補助金適正化法,改正点
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国や地方自治体が政策を推進する目的で個人や事業主を支援する「補助金制度」。補助金の原資は税金であり、不適切に使われることがあってはならないのは当然のことだ。不正や不適切な交付を防ぐため、法律はもちろん、地方自治体でも条例が定められているのだが、ここではその法律の内容や特徴を説明しよう。

補助金に関する法律はある?

補助金とは、国や地方自治体が産業の育成や町おこしなど公益となる活動や事業に対して、個人や企業に無償で交付するお金のことである。銀行融資とは異なり、基本的に返済する必要はないが、補助金の原資は国民や市区町村民の税金である。不適切な活用を防ぐため、交付を受ける個人や企業が補助金に関する法律を遵守しなければならない。その上で、交付を受けるためには国や地方自治体による審査、検査をクリアする必要がある。

補助金の適正な活用を定めるための法律が「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法、以下は適正化法と表記)」。1955年に同法律が制定されてから現在に至るまで、何度も改正が行われている。また、「地方自治法」にも「補助は公益上の必要がある場合に限る」など補助金に関する条文がある。

補助金を他の用途に使うのはNG

適正化法が制定された目的は、同法の第1条に記されているように「補助金の不正な申請や不正な使用を防止し、補助金の交付を適正に行うこと」。同法では、この目的に則って補助金の交付申請や審査のための基本事項や共通のルールなどが定められている。

適正化法は、大きく「補助金の申請と決定に関する部分」と「補助金を受けた個人や団体がやるべきことに関する部分」、「補助金の返還に関する部分」の3つに分けられる。

まずは、「補助金の申請と決定について」。こちらは第5条~10条で定められている。例えば、第5条は事業の目的や内容、必要経費や記入項目など、申請のための基本的な手続きについて記されている。

補助金の申請と決定に関する部分の柱とも言うべき、補助金交付の条件が決められているのが第7条。ここでは、「事業内容の変更や中止、あるいは期間をオーバーしてしまう場合は、きちんと行政側に報告すること」などが定められている。簡単に言うと、「補助金をもらっている人は、状況に変化があった場合は逐一役所に報告し、承認を受けてください」ということだ。

「補助金を受けた個人や団体がやるべきこと」が記載されているのは第11条から第16条。第11条第1項では、補助を受けた企業(事業主)や個人の義務が記されている。要約すると、「補助を受けた企業や個人は法令、交付の決定の内容、交付の条件に基づいて行政庁の指示に従うこと。また、“善良なる管理者の注意のもと事業を行い、決して、補助金の他の用途へ使ってはならない」とされている。ここでは、特に補助金の目的外使用の禁止が強くうたわれている。

ちなみに、この条文の中の「善良なる管理者の注意」というのは、法律用語で「善管注意義務」のこと。「善管注意義務」とは、その人の職業や地位、能力から考えて「この程度は注意できるだろう」と期待される範囲内の義務のこと。つまり、その人の立場や能力を超えた範囲での注意までは求められていないわけである。

続いて、第15条では補助金の金額の確定についての規定が書かれている。要約すると、「行政庁は、補助金を受けた個人や企業が事業の完了、または廃止の報告を受けた場合、報告書を審査するとともに現地調査を実施して、事業の成果が補助金交付の決定する際の内容や条件に適合しているかどうかを調べること。適合すると認められた時は、補助金の金額を決め、補助を受けた対象に通知すること」。主に役所側に対する記述なので、補助を受ける側は気にしなくてもいいだろう。

さらに、第16条第1項では補助を受けた個人や企業から事業の完了や廃止に関する報告を受けた際、行政側が補助金を交付する際に決めた条件に見合っていないと判断すれば、内容の是正を命令できることが定められている。補助金が正しく運用されていないと行政側が判断した場合は、行政側から「ここはこうしなさい」と命令されるということだ。

補助金返還の義務は税金に次ぐ順位

注目したいのは、「補助金の返還」について規定されている第17条から第21条の部分である。たとえば、第17条第1項は決定の取り消しについての規定。こちらを要約すると、「補助事業者が、補助金をほかの用途に使用、または補助金の交付を決定した内容や条件、法令、行政側の処分に違反した時には、補助金の全部、あるいは一部を取り消すことができる」というものだ。全部や一部というのはやや曖昧な表現だが、何らかの違反があった場合は補助金が交付されないことを示している。

補助金制度が特徴的なのは、事前の審査、途中の報告、事後の検査全てが終わってからようやく交付されるということである。補助金の対象となる事業を運用している途中に違反があった場合は交付を受けることができない。そうなれば補助金をもらえることを前提に動いていた事業主側も頭を抱えることになるはずだ。この法律を一から十まで知る必要はないものの、事業主側は違反がないように行政の説明をよく聞き、違反がないように細心の注意をもって臨む必要があるだろう。

さて、「補助金の返還」についての柱とも言えるのが、第18条に規定されている「補助金の返還」である。まず、第18条第1項に書かれているのは、「行政庁は、補助金の交付を取り消した場合に、その取消しに関する金額がすでに交付されている時は、期限を定めて返還を命じなければならない」こと。

続いて、同第2項には「行政庁は、補助事業者に交付する補助金の金額を確定した場合、すでにその額をこえる補助金が交付されている時は、期限を定めて返還を命じなければならない」と書かれる一方で、第3項には、「行政庁は、第18条第1項の『補助金の交付の決定の取消し』が、第2項の規定による場合、やむを得ない事情がある時は、返還の期限を延長、あるいは返還の命令の全部や一部を取り消すことができる」とも書かれている。いわば、返金に関する特例についての条文だが、「やむを得ない事情」の詳細については触れられていない。

