食品加工会社へ技術力と製品で伴走 デジタル強化でグローバル市場を視野へ ハマダフードシステム(香川県)

目次

  1. 1970年の設立以来、食品加工会社の課題解決や新商品開発に貢献 中国・四国地方で業界トップレベルの業績を誇る
  2. 食品分野の研究、開発、分析に力を入れ、技術的な視点から取引先に解決策を提案している
  3. 2014年、取引先と合同でタイに子会社を設立し、現地の日本企業をサポート 日本の食のグローバル化を支えている
  4. 従業員がリラックスして創造性を発揮しやすい環境づくりを目指し、遊び心も加えて新社屋を設計
  5. 若手の採用に積極的に取り組む 従業員一人ひとりにパソコンを配布し、建物内のどこでもインターネットに接続して仕事をできるようにしている
  6. 文書管理システムを導入して文書の保存と拠点との情報共有に活用 クラウドサービスでアプリを自社で作成するなど基幹業務のデジタル化を進めている
  7. AIを活用した議事録作成システムを導入して会議の記録業務を効率化 積み重ねることで大きな効果に
  8. デジタル化とグローバル化が進展するこれから先の時代を見据え、人材育成に力を入れる
中小企業応援サイト 編集部
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香川県高松市の株式会社ハマダフードシステムは、食品加工会社へ技術力と製品で伴走する食品加工業界の「技術商社」だ。中国・四国地方の食品加工会社を対象に、食品づくりに必要な調味料、香辛料、品質改良剤、原材料などを提供している。地方に根差した事業展開で地域の経済活性化に貢献する一方、グローバル市場にも果敢に挑んでいる。2019年にはネットワーク機能を整えた新社屋を建設し、基幹業務のデジタル化を通じて、事業拡大を見据えた社内体制の強化に取り組んでいる。(TOP写真:ネットワーク機能を整えたハマダフードシステムのオフィス。ハマダフードシステムは2019年に新社屋を建設した)

1970年の設立以来、食品加工会社の課題解決や新商品開発に貢献 中国・四国地方で業界トップレベルの業績を誇る

瀬戸内海に面し、多種多様な食材に恵まれた中国・四国地方には、冷凍食品、うどん、漬物、かまぼこなどの食品加工産業に携わる企業が集積している。その中で、ハマダフードシステムは、創業者の浜田勝義氏による1970年の設立以来、「毎日がおいしい。毎日が健康。」をモットーに、食品加工会社の課題解決や新商品開発に貢献してきた。

食品加工会社へ技術力と製品で伴走 デジタル強化でグローバル市場を視野へ ハマダフードシステム(香川県)
食品添加物を製造するハマダフードシステムの自社工場

取引先は1,000社を数え、食品加工分野の商社として中国・四国地方で業界トップレベルの業績を誇る。卸売業以外に、食品加工現場の衛生管理や環境整備を行うサニテーション事業や食品加工資材の輸出入も手掛け、自社工場で粉体の食品添加物の製造にも取り組んでいる。産学連携に力を入れ、健康食品などの素材開発に取り組む香川大学発のベンチャー企業、有限会社シーバイオンを傘下に置いている。また、香川大学の留学生を対象にした「日本の食の安全人材育成プログラム」にも支援企業として参画している。

食品分野の研究、開発、分析に力を入れ、技術的な視点から取引先に解決策を提案している

食品加工会社へ技術力と製品で伴走 デジタル強化でグローバル市場を視野へ ハマダフードシステム(香川県)
ハマダフードシステムの蓮井真人代表取締役社長

「お客様にとって商社としての役割を果たすことはもちろん、伴走者としてお役に立てるように食品分野の研究、開発、分析に力を入れています。技術的な視点から解決策を提案することを何より大事に考え、おいしさの追求だけでなく、衛生管理、品質管理のあらゆる要望にスピーディーに対応しています」。香川県高松市西部の浄願寺山を望む緑豊かな田園エリアに立地するハマダフードシステムの本社で、取材に応じた蓮井真人代表取締役社長は事業に取り組む思いを話した。

