優先株
(画像=PIXTA)

企業が発行する株式には、いくつかの種類がある。本記事で解説する「優先株」は、中小企業にとって貴重な資金調達手段になり得る株式だ。ただし、優先株にはデメリットやリスクも潜んでいるため、興味を持っている経営者は事前に正しい知識を身につけよう。

目次

  1. 優先株とは?普通株との違いを正しく理解しよう
    1. 優先株の2つの様式とは?
  2. 優先株の3つの種類を徹底解説
    1. 1.完全参加型優先株式
    2. 2.非参加型優先株式
    3. 3.制限参加型優先株式
  3. 投資家から見た優先株のメリット・デメリット
    1. 投資家側のメリット
    2. 投資家側のデメリット
  4. 企業側から見た優先株のメリット・デメリット
    1. 企業側のメリット
    2. 企業側のデメリット
  5. 優先株の正しい活用方法と注意点
    1. 優先株式設計は慎重に!基本的には専門家への相談が望ましい
    2. 優先株の発行は、以後の資金調達に多大な影響を及ぼす
  6. 優先株の安易な発行は厳禁!無理をせずに専門家に相談を

優先株とは?普通株との違いを正しく理解しよう

優先株とは、ほかの株式に比べて優先的な権利が付与されている株式のこと。発行元によって権利の内容はやや異なるが、一般的な優先株は以下のような特徴を備えている。

○優先株の主な特徴
・投資家が多くの配当金を受け取れる
・企業が解散をしたときに、優先的にその会社の財産を受け取れる
・議決権に一定の制限が設けられている
・一般的な株式よりも株価が高めに設定されている

この優先株に対して、一般的な株式は「普通株」、普通株よりも権利が劣る株式は「劣後株」と呼ばれている。投資家側から見ると、「劣後株<普通株<優先株」の順に魅力が大きくなっていく点は、基礎知識としてしっかりと覚えておきたいポイントだ。

優先株の2つの様式とは?

話を優先株に戻すが、優先株には以下の2つの様式がある。

優先株の様式概要
累積型優先株式投資家が定められている優先配当額を受け取れなかった場合に、その不足分を次年度に繰り越せる様式。投資家にとってはリスクを抑えやすい反面で、取得コストはやや高い傾向にある。
非累積型優先株式累積型とは違い、不足分を次年度に繰り越せない様式。累積型に比べて取得コストは安いものの、投資家にとってはリスクがやや高い。

投資家側の目線からは、「累積型優先株式」のほうがメリットが大きいといえる。仮に投資家が非累積型優先株式を購入する場合は、「本年度中に優先配当額を受け取れるかどうか?」を慎重に吟味する必要があるだろう。

優先株の3つの種類を徹底解説

優先株には上記の様式のほか、大きくわけて3つの種類がある。より理解を深めるために、以下で各種類の特徴をチェックしていこう。

1.完全参加型優先株式

単に「参加型優先株式」とも呼ばれる、取得コストが高いタイプの優先株。コストはかかるものの、優先配当額が支払われた後に普通株の配当も受け取れるため、参加型の優先株式では2重で配当金を受け取れる。

優先株式の中では最も多くの分配が発生する種類なので、たとえばインカムゲインを狙う投資家にとっては魅力的な株式といえるだろう。

2.非参加型優先株式

優先配当額は受け取れるものの、普通株の分の配当を受け取れないタイプの優先株式。配当金を2重で受け取ることはできないが、参加型に比べると取得コストが低い傾向にある。

この非参加型優先株式に関しては、普通株よりメリットが大きいとは言い難い。たとえば、優先配当額が普通株の配当金より少ないケースでは、優先株であるがゆえに分配時に損をしてしまうためだ。

したがって、配当金の分配状況によっては、非参加型優先株式から普通株に変更するような投資家も存在する。

3.制限参加型優先株式

優先配当額が支払われた後に、「一定の倍率まで」という制限つきで普通株の分の配当金が支払われる優先株式。普通株の分の上限配当額は「優先配当額と同額」であるため、完全参加型優先株式に比べると受け取れる配当金は少ない。

たとえば、優先配当額が300万円の制限参加型優先株式を保有している場合、トータルで受け取れる配当金は最大600万円(300万円×2)となる。

投資家から見た優先株のメリット・デメリット

優先株のメリット・デメリットは、受け取る側(投資家)と発行する側(企業)によって異なる。そのため、まずは投資家から見た優先株のメリット・デメリットを、以下でひとつずつ確認していこう。

投資家側のメリット

投資家が優先株を取得するメリットとしては、主に以下の点が挙げられる。

○投資家が優先株を取得するメリット
・配当金を2重に受け取ることで、リターンを増やせる
・最低限のリターンを確保できる
・投資先の企業が万が一倒産をしても、その資産を優先的に受け取れる

簡単にいえば、優先株の取得は投資のリスクを抑える方法として効果的だ。普通株に投資をすると、投資先企業の経営状態が悪化してしまったときに、「投資総額>リターン」の状態になる可能性が高まる。

そのような場合であっても、優先株では一定の優先配当額が保証されているため、比較的安全に投資を進められるだろう。また、倒産に対するリスクヘッジになっている点も、投資家側がしっかりと押さえておきたいポイントだ。

投資家側のデメリット

優先株には投資対象として魅力的なメリットがあるものの、その反面で以下のようなデメリットも存在している。

○投資家が優先株を取得するデメリット
・売買によって利益を出すことは難しい
・基本的には議決権が制限されている

優先株は一般市場で売買される株式ではなく、全体的に流動性が低い傾向にある。つまり、経営状態が良好であっても、株価が劇的に上昇するような見込みは薄いため、売買によって利益を積み重ねることは難しい。

