ボトルカーシェアNO1の驚異のフルオーダー体制、独自のバーコード活用システムと社内コミュニケーションが威力発揮  須河車体(京都府)

目次

  1. 1937年、京都市内で創業 1961年から生産を開始したボトルカーは国内シェアの約7割を占める
  2. 1988年、京都府宇治田原町内に工場を建設 2021年には生産能力の強化を図るため、本社機能を備えた新工場を完成させた
  3. 仕切りのないワンフロアとフリーアドレスで、コミュニケーション重視のオフィスを実現
  4. 新工場では、製造・塗装・検査まで一気通貫で生産可能 更に自動倉庫と連携して、徹底的に無駄を省いた動線を設計した
  5. Wi-Fiを完備し、オフィスと工場のどこでもパソコンやタブレットを使って仕事に取り組める環境を整えている
  6. 年間約2,000台の特殊車両の生産体制は設計・製造・購買の連携と、開発・生産・出荷プロセスの保証項目による100%品質保証体制
  7. 専門部署がシステム導入・セキュリティ強化で社内のデジタル業務を統括し 過去の情報蓄積と活用で対応体制構築
  8. 独自の工程管理システムでバーコード活用し、工程全体をリアルタイムに把握、変更にも柔軟に対応
  9. ソリューショングループは、社内の頼りになるデジタル業務の何でも屋さん 例えばスマホで敷地ゲートの遠隔開閉・・・
  10. ものづくり技術とデジタル技術をバランスよく組み合わせて更なる成長を目指す
中小企業応援サイト 編集部
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京都府東南部の綴喜(つづき)郡宇治田原町に本社と二つの工場を構える須河車体株式会社は、清涼飲料水を搬送するボトルカーや移動販売車といった特殊車両の荷台製造などを手掛ける独立系の車体架装メーカーだ。「総合力を生かしたものづくり」をモットーに、小さく複雑な形状のものから堅牢なものまで多種多様な金属部品を製造する技術力を備えている。社内システムの運用や業務のデジタル化を統括する専門部署の存在が、フルオーダーメイドの特殊車両を迅速かつ大量に生産するために必要な各部署の連携に大きな役割を果たしている。(TOP写真:全国シェアの約7割を占めるボトルカーなどの特殊車両を製造する須河車体の工場)

1937年、京都市内で創業 1961年から生産を開始したボトルカーは国内シェアの約7割を占める

ボトルカーシェアNO1の驚異のフルオーダー体制、独自のバーコード活用システムと社内コミュニケーションが威力発揮  須河車体(京都府)
須河車体のコーポレートマーク

須河車体は1937年、京都市下京区で創業した。1930年代に「日本三大西洋鍛冶(かじ)」の一人に選ばれる技術力を備えていた創業者が、トラック車体の架装事業を開始し、戦後に広告宣伝車、ボトルカーの製造へと事業領域を拡大していった。1961年から生産を開始し、現在、国内シェアの約7割を占めるボトルカーを中心に、移動販売車、高速道路の作業車、消防車など特殊車両の製造のほか、建設機械向けの金属部品を製造している。多種多様な車体を効率的に量産する技術とノウハウは、須河車体の大きな強みになっている。

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須河車体の吉岡祥司執行役員・総務部長

須河車体のボトルカーには長い歴史の中で蓄積してきた技術が凝縮されている。荷台を構成するスライド扉の開閉ハンドル、移動式の棚板、水抜き穴などの個々の部品を独自に開発し、都市部、郊外、寒冷地など使用される地域に合わせてサイズや塗装なども細かく調整している。難易度が高い熟練技術を要する作業も多い。ボトルカーは、企業にとって広告塔としての役割も果たしていることから、使いやすさと耐久性だけでなく、デザイン性も重視して設計しているという。「お客様のことを徹底的に考えて、こだわりを持って作り込むことを大事にしています」と本社のオフィスで取材に応じた吉岡祥司執行役員・総務部長は話した。

1988年、京都府宇治田原町内に工場を建設 2021年には生産能力の強化を図るため、本社機能を備えた新工場を完成させた

須河車体は1988年、京都府宇治田原町内に敷地面積約4万2000平方メートルの工場を建設し、この時から本社を同町に置いている。2021年には生産能力の強化を図るため、同町内で新たに敷地面積約7万2000平方メートルの工場を完成させ、本社機能を旧工場から移した。敷地内には本社のオフィス棟、工場棟、完成した車両を並べる広大な駐車場を配置している。働き方改革と社会のデジタル化に対応し、従業員の創造性を高める機能を備えた新時代のオフィスと工場にすることを目指して設計したという。

