合わせ時間が削減できる」と語る。
この点をさらに効率化するため、H-PLANは2024年11月に簡単にパース(完成予想図)などのプレゼンテーション資料の作成や積算、見積などができる住宅営業支援システムを導入した。一般的な建築CADと違って、設計担当者のような専門的な知識がなくても簡単にパースや図面が作成できるツールで、契約者との商談中にタイムリーに提案できる点が特徴だ。
「お客様には洗面所や玄関などそれぞれにこだわりがあって、規格住宅とはいえこうした要望に応えなければならない。それを打ち合わせの場で一緒にディスプレイを眺めながら確認していくことを目指して導入に踏み切った」と萩原氏は語る。
さらに萩原氏は「規格住宅の強みは明朗会計にある」と言う。H-PLANの契約者は20代から30代前半が大半で、しかも自らのライフスタイルや趣味、娯楽を満喫したいこだわりを持った客層がほとんどだ。このため、基本モデルに組み合わせるオプション部分もコストパフォーマンスに優れ、価格も明確化しており、契約者がこれに納得できれば契約の即決につながる。そこは前述した「自分のこだわりを満喫するために、打ち合わせに時間を割きたくない」とうタイムパフォーマンス(タイパ)を重視した考え方とも共通する。
SNSは商機を得るキーワード 情報発信のターゲットはアウトドア派 群馬県内全域と埼玉県北部を営業エリアに売却型のモデルハウスも展開

こうした、ある種「遊び心」を持った同じような価値観を持った若年の客層をターゲットに据えている以上、H-PLANはとにかくSNSを活用した情報発信を駆使し、商機を得ることに注力している。この点、萩原氏は「いかに良い情報をSNSで流せるかが勝負のキーワード」と言い切る。このため、2020年からFacebook、インスタグラム、さらに直近ではTikTokによる情報発信も始めた。
SNSでの効果的な情報発信のため、ターゲットをより絞り込むことが不可欠だ。そのため、H-PLANはほぼ4年間のSNSでの情報発信を通じて得た知見から、最も効果的な人物像=ペルソナを設定している。その上で2カ月に1回、外部コンサルタントの指導を受け、「ターゲットに向けた的確な情報をいかに流していくかを常にPDCAを繰り返しながら情報発信に努めている」(萩原氏)と言う。
ペルソナについてはこれまで契約につながった客層の傾向から分析し、設定した。成約した客の大半がSUV(スポーツ用多目的車)に乗り、全身をアウトドアブランドの服や帽子、バッグで、趣味はキャンプやバーベキュー、釣り、自転車と言ったアウトドア派の、ある客層だという。「この要素がそろっていれば、それは紛れもなく〝鉄板〟。Aランクの見込み客として契約まで持ち込める確率は80%」と萩原氏は豪語する。
さらに、萩原氏は「設定したペルソナは既に完全体で、どこまで精度を上げてSNSを活用して情報を発信し、見込み客をつかむかに努めている」と言う。実際、投稿する字体や写真を改善した結果、Webサイトのアクセス状況を分析するアナリティクスの数値が2024年夏頃から急激に上昇したと言う。こうした取り組みもあり、規格住宅に特化して以降、80棟近くを手掛けるまでに至っている。
H-PLANの営業エリアは群馬県全域と埼玉県北部で、売却型のモデルハウスを現在、群馬県吉岡町で展開している。萩原氏は「損益分岐点があって、それに合致すれば売却し、違った場所に新たなモデルハウスを設けるということを繰り返す」としている。さらに「総合住宅展示場はコストが高く出展しない。全国的に総合住宅展示場への新規来場者の契約率は16%程度とされ、確率は低い。それよりもSNSを活用した方が確率は高く、仮に契約率が30%、40%になれば生産性は高まるわけで、そのために当社はSNSを駆使して精度の高い情報発信に努める」と話す。
トレンド商品に対応し、電子契約システムを導入 発注書・注文書にも採用し、少人数組織のDX化を推進

業務の効率化に向けては、クラウドサービスを活用した電子契約システムを2023年に導入した。導入を決めた経緯について萩原氏は「最先端のトレンドを持った住宅を扱う以上、旧来の紙の契約書を使っていては商品性にマッチしないと考え、最初に住宅購入するお客様との契約書に電子契約システムを採用した。今まで大変だった契約前の重要事項説明も電子契約システムに切り替えた」と語る。
現在では発注書や注文書などについても紙ベースから電子契約システムに転換している。もちろん、取引先の中には図面もメールで送れない、あるいはインボイスもいまだに手書きの人もいて、電子契約システムへの切り替えには多くの抵抗があったのも事実だ。このため、取引先を集めて勉強会を開き、電子契約システムへの対応を促したほどだった。
H-PLANは萩原氏のほか正社員2人、パート社員1人の少所帯であり、図面の外注先と外部コーディネーターとで業務をこなしている。このため、グループウェアにより各人のスケジュールを共有化し、円滑な業務遂行に役立てている。スケジュール管理に限らず、「少人数ゆえに、業務の効率化を進めるにはいろいろと電子化していかないと生産性は上がらない」と萩原氏は語り、今後もさまざまな面でDX(デジタルトランスフォーメーション)化に取り組んでいく意向を示す。
取り扱う商品の性格上、遊び心を持ち、プライベートを重視したライフスタイルを選ぶ、しかもデジタルネイティブ世代真っただ中の層をコアなターゲットに位置づけているだけに、その価値観に見合った「テイストを売る」ビジネスモデルの構築は不可欠だ。SNSによる情報発信を駆使した顧客獲得、さらにそのターゲット層に受け入れられやすい業務のDX化を目指すH-PLANの取り組みは、まさにその姿を反映している好事例に映る。
企業概要
会社名 | 株式会社H-PLAN |
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住所 | 群馬県前橋市総社町総社1130-2 リトル総社1F |
HP | https://www.h-plan.info/ |
電話 | 027-289-2277 |
創業 | 2010年11月 |
従業員数 | 3人 |
事業内容 | 新築住宅(LIFE LABEL商品・注文住宅)、住宅リフォーム・改修、店舗の新築・改修など |