
目次
- 1957年に綿手袋の縫製工場として創業 1995年から高齢者向けシューズ「あゆみ」の生産を開始した
- 施設用、外出用、自宅用、入院用、防寒用など様々な用途で高齢者の足を支える きめ細かい要望に対応するためにパーツオーダー制を採用
- 本社の敷地内で「あゆみショップ」を運営 店内には工房を設け、イベントを通じて情報を発信
- 「顧客の声に耳を傾ける」。会社にとって大切な業務の時間を確保するためにデジタル技術を活用する
- 顧客とのコミュニケーション手段として商品に封入するアンケートはがきを大事にしている 年間数万通にのぼる返信に一通一通真摯に対応している
- アンケートはがきのデジタル化に業務用OCR機能を備えたスキャナーを活用 業務効率化や情報共有に大きな効果
- 生産管理、販売管理、証憑類の保存・管理にクラウドサービスを活用 情報の共有化を通じて仕事の属人化解消を図る
- 顧客のためのデジタルサービス開発にも取り組む
- 本社の敷地内に地域のための防災センターを設置 地域貢献や社会貢献で数多くの表彰を受ける
- 人生100年時代の中で高まる「あゆみ」のニーズ 真心を込めた対応を大事にしながら更なるデジタル技術の活用を視野に入れる
香川県の東部、さぬき市に本社を構える徳武産業株式会社は、高齢化社会の中で需要が高まっている高齢者向けシューズのパイオニア、「あゆみ」シリーズを世に送り出しているシューズメーカーだ。顧客の声に真摯(しんし)に耳を傾け、たゆまぬ改善に取り組む姿勢が、トップシェアを維持する高い商品力の源泉になっている。何より大事にしているのは「顧客ファースト」。デジタル機器やICTを活用することで、顧客ときめ細かなコミュニケーションを取るための時間を生み出している。(TOP写真:高齢者向けシューズのトップブランドとして支持を集める徳武産業の「あゆみ」シリーズ)
1957年に綿手袋の縫製工場として創業 1995年から高齢者向けシューズ「あゆみ」の生産を開始した

綿手袋の縫製工場として1957年に創業した徳武産業は、1970年代以降、ルームシューズ、旅行用スリッパ、ポーチなどのOEM(相手先ブランド製造)に取り組み、1995年から高齢者向けシューズ「あゆみ」の生産を開始した。当時社長を務めていた十河孝男代表取締役会長が知人から相談を受け、高齢者の役に立つシューズを社会に提供したいという強い思いを抱いたことが、新分野に乗り出すきっかけになった。高齢者向けシューズというジャンルが存在していなかったこともあり、500人以上の高齢者のモニター協力を受けて約2年かけて開発に取り組んだ。十河会長自ら介護施設に足を運び、高齢者から直接意見を聞いて回ったという。
施設用、外出用、自宅用、入院用、防寒用など様々な用途で高齢者の足を支える きめ細かい要望に対応するためにパーツオーダー制を採用

「あゆみ」は、年間約150万足、累計2千数百万足の販売実績を誇る高齢者向けシューズのトップブランドだ。主力商品の「ダブルマジックシリーズ」をはじめとするロングセラー商品を中心に、施設用、外出用、自宅用、入院用、防寒用などの様々な用途、デザイン、カラーの約80種類を生産している。つま先部分に反りを加えることで転倒リスクを軽減し、素材にこだわることで、軽くて柔らかく、足にフィットする履き心地を実現。むくみや腫れに伴う足の左右サイズの違い、歩行の際の安定性、脱ぎ履きの容易さ、デザインといった個別の要望にきめ細かく対応するために、ベルトや靴底といったパーツごとの加工に応じている。

「あゆみは、足元の様々な悩みを抱えたお客様に笑顔を届けることをコンセプトに、歩くことを楽しんでいただけるように明るい色やお洒落なデザインにもこだわっています。自分にぴったりのシューズと思っていただける仕上がりを実現するために、お客様とのコミュニケーションには特に力を入れています。お客様の声に耳を傾けることで、あゆみの機能と品質をこれからも進化させていきたいと考えています」。父親の十河会長から薫陶を受けた德武聖子代表取締役社長は、2025年に発売30年を迎えた「あゆみ」の歴史を振り返りながら穏やかな表情で話した。
本社の敷地内で「あゆみショップ」を運営 店内には工房を設け、イベントを通じて情報を発信

