
2023年度の国内農薬製剤市場は前年度比101.6%の3,364億円、2024年度は同102.7%の3,455億円の見込み。
~販売数量の減少を上回る製剤価格の上昇により、市場規模は拡大~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の農薬市場を調査し、農薬製剤の需要分野別(農耕地、非農耕地、家庭園芸分野)・種類別(殺虫剤、殺菌剤、殺虫・殺菌剤、除草剤、微生物・生物農薬)の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
農薬製剤市場規模推移・予測

1.市場概況
水稲の作付面積の減少や天候不順などの影響があったものの、2023年度の農薬製剤市場規模はメーカー出荷ベースで前年度比101.6%の3,364億円であった。
流通在庫の停滞により販売数量は減少したものの、製剤価格の上昇により市場規模は拡大した。需要分野別では畑作用の殺菌剤ほか、除草剤は水稲用、畑作用共に好調となっており、国内農薬市場は微増となっている。
2.注目トピック
直播栽培向け農薬の増加
水稲直播栽培は、圃場に水稲の苗を植えるのではなく、水稲種子(種籾)を直接圃場の中に播く栽培方法である。直播栽培は春作業の省力化(育苗・移植作業不要)が図られるため、育苗、田植えの省略により稲作の大規模化・低コスト化・省力化のためのキーテクノロジーとして有望視されている。
水稲直播栽培には、水田に水を張らない状態で播種しその後湛水を行う乾田直播と、代かき後の湛水状態の水田に播種する湛水直播の2種類が存在しており、農林水産省「最新の直播栽培の現状と技術の紹介(令和4年産)」によると、2014年頃より乾田直播が増加している。水稲直播栽培確面積は、確認できる直近の2022年では前年比103.7%の3万6,681 haとなり、20年間で約2.8倍に拡大している。
農薬各社は水稲直播向けの農薬に力を入れる傾向が強くなっている。乾田直播・湛水直播双方で使用可能な播種前に使用する水稲種子処理剤や、殺菌・殺虫成分を含んだコーティング種子、播種と同時に散布できる殺菌剤や除草剤などが開発されており、薬剤散布の効率化が図られると同時に効果的な防除が可能となっている。
水稲直播栽培は省力化が図れることもあり、昨今の大規模化も相まって面積も傾向である。今後も直播栽培で使用可能な新農薬の開発が進むと見込まれる。
3.将来展望
ここ数年、農政における規制緩和による農業構造の変化が進んでいる。中長期における作付面積の推移に現れているように、農薬市場にも底打ち感が出始めている。2024年度は製剤に用いられる原料価格や輸送コストの高騰なども影響しており、国内製剤市場規模はメーカー出荷金額ベースで、前年度比102.7%の3,455億円と予測した
今後、国内農業は作付面積の減少や減農薬の動きが継続する中、農薬市場にとって厳しい状況は変わらず続くとみられ、原体・製剤市場ともに横這いで推移していくものと考えられる。2032年度には3,645億円の市場規模になると予測した。
調査要綱
1.調査期間: 2024年11月~2025年2月 2.調査対象: 農薬市場参入企業(農薬原体メーカー・製剤メーカー・商社)、農薬関連業界団体・官公庁等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査、アンケート調査および文献調査併用 |
<農薬製剤市場とは> 本調査における農薬製剤市場とは、殺虫剤、殺菌剤、殺虫・殺菌剤、除草剤、微生物・生物農薬等を対象とした。なお国内農薬製剤市場規模はメーカー出荷金額ベースで算出し、OEMを除く自社ブランド製品のみの合計としている。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 農薬原体、農薬製剤(殺虫剤、殺菌剤、殺虫・殺菌剤、除草剤、微生物・生物農薬) |
出典資料について
資料名 | 2025年版 農薬産業白書 |
発刊日 | 2025年03月31日 |
体裁 | A4 391ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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