
2025年3月のNFT市場は、全体として低迷が続く結果となりました。
米大統領トランプ氏の関税政策を筆頭に、世界情勢の不安定さが暗号資産やNFT市場に大きな影響を与えており、投資家はリスクヘッジに対する意識を強めているように思われます。
本レポートでは、2025年3月の各種データを基にNFT市場の現状を分析し、今後の動向について考察します。
本レポートの全体概要
・2025年3月のNFT売上高は前月比約9.8%の減少 ・イーサリアムは先月比58.64%の売上減少、ビットコインは37.39%下落 ・ソラナは下落率6.64%、ユーザー数は約50.6%減少 ・Polygonのユーザー数は2月の117,000人から3月には52,000人に激減 ・Immutable NFTの売上高は前月比22.30%増、Paniniは前月比501.81%の飛躍的成長を記録 ・マーケットプレイス市場はMagic EdenとOpenSeaの2つが牽引 ・主要コレクションではCourtyardが取引高で首位に ・CryptoPunksやBAYCなどフロア価格が10〜20%回復しているものも ・国内市場は、Murakami.Flowers Officialをはじめ主要コレクションの取引高が軒並み低下 |
市場概要
2025年3月のNFT市場は、全体として低調な推移を続けています。CryptoSlamのデータによれば、2月の売上高が約4億7,646万ドルであったのに対し、3月は約4億2,987万ドルへと約9.8%減少しました。


月間取引回数が前月比12.33%の増加であることを踏まえると、ユーザー数自体に大きな変動は見られない一方で、平均取引額が大きく減少していることがわかります。
また、Cointribuneの報告によると、2025年第1四半期の売上高は2024年同時期に比べ63%減少しており、現状はかつての水準を大きく下回っていることがわかるでしょう。
この状況の背景として、特にトランプ氏の関税政策はNFT市場だけでなく、暗号資産や株式市場など広範な金融市場にも波及していると考えられます。
さらにDappRadarによると、2025年第1四半期はハッキングや詐欺、悪用により総額20億ドル以上が失われるなど、Web3のセキュリティが大きく揺らいだとの報告があります。

Bybitの大規模ハッキングや、年初に注目を集めたミームコインの暴落など、複数のネガティブ要素が市場の不安定さに拍車をかけたと予想できるでしょう。
なお、RWAやスポーツ領域など一部のサブセグメントでは堅調な動向が確認されるものの、全体としては市場全体の底堅さを期待するには程遠く、今後の回復には慎重な見極めが必要とされる局面と言えます。
チェーン別動向
2025年3月のブロックチェーン別NFT売上高を見ると、依然として主要チェーンにおける冷え込みが続いています。
CryptoSlamのデータによると、イーサリアムは市場シェアの中心ではあるものの、先月比で58.64%の売上減少となりました。

続くビットコインも37.39%の下落を記録し、かつての高騰期に比べ軟調な動きが目立っています。
一方、ソラナでは、前月が約46%の売上減少を示していたのに対し、3月は下落率が6.64%にとどまりました。しかしながら、ユーザー数は162,000人から80,000人へと約50.6%減少しており、ミームコイン市場の縮小とともに、利用者が他のチェーンへ流出する傾向が見受けられます。


また、Polygonにおいても、2月の117,000人から3月には52,000人へ大幅に減少し、取引活性化が大きな課題となっている模様です。
3月において上位10チェーンの中で特に目立ったのはImmutableとPaniniです。Immutableは、ガス代ゼロかつ高速な取引処理が強みのイーサリアムレイヤー2ソリューションとして、3月に約25,729,691ドルの売上を記録し、前月比22.30%の増加となりました。公式発表によれば、4月には独自ウォレット「Passport」のユーザー数が500万人を突破したとのことで、今後の展開に大いに期待が持てます。
Immutable Passport just hit 5 million users!
— Immutable (@Immutable) April 10, 2025
Launched in January 2024, Passport has played a pivotal role in onboarding millions of players into web3 through games.
Shoutout to the early players and games who led the charge - @RavenQuestGame, @Overtake_World, @ImmortalRising2,… pic.twitter.com/x1SPQTucwx
また、Paniniは60年以上のコレクタービジネスの実績を背景に、Panini Americaが提供する公式ライセンス付きデジタルトレカプラットフォームとして、NBA、FIFA、ラ・リーガなど主要スポーツトレーディングカードをNFT化しています。
3月は約6,152,282ドルの売上を記録し、前月比で501.81%という大幅な成長を遂げました。
マーケットプレイス別動向
2025年3月のマーケットプレイス別動向では、Magic EdenとOpenSeaが市場を牽引しました。

