
目次
- 道の駅と同等の機能を備え、日々の食材から土産物まで豊富に品ぞろえ、沖縄グルメも楽しめる
- 開業から約20年で、集客数4倍、売上高10倍、登録農家数40倍以上増加 施設全体で100人以上の雇用創出で沖縄県から表彰も
- 地域経済活性化の事業を考案・具体化する企画会社として海底貯蔵泡盛 、トマトスープカレー、パッションフルーツティー等様々な商品開発も
- リゾートホテルと農家の橋渡し役を務めるなど地域の農業振興に尽力 持続可能な農業のモデルケースづくりを目指す
- 「攻めの業務」のためにデジタル業務改革 POS機能の活用やデジタル決済で従業員と買い物客双方の利便性を向上
- POSシステムは生産者管理システムとも連動 契約農家に販売実績の情報を迅速に提供している
- ホームページとSNSを組み合わせて地元の買い物客や観光客への情報を効果的に発信
- 2024年1月、施設全体にWi-Fiネットワークを拡大 会議のペーパーレス化やNASによる情報共有を通じて働きやすい環境を整える
- 人材採用の面では単発バイト向けの人材マッチングシステムを活用
- 2025年夏誕生の今帰仁村の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」は観光客増加に伴い地域経済の活性化へ向け新しい取り組みに挑戦
沖縄本島中央部の西海岸に位置し、日本屈指のリゾート地として知られる沖縄県・恩納村(おんなそん)。地元企業が出資して2005年に設立した株式会社ONNAは、年間約120万人の集客数を誇る農水産物の直売所、「おんなの駅 なかゆくい市場」の運営をはじめ、農家の販路開拓支援、地元特産品の開発、イベント企画といった様々な事業に取り組み、地域活性化に大きな役割を果たしている。取引先の農家、買物客、従業員の利便性向上を目的に、ICTやデジタル機器をそれぞれの視点から導入し、積極的に活用している。(TOP写真:豊富な品ぞろえで、地元の人や観光客に支持されている「おんなの駅 なかゆくい市場」の売り場)
道の駅と同等の機能を備え、日々の食材から土産物まで豊富に品ぞろえ、沖縄グルメも楽しめる

約130台分の駐車場を備え、グルメや土産物の購入も楽しめる農水産物の直売所、「おんなの駅 なかゆくい市場」は、エメラルドグリーンの海を間近に望む沖縄県国頭郡恩納村南端の幹線道路沿いにある。「なかゆくい」は、沖縄の方言で「ひとやすみ」を意味する。ドライバーの休憩場所であるだけでなく、地域の交流や観光の拠点として人気がある道の駅と同等の機能を備え、施設内は日々の食材を買い求める地元の人たちやショッピングを楽しむ観光客の姿で連日、賑わっている。



物販コーナーでは、沖縄県内の産地直送の野菜、パッションフルーツ、マンゴー、アテモヤといった季節ごとの熱帯フルーツをはじめ、恩納村独自の加工食品、菓子類、酒類、グッズなどの土産物が豊富にそろい、グルメコーナーでは、沖縄そば、タコライス、かまぼこ、海の幸をはじめとする料理、飲み物、デザートを提供する店舗が多数出店。観葉植物を販売するグリーンコーナーも設けている。スタンプラリーや年中行事にちなんだイベントも定期的に開催している。多種多様な楽しみ方ができることが、幅広い客層や年齢層からの支持につながっている。


「年中お祭りが開かれているようなワクワクする場所であると共に、地域の人と観光客の皆様に愛され、信頼される施設であり続けたいと思っています。来店するといつも目新しい商品が棚に並び、お客様が宝探しをしている感覚で楽しめる売り場づくりを目指しています」とONNAの宇良武常務執行役は話した。
開業から約20年で、集客数4倍、売上高10倍、登録農家数40倍以上増加 施設全体で100人以上の雇用創出で沖縄県から表彰も

