
目次
- 2024年はICTの社内環境やIT機器の導入を行い、ハードウェア面の土台整備を実施
- 外出先で利用可能にするため、ノートパソコン導入とネットワーク&セキュリティの整備を推進 社員のセキュリティ状況をリアルタイムで監視可能にした
- ノートパソコンのリプレイスにより、場所を問わず業務遂行が可能になり、社員の生活面の充実へ貢献
- 2023年9月に導入した『施工管理システム』によって作業効率の向上に成功 利用者を増やして生産性のさらなる向上狙う
- ベテランと若手のペアで施工管理システムの習得を加速 スムーズな技術継承にも効果期待
- ICT活用を推し進めて、生成AIの導入やITリテラシー研修なども予定 全社的な業務効率化を図り、働き方改革を深耕する
- ICT活用による生産性向上で建設業のイメージチェンジを狙う 若者に選ばれる「働きやすい職場」の実現目指す
マンション大規模修繕工事専業の株式会社大和(だいわ)は、2024年4月1日に建設業にも適用された時間外労働の上限規制に対応し、労働環境の変革に取り組んできた。慢性的な人手不足の問題もあり容易に改善できなかったが、遅れていたICT活用の社内環境を整備することで長時間労働の問題に対応している。作業負担の軽減や生産性向上を実現するとともに、「3K」のイメージを払拭し「働きやすい職場」を追求。若者へのアプローチを強化して人材採用にも取り組んでいる。(TOP写真:イキイキと働く大和の社員)
2024年はICTの社内環境やIT機器の導入を行い、ハードウェア面の土台整備を実施

首都圏のマンション建設の増加とともに大規模修繕のニーズも高まっており、大和は独立系の大規模修繕専業事業者として順調に業績を伸ばしてきた。しかし、建設業の慢性的な人手不足は続いており、同社も十分な人材が確保できていない状況だ。
「2024年問題」といわれた時間外労働規制が建設業にも適用されたことで、佐藤正道社長は人手不足と作業負担軽減という2つの経営課題に直面した。そこで考えたのがICTの活用による働き方改革だ。2021年に「IT推進企画室」を設置して室長にIT系企業出身の落合一仁氏を抜擢。2024年にはそれまで取り組んできた勤怠管理システムや施工管理システムなどが本格的に動き出し、導入効果がはっきり出てきた。
外出先で利用可能にするため、ノートパソコン導入とネットワーク&セキュリティの整備を推進 社員のセキュリティ状況をリアルタイムで監視可能にした

ICT活用の幅を広げるためにIT推進企画室 室長の落合氏が2024年4月から取り組んできたのが、パソコンのリプレイスとパソコンの社外利用に不可欠となる強固なセキュリティ対策だ。営業部門のデスクトップパソコンをA4サイズのノートパソコンに置き換え、社外での利用を可能にした。
一方、社外に持ち出されるパソコンのセキュリティ対策も強化。導入しているセキュリティソフトウェアの設定レベルを引き上げて、社員のセキュリティ状況をリアルタイムで監視可能にした。また、ドメインサーバーの導入によってIT推進企画室がパソコンの管理をできるようにした。「パソコンのリプレイスやセキュリティ対策の強化を通して、社員の意識改革も進んできた」(落合室長)と成果を話す。
すでにノートパソコンを利用していた工事部門もA4サイズに小型化。リプレイスしたノートパソコンは約70台で、デスクトップ型のパソコンも順次置き換える予定だ。
パソコンのリプレイス時には、ドメインサーバーからノートパソコン70台へソフトウェアをインストールしてすぐに使える状態に設定するキッティング用ファイルを配布し、作業の自動化を実施した。データ移行は、詳細なマニュアルを作成し、綿密なスケジュール調整のもと、作業期間と作業人員を最小限に抑えることに成功した。これらの取り組みによって作業費を約140万円削減できた。
また、社員用のWi-Fiと来客用のゲストWi-Fiを再構築し、社内ネットワーク環境の利便性を向上させた。
ノートパソコンのリプレイスにより、場所を問わず業務遂行が可能になり、社員の生活面の充実へ貢献