ユーザー数では、OpenSeaが約138,000人(全体43.0%)で最大シェアを誇り、Magic Edenが約105,000人(32.8%)で続いています。取引高は、前月3位に位置していたMagic Edenが首位で7,090万ドル(全体28%)を記録し、OpenSeaが6,170万ドル(24.3%)で健闘しました。取引収益については、Magic Edenが140万ドル(78.5%)という圧倒的な存在感を示し、OpenSeaは31万ドル(17.4%)、ソラナ特化のTensorは3.6万ドル(2%)、Blurは極めて低調な1.9万ドル(1%)にとどまっています。
また、ロイヤリティ収入では、Polygon上のDewが130万ドル(37.6%)で首位を占め、続いてOpenSea(94.4万ドル、26.6%)およびMagic Eden(89.6万ド、25.2%)が並んでいます。
前月はOS2のベータ版リリースによりOpenSeaの取引高が急増しましたが、XP報酬システムの変更が発表されたことで、その後は落ち着いた動きとなったと考えられます。

さらに、イーサリアムNFT全体の取引量のうち、約12.1%はLarva Labsに起因しており、後述するCryptoPunksの取引が影響している可能性が示唆されております。
各マーケットプレイスは、厳しい市場環境の中でそれぞれの強みを活かし、次なる盛り上がりを模索している様子がうかがえます。
主要NFTコレクションの動向
2025年3月の市場では、全体の調整局面が続く中、主要コレクションにも個別の動きが浮き彫りになっています。

月間取引高で首位を記録したのはCourtyardです。Courtyardは、実際のコレクターズアイテムをNFT化し、管理・取引を可能にするサービスを提供しており、取引されているNFT単体の価格はそれほど高くないものの、コレクター市場で高い支持を得ています。
続くCryptoPunksは、取引高や取引件数の増加が目立ち、フロア価格も20%上昇とブルーチップとしての存在感を堅持しています。月間高額取引の上位にCryptoPunksが多く名を連ねることから、安定したコミュニティがベアマーケット下でも一定の需要を支えていると考えられます。(下記、月間高額取引上位7つ)

Pudgy Penguinsは、取引量が大幅に減少している一方、フロア価格はほぼ横ばいに推移しており、ブランド力は維持されつつも調整局面に入っています。
また、唯一ビットコインのオーディナルズプロジェクトとしてランクインしたQuantum Catsは、取引高が161.3%、取引件数は458.4%と急成長を遂げました。背景には、Quantum Cats保有者向けに25日にリリースされたTaproot Wizardsを割引価格でミントできる特典が大きく作用しているとみられます。
全体としては、取引量の減少と同時にフロア価格が上昇する傾向から、前月を底と捉えた投資家が購入に動いている可能性が示唆されます。
今後も各プロジェクトの動向に注視し、適切なタイミングで市場全体の回復と成長の兆しを見極めていく必要があるでしょう。
国内のNFT市場動向
2025年3月の国内NFT市場は、全体的に調整局面に入っている様子が見受けられます。

NFTRankingのデータによると、2月に取引高で首位を記録していた「Murakami.Flowers Official」は、取引高が98.89ETHから37.59ETHへと大幅に減少しました。その他、取引高でトップ10にランクインしていたコレクションも軒並み取引高が低下しています。
これらの背景には、1月末にリリースされたメルカリNFTの影響が大きいと考えられます。