さらに、第21条には徴収についての規定が書かれている。1項には、「行政庁が返還を命じた補助金や加算金・延滞金は、国税滞納処分の例に則り、徴収することができる」、第2項には「補助金や加算金・延滞金の“先取特権”の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする」と続く。つまり、補助金の返還は税金の徴収に次ぐものとして扱われ、「補助金の返還を求められているのに返さない場合は、滞納された税金と同じような方法で回収しますよ」、「回収の優先順位も税金に次ぐほど高いですよ」と言っているのだ。

ここで使われている先取特権とは法律用語で、「法律の定める特殊な債権を持つ人が、債務者の総財産あるいは特定の動産・不動産から、優先的に弁済(返済)を受けることができる権利のこと」を指す。

以上、ここまで紹介してきたのが適正化法の主な内容だ。

実際に補助金を返還した企業の例

それでは、実際に補助金の返還をした企業の例をご紹介しよう。

2016年に化学メーカーの子会社が独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)の「新興国市場開拓等事業費補助金」を不正に受給したとして、返還を求められる事例があった。子会社は、海外で新たな製造拠点を設立するためのアドバイスを受ける目的で専門家を雇用していたが、その一部を本来の使途と異なる名目で申請していたというものだ。受給の総額は約200万円で、これは親会社からジェトロへ全額返還されるとともに、親会社はジェトロへ追加の加算金を支払うこととなった。

このように一部を本来の使用用途とは異なる目的で使用し、虚偽の名目で申請するなどした場合、補助金の返還を免れることはできないだろう。

補助金の交付を受けるまでの流れ

前述のように、適正化法は今から60年以上前の1955年(昭和30年)に施行された。補助金以外にも、負担金や利子補給金についても規定されている。負担金とは、道路建設・整備などの公共事業のために徴収される特別な経費のこと。また、利子補給金とは、国や地方公共団体に低い利率で給付する補助金のことである。

法律が施行された当時は、すでに戦後から10年程度が経過し、日本は戦後復興から経済的に大きく発展を始めた時期だ。全国的に道路などのインフラ整備が急ピッチで進み、国はもちろん各都道府県にも公共事業の波が押し寄せていた。全国に多額の税金を投入する必要があり、そのためのルール作りが急務となっていたのである。

適正化法では、補助事業とは何か、間接補助金とは何かなど、補助金に関する基本的な事項が規定されているほか、補助金の申請方法、申請後の調査といった一連の流れも記載されている。ここまでと重複する部分はあるが、その流れを順にまとめてみよう。

①補助事業の目的・内容、さらには補助事業に関する経費の内訳などを記載した書類を決められた期限までに行政庁まで提出する。

②行政庁は申請された内容が正しいか、または適切であるか、経費の算定が適正かなどを調査し、補助金を交付するかどうか決定する。

③補助金が交付された後も、交付を受けた事業者には状況を報告する義務がある。もし、補助金の不適切な使用があれば、補助金の全部または一部を返還しなければならない。

⑤補助金の返還の優先順位は税金に次ぐ。

補助金で作られた資産の処分についての“特例”

補助金等適正化法は1955年に初めて施行されて以来、社会の変化などを背景に随時改正されてきた。中でも注目すべきは、○○年の改正。補助金の交付によって増加した財産の処分についての部分だ。

補助金の種類やその用途は多岐にわたっているため、個別の案件について全てをここで紹介することはできないが、例えば人件費などは申請どおりに使用すれば資産としては残らない。しかし、補助金を使って作られた大きな設備や土地、建物などは事業が終わった後もそのまま残る。残った設備などの扱いについては、補助金というお金の性質上、慎重にならざるを得ない。たとえば、補助金によって購入した設備を補助事業者が自分の利益のために転売するなどもってのほかだ。

昨今から、補助金に支援されて作られた施設が十分に活用されず、「税金の無駄」などと批判されるケースが後を絶たない。そのため、財産の処分については“特例”が設けられている。次のケースにあたる場合は、経済産業大臣によって財産の処分が特例として認められる可能性があるのだ。

  • 財産処分に関して、既定の金額を国庫に納める場合
  • 大臣等が適当と認める場合
  • 補助事業に必要な資金調達をする場合
  • 資金繰りの悪化で補助事業等の継続が困難であると認められる場合

補助金の交付を受けている事業によって取得した財産の処分については、総務省の「大臣官房会計課」が発行する通達「補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて」に、その詳細が記載されている。この通達では、経済産業大臣から財産の処分を承認される基準が次のように規定されている。

・補助金によって形成した財産については、補助金の交付の対象となる事務や事業に使用することが原則であり、財産の処分については慎重に対応すべきである。
しかしながら、社会経済情勢の変化や事業者自身における事情の変更によって、補助金の交付の目的に合致したり、処分を制限された財産の有効活用に寄与したりすると認められる場合がある。したがって、財産の処分について、経済産業大臣が適正化法第22条の承認をするための基準を定めるものである。

これを見ると、補助金の交付を受けた財産については本来の事務・事業のために使用されることが原則としつつも、交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付け、担保などに例外的に認められることがあることを認めている。また、経済産業大臣の承認以外に、政令による特例もあるようだ。

一見すると、適正化法では補助金の交付の対象となる財産の処分は禁止されている。ただし、「行政庁の承認を受けないで」という記載があることから、条件付きではあるが認めようとしている姿勢が伺える。ここには、「補助金によって作られた財産を有効に活用することが国民の理解を得られれば、一切の例外を認めないよりは逆に国民の利益につながるのではないか」という政府の考え方が反映していると思われる。

補助金で得た財産を目的から外れて使用することは、もちろん大問題である。その一方で、将来的な国民の利益につながるのであれば認めるとした点が、適正化法の改正の趣旨と言えるだろう。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)