仕切りのないワンフロアとフリーアドレスで、コミュニケーション重視のオフィスを実現

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部署の垣根を越えてコミュニケーションを取りやすくしている須河車体のオフィス
ボトルカーシェアNO1の驚異のフルオーダー体制、独自のバーコード活用システムと社内コミュニケーションが威力発揮  須河車体(京都府)
オフィスフロアの集中ワークブース
ボトルカーシェアNO1の驚異のフルオーダー体制、独自のバーコード活用システムと社内コミュニケーションが威力発揮  須河車体(京都府)
福利厚生に力を入れ、テラスを備えた従業員のためのゆったりした食堂

須河車体のオフィスは仕切りのないワンフロアで、個々の机を指定しないフリーアドレスにすることで、部署の垣根を越えてコミュニケーションを取りやすいようにしている。オフィス内では打ち合わせスペースや複数の集中ワークブースを設け、従業員が臨機応変に利用できるようにしている。福利厚生にも力を入れ、オフィス棟にはカウンターテーブルを備えた休憩室のほか、テラスを備えた食堂も設置している。勤務形態でも介護、育児、勉強といった幅広い理由で取得できる短時間勤務制度、家族看護の特別休暇制度を設けるなど、働きやすい環境づくりに力を入れている。

新工場では、製造・塗装・検査まで一気通貫で生産可能 更に自動倉庫と連携して、徹底的に無駄を省いた動線を設計した

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工場内に設置している建屋一体型の自動倉庫システム

旧工場から特殊車両の生産機能を移転した冷暖房完備の新工場では、設計図を基に製造、塗装、検査まで一気通貫で対応できる体制を整えている。工場内では3Dレーザー切断機、ロボット溶接機、成型プレス機などの様々な加工設備のほか、建屋一体型のラックとクレーンが一体化した自動倉庫システムを導入。荷台を載せるトラック車両や部材の搬入から荷台の製造と設置、検査、完成車を駐車するエリアまでの動線は、徹底的に無駄を省いて設計している。旧工場と比較して工程ごとの部材や製品の引き渡しが円滑になったことで、フォークリフトの台数を10分の1に減らすことができたという。

Wi-Fiを完備し、オフィスと工場のどこでもパソコンやタブレットを使って仕事に取り組める環境を整えている

ボトルカーシェアNO1の驚異のフルオーダー体制、独自のバーコード活用システムと社内コミュニケーションが威力発揮  須河車体(京都府)
オフィスで設計作業に取り組む様子

オフィス棟と工場棟はWi-Fiを完備し、どこでもパソコンやタブレットを使って仕事に取り組めるようにしている。「オフィス、工場とも仕事に集中できるように快適な環境を整えています」と吉岡執行役員は話した。

年間約2,000台の特殊車両の生産体制は設計・製造・購買の連携と、開発・生産・出荷プロセスの保証項目による100%品質保証体制

須河車体は、年間約2,000台の特殊車両を生産している。設計、製造、購買といった各部署が連携することで、すべてがフルオーダーメイドでありながら効率的に量産する仕組みを実現している。開発、生産、出荷のプロセスごとに保証項目を設け、工程ごとに100%の品質保証を行っている。「須河車体は、無駄を省くための改善、改良を重ねてものづくりに取り組んできました。効率的な生産につながる工程設計を常に考えています」と吉岡執行役員。

専門部署がシステム導入・セキュリティ強化で社内のデジタル業務を統括し 過去の情報蓄積と活用で対応体制構築

各部署の連携を円滑化するデジタル技術の活用で、大きな役割を果たしているのが、社内のデジタル業務を統括する経営企画室ソリューショングループだ。社内の業務プロセスとデジタル分野の両面で豊富な知識と経験を備えたシステムエンジニアが在籍し、会社の業務システムの構築、運用、改善、セキュリティ対策のほか、パソコンやネットワークに関する従業員からの相談といった幅広い業務を担当している。

須河車体は、1970年代から事務処理の一部をコンピューターに任せるオフィスオートメーション(OA)に関心を持ち、専門部署を設けるなど新しい技術の導入に積極的に取り組んできた。1990年代に入るとパソコンやインターネットを積極的に活用。1997年から製造した特殊車両、部品の情報や図面はすべてデータベースに保存しており、必要な情報をパソコンやスマートフォンを通じていつでも活用できるようにしている。情報を保存するためのサーバーの増設にも継続的に取り組んでいる。

2015年には、データのバックアップ機能を強化するために複数台の物理サーバーを仮想サーバーに集約した。複数台の物理サーバーを運用する場合と比較して手間とコストを削減できるだけでなく、データのバックも容易になり、バックアップデータをクラウドに保存する事で災害などに備えたBCP(事業継続計画)対策の面でも効果を発揮しているという。

ソリューショングループによる社内システムの管理やデジタル業務の内製化は、システムでトラブルが発生した時の迅速な対応、リードタイムの短縮、外部委託コストの削減、デジタル分野のノウハウ蓄積といった面で大きなプラス効果を生んでいる。「様々な部署の要望を聞いて、地道な対応を積み重ねることで現在の体制を整えてきました。他社との差別化を図るには生産効率を高め続けなければなりません。ものづくりの高度化にデジタル技術の活用は必要不可欠です」と吉岡執行役員は話した。

