ユニクロ
(画像=Savvapanf Photo/Shutterstock.com)

ユニクロは、老若男女に愛されるカジュアルファッションブランドである。日本のアパレル業界をけん引し続けるユニクロは、どのような経営戦略を実践しているのだろうか?ここでは、ユニクロの経営戦略はもちろん、ユニクロの経営戦略上の弱みや今後の展望について解説する。

目次

  1. ユニクロの基本的な国内経営戦略
    1. SPAによるコストリーダーシップ戦略
    2. カスタマー・クリエーションに基づいた新製品開発戦略
    3. ファッション性を重視する競合他社との差別化戦略
  2. ユニクロの海外事業における経営戦略
    1. 地域ごとに異なるニーズに応じた商品構成
    2. 旗艦店の出店によるブランド認知度の向上
  3. ユニクロの経営戦略に弱みはあるのか?
    1. 現経営者(柳井氏)の経営手腕に依存している
    2. 気候により売り上げが変動する
    3. 為替や政治の影響で海外事業の業績に影響が生じやすい
  4. ユニクロが描く今後の経営戦略
    1. グレーターチャイナを中心とした海外進出の強化
    2. 国内事業では「個店経営」の考え方による収益性を重視
  5. ユニクロの経営戦略で自社のオペレーションも効率化を目指そう

ユニクロの基本的な国内経営戦略

はじめに、ユニクロが国内の事業で実践している基本的な経営戦略を確認してみよう。

SPAによるコストリーダーシップ戦略

ユニクロが成功した要因といっても過言ではないのが、SPAによるコストリーダーシップ戦略である。SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)とは、商品の企画から製造、物流、販売までを一貫して自社で行うビジネスモデルであり、競合他社よりも低コストで生産することが可能となる。

生産から流通までのコストを下げられることで、低価格での販売によって市場シェアを高めたり、他社と同じ程度の価格で販売することで大きな利益を得る経営戦略である。

ユニクロでは「SPAにより卸売などの中間業者を削減」「小売店舗での販売状況に応じて柔軟に生産量を調整」するなど、低コストでの商品生産を実現してきた。その結果、優れた商品を業界トップクラスの安さで販売し、大きく事業を拡大したのである。

カスタマー・クリエーションに基づいた新製品開発戦略

ユニクロでは、顧客から寄せられた要望を検証・分析し、その情報をもとに商品の開発や改良を行うことで、顧客の声をダイレクトに反映した新製品開発戦略を実現している。

新製品開発戦略とは、既存の市場(顧客)に対して、新しい製品やサービス提供する経営戦略のことである。例えば、同社の人気商品であるウルトラライトダウンやウォームイージーパンツなどは、顧客要望を詳細に分析したことで生み出された新しく開発された衣服として有名だ。

こうした顧客の声に基づいた新製品開発は、「カスタマー・クリエーション」と呼ばれている。顧客の声を細かく分析してニーズが高い商品を開発しているからこそ、ユニクロは大躍進したといえるだろう。

参考:ユニクロ事業 - Fast Retailing

ファッション性を重視する競合他社との差別化戦略

ユニクロと他社ファッションブランドとの決定的な違いは、ファッション性や流行よりも「普段着としての着やすさ」を追求している点だ。

高級ブランドが最たる例だが、多くのファッションブランドは見た目のファッション性や流行を重視しており、着心地の良さや着やすさにあまり重きを置かない傾向がある。

値段が高いブランドの服に対して「おしゃれだけど、どこに着ていくのか?」「値段は高いが、着心地があまり良くない」というイメージを抱いている人も少なくないだろう。

一方でユニクロは、「シンプルさ」がありながら、着心地の良さなどといった普段使いに重要な機能を重視している。誰でも手軽に場面を選ばずに着ることができるカジュアルファッションを提供することで、同社は老若男女から幅広い支持を得ているのだ。

ファッション性を重視する競合他社との差別化を図ることで、ユニクロは年齢や性別だけでなく、普段使いもできるという幅広い市場をターゲットとした独自の地位を確立できたといえるだろう。

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ユニクロの海外事業における経営戦略

近年ユニクロは、海外事業に力を入れている。ここではユニクロが海外事業で実践している経営戦略を説明する。

地域ごとに異なるニーズに応じた商品構成

ユニクロの海外事業で特筆すべき点は、日本で販売している商品をそのまま販売するのではなく、国や地域ごとに異なるニーズに対応して商品販売の構成を変えていることだろう。

例えば、2019年10月に進出したインドでは、インド人の日常着である伝統服クルタを、インド人デザイナーのリナ・シン氏とコラボレーションした「クルタ・コレクション」を販売し、大きな人気を集めるに至った。また、冬でも暖かいロサンゼルスでは、冬でもショートパンツを置くことで店舗あたりの売り上げアップを実現した。

日本と海外諸国では、文化や気候、価値観といったあらゆるマーケティングの要素が異なるため、日本と同じ感覚で事業を行うと失敗する可能性が高い。ユニクロは、国どころか地域単位で緻密に商品構成を変えているため、海外での事業展開でも業績が好調となっていると考えられる。

旗艦店の出店によるブランド認知度の向上

日本では非常に有名なユニクロだが、まだ店舗が存在しない国や地域では知名度が高いとは限らないため、ブランド力を発揮できないはずである。では、なぜブランド力を発揮できない国や地域でもユニクロは成功しているのだろうか。

ユニクロが海外進出を成功させている背景には、「戦略的な旗艦店」の出店が関係している。旗艦店とは、ある地域において販売の拠点となるような重要な役割を果たす大型店舗のことであり、ブランドの特徴や良さを最大限発揮する上では、旗艦店の出店は効果的である。

ユニクロの海外進出では、まずは主要都市にある大型商業施設に旗艦店を出店するという特徴がある。人が集まる場所で、注目度を高めることができる旗艦店を出店することで、「ユニクロ」というブランドの認知度を現地で急速に拡大できるのだ。最初にターゲット地域での認知度を高めてから店舗数を増やしているからこそ、ユニクロの海外展開は順調に進むのだ。

参考:ユニクロの事業戦略 FAST RETAILING

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ユニクロの経営戦略に弱みはあるのか?