また、中には権利が保護されているケースはあるものの、基本的には「議決権が制限されている点」も軽視できないポイントだ。議決権に制限がかけられていると、たとえば投資先企業の経営が傾いた場合であっても、経営に介入することができない。

株主としての権利を自由に行使したいのであれば、優先株主の権利が認められている株式を狙う必要があるだろう。

企業側から見た優先株のメリット・デメリット

次は、株式会社が優先株を発行するメリット・デメリットを見ていこう。

企業側のメリット

ここまでを読むと、優先株は投資家にとって魅力的な株式に見えるかもしれないが、実は発行する企業側にも以下のようなメリットがある。

○企業が優先株を発行するメリット
・資金調達手段として活用しやすい
・経営に介入されない形で、資金調達を図れる
・自己資本比率を調整できる

前述の通り、優先株は普通株に比べて株価が高い傾向にあるので、企業側としては1株でより多くの出資を期待できる。さらに、議決権を制限した形で優先株を発行すれば、経営の自由度を維持したまま資金調達を実現することが可能だ。

また、優先株によって得た資金は資本金になり、結果として自己資本比率がアップする点も経営者が覚えておきたいポイント。融資を受ける前など、会社経営においては自己資本比率を上昇させる必要性に迫られるケースがあるため、その手段のひとつとして優先株の発行はしっかりと意識しておきたい。

企業側のデメリット

優先株の発行は新たな資金調達手段となり得るが、以下で挙げるデメリットには要注意だ。

○企業が優先株を発行するデメリット
・企業のイメージが悪化することもある
・発行に手間がかかる
・日本ではあまり浸透していない

優先株は資金調達手段として活用できるがゆえに、「資金繰りの厳しい企業が実施する」などのイメージを持たれる恐れがある。つまり、企業イメージの悪化につながる可能性があるため、発行する前には慎重に計画を立てる必要があるだろう。

また、株主総会に加えて「種類株式総会」の開催が必要になるなど、普通株に比べて発行に手間がかかる点もデメリットだ。さらに、これらのデメリットの影響もあって国内市場ではあまり浸透していないため、一般投資家向けに発行をしても買い手が見つからない可能性が考えられる。

メリットデメリット
投資家・配当金を2重に受け取ることで、リターンを増やせる
・最低限のリターンを確保できる
・投資先の企業が万が一倒産をしても、その資産を優先的に受け取れる
・売買によって利益を出すことは難しい
・基本的には議決権が制限されている
企業・資金調達手段として活用しやすい
・経営に介入されない形で、資金調達を図れる
・自己資本比率を調整できる
・企業のイメージが悪化することもある
・発行に手間がかかる
・日本ではあまり浸透していない

上の表は、ここまで紹介した優先株のメリット・デメリットをまとめたものだ。優先株には、投資家・企業のどちらの立場にも魅力的なメリットがある一方で、注意するべきデメリットも潜んでいる。

状況次第では、ひとつのデメリットが深刻なリスクにつながる恐れがあるため、特にデメリットの部分はしっかりと理解を深めておきたい。

優先株の正しい活用方法と注意点

最後に、ここまでで解説しきれていない中小経営者向けの豆知識を紹介しよう。優先株を上手に活用するには、以下で紹介する2点を意識しておくことが重要だ。

優先株式設計は慎重に!基本的には専門家への相談が望ましい

配当金や議決権の範囲など、優先株の設計は慎重に進めなくてはならない。たとえば、配当金を低めに設定すると配当コストは抑えられるが、投資家にとっては魅力的な優先株ではなくなるため、スムーズな資金調達が難しくなる恐れがある。

また、優先株の「議決権に制限をかけられる点」は、企業側の立場からすれば大きなメリットといえる。ただし、投資家が不利益を被るような制限をかけると、上記の例と同じく優先株の魅力は薄まってしまうだろう。

したがって、配当金や議決権などの優先株式設計は、会社状況や株価を十分に考慮することが重要だ。ただし、あまりにも時間をかけると資金調達が間に合わなくなる可能性があるため、優先株を発行する必要性に迫られたら、弁護士などの専門家に相談することをおすすめする。

優先株の発行は、以後の資金調達に多大な影響を及ぼす

優先株は一度発行すると、以後の資金調達の幅を狭めてしまう恐れがある。そのメカニズムは以下の通りだ。

○優先株の発行によって、資金調達の幅が狭まるメカニズム
【1】優先株を投資家に購入してもらうことで、企業価値が向上する
【2】企業価値の向上により、1株あたりの株価が上昇する
【3】取得コスト(投資家にとってのリスク)が上昇するため、普通株や劣後株が敬遠される

投資家の立場からすると、取得コストが上昇しているにも関わらず、あえてリスクを抑えにくい普通株や劣後株を選ぶ道理はない。つまり、優先株を一度発行すると、その後の大型資金調達についても優先株に頼らざるを得なくなる可能性があるのだ。

したがって、優先株の発行は短期間ではなく、中長期の資金計画として考える必要がある。たとえば、ベンチャー企業が優先株によって資金調達をする場合は、イグジットまでを踏まえた資金計画の策定が求められるだろう。

優先株の安易な発行は厳禁!無理をせずに専門家に相談を

経営者にとって、優先株の発行は貴重な資金調達手段のひとつだ。ただし、本記事で解説したようにデメリットやリスクもあるため、多額の資金を調達できる可能性があるからと言って、安易に優先株を発行するべきではない。

優先株式の設計には専門知識が求められる要素が多いため、適切な判断が難しい場合には、無理をせずに専門家に相談することも検討しておこう。

文・THE OWNER編集部

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