医療と連携した多種多様な介護サービスを提供 外国人介護人材も年々進化するデジタル技術で働きやすい職場へ 敬世会(香川県)

目次

  1. 介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、ケアハウス、グループホーム、複合型高齢者福祉施設といった多種多様な施設を運営
  2. 慢性的な人手不足に対応するために、2009年から外国人介護人材を活用
  3. 外国人介護人材は充実した介護サービスを提供する上で欠かせない存在 介護福祉士の資格取得をしっかりとサポート
  4. デジタル機器やICTの導入を通じた事務作業の自動化 職員が現場に集中できる環境を整える
  5. システムを活用して介護記録にかかる手間と時間を大幅に削減 システムは体温などの計測データをそのまま記録する機能を備えている
  6. システムの導入は想定以上の効果 100人近くが入所する城山苑では1ヶ月あたり約260時間の余裕が生まれた
  7. システムの翻訳機能を使うことで、外国人介護人材がこれまで以上に仕事に取り組みやすくなった 技術が言葉の壁を崩すことを日々実感している
  8. 2024年6月にホームページをリニューアル 各施設の情報や職員のコメントを豊富な写真や動画とともに掲載
  9. 人と人のつながりを大事にしながら、デジタル技術を活用して、持続可能な介護サービスを提供し続ける
中小企業応援サイト 編集部
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介護の仕事は食事や入浴の介助、利用者とのコミュニケーション、介護記録の記入など多岐にわたり、気を遣わなければならない業務が多い。これらの業務に対応する働き手の確保は、介護業界の大きな課題となっている。この状況下、香川県坂出市の社会福祉法人敬世会は、充実した介護サービスを提供するために外国人介護人材の活用に力を入れている。同時に、施設で働く職員が現場の仕事に集中しやすい環境を整えるためにICTやデジタル機器を導入して事務作業の負担軽減を図り、サービスの質の向上につなげている。(TOP写真:利用者のバイタルデータや食事などの記録を行うためにシステムと連動したタブレット端末を活用する様子)

介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、ケアハウス、グループホーム、複合型高齢者福祉施設といった多種多様な施設を運営

医療と連携した多種多様な介護サービスを提供 外国人介護人材も年々進化するデジタル技術で働きやすい職場へ 敬世会(香川県)
敬世会が運営する介護老人保健施設、城山苑の外観

香川県坂出市の社会福祉法人敬世会のはじまりは、1990年、同市の医療法人社団 永井整形外科医院が介護老人保健施設、城山苑を同市川津町に設立したことにさかのぼる。城山苑は当初、医療法人社団 永井整形外科医院が運営していたが、高齢者福祉サービスの需要の高まりに対応するために1997年に社会福祉法人敬世会として独立。特別養護老人ホーム、ケアハウス、グループホーム、複合型高齢者福祉施設といった多種多様な施設を整えていった。同市内では約600人の高齢者が永井グループの施設が提供するサービスを利用している。

永井グループ内では、そのほか運営施設の給食部門の役割を担うセントラルキッチン(給食会社)や、子育て中の職員が利用できる企業主導型保育園も運営している。セントラルキッチンは2017年6月、調理した食品のできたてのおいしさを、そのまま冷凍保存する機能を備えた瞬間冷凍機を導入。毎日朝・昼・夕に施設に配食する料理の計画生産能力を高めることで、施設利用者の食の充実と担当者が働きやすい環境づくりにつなげている。毎日の給食の配送と安否確認をセットにした独居高齢者向けのサービスを始めることも検討している。

「高齢者を対象にした入所、通所、自宅訪問といった様々な介護のニーズに対応できるように施設を整え、医療と連携した適切なケアやサポートを提供しています。人々が地域で安心した毎日を送る上で、なくてはならない法人でありたいと思っています」。城山苑で取材に応じた敬世会法人本部の草薙貴光部長は、地域で高齢者福祉サービス事業に取り組む上で大事にしている思いを語った。

慢性的な人手不足に対応するために、2009年から外国人介護人材を活用

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敬世会では数多くの外国人介護人材が活躍している

2025年を迎え、人口ボリュームが大きい団塊の世代の全員が、75歳以上の後期高齢者となった。日本社会の高齢化は加速し、2035年には人口の三分の一を65歳以上が占めるようになる。その中で課題となっているのが介護業界の働き手不足だ。2026年度に全国で約240万人の介護職員が必要になるという厚生労働省の試算に対し、実数は約215万人(2022年度)。このまま介護職員が増えなければ近い将来、約25万人が不足することになる。

