
目次
- 「人々の暮らしや地域を豊かにしたい」 宮崎市北部の城下町の面影を残す佐土原町で半世紀以上にわたって福祉事業を営む
- 全ての職員が、地域の社会インフラを維持することを意識して業務に取り組む
- 10年以上前からデジタル技術で基幹業務を効率化 更なる活用を視野に入れる
- 保育園と高齢者のためのデイサービスセンターなどを一体運営することで、子どもたちは思いやりの心を学び、高齢者は子どもたちの元気な姿に刺激され、元気に運動に取り組む人が増えた
- 歴史情緒漂う佐土原町の中心エリアで2023年7月に地域のコミュニティ拠点、「まちなかテラス」を開設
- 多くの人が訪れたくなるような環境を整備して地域の活性化に貢献したい
- まちなかテラスはWi-Fiネットワークを完備 高齢者、親子連れ、子どもたちが、憩いの場や学習の場として活用することで、新しい人の流れが生まれている
- 福祉の視点から新しいまちのにぎわいを作る
- VPNとクラウドストレージを活用し会計・労務を本部に集約 11ヶ所の施設で情報共有 勤怠管理システム導入で給与計算の自動化も計画
- グループウェアを活用して、幹部職員のスケジュール確認や職員全員へのインフォメーション、職員同士のチャットも可能になった
- 各部門でも介護保険の業務用支援システムや保育業務支援システムを適材適所で導入している
- 「福祉が充実しているまちには人が集まる」 この考えを軸に福祉による地域の活性化にこれからも取り組んでいく
江戸時代の城下町の面影を残す宮崎県宮崎市佐土原町で、地域の児童、高齢者、障がい者に充実した福祉サービスを提供するだけでなく、まちのにぎわいづくりにも積極的に取り組む社会福祉法人がある。1973年に創業した社会福祉法人明照福祉会だ。11ヶ所にのぼる事業所間の情報共有を図るためにVPN(仮想専用回線)やクラウドストレージを活用。また、それぞれの福祉サービスの現場でも、専用のデジタル機器やICTを活用することで職員の負担軽減とサービスの充実を図りながら、地域活性化に尽力している。(TOP写真:明照福祉会が、使われなくなった公民館をリノベーションして地域のコミュニティ拠点として再生した「まちなかテラス」)
「人々の暮らしや地域を豊かにしたい」 宮崎市北部の城下町の面影を残す佐土原町で半世紀以上にわたって福祉事業を営む

宮崎市の北部に位置する佐土原町は、江戸時代を通じて薩摩藩の支藩、佐土原藩3万石の城下町として栄え、所々にその面影を残す。佐土原城・二の丸跡で当時の屋敷を復元し、歴史資料館として活用されている鶴松館は、地域のシンボルとして多くの市民に親しまれている。歴史資産と自然に恵まれたこの地域で、明照福祉会は、「人々の幸せな暮らしを支える」を経営理念に、半世紀以上にわたって福祉サービスを提供してきた。1973年に明照保育園を設立して児童福祉事業に取り組み始め、地域の要望に応えて高齢者福祉、障がい者福祉へと事業領域を拡大してきた。
児童福祉では二つの認可保育所と一つの幼保連携型認定こども園のほか、児童クラブや放課後等デイサービスの事業を営む。高齢者福祉では、三つのデイサービスセンターやグループホーム、相談支援センターを運営。障がい者福祉では、三つの施設で、就労継続支援B型、就労移行支援、生活介護、日中一時支援の事業を営んでいる。
全ての職員が、地域の社会インフラを維持することを意識して業務に取り組む
「より質の高いサービスを提供できるようにすべての職員が、福祉サービスという社会インフラを維持する責務を担っていることを強く意識して日々の業務に取り組んでいます。明照福祉会が関わることで人々の暮らしや地域が豊かになれば、これに勝る喜びはありません」。明照福祉会の前理事長である父親から2021年6月に事業を引き継いだ吉田雅憲理事長は、穏やかな口調で話した。
10年以上前からデジタル技術で基幹業務を効率化 更なる活用を視野に入れる

明照福祉会は10年以上前から基幹業務の効率化などでデジタル技術を活用しているが、今後、福祉サービスの質の向上を図る上でICTやAIの活用を更に進めていかなければならないと実感している。「業務量の増大、慢性的な人手不足、時代の変化に合わせて求められるニーズに対応していくために、職員一人ひとりのデジタル技術に対するリテラシーを高める目的で4月から各事業所から若手を招集し、DX推進チームを立ちあげようと思っています」と吉田理事長。
保育園と高齢者のためのデイサービスセンターなどを一体運営することで、子どもたちは思いやりの心を学び、高齢者は子どもたちの元気な姿に刺激され、元気に運動に取り組む人が増えた

