![安全を支える製品製造のロボット化と生産管理システムによるDXプラス「人」で信頼の「メイド・イン・誠和」のものづくり 誠和製作所(群馬県)](https://cdn.the-owner.jp/800/440/KMnYpRJkXcjEhYnfhoGQnxKhxxzRWkbM/a60407d6-1afa-46f5-9366-be7183010791.jpg)
目次
- 大手自動車メーカー勤務を経験した後、「中小企業のものづくり業界の人気復活が必要」と感じ、地元に帰り、誠和製作所に入社
- 創業当初は鉄道保安部品中心の「一本足」での経営。そこから立体駐車場を含め「二本柱」の経営体制に。現在はさらに三本目の柱を模索する
- 管理事務スタッフによる手書きの発注書などから一転 生産管理システムにより生産の進捗や請求書までを一元管理できる態勢を整える
- 大切なのは「人」 多様性を進めながら、教え、育てる大切さを従業員も学び、人を大切にする会社となる
- 顧客との信頼関係に必要なセキュリティ面でも一段上のシステム導入を検討している
- 「メイド・イン・誠和」を誇りに今後は営業の強化も視野に。技術に裏打ちされたものづくりを続けていく
群馬県館林市の西部に位置する「館林金属工業団地」。1972年の同工業団地協同組合の発足からすでに50年超が経過した。同団地が落成した当初の1976年から団地内に社屋を構える株式会社誠和製作所は1962年の設立。以降、金属加工のプレスに始まり、板金・溶接・切削・レーザー加工部品等の開発・製造・販売に取り組んできた。特に鉄道車両用のブレーキ部品といった重要保安部品を手掛け、長年の事業継続で信頼性を高めてきたが、そうした中で手作業が中心だった工程をロボット化するなど、製造機械のIoT化を積極的に推進。同時に生産管理システムの構築と活用によるDX化、さらに最も大切な人材の育成により信頼の「メイド・イン・誠和」の製品を生み出していく。(TOP写真:加工の終了時間をスマートフォンで生産管理システムに入力する従業員)
大手自動車メーカー勤務を経験した後、「中小企業のものづくり業界の人気復活が必要」と感じ、地元に帰り、誠和製作所に入社
![安全を支える製品製造のロボット化と生産管理システムによるDXプラス「人」で信頼の「メイド・イン・誠和」のものづくり 誠和製作所(群馬県)](https://cdn.the-owner.jp/650/434/ykNyZdbhKuWEcPvsWTujYGdjChMIHuAY/07caec9d-a772-4026-80c2-bb09f6a183a8.jpg)
現在、同社を率いる多田征訓代表取締役社長は3代目の社長にあたる。1986年に東海大学工学部を卒業後、大手自動車メーカーに就職し、後に情報システム部となる事務管理部に配属された。パソコンをはじめとする社内のコンピューター化に際し、ディーラーなども含めた全国のシステムをまとめる仕事についていたという。その間、今で言うM&A企業の吸収合併などにも携わった。メーカーの顧客でもある全国のディーラーへ飛び回ったり、大阪へ出向し刺激的な販売経験なども含め、「世の中の酸いも甘いもすべて見てきた」(多田社長)といい、それが「現在の従業員や人を思い、大切にするという原点につながった」と振り返る。
1995年6月に地元の館林市に戻って誠和製作所に入社した。「中小企業に人が入らなくなってきた時代になり、ものづくりの人気もなくなってきていた。そうした中で従業員や人を大切にしてものづくり業界の人気復活という、自分自身の集大成として戻ってきたのです」製造業は小規模事業者が多く、生き残りの瀬戸際にある。館林市に戻ってきた当時、多田社長の目にはそう映っていたという。
創業当初は鉄道保安部品中心の「一本足」での経営。そこから立体駐車場を含め「二本柱」の経営体制に。現在はさらに三本目の柱を模索する
![安全を支える製品製造のロボット化と生産管理システムによるDXプラス「人」で信頼の「メイド・イン・誠和」のものづくり 誠和製作所(群馬県)](https://cdn.the-owner.jp/650/434/dWkrXprdGCdQATPzIzZgNNLavSbNjuYW/d5fe875a-3916-47ca-877a-423a6c3e220a.jpg)
多田社長が入社した当初は「プレス加工が仕事の中心だった」という。時代とともに仕事内容に多様さを加えていく必要性を感じ、製缶から板金、溶接、さらに切削までを手掛けられるように変化した。「私が入ってからの30年間で、ようやく一通りを一貫体制でできるようになってきた」と振り返る。
創業当初はほぼ鉄道保安部品の製造に立脚した「一本足」の経営スタイルだった。現在は、鉄道車両などに使われるブレーキ摩擦材を補助する部品が全体の売上の約4割を占める。加えて、立体駐車場用の部品や組立製品が4割程度の売上を占めており、社を支える二本柱となっている。残りの2割は建設機械を支える部品や暖房機器用の部品だ。主力である鉄道などのブレーキ用部品も、メンテナンスの多い立体駐車場用部品も、消耗した際に取り替えるための「補用部品」と呼ばれるものが多い。それらを手掛けていることから、企業としては最初に製品を売り切るだけではなく、その後のメンテナンスも含めた取引を続けていけることも強みだ。
多田社長はさらなる多様化を考え、「なんとか社の事業として三本柱となるような事業構造にしていきたい」と今後を見据えている。
管理事務スタッフによる手書きの発注書などから一転 生産管理システムにより生産の進捗や請求書までを一元管理できる態勢を整える
![安全を支える製品製造のロボット化と生産管理システムによるDXプラス「人」で信頼の「メイド・イン・誠和」のものづくり 誠和製作所(群馬県)](https://cdn.the-owner.jp/650/434/coGVjGQKmTgYINjkplFbYdVWYHUjmyDS/2a20f3ef-83d4-44e6-b8c0-6d7f66be2781.jpg)