軽量なノートパソコンへの切り替えによって、業務効率は大幅に向上した。リプレイス以前にデスクトップ型パソコンを使用していた社員は、外出先での作業ができず、帰社後に資料等を作成している状況だった。軽量なノートパソコンに切り替えたことで、場所を問わず業務遂行が可能になった。それに伴い、社員の生産性と業務の柔軟性が大幅に改善された。客先周りの後に会社に戻る手間が不要になり、社員の負担軽減と作業効率の向上が実現した。
安全品質部の髙橋さんは、安全や品質に対する知識をより深めることに日々尽力している。「毎日多数の現場をパトロールする職務のため、大和から貸与されているノートパソコンはとてもコンパクトで使いやすいです。前職の会社では、現場のパトロール後に会社に戻り、報告書などの作成を行っていました。大和では業務効率が非常に良く、自分のプライベートの時間も増えて、充実した日々を過ごせています」(髙橋さん)

2023年9月に導入した『施工管理システム』によって作業効率の向上に成功 利用者を増やして生産性のさらなる向上狙う
大和では施工管理システムの活用が進んでいる。導入した施工管理システムは、社内の様々な部署で使用されている。実際に工事を管理する工事部で、施工管理システムを使用しているベテランの綿貫さんと若手の山脇さんは、互いの強みを生かしたチームワークで業務に取り組んでいる。施工管理システムの導入を通じて、ベテラン社員と若手社員が共同作業を行うことでスムーズな技術継承を実現し、組織全体の成長と発展も促進している。
ベテランと若手のペアで施工管理システムの習得を加速 スムーズな技術継承にも効果期待

実際に施工管理システムを使用した2人に話を聞いてみた。「施工管理システムは便利な機能が多くあり、とても良いシステムだと思います。今回は導入後、初めての現場ということもあって、基本的な機能のみ使用しました。現場での写真整理等、施工管理システムを使用することで作業効率が大幅に向上しました。今後は私も本格的に使用し、活用していきたいと思います」(綿貫さん)。
山脇さんは「今回、施工管理システムの操作は、主に私が担当しました。様々な機能があるので、施工管理システムについてより理解を深めて、作業効率を上げていきたい」と機能の習得に意欲を見せている。綿貫さんと山脇さんの現場に施工管理システムを導入したことで、工事完了時に渡す写真台帳(工事の全過程を写真で記録し整理した重要資料)の作成にかかる時間を短縮することに成功した。
ICT活用を推し進めて、生成AIの導入やITリテラシー研修なども予定 全社的な業務効率化を図り、働き方改革を深耕する

大和は2025年も働き方改革の一環として様々なICT施策を展開する予定だ。落合室長は「大和のICT活用を推し進めていくことで、業務効率化により作業負担軽減、作業時間の短縮、品質向上を実現したい。2025年12月に設立65周年を迎える大和のレボリューション(変革)を目指したい」と語る。
具体的には、生成AIを活用して文章作成や議事録作成などの作業負担軽減を目指す。「各部署で活用を検討しており、年内には業務に使いたい」(落合室長)。またIT知識やスキル向上を全社的に底上げするために、全社員を対象にしたITリテラシー研修も実施する予定だ。
そのほかメールサービスの切り替え、IT資産管理ツールの導入、データ管理の再構築などテーマは目白押しだ。地震や台風など自然災害時の事業継続を想定した『IT-BCP(事業継続計画)の策定』も重要課題として取り組んでいく方針だ。
ICT活用による生産性向上で建設業のイメージチェンジを狙う 若者に選ばれる「働きやすい職場」の実現目指す

大和は、中途や新卒を含め全方位的な採用活動を行っている。認知度向上のために横浜市内の商業ビル屋上に看板を設置した。
佐藤社長の狙いは、全社的なICT活用による業務効率化によって、「仕事がきつい」といわれて若者に避けられる建設業のイメージチェンジだ。若い人から選ばれる会社になるためにICT活用の可能性への挑戦が続く。
企業概要
会社名 | 株式会社大和 |
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住所 | 神奈川県横浜市中区港町6-28 |
HP | https://www.daiwa-co.com/ |
電話 | 045-225-8200 |
設立 | 1960年12月 |
従業員数 | 116人(令和7年2月時点) |
事業内容 | マンション・ビルの大規模修繕工事、リニューアル工事、関連保守サービス |