RIZAP
(画像=Ned Snowman/Shutterstock.com)

RIZAPが3月、傘下のアパレル企業である三鈴の売却、サンケイリビングの一部事業の譲渡を行った。RIZAPはいくつものM&Aで事業を拡大してきたが、現在は収益改善のための構造改革を行っており、その一環として事業を売却したと考えられる。RIZAPの経営再建はうまくいくのか、今後も事業の売却はあり得るのだろうか。解説する。

目次

  1. RIZAPが事業売却を始めた
  2. RIZAPの構造改革は成功するのか?
    1. RIZAPが構造改革をしている理由
    2. RIZAPの構造改革は進んでいるか?
  3. RIZAPを襲う「コロナショック」 今後はどうなる?
  4. RIZAPの再建は本業の復活にあり
  5. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

RIZAPが事業売却を始めた

RIZAPグループが、構造改革をさらに加速させようとしている。2020年3月に、アパレル子会社である三鈴をITbook ホールディングスに、また、子会社であるサンケイリビング社の事業であるあんふぁん・ぎゅって事業を、こどもりびんぐ社に譲渡を行った。

これまでもRIZAPは、構造改革の中でいくつかの事業売却を行ってきた。しかしここに来て、2社連続で事業譲渡を行ったことで、構造改革をさらに加速させていくものと予想できる。

三鈴がRIZAPグループ傘下に入ったのは、2016年である。その時の買収価額は4億5,000万円だった。それが、今回の売却価額は2億2,000万円で、半値以下で手放したことになる。RIZAPにとってはまさに、「痛みを伴う改革」だと言えるだろう。

RIZAPの構造改革は成功するのか?

では、RIZAPはなぜ、構造改革をしているのか、そして、その構造改革の状況はどうなっているのか、見てみよう。

RIZAPが構造改革をしている理由

RIZAPが転機を迎えたのは2018年11月の、第二四半期の決算発表のタイミングだ。それまでは、過去2年で50社以上グループ会社を増やし、積極的にM&Aを行ってきた。しかし、それらのグループ企業の経営再建が遅れたり、社内の事業の成長スピードが減速したりして、2019年度の上期の営業利益は、前年49億円の黒字から88億円の赤字へと赤字転落してしまったのだ。また通期の利益も、193億円の赤字と、上場以来最も大きな損失を出した。

RIZAPはこの赤字拡大に伴い、「新規M&Aの凍結」「グループ会社経営再建の早期完遂」「成長事業への経営資源集中」を構造改革の3つの柱として進めている。この構造改革の中で、短期的な投資回収、収益改善が難しい事業や当初想定していたシナジーが見込めない事業については、撤退または売却していくと明言しており、今回の売却もその方針に伴うものだろう。

RIZAPの構造改革は進んでいるか?

直近の2020年3月期、第三四半期の決算を見てみよう。

第三四半期の決算では、営業利益ベースで昨年13億円の赤字から44億円の黒字へと黒字転換、最終利益についても、赤字幅を81億円から5億円まで削減しており、構造改革はある程度進んでいると言えるだろう。

特に子会社の経営改善は進んでおり、2020年度第三四半期時点で上場子会社は、営業利益ベースですべて黒字化し、非上場子会社を合わせると昨年55億円あった赤字が、25億円の黒字にまで改善している。利益が出ない事業を売却した効果もあるだろうが、経営再建はまずまずと言ってよいだろう。

また、本業であるRIZAP事業も、2020年度が始まった時は決算不安もあり会員数が減少していたが、2019年末から2020年のはじめにかけて広告を強化したことで、再び増収傾向にあるようだ。また、グループ全体で在庫額の圧縮を行うなど、財務面での改善も進んでいるように見える。道半ばではあるが、RIZAPの構造改革はある程度進んでいたと言えるだろう。

RIZAPを襲う「コロナショック」 今後はどうなる?

しかし、ここに来て、また潮目が変わりつつある。それは、コロナショックによるものだ。コロナウイルスは、密集した場所や、密閉空間、密接した会話などが原因で感染するとされており、多くの公共施設やイベントが自粛を強いられている。

RIZAPも例外ではない。特に、RIZAPの本業であるボディメイクは、密閉空間で、マンツーマンで行うものであり、まさにコロナウイルスの影響を大きく受ける業種である。RIZAPグループが展開する英会話、料理教室、ゴルフスクールなども同様だ。

RIZAPは、コロナウイルスの感染拡大を受けて、1か月の利用有効期間の延長などを打ち出している。しかし、いつ終息するかわからない状況で、会員の延びは望めないだろう。RIZAP事業はRIZAPグループ全体の売上の約2割を占める、まさに屋台骨だ。その屋台骨が揺らいでいるのは、グループの再建にも、大きな影響を与えることになるだろう。

RIZAPの株価は、ピーク時の1,500円から、一時1/10以下に落ち込んだ。もしかすると、このコロナを機に、再建が止まってしまう、または子会社の売却などがさらに行われる、といった不安感を反映していると言えるだろう。

RIZAPの再建は本業の復活にあり

RIZAPは、拡大路線から収益路線に切り替えた後、子会社の整理や経営再建に努め、なんとか赤字からの脱却を行おうとしていた。しかし、その最中に襲ったコロナショックが、RIZAPを再び苦境に陥れようとしている。RIZAPはこの苦境を乗り越え、構造改革を成功させることができるのだろうか。今後の動向に注目していきたい。

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