独自の工程管理システムでバーコード活用し、工程全体をリアルタイムに把握、変更にも柔軟に対応

ボトルカーシェアNO1の驚異のフルオーダー体制、独自のバーコード活用システムと社内コミュニケーションが威力発揮  須河車体(京都府)
経営企画室ソリューショングループのチームリーダー高橋学さん

ソリューショングループは2022年、車体生産管理部と共同で独自の工程管理システムを開発し、工場内で製造中の様々な部材や部品の状態を一目で把握できるようにした。各工程の担当者は、作業が完了すると手元のタブレット端末からシステムに記録した上で、ラベルプリンターで識別番号を印刷したラベルシールを出力し、貼付した上で次の工程に渡している。

ボトルカーシェアNO1の驚異のフルオーダー体制、独自のバーコード活用システムと社内コミュニケーションが威力発揮  須河車体(京都府)
工程管理システムと連動したタブレット端末とラベルプリンター

システムで管理することによってリアルタイムに工程の進捗状況を確認できるので、同時進行している複数の車両の製造をミスなく進めていく上で大きな効果を発揮している。作業工程の急な変更があった時も柔軟に対応することができるようになったという。作業に取り掛かる前に、予定されている工程に合わせたラベルを事前に用意する必要もなくなったので、業務時間の短縮につながっているという。

このシステムの凄さは、紙のバーコードを介する事で、特注品の工程管理システム設計の困難さをクリアしたことにある。新型コロナで、全世界でパンデミックが発生した時に、コロナに感染した人の感染経路を知るために、台湾では全ての飲食店や交通機関にバーコードを配布、国民はその場所を通過する時にバーコードをスキャンして行動場所を登録する事で居場所と履歴の見える化をして感染防止に大きな威力を発揮した。フルデジタルにしなかったからこそ柔軟でかつ短期間でのシステム構築を可能にした。須河車体でも、バーコードだけでフルオーダーに対応できるわけではないが、このバーコードがターニングポイントになったと推定される。

ソリューショングループは、社内の頼りになるデジタル業務の何でも屋さん 例えばスマホで敷地ゲートの遠隔開閉・・・

ボトルカーシェアNO1の驚異のフルオーダー体制、独自のバーコード活用システムと社内コミュニケーションが威力発揮  須河車体(京都府)
アプリケーションを開発してスマートフォンで敷地へのゲートの開閉を行えるようにしている

ソリューショングループは、ほかにも社内の業務効率化につながるシステムやアプリを開発している。これまでに本社敷地へのゲートの開閉をスマートフォンで操作するためのアプリケーションや来訪者の受付システムを作成した。複雑な操作を必要とせず、誰でも使いやすいように設計することを心がけているという。「ソリューショングループは、デジタル業務のなんでも屋さんのような存在。会社にとって重要な業務なのでやりがいがあります。システムを開発する時は、『各部署の業務時間をいかに短縮するか』という視点で取り組んでいます」とチームリーダーを務める高橋学さんは話した。

須河車体は、今後も業務の効率化につながるICTやデジタル機器の導入を進める方針。荷台を載せるトラックの車体の寸法を短時間で正確に計測するために3Dスキャナーを導入し、今後、活用を進める。

ものづくり技術とデジタル技術をバランスよく組み合わせて更なる成長を目指す

ボトルカーシェアNO1の驚異のフルオーダー体制、独自のバーコード活用システムと社内コミュニケーションが威力発揮  須河車体(京都府)
須河車体本社の外観

須河車体が新本社・工場を立地した場所は、町の新都市創造ゾーンに指定され、隣接地には2020年に新築・移転された宇治田原町役場が立地している。現在、建設が進む新名神高速道路の開通に伴って町内にはインターチェンジが開設され、京都市内や大阪・神戸・名古屋方面へのアクセスが大幅に向上することが見込まれている。インフラ整備が進む中、地域経済を活性化していく上で、須河車体に寄せられる地元の期待も高まっている。「蓄積してきたものづくり技術とデジタル技術をバランスよく組み合わせて日本の産業を支える特殊車両をこれからも世に送り出していきたい」と吉岡執行役員は力強く話した。

企業概要

会社名須河車体株式会社
本社京都府綴喜郡宇治田原町立川坂口13番地
HPhttps://sugawa.co.jp
電話0774-88-4611
設立1951年12月(創業1937年)
従業員数212人
事業内容   特殊自動車ボディー(清涼飲料水運搬車、各種食品運搬車、ルートセールスカー、灯油宅配タンクローリー、特殊シャッター車、パワーゲート車、その他特殊自動車のボディー)、金属プレス部品(自動車、鉄道車両、建設機械など)の研究、開発、設計、製造