実際に、2月末までのメルカリNFTのオンチェーンデータでは、総取引件数が9,104件、総取引額が約91ETH(約258,820ドル)に達していましたが、リリースから2ヶ月が経過するにつれて、取引活動は次第に落ち着きを見せています。
国内のNFT市場は、一時的な盛り上がりから冷静な取引環境へと戻りつつあり、今後の動向を注視する必要がある状況です。
3月のNFTニュースベスト6
ここでは、2025年3月に話題になったNFT関連のニュースの中から、特にインパクトのあったものを6つに厳選してご紹介します。
1. 超人気アニメ「七つの大罪」初の公式NFTがOpenSeaで登場 2. 手塚治虫「火の鳥」展開催を記念した限定NFTが発売 3. セガの名作「CODE OF JOKER」が復活!ブロックチェーン対応でリリース予定 4. SyFu、NFTプレセール45分で20,000個完売、総額1億円を達成! 5. Axie Infinity、今夏に新作「Atia’s Legacy」をリリース予定 6. X2Y2、NFTマーケットプレイス事業を終了 |
各ニュースの概要を見ていきましょう。
超人気アニメ「七つの大罪」初の公式NFTがOpenSeaで登場

世界的人気アニメ『七つの大罪』の公式NFTコレクションが、OpenSeaでリリースされました。
こちらはYOAKE entertainmentとOpenSeaの提携によって実現したものです。
今作は「劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち」の名場面をSoneium上でデジタル化したもの。
価格は1点につき0.002 ETH(約500円)、オープンエディションでの販売でした。
72時間限定と短期間での販売でしたが、最終的には16,573のミント数を記録。総額800万円以上の売上を記録しました。
詳しくはこちら▼
OpenSeaとYOAKE entertainmentが提携。大ヒットアニメ「七つの大罪」初のNFTをグローバル展開へ
手塚治虫「火の鳥」展開催を記念した限定NFTが発売

3月7日から東京シティビューで開催中の「手塚治虫『火の鳥』展」を記念し、手塚プロダクションが制作する公式NFTが、日本動画協会の「オープンポスト」にて発売されました。
NFTは火の鳥の世界観を活かしたデザインが特徴で、1点につき3,000円、限定5点の販売という内容でした。
過去にも何度か販売されたことのある手塚氏のNFTということで、今回も注目度が高く販売後すぐに完売。
余談ですが、そのうちの1点をNFT Mediaのメンバーが購入することに成功していました。
詳しくはこちら▼
手塚治虫「火の鳥」展開催記念限定NFT発売
セガの名作「CODE OF JOKER」が復活!ブロックチェーン対応でリリース予定

セガの名作『CODE OF JOKER』が、ブロックチェーンベース対応の新作『CODE OF JOKER EVOLUTIONS』として復活することが発表されました。
『CODE OF JOKER』はセガが2013年にリリースした思考型デジタルTCG。全国のアミューズメント施設650店舗以上で展開された、超人気タイトルです。
新作は海外で2025年夏先行リリース、日本では2026年中のリリースを目標とし、スマートフォン(iOS、Android)での展開を予定しているとのこと。
基盤チェーンには、元Meta社のチームによって開発された、超低コストかつ高速処理を実現するSuiを採用。Suiは従来のTCG要素を保ちつつ、ブロックチェーンならではの資産性と利便性を融合させた進化形として注目を集めています。
詳しくはこちら▼
セガの「CODE OF JOKER」が復活!ブロックチェーン対応版がSuiでリリースへ
SyFu、NFTプレセール45分で20,000個完売、総額1億円を達成!

