矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

2019年度のバイオマスエネルギー市場規模は4,968億円の見込

~エネルギー源の低炭素化や未利用資源の有効利用の観点から、注目される国内のバイオマスエネルギー~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内のバイオマスエネルギー市場を調査し、市場動向や有力プレイヤーの動向、将来展望について明らかにした。

バイオマスエネルギー市場推移・予測

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1.市場概況

バイオマス発電、バイオマス熱(蒸気)供給、バイオ燃料のエネルギー供給量を金額ベースで換算した、2018年度の国内バイオマスエネルギー市場規模を4,359億円と推計する。2012年にFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が始まり、急激に拡大したバイオマス発電市場が、バイオマスエネルギー市場規模を押し上げている。

それぞれの内訳をみると、バイオマス発電では、「一般木質・農作物残さ」に区分されるバイオマスを利用した発電事業において、発電規模が数十MWクラスの発電所が相次いで稼働を開始している。一方で、バイオマス発電では未利用資源の有効活用や地域の産業振興に重きを置いた発電事業も展開されている。
バイオマス熱(蒸気)の供給は、FIT制度による売電に依存しないビジネスモデルを目指す事業者が注目しているテーマである。バイオマス発電所によっては、発電事業と同時に、近隣の施設(園芸施設や藻類培養施設など)への熱や熱以外の副生物(例:CO2等)の供給を行っている。
バイオ燃料は、輸送用機器や発電機などの燃料として使用されている。世界の航空機業界では、CO2排出量の削減に向けて、バイオジェット燃料に関心を示す事業者が増えている。

2.注目トピック

バイオマス発電事業における原燃料の調達

木質バイオマス発電所の増加に伴い、原燃料の需給バランスが逼迫する地域が出てきている。このような地域では、原燃料の不足や価格の上昇が懸念されており、バイオマス発電所の安定稼働や収益性のリスク要因となる。バイオマス発電事業者は、対策として原燃料の収集ネットワークの拡充や、未利用資源の探索・活用、林業支援、森林育成などに取り組む例がみられる。
また、輸入燃料(パーム椰子殻など)は、海上輸送に伴うエネルギー消費や輸出国での開発、エネルギーの地産地消の点から、使用に対して慎重な見方が出てきている。輸入燃料を使用する場合、原燃料の種類・調達先の分散によるエネルギーの安全保障への貢献や港湾業務における雇用創出などのメリットはある。しかし、中長期的にみると、輸入燃料の使用を前提としたバイオマス発電所を新たに開発する動きは鈍化する可能性があると考える。

3.将来展望

2019年度の国内バイオマスエネルギー市場規模(エネルギー供給量を金額ベースに換算)は、前年度比114.0%の4,968億円の見込みである。また、現在計画中や工事中のバイオマス発電所が今後稼働を開始することで、2021年度の国内バイオマスエネルギー市場規模は6,160億円に成長すると予測する。
なお、発電規模10MW以上の木質バイオマス発電所を対象とする入札制度の導入など、FIT制度の見直しが行われている。この流れにより、バイオマス発電所の新規開発が鈍化する可能性がある。一方で、バイオマスエネルギーはエネルギー源の低炭素化や未利用資源の有効利用、地域産業の振興などに寄与するエネルギーであり、そうしたことから、バイオマスネエルギーへのニーズは根強くあると考えられる。