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群馬県太田市で生花業を営んでいる有限会社フラワー紅白は、店舗を構えてフレッシュな生花を販売しているその奥で、主に葬儀の祭壇を飾る花や冠婚葬祭に贈る花を取り扱って、地域のさまざまな需要に応え続けている。少し古くなったパソコンを買い替えて、膨大な請求書や納品書の処理をスピードアップ。供花などに添える名札をプリントするオンデマンド印刷機をフル活用して、業務の改善とスピード化を実現している。(TOP画像:フラワー紅白の作業場で葬儀用の菊の花をそろえる従業員)
桐生市の老舗生花店からのれん分けで創業し実績を背景に新規顧客を獲得して成長していく

群馬県で「紅白」という名前を持った生花業者には、桐生市で80年以上の歴史を持つ株式会社紅白生花店がある。「その紅白生花店が母の実家なんです。祖父が創業者で父も勤めていました」と、深い関係があることを野田雅史代表取締役が明かす。
「キノコで有名な桐生市の森産業株式会社で働いていた祖父が、『キノコの研究費用を稼ぐために花を売ってほしい』と言われて、生花業を始めたそうです」(野田社長)。その事業が軌道に乗ってきたことから独立する形で紅白生花店が発足した。
「私も桐生の本店で働いていましたが、独立したいということで太田店をのれん分けしていただき、1995年10月にフラワー紅白を設立しました」(野田社長)と、創業の経緯を振り返る。
のれん分けでの創業だったため、紅白生花店太田店が持っていた顧客や商圏を引き継ぐ形となって、仕事に困ることはなかったという。「その頃は、葬儀と結婚式の両方を手がけていました」(野田社長)。葬儀会社や結婚式場と契約して、依頼があれば生花をそろえて納める仕事をしていたが、ずっと追い風だったわけではない。「契約していた葬儀会社が自前で生花を調達するようになって、注文がなくなりました」(野田社長)
葬儀向けの仕事を多くしショップを併設して新鮮な花を提供できる体制を作る

もっとも、大手の葬儀会社と取引を続けてきた実績を見込まれ、別の葬儀会社から注文が舞い込むようになり、すぐに仕事量は回復した。ただその過程で、結婚式場向けの仕事を減らさざるを得なかった。「いつお亡くなりになる方が出るかわからない葬儀の仕事をしていると、結婚式場向けの仕事がどうしても手薄になってしまいます」(野田社長)。大勢のスタッフがいればそうした部門分けも可能だが、「今の当社の規模では手が回りません。おざなりになってしまっては申し訳ないので、葬儀の方を中心にしました」(野田社長)。中小企業ならではの選択と集中と言えるだろう。
会社にはショップも併設しているが、多店舗展開していく予定は今のところはないという。ショップ向けに新鮮な花を仕入れて販売しつつ、葬儀の依頼を受けてそちらから花を選んで出している。「取引先からは、新鮮な花を飾ることができると評価されています」(野田社長)。本業はあくまでも葬儀向けということだ。
パソコンを高性能機種に入れ替え請求書や納品書の処理スピードを向上させた

そうした取り組みが評価され、今も仕事が止まることはない。いつ葬儀の花の注文があるかわからないからと、さまざまな種類の花を数多く仕入れて保管しながら、毎日入ってくる祭壇や供花のための花を提供している。「あまりに種類が多くて、出し入れの頻度も高いので、在庫や出庫をパソコンで管理することは難しいですね」(野田社長)。そこは今でも手作業で行っているが、「請求書や納品書については、パソコンで処理して発行してきました」(野田社長)。
ただ、膨大な処理量となるため、古いパソコンでは少し時間がかかり過ぎていた。これを2024年夏に新型に置き換え処理速度の向上を図った。「請求書や納品書の作成をしている妻からは、ソフトの起動も処理の速度もとても速くなったと聞いています」(野田社長)。パソコンは、モデルが変わっても機能自体が大きく変わるわけではないため、ずっと使い続けても大丈夫だろうと思われがちだが、CPUの性能は確実に向上している。定期的に見直すことで業務効率の向上につなげられる。
カラー複合機を使って葬儀用の名札を1日100枚近く作成してプリントしている