決済データを活用するWeb3ライフスタイルアプリ「SyFu」は、3月15日にMANEKINEKO Common(OG)NFTプレセールを実施。
DiscordやTelegramを中心に5万人超を巻き込んだ今回のプレセールは、開始後わずか45分で20,000個が完売、総額1億円を記録するほどの盛り上がりを見せました。
MANEKINEKO NFTは、SyFuのGameFiエコシステムで決済データをデジタル資産に変える中核的役割を担い、Common(OG)はNFTスカラーシップを含む多面的な活用ができる特別モデルとして大きな注目を集めています。
今後はメインネットでのオープンβ版やグローバル決済「SyFu Pay」、NFTマーケットプレイスの公開を予定しており、コミュニティと共にWeb3の新時代を切り拓く方針を明らかにしました。
詳しくはこちら▼
SyFu、NFTプレセール45分で20,000個完売、総額1億円を達成
Axie Infinity、今夏に新作「Atia’s Legacy」をリリース予定
ブロックチェーンゲームの先駆者『Axie Infinity』が、新作MMORPG『Atia’s Legacy』を2025年夏にリリースすると発表しました。
INTRODUCING ATIA’S LEGACY — THE AXIE MMO
— Axie Infinity (@AxieInfinity) March 6, 2025
Lunacia was once a place where gods roamed the land, flew through the clouds, and swam the seas. After centuries of war, Lunacia is ripe for rebuilding.
Testers wanted 👇
📝 : https://t.co/CKs65mxH4Y
First play-test: Summer ‘25
More… pic.twitter.com/sFHCikZGAZ
神々が統治していた世界「Lunacia」の再建を描く壮大な物語を軸に、すでにプレイテストの事前登録もスタート。
ブロックチェーン技術をさらに進化させ、ギルド連携やNFT要素を強化することで、Axieの世界観を新たな形で体験できるタイトルとして大きな期待を集めています。
詳しくはこちら▼
Axie Infinity、今夏に新作「Atia’s Legacy」をリリース予定
X2Y2、NFTマーケットプレイス事業を終了
NFTマーケットプレイス「X2Y2」は、2025年4月30日をもってプラットフォームのサービス提供を終了することを発表しました。
After 3 incredible years and $5.6B in trading volume, X2Y2 will be sunsetting as an NFT marketplace on April 30, 2025. Read @tp_x2y2's full announcement below for details. 👇 https://t.co/Qj4DEJkkmy
— X2Y2 (@the_x2y2) March 31, 2025
スマートコントラクトは稼働を続けますが、ウェブサイト等のマーケットプレイス機能は停止。
CEOのTP氏は、NFT取引量が2021年ピークから90%減少した現状とネットワーク効果の限界を理由に挙げ、累計取引高56億ドルの実績を背景に、AIを活用した分散型プロジェクトへの事業転換を図ると述べました。
4月以降のNFT市場動向予測と期待、リスク要因
今後のNFT市場は、厳しい調整局面を経た後、各分野での新たな展開が期待される一方、依然として懸念されるリスクも残る状況です。
ここでは、4月以降に向けての市場展望と、依然として懸念されるリスク要因について整理します。
期待される動向と展望
新興チェーンの堅調なユーザー基盤や、スポーツおよびデジタルトレカ分野でのNFT活用の拡大が、今後の市場回復の原動力となる見込みです。
特に、デジタルトレカなどRWA分野では、ユーザー基盤の拡大と取引の活性化が進むと予想されます。また、世界情勢が徐々に安定することで、投資家の安心感が高まり、全体の市場活性化につながる可能性もあります。
潜在的なリスク
一方、世界経済の不透明感やセキュリティリスクの顕在化、さらには一部プロジェクトの運営の不透明さが市場回復の足かせとなる可能性がございます。
さらに、投機的な取引や詐欺事例、流動性の低下といった要素も、全体の信頼性を損ねるリスクとして懸念されます。
まとめ
2025年3月は、世界・国内ともにNFT市場が調整局面にある一方、各分野での新たな取り組みや技術革新が進んでいることが確認されました。
主要チェーンやマーケットプレイス、さらには各コレクションの動向は、従来の盛り上がりから一転して慎重な動きに転じていますが、スポーツやRWAなどの分野で新たな需要創出の兆しも見受けられます。
業界としては、リスクに対して適切な対応を取るとともに、規制や技術の進展などトレンドの変化をしっかりと受け入れる姿勢が、持続的な発展に向けた鍵となるでしょう。
過去のレポート記事はこちら▼
・【2024年12月】NFT市場動向|11月は回復の兆しを見せる!? ・【2025年1月】NFT市場動向|12月はブルーチップNFTが市場を牽引! ・【2025年2月】NFT市場動向|1月は市場が大きく縮小、売上高は24%マイナスに ・2025年2月NFT市場動向レポート|取引高は12月から60%超のダウンを記録 |
参照・引用元
・https://dappradar.com/ ・https://www.cryptoslam.io/ ・https://www.nftpulse.org/ ・https://dune.com/denze/courtyard ・https://nftranking.jp/ ・https://dune.com/konityan/merukarinft |