慢性的な人手不足に対応するために、敬世会が力を入れているのが、外国人介護人材の活用だ。2009年からインドネシアとのEPA(経済連携協定)や2019年4月に創設された特定技能制度を通じて採用を進め、現在、インドネシアやフィリピンから来日した76人を雇用している。宗教や文化の違いに配慮した上で、言語の壁を越えて意見交換を繰り返しながら受け入れ態勢の充実を図り、段階的に人数を増やしてきた。採用を始めてから15年以上が経過し、10人近いチームをまとめるリーダー役を務めるなど順調にキャリアアップしている人材も多いという。

外国人介護人材は充実した介護サービスを提供する上で欠かせない存在 介護福祉士の資格取得をしっかりとサポート

外国人介護人材の平均年齢は25歳。母国の高校や専門学校で看護や介護を学び、日本語の研修を受けた上で来日している。「日本を信頼して、故郷を離れて働きに来てくれている東南アジア出身の職員たちは、利用者の皆さんに充実した介護サービスを提供する上で欠かせない存在です。アニメのサザエさんのような大家族の中で育ち、高齢者への接し方に慣れている人が多いので、利用者の皆さんからは『親しみやすく、丁寧に接してくれる』といった声が数多く寄せられています」と草薙部長は話す。

敬世会は、外国人介護人材が、日本で長期間働く上で必要な介護福祉士の資格を取得するための研修費用を補助するなど生活面でのサポートに力を入れている。「末永く日本で働いて介護業界でのキャリアを積んでいただくことはもちろん、香川県を第二の故郷と心から思ってもらえるように魅力的な職場環境を引き続き提供していきたい」と草薙部長。子育てしながら働く外国人介護人材も増えており、敬世会が運営する保育園を活用して仕事と家庭を両立しているという。

デジタル機器やICTの導入を通じた事務作業の自動化 職員が現場に集中できる環境を整える

外国人介護人材の活用とともに、職員一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境を整えるために敬世会が進めているのが、デジタル機器やICTの導入を通じた事務作業の効率化だ。2020年には、ICカードで出退勤時間を打刻する勤怠管理システムを導入して、給与計算システムと連動し、グループ全体で約260人いる職員の勤怠管理と給与計算の業務を自動化した。紙のタイムカードを使って手作業で勤務時間を集計して給与計算システムに入力していた導入前と比べて、計算や入力の手間が必要なくなり、確認作業に集中するだけで済むようになった。

システムを活用して介護記録にかかる手間と時間を大幅に削減 システムは体温などの計測データをそのまま記録する機能を備えている

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敬世会法人本部の草薙貴光部長

2024年1月には、専用のソフトウェアを組み込んだタブレット端末を使って、利用者の体温、血圧、脈拍といったバイタルデータや食事などの記録を簡単に行うことができる介護記録支援システムを導入し、19端末分のライセンスを取得した。

「以前は、1日1回以上記録する介護記録の記載や管理は非常に手間がかかり、介護を担当する職員の大きな負担になっていました。利用者の皆さんのバイタルデータの測定結果は、紙の用紙に手書きした後、それぞれの人のカルテにも転記していたので、その手作業に時間を取られていました。記録を確認したいと思った時も、カルテのファイルを誰かが持ち出していると、戻ってくるまで待たなければならないことも日常茶飯事。更にファイルの中から、ページを繰って必要なカルテを探していたので、その作業にも時間を取られていました」と草薙部長は振り返った。

医療と連携した多種多様な介護サービスを提供 外国人介護人材も年々進化するデジタル技術で働きやすい職場へ 敬世会(香川県)
介護記録支援システムを使ってパソコンで利用者のバイタルデータなどの記録を確認する様子

システムは送信機能を備えたデジタル型の体温計、血圧計、酸素飽和度測定器と連動して計測データをそのまま記録する機能を備えている。敬世会はシステムの導入と併せて、体温計などの機器を接触型から計測に時間がかからない非接触型に切り替えた。その結果、利用者一人あたりの体温測定に要する時間は、変更前の30秒から2秒に短縮。平均6分かかっていたバイタルデータと共に日々の様子やサービス内容を記録する時間は、登録されている定型文を使うことで書き込みの必要がなくなり、1分で済むようになった。

