
目次
- ブラジルで長男経営の有機肥料製造会社に原料を輸出する新会社を1984年に設立
- 「今度はブラジルの日系人を助ける番だ」。日系ブラジル人を採用して自動車部品会社の構内業務請負を開始
- 2004年の製造業への人材派遣解禁を受け、中小製造業向け人材派遣事業に本格参入
- 加藤社長の経験生かし外国人労働者に派遣前教育。「取引先様の成長を手助けする事業であるべき」との理念で信頼高める
- 価格競争を背景に、デジタル化による紙文書追放でコスト削減による競争力強化目指す
- 新型複合機で人事資料など書類をICT化し、月8~10時間の業務時間短縮効果を生む
- 給与明細配信システムで煩雑な作業を簡素化、夜に給与明細届ける手間もなくなった
- 派遣先企業と共同での勤怠管理のデジタル化検討などICT積極活用に意欲
- 今後は紹介予定派遣への参入や販売事業強化や新規事業で経営の安定化目指す
愛知県一宮市に本社を置く有限会社ゴローは、製造業のメッカである愛知県で日系ブラジル人労働者と中小製造業の架け橋として約35年の歴史を紡いできた人材派遣会社である。年々深刻化する中小製造業の人手不足を支援する役割を担ってきたが、人材派遣業が大手事業者と小規模事業者との二極化が進む中で競争が激化。加藤覚理(かくり)代表取締役は、「中小製造業ではコストの高い大手には依頼できないケースも出てきています」として、中小製造業支援に磨きをかけるためにICTを活用したコスト削減による競争力強化に乗り出した。(TOP写真:簡単でスピーディーな文書管理を可能にした新型複合機)
ブラジルで長男経営の有機肥料製造会社に原料を輸出する新会社を1984年に設立
ゴローは1984年(昭和59年)に農業の有機栽培肥料の原料となるカツオエキスをブラジルに輸出する目的で設立された。現本社所在地で写真スタジオを経営していた創業者・加藤英夫氏(加藤覚理社長は創業者の三男)の長男・悟朗氏が農業分野の青年海外協力隊の一員としてブラジルに渡り、辛苦を味わったのちに、有機肥料の製造に着手していたのを支援する目的だった。ちなみに、社名のゴローは悟朗氏の名前が起源だ。
その後、ブラジルで悟朗氏は日本企業から、日本での就労を希望する日系ブラジル人の募集と就労手続を依頼されるようになり、1985年に旅行代理店を現地に設立した。しかし、日本で働く日系ブラジル人の増加に伴い、文化の違いなどから仕事を辞めてしまう日系ブラジル人が増え、悟朗氏側から他の仕事の斡旋(あっせん)を求める依頼が英夫氏に入るようになった。
「今度はブラジルの日系人を助ける番だ」。日系ブラジル人を採用して自動車部品会社の構内業務請負を開始

当初は個人的なつながりから仕事や住居の世話などをしていたが、日系ブラジル人労働者からの相談件数が増加して個人レベルでの対応が困難になったことから、日系ブラジル人を採用して近隣の自動車部品メーカーの工場内の一部業務を請け負う、構内業務請負を始めた。1989年のことだ。当時は製造業への人材派遣が認められていなかったための業務請負であり、実質的にはこの時からゴローの人材派遣事業がスタートしたことになる。
「兄はブラジルに渡った当初、現地の農場での非人間的な重労働がたたって破傷風で入院した際に、現地で農場を経営していた日本人老夫婦と出会いました。その縁で老夫婦の農場を譲り受け、有機栽培を成功させ、有機肥料を手がけることになりました。当時社長だった父には『今度は我々がブラジルの日系人を助ける番だ』との強い思いがありました」。1993年に入社し、2023年に母・一代氏から社長を引き継いだ加藤社長は、今も創業者である父のこの強固な意志を受け継いでいると話す。
2004年の製造業への人材派遣解禁を受け、中小製造業向け人材派遣事業に本格参入
本格的な人材派遣事業への参入は、製造業への人材派遣が解禁された2004年の労働者派遣法改正を受けたもので、正式に労働者派遣業の認定を受けた。主に日系ブラジル人をはじめとする中長期ビザを保有する外国人を雇用し、自動車部品などの下請け中小製造業に労働力を提供している。
「当社は中長期ビザや在留カードを所持する身元のしっかりした外国人しか雇用しませんし、生産量の増減による調整人員ではなく、安定的な固定工数としての労働者を求めていただくことが多いため、日系ブラジル人などの外国人労働者に安定した労働機会を提供できています」と、加藤社長は同社の経営姿勢を説明する。
加藤社長の経験生かし外国人労働者に派遣前教育。「取引先様の成長を手助けする事業であるべき」との理念で信頼高める

加藤社長は高校卒業後にトヨタグループの有力部品メーカーである豊田合成に入社し、工場現場のリーダー格として勤務してきた経験がある。この経験を生かして、派遣前の外国人労働者にトヨタ生産方式など現場従業員が備えておくべき知識や作業のイロハを教え、人材のレベルアップに注力し、取引先の信頼に応えてきた。そこには、「人材派遣業の成長は取引先様の成長あってこそのものであり、その成長を手助けする事業であるべきです」とする加藤社長の理念が息づいている。
現在は、一宮市周辺地域の自動車部品や電機部品の中小製造会社9社に約150人の工場労働者を派遣している。派遣労働者は、日系ブラジル人を中心にペルー人やフィリピン人など外国人が主体だ。
価格競争を背景に、デジタル化による紙文書追放でコスト削減による競争力強化目指す

