矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

2019年度の肥料市場は前年度比97.2%の見込

〜肥料銘柄の集約や入札方式の導入により、市場規模は減少で推移~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内における肥料市場を調査し、市場規模、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

国内の肥料市場規模推移

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1.市場概況

2016年に農業の競争力強化のための活力創造プランがとりまとめられ、2017年度以降、全国農業協同組合連合会(JA全農)により肥料など生産資材改革が行われ、多品種少量生産解消に向けて高度化成肥料やNK化成肥料、普通化成肥料などの銘柄が集約された他、入札制度を導入し競争入札などにより最安値を探り、化成肥料を中心に1~3割の値下げとなった。このようなことから、国内の肥料市場は減少傾向にあり、2018年度の肥料市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比94.5%の3,461億3,200万円となった。

2.注目トピック

肥料銘柄の集約や入札方式の導入により、中長期的に肥料価格の低下は続く

2015年度以降、農家(生産者)の所得を増やすための取組みがJA全農を中心に行われており、生産資材価格の見直しの一環として、高度化成肥料を中心に肥料価格も1~3割程度の値下げとなった。
そのため、肥料メーカーやJA全農では、低価格肥料や低成分肥料の供給も進めてきた。省力化については、肥効調節型肥料を用いた育苗箱全量施肥や、側条施肥技術等の導入により、投入量と労働時間を低減する取組みを進めている。さらに、家畜ふん堆肥の活用も行われている。家畜ふん堆肥は、化学肥料に比べて安価に入手できることから、ここ数年化学肥料の代替として利用されている。
また、肥料取締法の改正により、堆肥と化成肥料の混合散布については、施肥労力の軽減につながる他、安い堆肥との置き換えで肥料価格が1〜3割程度下がる見込みで、生産者にとってメリットは大きいと考える。

3.将来展望

JA全農では、今後も2018年春向け高度化成肥料の購入価格引下げと同様の取組みを他の肥料に広げる方針となっており、中長期的に肥料価格の低下は続いていく見通しである。
そのため、肥料メーカーにとっては収益の維持に向けて、合理化や高付加価値品へのシフトが一層迫られることとなる。そうしたことから、2019年度の肥料市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比97.2%の3,364億4,000万円になる見込みである。
但し、肥料原料はほとんど値下がりがしていない状況にあることや、物流費が年々上昇していることから、肥料メーカーは、銘柄集約によるスケールメリットを生かした合理化の推進や、JA全農・経済連や他メーカーと連携した最適な物流網の構築、高付加価値品の販売拡大などによって、肥料事業での売上高減少を補わなければならないと考える。