システムの導入は想定以上の効果 100人近くが入所する城山苑では1ヶ月あたり約260時間の余裕が生まれた

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城山苑の事務所

一人あたりではわずかな時間でも、積み重ねることで効果は大きくなる。入所者が100人近い城山苑では、システムを活用することによって、1ヶ月あたり約260時間の余裕が生まれたという。記録内容の確認もタブレット端末を通じて職員一人ひとりがいつでもどこでも確認できるようになったので、業務でストレスを感じることも大幅に減った。事務作業にかかる時間が減ったことで、職員と利用者とのコミュニケーションがより一層充実し、サービスの質を高めることにつながっているという。介護保険請求事務の支援システムとも連動することで、国民健康保険団体連合会に送る請求書を作成する作業も効率化している。

「システムの導入は想定以上の効果をもたらしています。導入前はベテランを中心に業務のデジタル化に不安の声を寄せる職員もいましたが、なじんだ今では『以前のアナログ式にはもう戻れない』といった声が上がるまでになっています」と草薙部長は満足そうに話した。

システムの翻訳機能を使うことで、外国人介護人材がこれまで以上に仕事に取り組みやすくなった 技術が言葉の壁を崩すことを日々実感している

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英語で表示されたタブレット端末の画面

システムは、タブレット画面に表示される日本語を、対応する外国語でも表示する機能を備えている。世界でも習得するのが難しいとされている日本語の読み書きに苦労していた外国人介護人材にとって、インドネシア語や英語への翻訳機能は大きなプラス効果をもたらしているという。

「来日して間もない職員は、日常会話は大丈夫でも、専門的な用語が書き込まれているカルテの内容を読みこなせるようになるまで、日本語の上達が速い人でも1年以上は必要でした。人と接するのは得意でも、日本語での記録の業務に苦手意識を感じていた職員にとって、翻訳システムは本当にありがたい技術です」と草薙部長。

外国人介護人材は、日常生活でもスマートフォンの翻訳アプリやeラーニングを日本語の習得や資格の勉強に活用している。翻訳システムの精度や使いやすさの向上に伴って日本人とのコミュニケーションは年々スムーズになってきているという。「新しい技術が言葉の壁を崩してくれていることを日々実感しています」と草薙部長は話した。

2024年6月にホームページをリニューアル 各施設の情報や職員のコメントを豊富な写真や動画とともに掲載

医療と連携した多種多様な介護サービスを提供 外国人介護人材も年々進化するデジタル技術で働きやすい職場へ 敬世会(香川県)
敬世会のホームページ

敬世会は2024年6月にホームページをリニューアルした。介護サービスを求める人や介護の仕事を探している人の視点を考えて、運営している各施設の情報、施設の取り組みや待遇についての情報、職員のコメントを豊富な写真や動画とともに掲載している。「情報発信を強化した効果は、サービス利用の申し込みや求人の面で徐々に生まれています。地域と共生する施設を運営する社会福祉法人として、これからも多くの人たちにありのままの姿を伝えたいと思っています」と草薙部長は説明した。

人と人のつながりを大事にしながら、デジタル技術を活用して、持続可能な介護サービスを提供し続ける

医療と連携した多種多様な介護サービスを提供 外国人介護人材も年々進化するデジタル技術で働きやすい職場へ 敬世会(香川県)
敬世会の本部事務局の外観

敬世会は今後も人と人のつながりを大事にしながら、利用者の安心と安全の確保、事務作業の効率化、仕事の属人化につながるICTやデジタル機器の導入を検討していきたいという。「高齢者の皆さんが、できる限り住み慣れた場所で生活を送ることができる環境をこれからも地域で整えていきたい」と草薙部長は力強く話した。敬世会の取り組みは、外国人が活躍できる環境づくりとデジタル技術の活用が、持続可能な介護サービスを実現する上での鍵となることを示している。

企業概要

法人名社会福祉法人敬世会
本社香川県坂出市川津町1986番地8
HPhttps://n-keiseikai.com
電話0877-45-0007
設立1997年9月
従業員数258人
事業内容   介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、地域密着型特別養護老人ホーム、ケアハウス、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、小規模多機能型居宅介護、デイサービスセンターの各施設の運営、企業主導型保育事業、給食事業