矢野経済研究所
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2023年度の国内医療ICT市場規模は2018年度比1.59倍の198億円を予測

~電子問診システム、オンライン診療システム、クラウド型電子カルテは特に高い成長率~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の医療ICT市場を調査し、主要セグメント別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

国内医療ICT市場規模推移・予測

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1.市場概況

国内の医療機関(病院、一般診療所等)における医療情報の電子化(医療ICT)は、将来のAIソリューションの実現に向けて重要となる医療データの収集に寄与するものと考える。本調査における医療ICTとは、医療クラウドを中心とした7セグメント(クラウド型電子カルテ、クラウド型PACS(医療用画像管理システム)、VNAシステム(Vendor Neutral Archive System)、クラウド型遠隔画像診断システム、オンライン診療システム、診療予約システム、電子問診システム)を対象とする。

2018年度の国内医療ICT市場規模(事業者売上高ベース)は124億8,500万円と推計した。同年度をセグメント別でみると、市場規模が大きいセグメントは、クラウド型電子カルテ、クラウド型PACS、診療予約システムである。

注目トピック

電子問診システムは2020年代を通じて拡大すると予測

本調査では、「タブレット問診システム」(医療機関内でタブレット端末を用いて問診を行うシステム)と「Web問診システム」(患者が事前に自宅等においてスマートフォン等を用いて問診を入力するシステム)を合わせて「電子問診システム」とし、市場規模を算出している。同システムは主に一般診療所に導入されている。

電子問診システム市場が本格的に形成されはじめたのは2018年頃からであり、医師や開業支援企業(コンサルティングを行いながら開業を支援する企業)の認知度が十分ではないことが課題となっている。現時点での導入数は少ないものの、認知度の向上に伴い2020年代を通じて拡大していく市場であると考える。

電子問診システム導入の大きなメリットは、同システムで入力された問診内容を電子カルテと連携させることで、カルテの入力時間を短縮できることから、省力化、効率化が図れることにある。こうしたことから、電子カルテの普及が同市場の拡大を後押しする要因になるものとみる。

3.将来展望

2023年度の国内医療ICT市場規模(事業者売上高ベース)は、2018年度比1.59倍の198億円になると予測する。特に成長率が高いのは、電子問診システムやオンライン診療システム、クラウド型電子カルテである。

国内医療ICT市場全体の成長要因としては、国による医療ICTの推進、医療情報システムの主要ベンダーにおけるクラウドサービス提供への移行(特に電子カルテやPACS(医療用画像管理システム)分野)が挙げられる。また、新規開業クリニック(一般診療所)においては院長が比較的若いこと、病院勤務時代に医療ICTの利用経験があること、他院との差別化の必要性があることなどから、医療ICT機器の導入がされやすいと考える。こうしたことから、国内医療ICT市場全体は拡大基調にあるものとみる。