しかし、最近の人材派遣業界は幾度かの法改正を経て、大手と小規模事業者の二極化が進んでいる。その中で最低賃金の上昇もあって大手のシェアが高まるにつれ、「中小製造業では派遣料金の高い大手には依頼できないところも多い」(加藤社長)という。必然的に価格競争を強いられている面もあり、ゴローとしてはコスト削減による競争力強化が喫緊の課題となっている。
そこでゴローが着目したのは、ICT化による業務効率の向上だ。2024年10月、従来の複合機のリース期間終了を受けて、紙文書の電子化に対応できる新型複合機を導入。併せて複合機のスキャナー機能を利用して紙文書を電子化するアプリケーションを採用し、複合機のパネル上でスキャンした紙文書を任意のフォルダにわかりやすいファイル名をつけてデジタル保存するシステムに改めた。
新型複合機で人事資料など書類をICT化し、月8~10時間の業務時間短縮効果を生む

従来、派遣社員の在留カードやパスポートなど個人情報の人事管理資料やメールで送られてくる請求書や見積書は、紙文書を項目ごとにフォルダに入れ、キャビネットで保管していた。一部紙文書をスキャンしてサーバーで管理していたが、パソコンを使ったデータ保存・取り出しに手間がかかっていた。
紙文書をデジタル化するシステム導入後は、「資料の検索や追加保存操作の効率化が図られ、保管スペースの削減も進みました。サーバー保管資料も簡単に出し入れできるため、手間がかからなくなり、実感として管理部門では月8~10時間の業務時間短縮になっていると思います」(加藤社長)と、業務の効率化効果を評価している。
給与明細配信システムで煩雑な作業を簡素化、夜に給与明細届ける手間もなくなった

同時に給与明細システムも導入した。派遣社員の給与明細は従来、紙に印刷した明細書を封筒に入れて、管理・経理部門の社員が派遣先に持って行って手渡ししていた。約150人分の明細書作成・封入、配布には多くの人手と時間がかかるのに加えて、夜勤や休日出勤者の都合に合わせて時間外でも直接届ける必要があった。
しかし、給与明細配信システムは決まった日に個人別に送信すれば、派遣社員は自分のスマートフォンやパソコンで給与明細を確認できる。まずはトライアルで2024年10月分給与から50人を対象に始めた。言語の問題があり、スマートフォン操作を教える説明書の翻訳などに時間を要したものの、順調に進んでいるため、2025年2月から全派遣社員に広げた。
加藤社長は、「紙代などのコスト削減にもなるが、経理担当者の負担軽減効果が大きく、夜勤者対応で夜に派遣社員のところに行く必要がなくなりました。本当に忙しい年末調整の時にはさらに大きな効果を発揮してくれるものと期待しています」と話している。
派遣先企業と共同での勤怠管理のデジタル化検討などICT積極活用に意欲

ゴローは派遣先の中小企業の期待に応えるため、今後もICTを活用した一段のコスト削減を目指した業務効率化を進める方針だ。当面の課題はタイムカードでの勤怠管理のデジタル化で、一部派遣先企業への提案を検討している。今は派遣先企業からタイムカードを回収、集計・確認し、派遣先企業とすり合わせてから請求する仕組みで、1週間程度かかっている。これをデジタル化すれば1日で済み、派遣側、受け入れ側双方の業務効率を高めるが、派遣先によっては様々な事情もあるため、今後提案して理解を深めてもらう努力を重ねていく方針だ。
また、「デジタル化した個人データを出先からでも閲覧できるようにしたり、マッチングできなかった人材のデータを活用して他の派遣先紹介や取引先への人材提案を迅速化できる仕組みの構築を考えています」(加藤社長)として、ICTの積極活用に意欲を示している。
今後は紹介予定派遣への参入や販売事業強化や新規事業で経営の安定化目指す


国内の人手不足は年々深刻化しており、競争激化する中でも人材派遣業の役割は高まっている。特に最近は一定期間後の直接雇用を見込んだ紹介予定派遣が増えており、ゴローも「深刻なドライバー不足に直面している運送事業者では特にニーズが高まっているため、当社も2025年夏までに資格を取得して紹介予定派遣業の認可を得たいと考えています」(加藤社長)と、新業態進出に意欲を見せる。
現在の同社の売上高は、約95%を人材派遣業が占めるが、残りの5%は先代社長の一代氏がママさんバレーボールの協会理事を務める関係から、バレーボール用品販売と、特約店契約を結ぶファイテンの磁気ネックレスやパワーテープなどアスリート向けボディケア商品の販売が占める。
将来的には、ICTを活用して主力の人材派遣事業の拡大を目指す一方で、経営の安定化を図る狙いからバレーボール用品やファイテン商品の販売強化と、飲食業など新規事業開発を検討している。現在、バレーボールに特化したウェアメーカーの商品を取り扱う交渉を進めているほか、日系ブラジル人との長年のつながりを生かして、ブラジル料理店のビジネスプランも練っている。

企業概要
会社名 | 有限会社ゴロー |
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住所 | 愛知県一宮市栄4丁目9番5号 |
HP | https://yugengaisya-goro.com/ |
電話 | 0586-71-3256 |
設立 | 1984年11月 |
従業員数 | 183人 |
事業内容 | 労働者派遣事業、バレーボール用品・アスリート用ボディケア製品販売など |