現在46歳の蓮井社長は、2020年、会社が設立50年を迎える節目で、現在代表取締役会長を務める父親の蓮井昌彦氏から社長職を受け継いだ。半世紀以上にわたって蓄積してきた会社の技術とノウハウを生かしながら長期的視野で事業に取り組むことを心がけているという。

2014年、取引先と合同でタイに子会社を設立し、現地の日本企業をサポート 日本の食のグローバル化を支えている

ハマダフードシステムは、海外展開にも力を注いでいる。2014年、仕入先の千葉製粉株式会社と合同で、タイにチハマフードグループを設立した。チハマフードグループは、食品用品質改良剤の研究、製造に取り組むチハマフードマテリアルズと食品用品質改良剤、食品加工資材の販売に取り組むチハマフードシステムで構成。タイに進出した日本の食品加工企業を主な取引先に、日本で育んだ食品加工分野の知識と技術力を生かして生産現場をサポートしている。タイを拠点にインドネシア、ベトナムといった東南アジア諸国への事業展開も進めている。

「人口減少が続く日本とは対照的に、海外では新興国を中心に人口増加が続きます。おいしさだけでなく安全、安心な日本の食品に対する世界各国の評価は高く、ビジネスチャンスは拡大しています。10年以上にわたって蓄積した海外事業のノウハウを生かして、日本の食のグローバル化に貢献していきたいと考えています」と蓮井社長は今後の海外展開への意気込みを示した。

従業員がリラックスして創造性を発揮しやすい環境づくりを目指し、遊び心も加えて新社屋を設計

食品加工会社へ技術力と製品で伴走 デジタル強化でグローバル市場を視野へ ハマダフードシステム(香川県)
1階から2階につながるらせん階段
食品加工会社へ技術力と製品で伴走 デジタル強化でグローバル市場を視野へ ハマダフードシステム(香川県)
社屋の入口に飾られた動物のオブジェ
食品加工会社へ技術力と製品で伴走 デジタル強化でグローバル市場を視野へ ハマダフードシステム(香川県)
1階に掲示している健康経営優良法人の認定書

ハマダフードシステムは、2019年3月、会社の敷地面積を拡張して2階建ての新社屋を完成させた。建材には良質な木材を使い、正面入口部分に半円筒形の張り出しを設け、洗練された外観にしている。ガラス越しに外光が差し込む張り出し部分の内側には2階につながるらせん階段を設け、香川県出身の造形作家が制作したキリンなどの動物のオブジェを飾っている。オフィスを配置している1階は開放感を感じられるように天井を高くしている。「新社屋は、従業員に創造性を発揮しやすいリラックスした雰囲気で仕事をしてもらいたいという思いで、遊び心を加えて設計しました」と蓮井社長は話した。

食品加工会社へ技術力と製品で伴走 デジタル強化でグローバル市場を視野へ ハマダフードシステム(香川県)
従業員の福利厚生に活用しているキャンピングカー

ハマダフードシステムは、従業員の健康に配慮している企業として経済産業省が評価する健康経営優良法人の認定を受けるなど、働きやすい環境づくりに取り組んでいる。福利厚生の充実に取り組み、保養施設の利用補助のほか、自社で所有するキャンピングカーの貸し出しも行っている。「新たな人材を獲得していくために、職場環境を整えることは非常に大事と考えています。一生面倒を見る覚悟で採用活動を行っています」と蓮井社長は説明した。

若手の採用に積極的に取り組む 従業員一人ひとりにパソコンを配布し、建物内のどこでもインターネットに接続して仕事をできるようにしている

新社屋の建築にあたり、快適なオフィス空間の形成と併せて力を入れたのが、業務のデジタル化への対応だ。新社屋には無線ネットワークを完備している。約30人の従業員一人ひとりにパソコンを配布しており、建物内のどこでもインターネットに接続して仕事をできるようにしている。