明照福祉会は佐土原町下田島にある本部の敷地内で、明照保育園と高齢者のためのデイサービスセンター、グループホームを一体運営している。幼老複合施設にすることで、子どもと高齢者の交流を進め、世代の壁を越えて互いに支え合う温かい人間関係を育んでいる。高齢者には、心身に刺激を受けることで元気になるといった効果が、子どもたちには、思いやりの心やコミュニケーション能力が身につくといった効果が期待できるという。
2024年11月に明照保育園の園舎を新しく建て替える際に、園庭がデイサービスセンターの正面になるように建物の配置を変更した。園庭で遊ぶ子どもたちの姿を見やすくなったことで、デイサービスセンターを利用する高齢者たちの表情はより一層明るくなり、身体機能を維持するための運動やレクリエーションに熱心に取り組む人が増えるといった好影響が生まれているという。
歴史情緒漂う佐土原町の中心エリアで2023年7月に地域のコミュニティ拠点、「まちなかテラス」を開設

佐土原町で生まれ育った吉田理事長は、地域のまちづくりにも強い関心を持っている。佐土原町の中心エリアで2023年7月に開設した地域のコミュニティ拠点、「まちなかテラス」は、明照福祉会のまちづくりへの思いを反映した施設だ。佐土原町が2006年1月に宮崎市に編入される以前に町の公民館として利用され、編入後は閉鎖されていた建物を、杭、壁、柱などの構造体だけを残して大幅にリノベーションすることでよみがえらせた。旧街道が交わるかつての交通の要衝に位置し、近くには「石散燈」と刻まれた中国にルーツを持つ魔除けの石碑(石敢當)や佐土原城の堀跡が残るなど歴史情緒に包まれている。

多くの人が訪れたくなるような環境を整備して地域の活性化に貢献したい

江戸時代に城下町を形成していた佐土原町の中心エリアは、戦後の高度経済成長期には公共機関や店舗が立ち並び、多くの人が行き交うにぎわいがあったが、少子化などに伴う人口減少の影響を受けて年々、空き店舗や空き家が目立つようになっている。「社会福祉法人は、地域の活力を維持する役割を果たしていかなければならないと考えています。多くの人が訪れたくなるような環境を整備して地域の活性化に貢献したいと思って、まちなかテラスを開設しました」と吉田理事長は話した。
まちなかテラスはWi-Fiネットワークを完備 高齢者、親子連れ、子どもたちが、憩いの場や学習の場として活用することで、新しい人の流れが生まれている


まちなかテラスは二階建て。一階には、相談支援センターやカフェテリアのほか、子ども服のリユースショップ、キッズスペース、ミーティングルームを配置。学習やパソコンなどを使った仕事に利用できる長尺デスクも設置している。二階にはステージを備えたホールがあり、発表会など様々なイベントに活用することができる。業務用とゲスト用のWi-Fi(無線LAN)の設備を用意し、建物内のすべての場所でインターネットを活用できるようにしている。

地域の住民は、まちなかテラスをコミュニティの交流拠点として活用し、カフェや子ども服のリユースコーナーが人気を呼ぶなど、新しい人の流れが生まれている。地域の子どもたちの家庭・学校以外の「第三の場所」としての役割も果たし、放課後、休日、夏休みなどの長期休み期間には、自習室として利用してもらっている。
福祉の視点から新しいまちのにぎわいを作る
明照福祉会は、まちなかテラスに隣接した場所で、デイサービスセンターと住宅型有料老人ホームで構成する「結テラス」と就労継続支援B型事業所の「サン・テラス」を運営しており、今後、三つの施設の連携を通じて、高齢者、子供たち、障がい者が交流する機会を作っていきたいという。吉田理事長は「地域住民の皆さんや関係団体との連携を強化しながら、令和の時代ならではの新しいまちなかの活気を作っていきたい」と力強く話した。
VPNとクラウドストレージを活用し会計・労務を本部に集約 11ヶ所の施設で情報共有 勤怠管理システム導入で給与計算の自動化も計画

