![【VCインタビュー】ANOBAKAの運営する独自起業家コミュニティ・生成AI特化ファンドとは?(中編)](https://cdn.the-owner.jp/600/314/SbsOfzOUyFpxeelVjDyTeIgXcuAywEem/dd241877-55bb-4ed5-b4b4-b65d6b94dd80.jpg)
“チャレンジを至高の概念とする”
何よりも至高な概念を「チャレンジ」とし、シード/アーリーステージの起業家を支援するベンチャーキャピタル(以下、VC)、株式会社ANOBAKA。
前編ではANOBAKA社設立の背景や、特徴的な社名に込められた想い、「バカ」という言葉が持つ深い意味についてお話を伺いました。
前編はこちら:https://startuplog.com/n/n3d36913cc164?sub_rt=share_pb
中編では、ANOBAKA社の特徴や強み、話題の起業家コミュニティや生成AI特化ファンド「Generative AI Fund」について探っていきます!
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ANOBAKA社の特徴・強み
ーでは、ANOBAKAさんの特徴・強みについてお伺いできますか?
![【VCインタビュー】ANOBAKAの運営する独自起業家コミュニティ・生成AI特化ファンドとは?(中編)](https://cdn.the-owner.jp/600/314/lrVVvzmBSHmHLguSvgsibwvuHAfyKMwj/ad25d66e-7aa9-4b97-a77b-0b0d4ddaa0ec.jpg)
長野氏:個別戦術論と抽象度の高いものとに分けてお話します。まず、具体的な個別戦術論としては、まだどこからも資金調達をしていないイケてる企業に投資ができている点です。ある程度成長してきた企業に投資するのは、シリーズA以降のVCの役割だと思っています。一方で、僕らの強みは、まだ誰にも知られていないけれど、めちゃくちゃイケてる起業家に積極的に投資できる点だと考えています。
また、僕らのファンドは日本で最も多くの事業会社がLPとして出資しているVCだと思っています。3号ファンドであるジェネラルファンドだけでも、約35社が出資しています。この事業会社とのネットワークが、うちの非常に大きな強みの1つです。
ーそれらのネットワークを活かした取り組みが、他のVCと違うポイントにもなりますか?
長野氏:そうですね。当社のキャピタリストだけでなく、出資いただいているCVCの皆さんや、ファンドに参画していないCVC・事業会社のネットワークを活用し、投資先を支援できる総合力がうちにはあります。その結果、投資先の約9割がシリーズAに成功しており、これは非常に高い確率だと思います。シード期に特化しているからこそ実現できる支援プログラムや仕組みが、僕らの大きな強みだと思っています。
ーなるほど。投資先の約9割がシリーズAに成功しているのは、スタートアップにとっても非常に心強いですね。
長野氏:ありがとうございます。また抽象度を高めて見つめた時の強みとしては、やはり「ANOBAKA」という社名そのものが体現するブランディング力です。「たとえ誰にも理解されなくても、自分の信じる世界観を実現したい」と思っている人たちに投資するという姿勢を、この社名で表しています。業界内での認知度はだいぶ高まっていますし、この社名が生み出すコーポレートブランディングは、他のVCとは一線を画している部分だと感じていますね
ー社名自体がANOBAKAさんの思想やスタンスを象徴し、直感的に伝わるブランディングが見事に確立されていますね。
ANOBAKA社の運営するコミュニティ
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ーANOBAKAさんの特徴の1つとして、コミュニティを運営されているとお伺いしました。
長野氏:実は、一番力を入れているのは、何だかんだ言ってコミュニティかもしれません。特に、この2年ほどは投資先のコミュニティ作りに注力しています。ANOBAKAのコミュニティ開発担当の五十公野さんが、年に1回の投資先合宿をプロデュースしてくれているのですが、とても象徴的な取り組みになっています。
ー起業家同士があつまって合宿するイメージでしょうか?