国内・海外事業ともに緻密な経営戦略を敷いているユニクロだが、その経営戦略に弱みはないのだろうか。ここでは、ユニクロの経営戦略上の弱みを3つ分析する。

現経営者(柳井氏)の経営手腕に依存している

意外と知られていないが、地方にある紳士服小売店がユニクロの始まりである。地方の小規模な衣服販売店を、日本を代表するアパレルブランドにまで成長させたのが、現経営者の柳井氏だ。

父親が開業した紳士服小売店を引き継いだ柳井氏は、先に述べたSPA戦略や新製品開発戦略などの合理的な経営戦略により、低コストながら高品質の商品を販売することで着実にアパレル市場を開拓し、ユニクロの確固たる地位を確立していった。

つまり、ユニクロが成長した大半の要因は、現経営者の柳井氏の卓越した経営手腕にあるといっても過言ではない。柳井氏が何らかの形で引退した場合、これまでの業績を維持できるか確証はないため、ユニクロにとっての弱みのひとつとする。

気候により売り上げが変動する

衣料品ブランドという都合上、気候により売り上げが変動しやすい点はユニクロの弱みの一つだ。例えば、暖冬になった場合、大人気のヒートテックの売り上げは落ちる可能性がある。

ファッション性を重視するタイプのアパレルブランドの場合、気候が変動してもブランド名や商品のデザイン性に価値を見出す顧客が購入するため、売り上げの変動を抑えることができるだろう。

しかし、ユニクロの場合、他のアパレルブランドとは異なり、カジュアルさや機能性を重視した経営戦略をとっているため、天候の影響を商品のファッション性などではカバーしにくい。

普段着としてのカジュアル性を重視するユニクロの経営戦略は、アパレル業界における差別化の意味ではプラスとなるが、気候の変動に対処しにくい点では弱みとなるのだ。

為替や政治の影響で海外事業の業績に影響が生じやすい

ユニクロに限った問題ではないが、為替変動や政治などの地政学的リスクの影響は、海外事業の業績に大きな影響を及ぼしかねない。

例えば、現地国の景況が悪化すれば、売り上げが減少する可能性が高まるだろう。また、政治が不安定になればその土地で事業経営をできなくなるリスクもある。大幅な為替変動が生じた場合、現地での売り上げ状況が変わらなくても日本円に換算した場合は減益となる可能性があり、海外事業を営む上では大きなリスクの一つだ。

特にユニクロは、近年海外進出に重点を置いた経営戦略を推進している。しかし、為替の変動は生産コスト増など、ユニクロの経営の根幹であるSPAに直接影響することとなる。一見すると海外進出は好調に進んでいるが、為替や政治の影響次第では一気に業績が悪化することも考えられる点は弱みといえるだろう。

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ユニクロが描く今後の経営戦略

今後、ユニクロはどのような経営戦略で事業を行うのだろうか。ここでは、ユニクロの経営者柳井氏へのインタビューをもとに今後の経営戦略について解説する。

グレーターチャイナを中心とした海外進出の強化

今後ユニクロが注力するのが、「グレーターチャイナ(中国、台湾、香港)」を中心とした、海外進出の強化だ。グレーターチャイナや東南アジアでは、今後の経済成長に伴って人口が大幅に増加すると予想されている。

ユニクロは、引き続きこれらの経済成長が期待される地域に注力することで、各国の売り上げを現在の2~3倍以上に伸ばすことを目指している。

国内事業では「個店経営」の考え方による収益性を重視

ユニクロにとって市場の拡大が続く海外事業の一方で、日本国内の事業は人口の減少などの影響によって市場が縮小している。ユニクロは国内の厳しい事業環境を踏まえて、各地域のニーズに応える「個店経営」の考え方を実践して収益性を高める経営戦略をとるとのことである。

地域ごとに顧客のニーズに合う商品を提供することで、小さい市場で最大限の収益獲得を目指す戦略といえるだろう。

また、ICタグやセルフレジのさらなる導入により、SPAにおいて重要な人件費などのコスト削減も積極的に目指していく考えだ。

参考:トップインタビュー FAST RETAILING

ユニクロの経営戦略で自社のオペレーションも効率化を目指そう

今回は国内を代表するアパレルブランド「ユニクロ」について経営戦略の概要や、強み弱み、今後の展望を解説した。ユニクロは徹底的なSPAによるコストリーダーシップ戦略と、顧客志向による新製品開発戦略で成功した企業だ。

しかし、近年は国内市場の縮小が進んでおり、従来の経営戦略だけでは業績を維持または向上させることが困難となっている。そこでユニクロは、近年グレーターチャイナを中心とした海外進出にも注力している。

事業の海外進出には困難がつきものだが、ユニクロはこれまで培ってきた顧客志向の商品開発や巧みなブランド戦略を駆使し大きな成功を収めている。今後もユニクロは海外展開に力を入れるとのことであり、ますますの成長が期待されるだろう。

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