相続法
(画像=Billion Photos/Shutterstock.com)

2018年7月6日、民法を改正する法律が成立し、2020年4月1日から相続に関する規定が改正されることになった。相続規定の改正は約40年ぶりとなるため、実際の相続の現場において様々な影響が予想される。ここでは、特に大きく変更された相続規定の改正点を取り上げる。

目次

  1. 相続規定の改正により遺言書の書き方が変わる
  2. 相続の規定に配偶者の居住権が新設された
  3. 被相続人の預貯金から仮払いができる
  4. 遺産の一部が分割できる制度が設けられた
  5. 相続の効力が民法改正で見直された
  6. 相続法の改正、一部の人は朗報かも
  7. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

相続規定の改正により遺言書の書き方が変わる

2018年の民放の相続規定改正によって、自筆証書遺言の方式が緩和される。

通常、我々が遺言書を作る場合、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類がある。自筆証書遺言は、文字どおり被相続人(財産の持ち主)が作成する遺言書である。どの財産を誰に相続させたいかを記した上で、遺言書を作成した日付を入れて署名し、印鑑を押せば完成となる。

以下の3点が守られていれば自筆証書遺言は有効であるが、1つでも要件が欠けていれば無効となる。

・全て自分で書く
・日付をいれる
・署名・捺印する

自筆証書遺言は手軽に書くことができる反面、ある程度相続についての知識あった上で作成しなければ、後ほど相続においてトラブルを招く結果となる。また、たとえ配偶者や子どもでも、勝手に遺言書の入った封筒を開けることはできない。必ず相続人全員がそろって、家庭裁判所で開封する手続き(検認)を取らなければいけない。

公正証書遺言は、公証役場に行って、公証人に相続の内容を伝えた上で遺言書の作成を代行してもらう方法である。法律の専門家である公証人が作成する遺言書であるため不備がないだけでなく、遺言書の控えを公証役場に保存するため、紛失や改ざんなども発生しない。

ただし、公正証書遺言は、弁護士や行政書士などの専門家に依頼して作成することが多いため、遺言作成者に報酬の支払いが必要となり、公証役場にも手数料を支払わなければならない。

今回の民法の改正で、自筆証書遺言の方式が緩和される。今までは、全て自分で書かなければ無効となっていたが、今回の改正で「財産目録」だけは、パソコンなどを用いて作成することが許可された。「財産目録」とは、自分が持っている財産に該当する預貯金、家や土地の不動産などを列記したものである。

特に不動産については、財産を特定するために地番(土地の番号)や地積(土地の面積)などを記載しなければならない。財産が多くある場合には、この財産目録を作成するだけでも、かなりの手間がかかっていた。

2018年の相続規定の改正では、財産目録を自筆する必要がなくなり、パソコンで作成することはもちろん、第三者が作成しても良いこととなった。また、預貯金に関しては通帳の写しを添付してもよく、不動産については、法務局が発行する「登記事項証明書」の添付でも有効となった。

ただし、財産目録を自筆以外で作成する場合には、財産目録の全てのページに署名・捺印しなければならない。また、財産目録が両面に記載されている場合には、片面だけではなく、両面に署名・捺印する必要がある。それでも、今回の改正で、財産目録を自筆する必要がなくなるので、作成者の負担はかなり軽減されることになる。

相続の規定に配偶者の居住権が新設された