リネンサプライ市場,2019年
(写真=Tish1/Shutterstock.com)

2018年度のリネンサプライ市場規模は前年度比0.3%増の5,178億円とほぼ横ばいながら2年連続でプラス成長

~ホテルリネンが市場全体を牽引するも、他需要分野含めた人材不足が大きな課題~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内リネンサプライ市場の調査を実施し、市場概況や参入企業の事業戦略を明らかにした。

リネンサプライ市場規模推移・予測

リネンサプライ市場規模推移・予測

1.市場概況

リネンサプライとは、ホテルなど宿泊施設や病院、レストラン・飲食店・アミューズメント施設などの店舗、企業や工場等にリネン類をレンタルするサービスである。2018年度の国内リネンサプライ市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比0.3%増の5,178億38百万円と、ほぼ横ばいながら2年連続でプラス成長となった。リネンサプライ市場は、2017年度以降は下げ止まったものと考える。

2.注目トピック

全ての需要分野で、人手不足の影響が深刻化

リネンサプライ業界の長年の課題として、人手不足が挙げられる。すべての需要分野で深刻化しているとされ、さらに2019年4月より実施された働き方改革による影響もそれぞれで生じている。
労働力の確保という意味では、新制度のもとで2018年11月に技能実習2号移行対象職種に、リネンサプライ職種(リネンサプライ仕上げ作業)が追加された。これにより、外国人労働者の労働年数が延長され、より働き方が改善されていくとみられる。その他、外国人労働者だけでなく、女性労働者にも配慮(労働時間の短縮、子育て支援など)したリネンサプライヤー側の手厚い取り組みもある。
また、設備投資も含め、省人・省力化にいかに取り組むかが大きな課題である。各業界で自動化が進む中で、リネンサプライ業界でも自動化の動きはあり、工場の増設や新工場の建設のほか、既存の設備でいかに効率化を進められるか、各社の取り組み度合いが今後の生き残りに影響を与えるものと推察する。

3.将来展望

2019年度の国内リネンサプライ市場規模(事業者売上高ベース)を前年度比0.2%増の5,187億62百万円になると予測する。ただし、ホテルリネン市場の伸びの多寡によって、全体市場にも影響を与えるとみる。
リネンサプライ市場がマイナス傾向からほぼ横ばいまで回復した要因に、ホテルリネン市場の牽引が挙げられる。訪日外国人客数が増加し、近年は東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う需要増を見越したホテル建設や、新たにホテル経営に乗り出す事業者の増加など、リネンサプライヤーにとっての顧客の数そのものが増えたことにより、ホテルリネン市場は活況に沸いている。
2019年に入り、ホテルの稼働状況にやや落ち着きが見え始めているといった声もあるものの、ホテル向けのリネンサプライ市場に新規参入する異業種企業も散見されている。また、2020年以降はホテルの出店状況も鈍化する見込みであるが、訪日外国人客向け、インバウンド需要を中心としたラグジュアリーホテルは主要都市部において需要があるとされる。一方で東京オリンピック・パラリンピック開催後のホテルリネン市場の不透明な部分が、業界にとって不安要素の一つである。東京オリンピック後に「ホテルの供給過剰問題」が生じる可能性もあり、リネンサプライ業界がその煽りを受けてしまう可能性はあると考える。