TOYOTA
(画像=Renovacio / Shutterstock.com)

トヨタ自動車とNTTグループが業務資本提携を発表した。「スマートシティ」での取り組みで協業するという内容だ。目下、トヨタがコネクティッドシティと呼ぶ実証都市「Woven City」の実現をともに目指していく。両社が目指す「未来の街」の実像に迫ろう。

目次

  1. トヨタが今年1月にスマートシティプロジェクトを発表
  2. 「Woven City」はどのような街になっていくのか
  3. スマートシティに欠かせないのが「通信技術」
  4. NTTとともに「スマートシティプラットフォーム」を構築へ
  5. 「NTTとトヨタが、日本を背負うという気概を持ち…」
  6. スマートシティ実現に向けた仲間作りも

トヨタが今年1月にスマートシティプロジェクトを発表

トヨタが実証都市「Woven City」について初めて言及したのは今年の1月6日である。米ラスベガスを舞台にした世界最大級の技術見本市「CES 2020」において、世界に向けてそのプロジェクトを発表した。このプロジェクトは、閉鎖予定である静岡県裾野市のトヨタ自動車東日本株式会社の東富士工場の跡地において、広さ約70.8万㎡の新たな街作りを進めていくというものだ。

トヨタはこのWoven Cityについて、「人々の暮らしを支えるあらゆるモノやサービスがつながる実証都市」(※報道発表での定義)にすると表明している。着工は2021年初頭を予定しているという。

「Woven City」はどのような街になっていくのか

ではWoven Cityとは一体どのような街になっていくのか。トヨタのこれまでの発表によれば、自動運転車やパーソナルモビリティが道路を走行し、街の中でロボットが活躍するという。住宅にはスマートホーム技術が導入され、AI(人工知能)技術の検証も可能な街にしていく計画のようだ。

MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を導入することも発表している。MaaSとは、さまざまな交通機関を一つのプラットフォーム上で横断的に検索・予約・決済可能な仕組みのことなどを示す。MaaSが導入されれば、多くの人にとって移動の利便性が高まる。トヨタはWoven Cityでこうした点の実現も目指しているようだ。

ちなみにこのWoven Cityでは、トヨタで働く従業員やプロジェクトに関わる関係者など約2,000人が実際に暮らす計画であることも明かされている。

スマートシティに欠かせないのが「通信技術」

Woven Cityのプロジェクトについてここまで説明してきたが、このようなスマートシティにおいて、ある欠かせない技術がある。それが「通信技術」だ。

自動運転車や住宅のスマートホーム化などにおいては、次世代通信規格「5G」の技術や通信の高いセキュリティ性が必要とされる。クラウドサービスやIoT、ビッグデータなどに関する知見やノウハウも必要となる。そこでNTTグループの出番というわけだ。

トヨタ自動車とNTTグループはこれまでもコネクテッドカーのICT(情報通信技術)基盤の研究で協業してきたが、今回の業務資本提携ではその協業関係をさらに拡大し、スマートシティの実現でもタッグを組んだ形だ。

NTTとともに「スマートシティプラットフォーム」を構築へ

両社の今後の具体的な動きとしては、「スマートシティプラットフォーム」と呼ばれる基盤の構築に取り組んでいくことが明かされている。このプラットフォームは、スマートシティにおける交通・産業・生活・医療などのさまざまな要素を包括する基盤となるもののようだ。

報道発表では、このプラットフォームをトヨタのWoven Cityと東京・品川駅前のNTT街区の一部に実装していく計画が明かされており、その後、ほかの都市へも展開していく算段らしい。つまり簡単にいえば、スマートシティの「ひな形」を他社に先駆けて完成させ、広げていくことが狙いだろう。

トヨタとNTTの基盤がスマートシティの「デファクト・スタンダード」(事実上の標準)となれば、将来的に大きな成果が期待される。両社がタッグを組んでまでこの領域に注力するのは、今この段階であればまだフロンティアになれる可能性が十分あるからだとも言える。

「NTTとトヨタが、日本を背負うという気概を持ち…」

トヨタの豊田章男社長はNTTの澤田純社長と臨んだ共同記者会見で、「NTTとトヨタが、日本を背負うという気概を持ち…」と語っている。スマートシティの実現を通じ、人の生活も国もより豊かになっていくよう貢献していきたいという考えのようだ。

また豊田社長は「世界における日本のプレゼンスを高めることにもつながっていく。そう信じております」とも述べた。スマートシティの分野で日本が世界をリードできれば、スマートシティプロジェクトそのものを海外に輸出できる時代も来るはずだ。新幹線のように。

「日本を背負う」という言葉には、こうした競争力ある日本の未来を実現させようという覚悟も感じられる。

スマートシティ実現に向けた仲間作りも

Woven Cityの着工は2021年初頭からだ。少しずつまち作りが進んでいけば、両社がどのような技術を導入していこうとしているのか、その具体像がみえてくるはずである。両社はさまざまな企業や研究機関にも連携を呼び掛けている。スマートシティ実現に向けた仲間作りも、今後は加速していきそうだ。

文・岡本一道(経済・金融ジャーナリスト)

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