2000年代に入ってから、国の中小企業に対するさまざまな支援を活用し、社内の改革を進めてきた。「中小企業が生き残りの瀬戸際にあると言われた時代、ロボット化やDX化、さらには従業員の多様にも心を配ってきました」と話す多田社長は、2006年4月に社長に就任した。
工場内の機械のロボット化はどんどん進捗し、パンチレーザー機をはじめ、溶接ロボット、バリ取り機といった、作業の形態に見合うロボット機械を次々に導入してきた。一方、デジタル化においては、近年、社内で課題になっていた生産管理に関するシステムを2022年に導入した。
「製造業というのは、どうしても製造における改善という部分が先立ってしまい、管理事務の方を整備するのが少し遅れていた」と多田社長。管理事務スタッフらによる手書きでの指示書などにより現場が回っていたものをデジタル化することによって、効率的な仕事の進め方に改善されてきたという。
宇津木歩営業部長兼生産技術担当は「製造の進捗なども管理できますし、最終的な納品書や請求書までの流れを一元的に管理できるようになりました」と明かす。製造現場では加工の着手時間や終了時間をスマートフォンで入力するようになり、製品の加工にかかる時間の把握ができるようになった。
今後は顧客から発注される段階からも同じシステムで管理したい意向があるが、顧客側との連携が進んでいないため社内システムの改善を進めている。
多田社長は前職でシステム構築分野に携わっていたので、より使いやすいシステムを構築するため、使いにくい点をリストアップし、それをフィードバックすることで、製造機械のメーカーやソフトウェア企業などへ改善を求めてきた。「2年間かけて、ようやく改善が進んで、第2ステージに入れる段階となった」と次のステップを見据える。
大切なのは「人」 多様性を進めながら、教え、育てる大切さを従業員も学び、人を大切にする会社となる
![安全を支える製品製造のロボット化と生産管理システムによるDXプラス「人」で信頼の「メイド・イン・誠和」のものづくり 誠和製作所(群馬県)](https://cdn.the-owner.jp/650/434/XsHsbbXNPgADgctcuHKhzwdZCRURwGoy/f8904b7b-0ee3-4334-be10-75d04abb75f3.jpg)
システムのDX化と同様に重要視してきたのは、従業員の多様性だ。世間一般的にも多様性が重要視されるようになった昨今は、外国人労働者の雇用も進め、現在は従業員25人のうち、4人が外国人労働者となっている。
多様性を推し進めるにあたって、多田社長が意識してきたことがある。「ものをつくる製造業は、教えないとできない職業。教えるということは、教える人自身を育てることにほかならない」という点だ。翻って、もともといる従業員にとっては、「女性や外国人に教える際の気遣いを学ぶ機会にもなってきた」という効果もあったと明かす。教える側は考え方や文化の違いを考えながら丁寧に教える。教わる側は、より深くその教えを受けて自分のものにしていく。その結果、従業員の離職率の低さにつながっているという。
顧客との信頼関係に必要なセキュリティ面でも一段上のシステム導入を検討している
これまでにも、技術に裏打ちされた製品を通じて、顧客企業との信頼関係を築き上げてきたが、多田社長はICTを駆使したセキュリティシステムの導入を検討している。「人対モノ、人対人、人対会社、会社対会社、というふうに関係がどんどん広がっていくと、それだけセキュリティというものが大事になっていく。顧客である企業様に心配や迷惑をかけたり、不安を与えたりすることがないようにしたい」と語る。
考えのきっかけは2020年からの新型コロナウイルス禍だった。製造業としては、製造の現場は常に現場で動いているわけだが、「世の中が面接でも会議でも、何でもWeb上で行う時代に変わってきた。誠和製作所という会社の見た目は変わらなくても、中身はどんどん変えていかないといけない」と考えたからだ。「セキュリティシステムを早急に一段上のシステムにしていきたい」と話す。
「メイド・イン・誠和」を誇りに今後は営業の強化も視野に。技術に裏打ちされたものづくりを続けていく
![安全を支える製品製造のロボット化と生産管理システムによるDXプラス「人」で信頼の「メイド・イン・誠和」のものづくり 誠和製作所(群馬県)](https://cdn.the-owner.jp/650/434/SNzJlPwqaXMpEtZuWWimEMpfnsQIoJMU/1d67129f-be1c-44fa-aa51-a16ab591965e.jpg)
こうしたロボット化やDX化、さらには多様性を推し進めることと軌を一にしてきた人材育成が奏功し、「『メイド・イン・誠和』と呼べるものを顧客に提供できる」と多田社長は胸を張る。そこで必要になってくるのは営業力のさらなる強化だ。
従来の企業へのアプローチは当然だが、誠和製作所は、世界初の技術で生み出される製品や他社を凌駕する加工方法を数多く持っている(今回は詳述していないが・・・)。他社を圧倒している製品や加工の強みをSEO対策やメッセージ性を持ったホームページで発信することで、様々な商談が入ってくることが想定される。ある分野で強みを持つ企業は、BtoBの分野でもホームページやSNSの活用によって大きく売上を伸ばす企業が多い。誠和製作所の今後に期待したい。
企業概要
会社名 | 株式会社誠和製作所 |
---|---|
住所 | 群馬県館林市近藤町318-10(金属工業団地内) |
HP | https://www.seiwa371.jp/ |
電話 | 0276-72-5107 |
設立 | 1962年1月11日 |
従業員数 | 25人 |
事業内容 | 鉄道車両・自動車・立体駐車場などの金属部品のプレス・板金・溶接・切削・レーザー加工による開発・製造・販売 |