新社屋の完成と併せて20代の人材採用を加速した。毎年定期的に新卒人材を採用した結果、従業員数は10人近く増え、20代が3分の1を占めるようになった。デジタル機器の扱いに慣れた若い人材が増えた結果、業務のデジタル化を進めやすくなるという好循環が生まれている。

文書管理システムを導入して文書の保存と拠点との情報共有に活用 クラウドサービスでアプリを自社で作成するなど基幹業務のデジタル化を進めている

ハマダフードシステムは、20年以上前から文書管理システムを導入して稟議書や会議の議事録などを保存し、東京都内、徳島県内の営業所、愛媛県内の事務所、香川県小豆島の倉庫との情報共有に役立てている。インターネット環境が充実した新社屋が完成したことをきっかけに、文書管理システム以外でもデジタルサービスの導入を進めているという。

食品加工会社へ技術力と製品で伴走 デジタル強化でグローバル市場を視野へ ハマダフードシステム(香川県)
請求書作成システムを活用している様子

2023年にはプログラムを学んだ経験がない人でもノーコードで業務に役立つアプリを作成できるクラウドサービスを導入した。これまでに社内の業務内容に合わせた日報作成、顧客管理、出張申請などのアプリを作成し、以前は紙ベースで行っていた業務のデジタル化を進めている。ほぼ同時に、見積書、請求書、納品書といった帳票類をデジタルで作成できるクラウドサービスも導入した。帳票処理の電子化に対応している取引先には、紙の請求書を送付する必要がなくなったので、封入や発送に要する時間を削減することにつながっている。

AIを活用した議事録作成システムを導入して会議の記録業務を効率化 積み重ねることで大きな効果に

2025年3月には、会議での発言を自動で文字起こしして要約するAIを活用した議事録作成システムを導入した。定期的に開催する営業、製造などの部署ごとの会議、幹部による経営会議では、これまで、出席者が持ち回りで会議の終了後、録音データを聞いて議事録を作成し、まとめるのに1時間から数時間かかっていたという。システムを活用することで、会議の進行と同時に議事録をまとめ、終了後に内容を確認するだけで作業を終えられるようになった。「会議の議事録作成は必要な業務なだけに、手間と時間を省いて新しく時間を生みだせるのは大きい。活用すればするほど効果が期待できそうです」と蓮井社長は話した。

そのほか、情報発信に活用しているホームページでは、会社概要、事業内容、採用案内のほか、長年にわたって蓄積してきた食品加工技術についての情報を掲載している。取引先を新規開拓する上で効果を発揮しているという。新社屋の完成と併せて制作した社歌をBGMにした会社案内の動画も掲載している。

デジタル化とグローバル化が進展するこれから先の時代を見据え、人材育成に力を入れる

食品加工会社へ技術力と製品で伴走 デジタル強化でグローバル市場を視野へ ハマダフードシステム(香川県)
ハマダフードシステムの本社の外観

課題を抽出して適切な解決策を食品加工の現場に提案することで、日本の食の品質向上や安心、安全の確保に大きな役割を果たしているハマダフードシステム。「若い人材でも実力に応じて重要な仕事を任せるようにしています。活躍してもらっているシニア人材の技術と知識を若い人材に伝えることにも力を入れていきたい」と蓮井社長は意欲を示した。社会のデジタル化とグローバル化の進展に呼吸を合わせることで、ハマダフードシステムは、その可能性を大きく広げようとしている。

企業概要

会社名株式会社ハマダフードシステム
本社香川県高松市松並町608-1
HPhttp://hamadafs.co.jp/
電話087-865-0001
設立1970年5月
従業員数31人
事業内容  食品加工技術の開発、研究、技術指導及び食品加工関連資材の販売、食品工場の衛生状況の検査に基づくサニテーションの改善の立案と指導、衛生資材、薬剤、食品衛生機器類の販売、自社開発商品の製造、日本国外の食品加工資材の輸出入業務