「葬儀用の供花に刺す名札の作成やプリントのスピードも上がりました」(野田社長)。作成する量は結構な枚数にのぼり、1日で5件の葬儀を受けたとして、20本ずつ名札を作れば合計で100枚ほどにすぐ到達する。それらをパソコン上で作成し、辞書にない文字はソフト上で作字して複合機へと流す。性能が低いパソコンでは、そうした処理に時間がかかっていたが、パソコンの性能アップで短縮化を実現できた。
「こうした実例があると、他のパソコンも入れ替えたくなりますね」(野田社長)。オンデマンド印刷機の近くに置いて、名札の作成などに使っている共用のパソコンや、オンラインショップ向けに注文を受けて処理する共用のパソコンについても、順次置き換えて少しでも効率化に努めていきたい考えだ。
オンデマンド印刷機については、以前導入していたレーザープリンターから乗り換えたもので、これによって様々なサイズや色の名札をプリントするのに、相当のスピードアップを実現できたそうだ。「専用の毛筆フォントを使えるシステムも導入しました」(野田社長)。大手の生花業者や葬儀会社では、毛筆で名札を手書きする人材を雇用しているそうだが、こちらも中小企業なりにICTの活用で、効率的かつ効果的なサービスを提供している。
「自分はパソコンを扱うのが本当に苦手で、まだまだ足りていない部分があると思っています」(野田社長)と言うようにオンラインのフラワーショップと提携して、ブーケのような商品を提供・販売しているが、自社でオンラインショップを持っての販売は行っていない。「余裕ができて、パソコンを扱える人が出てくれば、自社ホームページの運営にも挑戦してみたいです」(野田社長)。幸い、長男と次男がそれぞれ大学と高校を出て、大手の生花業者で修業をして実家に戻ってきてくれた。「若い人なら、FacebookやInstagramのようなサービスにも詳しいと思うので、取り組んでくれたらと思います」(野田社長)
LINEを使い、手がけた花祭壇や供花の画像を記録・共有して次の仕事に役立てる

ホームページがあれば、同社がどれだけ顧客に寄り添った仕事をしているかも伝えられる。「ある葬儀で、ご遺族の方から故人が大好きだったゴルフにちなんだ祭壇を作ってほしいという依頼があって、フェアウェーやグリーンをかたどった花祭壇を作りました」(野田社長)。そうしたさまざまな葬儀での仕事を撮影した記録画像は、LINEのアルバム機能を使って保管してある。従業員が見て参考にできるようにするためだが、これらの実績をホームページやSNSから発信することで、新しい依頼の獲得につながる可能性がある。「検討してみたいですね」(野田社長)
LINEについては、従業員の報告を確認して有効な指示を与えるためのツールとしても活用している。「現場から引き上げる際にメッセージを残してもらうことで、帰路の途中にある現場に立ち寄って回収などの作業をお願いできます」(野田社長)。13人とそれほど多くない従業員数では、スケジュール管理システムを導入するほどでもないが、従業員の動向を把握しておくようにするだけで、効率な働き方を実現できる。
ホームページ作成や勤怠管理のシステムなどの導入に取り組んでいく

13人という人数でも勤怠管理についてはそこそこ手間がかかる。いつ仕事が舞い込むかわからないため、定期的な休日を設けられないこともあって、従業員一人ひとりの勤務時間や勤務日数に違いが出てしまう。そうしたデータをとりまとめ、パソコンに入力する作業を効率化できるような勤怠管理システムについても導入していきたい考えだ。すべてを一気に置き換えるのではなく、必要なシステムを検討し、少しずつ導入していくのも中小企業ならではのICT戦略と言えるだろう。

企業概要
会社名 | 有限会社フラワー紅白 |
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住所 | 群馬県太田市新井町528-19 |
電話 | 0276-45-9187 |
設立 | 1995年10月 |
従業員数 | 13人 |
事業内容 | 生花業 |