長野氏:そうです。130人程の経営者が集まり、ホテルを貸し切ってノウハウ共有プログラムや相談会を行っています。夜は飲み会もあるんですが、こちらが「夜の2時で終了」と言っても、実際には朝の5時くらいまで話し込んでいることも多いですね(笑)。
こうした場で、起業家同士が経営の相談をしたり、孤独を感じがちな経営者に仲間ができたりするのは非常に価値があります。また、同じ時期に出資を受けた同世代の起業家同士で、「あいつは資金調達10億円を達成しているのに、うちはまだまだだ」と、良きライバルとしても刺激し合える場になっています。こういった投資先同士のつながりやコミュニティは、僕たちの1つの強みだと思っています
ー起業家とってはとてもありがたい場になっていそうですね。後日談として、「あの合宿のお陰で...」といったエピソードも生まれそうです。
長野氏:他にもSlackグループや生成AI関連企業に特化した勉強会、イベントなどを実施していますね。特に、直近半年以内に新規投資を受けた企業を「同期グループ」として枠組みし、そのグループでの勉強会やイベントを積極的に開催しています。最近では、「コミュニティに入りたいから連絡しました」と言ってくれる起業家も増えており、こうした取り組みが少しずつ成果や評判に繋がってきていると感じています。
生成AI特化型ファンド「Generative AIファンド」について
![【VCインタビュー】ANOBAKAの運営する独自起業家コミュニティ・生成AI特化ファンドとは?(中編)](https://cdn.the-owner.jp/600/322/aeOlswiSZDmXajIwXtNUzPJLHLRCuoQV/0cd0be94-4792-4b49-b6df-5842d9c140e7.jpg)
ーGenerative AIファンドの設立背景について教えてください
長野氏:これまでIT業界にいるなかで、5年から10年に一度、毎回大きな波が来るのをずっと見てきました。古くはiモードの波があり、その後ソーシャルクラウド、スマートフォンといった流れがありました。そういった大きなムーブメントを数多く見てきたなかで、生成AIも必ず大きな波になるだろうと思ったんです。
ー最前線にいたからこそ、生成AIが大きな波を起こすとすぐに判断できたのですね
長野氏:クラウドのインパクトが非常に大きかったのは、従来のオフィスでサーバーを購入・設置し、ネットワークを繋げてウェブサービスを展開するという手間を省き、さらにサーバーエンジニアが不要な環境を実現した点です。AWSがその役割を担っており、APIを活用することで複雑な作業が大幅に簡略化されたことが、クラウドの大きな功績だと思います。
生成AIも同様で、OpenAIやAnthropicのようなファンデーションモデルを提供するプレイヤーがAPIで接続できる環境を整えています。そのおかげで、AIエンジニアがいなくても、APIを通じてAIのコア部分を利用できるようになり、どの会社でもAIを活用したプロダクトを展開できる時代が訪れたんです。
ー長野さんはどのタイミングでこのビックムーブメントに確信を持ったのですか?
長野氏:2022年11月にChatGPT 3.5がリリースされたときです。「これは革命的だ」と思いました。特にAPIがどのように設計されるかに関心を持っていて、Microsoftなどにアプローチし、今後のAPIの設計や可能性についてヒアリングを重ねました。
その結果、サードパーティーが十分にアプリケーションを開発できるレベルに達すると確信し、すぐに生成AI特化型のファンドを立ち上げました。日本でこれほど早く動いたのは、恐らくうちだけだったと思います。
どの会社もAIプロダクトを展開できる魅力、そして少子高齢化で生産性が課題となっている日本社会において、生成AIの技術が社会の発展に大きく寄与すると考えたことが、このファンドの設立背景です。
ーこちらのファンドのパフォーマンス状況についてはいかがでしょうか?
長野氏:パフォーマンスは非常に良いですね。多くの企業に投資できていますし、やってきたことに間違いはなかったと思っています。一方で、さらに投資先の数を増やしていきたいという思いはずっとありますね。
ー生成AIのAPIを活用した会社の数については、ある程度良いペースで増えてきていると感じていますか?
長野氏:全く足りていないと思います。アメリカでは、現在起業する人の6割から7割が生成AI系のスタートアップに取り組んでいると言われていますが、日本ではおそらく1割以下です。そこを劇的に変えていかなければならないと考えています。僕らも啓蒙活動の一環として、アメリカの優れたプロダクト事例を紹介するメディアや、継続的なイベントの開催などに力を入れています。
ー日本でそこまで生成AIのスタートアップが生まれない原因は何だとお考えですか?
長野氏:非常に複雑なため、一概に何が原因かというのは言いづらいですが、1つ大きな要因として、日本の生成AI関連の企業が受託業務に流れがちな点が挙げられると思います。
生成AIの受託は比較的収益性が高いので、企業が生成AIを導入しようとする際に、そういった受託会社に任せることが多いんです。結果として、受託型のスタートアップは比較的早く売上を立てることができるため、どうしてもそちらに流れてしまう傾向があります。もちろん、他にもいくつか仮説はありますが、この受託に流れる構造は大きな要因の1つではないかと考えています。
ーなるほど。日本の課題を生成AIが解決する糸口は見えてきているものの、その背後には複雑に絡み合った課題が横たわっているのですね。
(中編はここまで)
ANOBAKA社の運営するYouTubeチャンネル「ANOBAKA CH」でもGAIファンドについて発信されています!是非ご覧ください。
▼ANOBAKA CH(YouTube)
最終章の後編では、長野さんの起業家に対する想いや日本のスタートアップエコシステムに対して感じていることを伺いました。
是非最後までご覧いただき、ANOBAKA社を深く理解していただけると嬉しいです!