「あゆみ」は全国約160ヶ所の推奨店をはじめ、百貨店、小売店、病院などで幅広く販売されているが、買い求めるために香川県さぬき市の本社まで足を運ぶ人が後を絶たない。徳武産業はその思いに応えるため、本社の敷地内に直営店「あゆみショップ」を設けている。


2018年にリニューアルした「あゆみショップ」は鉄骨2階建て延床面積約400平方メートル。窓が大きく明るい雰囲気の店内には、最新作をはじめ、カラーやサイズも様々な約400足が並ぶ。来店者は足のサイズを測定してもらった上で、要望に合わせた最適なシューズや加工を注文することができる。店内には防音設計の工房も設け、靴底やインソールの加工も行っている。ドイツの国家資格「整形外科靴マイスター」を所有する職人を定期的に招いて完全予約制で「足と靴の相談室」も実施している。「あゆみショップには徳武産業を育ててきた両親の思いが反映されています」と德武社長は話した。
「顧客の声に耳を傾ける」。会社にとって大切な業務の時間を確保するためにデジタル技術を活用する

德武社長は2019年の就任以降、デジタル機器やICTの活用に目を向け、デジタルリテラシーの高い人材の採用にも力を入れてきた。その背景には、定型的な業務を効率化することで、従業員に負荷をかけることなく、顧客対応の時間を増やしていきたいとの思いがある。「お客様の声にじっくりと耳を傾け、一人でも多くの方の悩みを解決できるように商品のたゆまぬ改良を進めていくには一定の時間が必要です。会社にとって大切な業務に使う時間を増やすためにデジタル機器やICTを活用しています」と德武社長。
顧客とのコミュニケーション手段として商品に封入するアンケートはがきを大事にしている 年間数万通にのぼる返信に一通一通真摯に対応している

徳武産業は、顧客とのコミュニケーション手段として商品に封入するアンケートはがきを大事にしている。アンケートはがきには、表面で氏名、住所、生年月日、性別、メールアドレス、裏面で買い求め先、使用対象者、用途、商品を選んだ理由などのほか、デザイン、価格、機能性、軽量感、履き心地に関する評価の記入欄を設けている。
本社に届くアンケートはがきや直筆の手紙は、一日あたり平均五十~百通を数える。年間数万通にのぼるアンケートはがきや手紙は、従業員がすべてに目を通し、問い合わせや意見に一通一通対応している。また、アンケートはがきや手紙を送ってくれた人にはお礼として2年間、誕生日に合わせてプレゼントのオリジナルグッズを郵送している。「お客様からのご指摘は、商品開発を行っていくための資産として大事にしています。お役に立っていることを実感することが、事業を推進する原動力になっています」と德武社長は話した。
アンケートはがきのデジタル化に業務用OCR機能を備えたスキャナーを活用 業務効率化や情報共有に大きな効果

徳武産業は、アンケートはがきに記入された内容を顧客管理システムに入力する作業を協力会社に委託している。アンケートはがきをPDF化してメールで送信することで、入力に必要な情報を伝達している。はがきを迅速にデジタル化するために活用しているのが、業務用OCR(光学文字認識)機能を備えたスキャナーだ。2024年3月に導入したスキャナーは、自動の連続読み取り機能を使うことで数十枚のはがきの両面を1分程度でスキャンしてPDF化する機能を備えている。はがきの一部が破損しているなど異常を感知した時は、自動で読み取りを停止する機能も備わっている。
スキャナーを導入するまで、協力会社への情報伝達は、実物ベースだった。アンケートはがきそのものを、従業員が目を通した後に協力会社に預けて顧客管理システムに入力してもらっていた。その過程で、従業員が目を通している数日の間に、プレゼントの郵送に必要な住所の入力を先に進めてもらうため、住所が記載されたはがきの表面だけを複合機でスキャンし、デジタル化した上で送信していた。その作業に1日あたり20分程度要していたという。新たにスキャナーを導入したことによって、1日あたり5分程度の作業で、はがきの両面の情報をデジタルでまとめて協力会社に伝達できるようになった。
「スキャナーのおかげで、時間をかけてアンケートはがきそのものを協力会社とやりとりする必要がなくなったので本当に助かっています。両面ともPDF化することによって情報を社内で共有しやすくなり、必要なアンケートはがきを探す時も日付などで検索すればあっという間に見つけることができるようになりました」と総務部の蓮井真由美総務課長は感想を話した。徳武産業は、文字や数字を読み取る精度が高く情報を集約しやすい業務用OCRスキャナーをフル活用できるように、今後、アンケートはがきの文字のサイズやフォントなどを調整することも検討している。
生産管理、販売管理、証憑類の保存・管理にクラウドサービスを活用 情報の共有化を通じて仕事の属人化解消を図る

