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目次
マンションやビルの防水や塗装、内装などのリフォーム工事を手掛ける有限会社マツモト(群馬県高崎市)は、幅広い工事に対応できるほか、品質に力を入れてきたこともあり、県内だけでなく長野県や首都圏からも工事を受注するなど、発注先であるリフォーム企業大手から信頼を得ている。ホームページによる情報発信や、社員間の情報共有による経営上の効果も実感。現在も受注は順調といい、安定した経営を続けそうだ。(TOP写真:マツモトのホームページ)
21歳で独立 防水工事一本からリフォーム全般にシフトし県外の受注も獲得
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同社の始まりは、松本紀明代表取締役が高崎市内の工事会社で、防水工事のアルバイトを経験したことだ。仕事のやり方などを覚えたことで、学校卒業後もアルバイト先の社員となり、屋上や壁面の防水工事のほか、塗装、内装仕上げ、タイル補修やレンガ積みなどのリフォーム関連の資格も取得したことから、独り立ちできると判断。1991年には独立して個人事業主となった。松本社長が21歳の時だった。
独立当初は新築のマンションや住宅の防水工事の需要が多く、「防水工事一本でやっていた」(松本社長)。ただ、新築住宅の場合、多い時は1ヶ月に100棟程度の工事を抱えていたこともあったが、完成まで現場にとどまっていなければならず、仕事量の制約もあることからリフォーム全般にシフトしていった。しかし、バブル経済崩壊の影響を受けて徐々に需要が減少。苦境を乗り切るため、会社概要の資料を作成し、県内だけでなく、埼玉県や東京都の大手の建設会社やリフォーム業者に社長自身が飛び込みで営業に回った。
こうした地道な営業努力を続け、今では東京に集中している大手のリフォーム会社の約7割と取引できるまでに安定。しかも、防水工事に限らず、塗装、タイル補修、クリーニングなど、「工事用の足場の設置以外の仕事は何でも引き受けた」(同)。複数の工事を手掛ける業者が少ないことから、首都圏だけでなく、北関東でも同社の知名度が上がっていった。発注側からすれば、複数の会社に工事を分散発注するよりも、1社に任せた方が効率的なため、必然的に同社への依頼が増えていったという。
いち早く品質ISO認証を取得。品質にこだわり、ISO更新時も改善点を指摘されると自社の品質アップを図り絶えず品質向上を目指す
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多種の工事を一括で引き受けることや、「何よりも品質にこだわった」(松本社長)ことで経営が軌道に乗ったため、1998年には有限会社として法人化。現在では群馬県内よりも、埼玉や長野、東京など県外の仕事の方が多い。品質へのこだわりをアピールするため、2012年には「当時の同業他社としては珍しかった」(同)という品質管理の国際標準規格「ISO9001」の認証を取得した。この規格は1年ごとの仮検査、3年ごとに更新が必要など、継続していくには文書作成・管理などの手続も煩雑だが、松本社長は「仮検査ごとにチェックするポイントを指摘されるので、改善点が見つかる」と、ISO9001の認証制度を社内の品質向上になると評価している。実際、2024年には4回目の更新手続きを済ませている。
国際的な品質認証規格を取得したことで、2013年にはWebサイト作成ソフトでホームページを作成し工事の品質などをアピールした。2017年にはセキュリティ機能も向上させたホームページに更新。時には、ホームページを通じて個人客から仕事の依頼がくることもあるという。
施工品質向上のために施工管理ソフトを導入 進行状況の把握が全員で出来るようになり、更にビジネスチャットで情報の共有が進み、施工上の課題解決や施工スケジュールの調整がスムーズになった
2020年には施工管理ソフトを導入した。リフォーム工事では、「一つの現場で進行中や完成後の写真を500枚程度残す必要がある」(同)。これら膨大な写真を案件ごとにPDF化してクラウド上で管理することで、社員間の確認作業が容易になった。
マンション工事の場合は複数の工事業者が携わるため、施工管理作業が煩雑だ。しかし管理ソフトを導入したことで、クラウドに施工管理だけでなく、工事日報の記録をアップ。従来はFAXや電話で本社に連絡していたが、工事現場からでも入力が可能となるなど利便性が大幅に向上した。更に本社からも進行状況が把握できるため現場への対応力が格段に上がった。
更にチャット機能による情報交換など、「現場から帰社しなくても社員同士が情報共有できるようになった効果は大きい」(同)という。当然ながら施工上の課題の解決や施工スケジュールの調整がスムーズになった。その他には、工事現場周辺の地図やコンビニエンスストア、駐車場の場所なども共有し、別の社員が同じ現場に出向いても、あらかじめ周辺の状況がよくわかるなどの利点もあるそうだ。
コロナ禍後は受注も順調。工事の事前調査でドローンの活用なども検討
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防水工事などを行うには、実際の作業を行う塗装・防水技能士、工事現場を監督するには施工管理技士などのさまざまな資格が必要で、松本社長自身もこれらに加え、石綿調査士、高所作業車運転など10程度の資格を取得している。もちろん、社員も全員が技能士や管理技士などの資格を取得しており、未取得者が入社した場合は会社で取得費用を補助している。
コロナ禍後は「受注も順調」(松本社長)で、一つの工事は4~5ヶ月かかることから2025年半ばぐらいまでの工事は確保しているというが、悩みもある。塗装、タイル張りなどの屋外での工事などは天候に左右されやすい。雨の日は屋外工事ができず、例えば防水の仕上げ工事では、雨が降っていなくても湿度85%以上だと品質に問題が出る可能性もあるため工事ができない。実際、1週間程度工事ができないケースもあったという。また、工事用の足場の組み方によっても、作業効率が変わる。屋上の防水ならば面積から工事内容や期間が容易に見積もれるが、外壁の場合は現場によって構造が違う。
「現場監督の進行方法、天候、工事内容の確認など、とにかく現場に入ってみないと先がわからない」(同)ため、工期が不安定となり、原価管理が難しい点だ。このため、マンションのリフォーム工事の事前調査を任された場合は、ドローンを使って外壁の状態、防水の状態などを確認することも考えている。
課題は資材価格の上昇だが、コンパクトな企業で品質にこだわり続ける
工事用の資材価格が全般的に上昇していることも悩みの種だ。資材の原料は輸入品を使っているケースがほとんどで、円安の影響も受けている。価格上昇に対して価格転嫁できている部分もあるが、「建設業は大量生産できないので、コスト削減には限界がある」(松本社長)。中長期的に見れば、マンションの修繕は国土交通省のガイドラインもあって、これまで防水や外壁塗装などは約12年間隔だったのが、資材価格上昇により14~15年サイクルに延びる傾向もあり、仕事量そのものが減少する懸念もある。
法人化から27年目を迎え、55歳の松本社長は親族の後継者もいないため、将来的には現在の社員に経営を任せる考え。業容も無理に拡大を志向するのではなく、「コンパクトな企業として、今後も品質にこだわっていきたい」と、将来を見据えている。マンションの改修工事サイクルが延伸され仕事量が減った場合は、改めて一般住宅のリフォームを手掛けることも想定。今後も、「誠実・確実・スピード」をモットーとして経営を続けていく方針だ。
企業概要
会社名 | 有限会社マツモト |
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住所 | 群馬県高崎市下小塙町1935-1 |
HP | https://matsumoto-wp.co.jp |
電話 | 027-360-4770 |
設立 | 1998年8月 |
従業員数 | 5人 |
事業内容 | マンション、ビルなどの防水・塗装工事、タイル・レンガ・ブロック工事、内装仕上げなどリフォーム全般 |