会社売却
(画像=PIXTA)

「会社を売却しようか」と考えている経営者もいるだろう。会社の売却は、事業承継の手段の一つだ。きちんとした企業に会社を売却することで、従業員の雇用を守り、培ってきた技術やノウハウを存続させることができる。この記事では、会社を売却する際の利益はどのようにして決まるのか、また会社を売却するメリット・デメリットについて詳しく解説していく。

目次

  1. 会社売却の利益はどのようにして決まる?
    1. 時価純資産法(のれん代付き)
    2. 類似会社比較法(マルチプル)
    3. DCF(ディスカウントキャッシュフロー)
  2. 会社売却のメリット
    1. 売却によって利益を得られる
    2. リタイアして余裕が持てる
    3. 個人保証から解放される
    4. 雇用や技術・ノウハウなどを維持できる
  3. 会社売却のデメリット
    1. 引き継ぎのために拘束されることがある
    2. リタイアして寂しくなることがある
    3. 売却先企業を見つけるのが難しい
  4. 会社売却で利益を得るのは大きな選択
  5. 監修者紹介

会社売却の利益はどのようにして決まる?

最初に、会社を売却した利益はどのようにして決まるのかを見ていこう。利益を計算する主な方法は、以下の3つだ。

・コストアプローチ …時価純資産法(のれん代付き)
・マーケットアプローチ …類似会社比較法(マルチプル)
・インカムアプローチ …DCF(ディスカウントキャッシュフロー)

時価純資産法(のれん代付き)

会社を売却した利益を計算する方法として第一に挙げられるのは、時価純資産法(のれん代付き)である。時価純資産法は直感的にわかりやすく、また一定の客観性もあることから、M&Aにおいて多く用いられている。

会社を売却した際の利益を時価純資産法で計算する際は、まず会社の資産の時価総額から負債の時価総額を差し引いて、時価純資産額を求める。次に、ブランド価値や技術・ノウハウなど、貸借対照表には記載されない無形固定資産としての「のれん代」を時価純資産額に加える。

時価純資産法においてのれん代が上乗せされるのは、原則として黒字企業のみだ。のれん代の相場は、営業利益の3~5年分と言われている。

たとえば時価純資産が10億円で、営業利益が2億円の会社なら、時価純資産法によって計算される会社売却の際の利益は、

10億円(時価純資産)+ 2億円(営業利益)× 3年分

で「16億円」となる。

類似会社比較法(マルチプル)

会社を売却する際の利益を計算する方法には、類似会社比較法(マルチプル)もある。類似会社比較法は、売却する会社と類似する複数の上場企業の株価から、非上場企業の価値を算出するものだ。

類似会社比較法によって会社売却の利益を計算する際は、まず売却する会社と規模や業績、収益などが類似している上場企業を複数選ぶ。次に、営業利益などを指標として、類似企業に対する売却会社の倍率の平均を算出する。最後に、類似企業の時価総額(発行済み株式の総額)に倍率をかけたものを会社売却の利益とする。

たとえば、営業利益が2億円で平均倍率が8倍の場合、類似会社比較法による会社売却の利益は、

2億円(営業利益)× 8倍(倍率)

で計算され、「16億円」となる。

類似会社比較法を利用することで、非上場会社でも株式の時価総額によって会社の価値を算出することができる。ここでは簡単にするために指標を「営業利益」としたが、実際の計算ではさまざまな指標が用いられる。用いる指標により算出結果が変わることや、計算方法がやや複雑でわかりにくいことが、類似会社比較法の難点と言えるだろう。

DCF(ディスカウントキャッシュフロー)

DCF(ディスカウントキャッシュフロー)とは、将来発生が予想されるキャッシュフローを算出し、それを現在価値に変換するための割引を行うことで、会社売却の利益を求めるものだ。会社の価値は、将来生み出されるキャッシュフローによって決まるという考え方に基づいている。

DCFによって会社売却の利益を求める際は、まず事業計画を将来見通せる範囲まで策定する。次に、そこから発生すると予想されるキャッシュフローを算出し、各事業年度のキャッシュフローに割引率をかけたものを会社の「事業価値」とする。この事業価値に、事業とは直接関わりがない株式などの非事業用価値を加え、純有利子負債を差し引いたものを会社売却の利益とする。

割引率は年率10%など、投資における利回りなどを参考にして決められる。

会社売却のメリット

会社売却
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会社売却には、さまざまなメリットがある。どのようなメリットがあるのかを見てみよう。

売却によって利益を得られる

会社売却の最大のメリットは、売却によって利益を得られることだろう。会社の規模にもよるが、売却益は億単位の額になることもある。億単位の売却益が手に入れば、その後の人生でさまざまなことをすることができるだろう。

会社の売却は、株式を譲渡する形で行われる。株式の譲渡益に対して、所得税と住民税を合わせて約20%の税金がかかる。とはいえ、2億円で会社を売却したとしても税金は4,000万円、したがって1億6,000万円は手元に残ることになる。