徳武産業は、生産管理、販売管理、電子帳簿保存法の改正に対応した証憑類の保存・管理にクラウドサービスを活用している。クラウドサービスは、オンプレミス型と比較して専用サーバーや周辺機器を設置する必要がないため、運用にかかる負担を軽減できるだけでなく、インターネット回線があれば様々な端末からサーバーにアクセスできることから情報を共有しやすいといった利点を備えている。「自然災害などの不測の事態に備えるBCP対策にもクラウドサービスは有効です。今後もクラウドサービスの活用を通じて業務のペーパーレス化や効率化、仕事の属人化の解消を図ることで、働きやすい環境を構築していきたい」と総務部の渡辺裕司経理・管理課長は話した。
顧客のためのデジタルサービス開発にも取り組む
徳武産業は、顧客のための独自のデジタルサービス開発にも取り組んでいる。三次元足型自動計測機で採寸した足のサイズの情報を基に、商品データベースの中から顧客に最適なサイズのシューズを提案する「あゆみナビゲーションシステム」などの開発実績を持つ。現在、顧客がスマートフォンを使って計測した足の採寸情報などを基に、おすすめのシューズの提案を受けることができる新たな専用アプリケーションの開発も進めている。
本社の敷地内に地域のための防災センターを設置 地域貢献や社会貢献で数多くの表彰を受ける
徳武産業は設立以来、経営改革と共に地域貢献や社会貢献に力を注ぎ、高い評価を受けている。2012年に四国でいちばん大切にしたい会社大賞「四国経済産業局長賞」、日本でいちばん大切にしたい会社大賞「審査委員会特別賞」、2013年にグッドカンパニー大賞「特別賞」、2020年に日本サービス大賞「経済産業大臣賞」などを受賞している。2020年には本社の敷地内に防災センターを建設。備蓄している食料などの救援物資を災害発生時に地域の人に配布できるようにしている。2024年には、香川県との間で地域防災協定を締結した。また、十河会長は2011年に革新的な経営により企業の発展に寄与したとして藍綬褒章、2019年に市商工会の結束と地域商業の活性化に寄与したとして旭日単光章を受賞している。
人生100年時代の中で高まる「あゆみ」のニーズ 真心を込めた対応を大事にしながら更なるデジタル技術の活用を視野に入れる

人生100年時代において健康寿命が延びる中、安全で動きやすい「あゆみ」のニーズは高まっている。その中で、徳武産業は社業拡大にデジタル技術の更なる活用を図っていきたいという。「デジタル技術には大きな可能性がありますが、真心を込めた対応は人でなければできません。そのことをしっかりと肝に銘じた上で、在庫管理をはじめ、働いている人が能力を発揮しやすい環境づくりやお客様へのサービス向上にICTやデジタル機器を活用していきます」と德武社長は力強く話した。
企業概要
会社名 | 徳武産業株式会社 |
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本社 | 香川県さぬき市大川町富田西3007 |
HP | https://www.tokutake.co.jp |
電話 | 0879-43-2167 |
設立 | 1966年9月(創業1957年) |
従業員数 | 80人 |
事業内容 | 高齢者シューズ、ルームシューズ製造 |