明照福祉会は、会計や労務管理に関する業務を本部に集約することで、運営する11ヶ所の施設がサービスの提供に専念できる環境を整えている。佐土原町内に点在している各事業所との間で、収支や職員の勤怠に関する情報をリアルタイムで共有するために、安全なインターネット環境でデータを送受信できるVPNとクラウドストレージを併用している。クラウドストレージは情報の共有だけでなく、サーバーに蓄積している情報のバックアップにも活用している。
現在は紙ベースで管理・集計している職員の勤怠管理と給与計算も今後、勤怠管理システムを導入して給与計算システムと連動することで自動化を進めていく方針だ。「10年以上前は紙ベースで会計や労務管理を行っていたことが、今となっては信じられません。デジタル技術の進歩のおかげで本当に助けられています。今後、蓄積しているデータを新しいデジタル技術を使って分析し、法人経営の判断材料にしていきたいと考えています」と吉田理事長は話した。
グループウェアを活用して、幹部職員のスケジュール確認や職員全員へのインフォメーション、職員同士のチャットも可能になった
グループウェアを活用して、それぞれの施設で働く幹部クラスの職員のスケジュールを共有している。法人全体や施設ごとの会議や打ち合わせの日程を調整する際に、スケジュールの管理機能を活用することで、参加者一人ひとりに確認する手間と時間をかけることなく、全員が参加しやすい日時を設定できるので非常に助かっているという。また、約190人の職員全員に情報を送るインフォメーション機能と、特定の職員と短いメッセージをやりとりするチャット機能を状況に応じて使い分けている。
各部門でも介護保険の業務用支援システムや保育業務支援システムを適材適所で導入している

高齢者福祉、児童福祉、障がい者福祉の各部門でも、ICTやデジタル機器を適材適所で導入している。従来の紙ベースでの仕事になじんでいるベテラン職員に配慮して、活用するかどうかは現場の判断に任せているという。
例えば、高齢者福祉部門で活用しているのは、介護保険の業務用支援システムだ。デイサービスなどの利用者の体温、脈拍などのバイタルデータ、食事、リハビリテーションの記録や、国民健康保険団体連合会に送る介護保険請求書の作成に役立てている。2022年4月には支援システム専用のソフトウェアを搭載したタブレット端末を一部の施設で導入した。タブレット端末に記載した内容をそのままシステムに反映できるので、記録に要する時間の短縮に役立っているという。
児童福祉部門では、保育業務支援システムを導入して、園児の登降園時間の記録をデジタル化している。システムは保護者に、登園時と降園時に時間を打刻してシステムに記録してもらう仕組みになっている。手書きなどのアナログ式と比べて、システムを使うことで保育の担当者が記入・集計する手間を省くことができるので負担の軽減につながっている。また、出欠状況はシステムを搭載したパソコンの画面で確認できるので、確認ミスによるトラブルを防ぐことに役立っている。また、情報セキュリティ機能を備えたUTM(統合脅威管理)機器を導入し、各自が使用するパソコンにもセキュリティソフトを導入して重層的な防御体制を構築している。
「福祉が充実しているまちには人が集まる」 この考えを軸に福祉による地域の活性化にこれからも取り組んでいく

環境の変化に対応して常に組織体制の見直しを図り、新しい事業に取り組んできた明照福祉会。更に変化が激しくなるこれからの時代において、柔軟で強固な組織基盤を構築し、次世代の人材を採用、育成する上でデジタル技術は鍵を握っている。「人間が直接取り組まなければできない仕事とデジタル技術を活用して効率化できる仕事をしっかりと見極めた上で、これからもデジタル技術を積極的に活用していきます。福祉が充実しているまちには人が集まります。我々が頑張ることで多くの人に『住みたい』と思っていただけるまちにすることができる。そう信じてこれからも事業に取り組んでいきます」と吉田理事長は熱く語った。
企業概要
法人名 | 社会福祉法人明照福祉会 |
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法人本部 | 宮崎市佐土原町下田島4558番地2 |
HP | https://meisyo-wa.jp |
電話 | 0985-30-5560 |
設立 | 1974年11月(1973年創業) |
従業員数 | 189人 |
事業内容 | 児童福祉施設・事業(保育園、こども園)、高齢者福祉施設・事業(デイサービスセンター、相談支援センター、ヘルパーステーション、グループホーム、住宅型有料老人ホーム)、障がい者福祉施設・事業(就労移行支援、就労継続支援B型、生活介護、日中一時支援、障がい者向けグループホーム) |