リタイアして余裕が持てる

会社売却のメリットの2番目は、リタイアして余裕が持てることだろう。会社を経営している時は、仕事以外は何もできなかったとしても、リタイアすれば自分が好きなことを思う存分できるようになる。

のんびりと老後を過ごすのもいいだろう。会社経営をしていた時にはできなかった趣味に打ち込むのもいいだろう。会社の売却益を元手に、投資を行うこともできる。

個人保証から解放される

個人保証から解放されることも、会社売却の大きなメリットと言えるだろう。中小企業や小規模事業者の場合は、金融機関から借入をする際、経営者個人が会社の連帯保証人となることが多い。会社を売却すれば、この個人保証から解放されるのだ。

会社の借入の個人保証は、重荷だったはずだ。もし会社が倒産すれば、経営者個人の財産を根こそぎ持っていかれることになるからだ。会社を売却することで、この個人保証の重荷からようやく解放されることになる。

雇用や技術・ノウハウなどを維持できる

従業員の雇用を守れることも、会社売却の大きなメリットと言えるだろう。近年は中小企業経営者が高齢化し、事業承継は火急の課題となっている。

事業承継を行うためには、後継者を見つけなければならない。しかし、適当な後継者が見つからず、好業績でありながら廃業してしまう企業も多い。廃業してしまえば、会社がこれまで維持してきた従業員の雇用や、長年にわたって培ってきた技術・ノウハウなどは失われてしまう。

会社を売却すると、会社は売却先の企業によって引き続き経営が行われていくことになる。雇用や技術、ノウハウなどは、基本的にそのまま引き継がれる。従業員や関係者、顧客など、喜ぶ人も多いのではなかろうか。

会社売却のデメリット

会社売却には、デメリットもある。どのようなデメリットがあるのかを見てみよう。

引き継ぎのために拘束されることがある

会社を売却する際のデメリットとして第一に挙げられるのは、売却先の会社へ引き継ぐために拘束されるケースがあることだ。特に中小企業の場合には、社長を中心として社員が一丸となっているケースが多い。そのため、会社を売却して社長が突然いなくなってしまうと、経営が円滑に行えなくなることもある。

引き継ぎのために数年間、子会社の社長や顧問として、引き続き会社に残るという契約が必要になることがある。その間に、売却先の会社だけで経営ができるよう、徐々に引き継ぎを行っていく。「会社経営の重圧から一刻も早く解放されたい」と思う経営者にとっては、この拘束がデメリットと感じられることもあるだろう。

リタイアして寂しくなることがある

リタイアして寂しくなることがあることも、会社売却のデメリットと言えるかもしれない。激務をこなす経営者は、それが生きがいでもあっただろう。また、自分で創業した会社の場合は、会社は自分にとって「城」のようなものだ。生きがいや城を失ってしまうことにより、胸にポッカリと穴が空き、寂しくなってしまうことがあるかもしれない。

しかし会社の経営は、いつかは誰かに引き継がなければ、会社は存続できない。死ぬまで社長でいることは難しい。それを考えると、「仕方ない」とあきらめもつくのではないだろうか。また、たまには会社に顔を出せるよう、売却先の企業との関係性を作っておくことも、寂しさを埋めるためには有効だろう。

売却先企業を見つけるのが難しい

売却先の企業を見つけることが難しいことも、会社売却のデメリットと言えるだろう。

売却先は、どんな企業でもいいわけではない。会社の理念や技術・ノウハウなどに共感し、丁寧に経営してくれる企業でなければならない。

売却を焦るあまり、相性が良くない企業に会社を売却してしまった場合は、会社の中核が変わってしまうことによって、従業員の会社に対する気持ちが離れ、売却先企業が雇用を維持しようと思っても、従業員が自ら辞めてしまうこともあるだろう。それでは、元も子もない。

会社を売却する際は、売却先企業をじっくりと選ぶことが重要だ。経営者同士の面談は、納得がいくまで繰り返そう。また、売却後の従業員の扱いなどについても、契約を交わす前にしっかり確認しておかなければならない。

会社を売却し、経営を存続させていくことは、経営者にとっての最後の仕事だ。その責任を、しっかりと果たしていくことが大切だ。

会社売却で利益を得るのは大きな選択

会社の売却で利益を得るのは、事業承継の大きな選択となってくる。事業を承継できる後継者が見当たらない場合でも、会社を売却することで、従業員の雇用を守り、培ってきた技術やノウハウを維持していくことができる。

会社を売却すれば、利益を手にすることができる。そのお金で、リタイア後の人生を存分に満喫することもできる。ただし、売却先の企業は「どこでもいい」わけではない。経営者の最後の仕事として、しっかりと時間をかけて選ぶことが大切だ。

文・THE OWNER 編集部

監修者紹介

斎藤弘樹
株式会社日本M&Aセンター 地域金融1部 部長
斎藤弘樹 (さいとう・ひろき)
一橋大学卒業後、外資系金融機関入社。 2012年日本M&Aセンター入社以降、地域金融機関と数多くのM&Aに携わり、後継者に悩んでいる、または更なる成長を志向する経営者に、M&Aという手段で会社の継続と発展を支援している。
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