「おんなの駅 なかゆくい市場」の正式名称は、恩納村農水産物販売センター。2004年に村立の農産物中心の直売所として設立され、2005年からONNAが指定管理会社として運営を担当している。当初は年間集客数が30万人に満たず、先行きが危ぶまれた時期もあったが、従業員が一丸となって契約農家を増やして品ぞろえの充実に努め、情報発信に取り組むことで集客数を増やしていった。開業から約20年で、集客数は4倍、売上高は10倍に増加。登録農家数は1,700と40倍以上になった。テナントを含めた施設全体で100人を超える雇用を創出し、2018年には沖縄県から産業雇用拡大の功労表彰を受けた。
ONNAは「すべては笑顔のために」を設立以来の経営コンセプトにしている。「最初は右も左もわからない状態からのスタートでした。ここまで成長できたのは、地元をはじめとする多くの方々に支えていただいたおかげです。集客数を更に増やして農産物や特産品の販売力を高め、地域貢献にも力を入れることでしっかりと恩返ししていきたい」と與儀(よぎ)繁一代表取締役社長は、設立当初を振り返りながらこれからの抱負を話した。
地域経済活性化の事業を考案・具体化する企画会社として海底貯蔵泡盛 、トマトスープカレー、パッションフルーツティー等様々な商品開発も


ONNAは、村の役場、観光協会、商工会と連携し、地域経済の活性化につながる新しい事業を考案し、具体化していく企画会社としての顔も持っている。「おんなの駅 なかゆくい市場」から約10キロ離れた場所に洗浄機や冷凍庫を備えた農産物加工所を設け、規格外の農作物を仕入れて、加工食品や飲食店向けの原材料を生産している。イチゴを栽培する観光農園も運営している。

また、地域の農漁業従事者や企業と連携して、近隣の海底で熟成した海底貯蔵泡盛、県産の野菜や果物を材料にしたトマトスープカレー、パッションフルーツティー、ジャム、バターといった様々なオリジナル商品を開発。恩納村の地域ブランド「MEGUMI」を立ち上げ、村の特産品をシリーズ化する取り組みも進めている。直営するベーカリーで、泡盛のもろみ粕を使って開発した萬座バケットが、全国商工会連合会賞を受賞するといった成果も生まれている。
リゾートホテルと農家の橋渡し役を務めるなど地域の農業振興に尽力 持続可能な農業のモデルケースづくりを目指す
ONNAは、農業従事者の高齢化への対応策として、担い手の育成にも取り組んでいる。村内に立地しているリゾートホテルと農家の橋渡し役をONNAが務め、ホテルに地元の農作物を継続的に購入してもらうことで、農家の安定的な収入につなげる取り組みを進めている。
また、若手の農業従事者を対象にした視察研修や情報交換の機会を作る一方、農業技術の勉強会も定期的に開催。今後、農業を軸にした体験型観光メニューの開発、付加価値の高い農産物の生産、デジタル技術を活用したスマート農業の推進に目を向ける農家への支援を通じて、沖縄県の農業をより魅力的な産業にすることに貢献していきたいという。「収益源が多様で持続可能な農業のモデルケースを沖縄から作っていきたい」と與儀社長は力強く話した。
「攻めの業務」のためにデジタル業務改革 POS機能の活用やデジタル決済で従業員と買い物客双方の利便性を向上
ONNAは、魅力的な売り場づくり、新事業の企画、農作物や特産品の販路開拓といった「攻めの業務」にあてる時間を捻出するために、ICTやデジタル機器を使った業務改革に力を入れている。会計業務を効率化するために活用しているのが、POS(販売時点情報管理)機能を備えたレジスターと連動した販売管理システムだ。商品を販売した時点でデータを自動で取得・管理できる仕組みを整えている。POSレジを使うことで、正確な売上の把握や在庫管理が容易になるだけでなく、レジ業務を担当する従業員にとっても、スキャナーでバーコードやQRコードを読み取るだけで会計処理を完了できるので負担の軽減につながっている。
また、買物客が支払いにクレジットカードやQRコード決済を利用しやすい環境を整えている。現金を使わないキャッシュレス決済の割合は5割に達し、現金での支払が大半だったころと比較すると会計処理はスムーズになったという。
POSシステムは生産者管理システムとも連動 契約農家に販売実績の情報を迅速に提供している
販売情報を蓄積するPOSシステムは生産者管理システムとも連動している。ONNAは、システムを活用して、なかゆくい市場に定期的に農産物を納入している約500の契約農家や特産品を納入している企業を対象に、システムへのアクセス権付与やメール配信を通じて販売実績の情報を迅速に提供。今後の収穫や栽培などの計画策定に役立ててもらっている。
ホームページとSNSを組み合わせて地元の買い物客や観光客への情報を効果的に発信

地元の買物客や観光客への情報発信は、ホームページとSNSを組み合わせて行っている。沖縄県の農産物の情報、テナント店舗の紹介、沖縄観光などの情報をホームページに掲載する一方、入荷したての野菜、開催予定のイベント、テナント店舗のオープンといった新規情報はSNSを使って機動的に発信している。大口の取引先とはコミュニケーションアプリを使って会話をする感覚で文字情報をやり取りしているという。「SNSはお客様にタイムリーに情報を提供できるので非常に重宝しています。農産物や特産品の情報発信をする際は、生産者の人柄やこだわりが伝わるように工夫しています」と宇良常務執行役は話した。
2024年1月、施設全体にWi-Fiネットワークを拡大 会議のペーパーレス化やNASによる情報共有を通じて働きやすい環境を整える

働きやすい環境づくりにもICTとデジタル機器を活用している。2024年1月、施設内のWi-Fi(無線LAN)ネットワークを再構築し、以前は一部に限られていたWi-Fi使用可能エリアを施設内全域に拡大した。「配線であふれていたオフィスがすっきりしただけでなく、施設内のどこにいてもネットを使って仕事ができる環境が整ったので非常に便利になりました」と宇良常務執行役。
2024年1月から、会議のペーパーレス化にも取り組んでいる。毎月数回開催している各部署の責任者が参加する会議で、以前は紙にプリントアウトして配布していた資料をパソコンでデジタル共有するようにしたところ、以前は、毎回100枚以上必要だった印刷枚数が、10枚以内で収まるようになったという。
NAS(ネットワーク接続型ストレージ)を活用した社内情報の共有化も推進している。「昔から蓄積しているデータを整理、共有して活用しやすくすることで、従業員同士の意見交換を活発にして新しいアイデアが生まれやすい環境を作っていきたい」と宇良常務執行役は話した。BCP(事業継続計画)対策を強化するために、情報の保存にクラウドストレージを活用することも検討している。情報セキュリティについては、2022年に様々な情報セキュリティ機能を備えたUTM(統合脅威管理)機器を導入し、ノートパソコンにもセキュリティソフトを導入して重層的な防御体制を構築している。
人材採用の面では単発バイト向けの人材マッチングシステムを活用
人材採用の面でもデジタル技術に目を向けている。沖縄県への観光客が増えるゴールデンウィークや夏休みといった繁忙期に採用する短期アルバイトの募集に、単発バイト向けの人材マッチングシステムを活用している。システムは、相互評価の機能を備えているので無断キャンセルの心配が少なく、必要な時に、求めている実績や能力を備えた人材を迅速に確保できるので、大きな効果を発揮しているという。「デジタル技術を活用することで、働いている人が活躍できるフィールドを広げ、お客様により一層満足していただけるように従業員一人ひとりの人材力を高めていきたい」と與儀社長。
2025年夏誕生の今帰仁村の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」は観光客増加に伴い地域経済の活性化へ向け新しい取り組みに挑戦
2025年夏には、恩納村からアクセスしやすい国頭郡今帰仁村で大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」がオープンすることから今後、地域の観光客数は更なる増加が見込まれている。新しい動きが生まれる中で、與儀社長は今後、地元住民の利便性や環境保全を大事にした上で、地域経済の活性化につながる新しい取り組みを企画していきたいという。「生産農家様、お客様、従業員、地域の人たち皆が笑顔になれるように、デジタル技術を活用して生産性を高めることはもちろん、ビジネスモデルをブラッシュアップしていきたい」と與儀社長は先を見据える。恩納村が高い優位性を持つ農業や観光でのDX推進は、地域経済の成長に大きな効果をもたらすに違いない。
企業概要
会社名 | 株式会社ONNA |
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本社 | 沖縄県国頭郡恩納村字仲泊1656-9 |
HP | https://onnanoeki.com |
電話 | 098-964-1188 |
設立 | 2005年2月 |
従業員数 | 62人 |
事業内容 | 公共施設の維持、管理運営に関する受託事業、農水産物の販売及び加工、飲食店の販売及び飲食店の経営業、観光用土産品の斡旋紹介業 |