減価償却
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志磨 宏彦
志磨 宏彦(しま・ひろひこ)
志磨税務経営事務所所長・税理士、中小企業診断士、経営革新支援機関、1級販売士。1959年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。志磨税務経営事務所所長・税理士、中小企業診断士、経営革新支援機関、1級販売士。税理士として100社以上の顧問先を持つかたわら、企業のコンサルティング、セミナー講演等にも飛び回る。融資案件にも強く、政府系金融機関とのパイプが太い。また、多くの外部スタッフ(弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、中小企業診断士等)と連携し、さまざまな企業ニーズに応えることを得意としている。

会社経営にあたり、固定資産の中でも減価償却資産は、決められた期間で償却をする必要があるため、資産取得の段階から注意が必要となる。ここでは、減価償却の期間や費用計上を正しく理解するために、減価償却の方法はもちろん、償却期間にも影響する特例についても紹介する。

目次

  1. 減価償却制度の概要
    1. 減価償却資産の対象
    2. 減価償却資産の取得価額
  2. 減価償却の方法
    1. 定率法
    2. 定額法
    3. 生産高比例法
    4. リース資産定額法
    5. 減価償却方法の選定と届出
  3. 減価償却の期間と計算方法
    1. 耐用年数
    2. 償却率
    3. 定率法の改定取得価額、償却保証額、改定償却率
    4. 定額法と定率法の具体的な計算例
  4. 特別な減価償却の方法
    1. 少額減価償却資産の特例
    2. 特別償却
    3. 割増償却
    4. 一括償却
  5. 減価償却はうまく使えば節税もできる!

減価償却制度の概要

減価償却とは長い期間使用を予定している固定資産に対する支出を、その固定資産を使用する期間中に費用化する会計手法のことである。この減価償却によって、企業会計における適正な期間損益を算出する。

減価償却では、一定の方法によって、固定資産を取得した価額から減価償却費として各事業年度に配分し、取得した固定資産の帳簿価格を減少させていく。

この手法は税法にも援用され、減価償却費は損金(経費)として認められている。

減価償却資産の対象

減価償却資産は取得価額10万円以上の資産であり、大きく「①有形固定資産」と「②無形固定資産」に分けられる。「①有形固定資産」は、以下のように分類できる。

建物及び建物附属設備・建物は鉄筋、コンクリート、木造などの構造、工場、店舗、事務所などの用途別に細かく分類されている
・建物附属設備は冷暖房設備、照明設備、エレベータなどの建物に付帯する設備をいう
構築物橋、岸壁、煙突、軌道など土地に定着する土木設備、工作物をいう
機械及び装置食料品製造業用設備など55種の設備ごとに細かく定められている
船舶鋼船、木船、軽合金船、強化プラスチック船などの区分に応じて定められている
航空機飛行機、ヘリコプター、グライダーなど
車両及び運搬具鉄道用車両、特殊自動車、運送事業用車両、自動車、二輪自動車、トロッコなどの車両や運搬具が該当する
工具、器具及び備品・工具:測定工具、検査工具、掘削工具など
・器具及び備品:電気機器、ガス機器及び家庭用品、事務機器及び通信機器などの12項目に分類されている
生物・牛馬等:牛、馬、豚、ヤギの4種類
・果樹等:かんきつ樹、りんご樹、ぶどう樹、なし樹、桃樹、茶樹、オリーブ樹など28種類
 なお、観賞用、興行用(動物園、水族館など)は器具及び備品に分類される

また、「②無形固定資産」には以下のようなものがある。

・鉱業権  ・漁業権  ・水利権  ・ダム使用権  ・水道施設利用権
・電気通信施設利用権  ・電気ガス供給施設利用権
等、一般の事業者にはなじみのない資産があるが、
・特許権  ・意匠権  ・商標権  ・営業権  ・ソフトウェア
等、身近なものもある。なお、ソフトウェアは自社で製作したものも無形固定資産に含まれる。

減価償却資産の取得価額

減価償却資産では、原則として資産の購入金額だけではなく、購入に掛かった附随費用や資産を使用するために直接支払った費用が取得価額となる。

例えば、機械装置を設置する据付費や建物を購入した際に、不動産業者に支払う仲介手数料などは取得価額に含めることとなる。

減価償却資産取得の際にかかる費用として、建物に関する登録免許税や不動産取得税、車両に関する自動車取得税などは所得価額に含めず、取得時の経費として処理できる。

減価償却の方法

税法では、2007年4月1日以降取得の減価償却資産については、以下の4つを定めている。

①定額法
②定率法
③生産高比例法
④リース期間定額法

また、法定償却方法というものがあり、償却方法を選定しなかった場合に、一部を除いて法人税法では定率法、所得税法上では定額法を用いることとされている。

資産の種類2007年4月1日以降の取得資産
1998年4月1日以降に取得した建物定額法
建物附属設備
構築物
機械及び装置
船舶
航空機
工具、器具及び備品
(鉱業用減価償却資産を除く)
定額法(所得税法)
定率法(法人税法)
鉱業用減価償却資産定額法
定率法
生産高比例法(所得税法、法人税法)
鉱業権定額法
生産高比例法(所得税法、法人税法)
鉱業権以外の無形固定資産定額法
生物定額法
リース資産リース期間定額法

※斜字は法定償却方法

定率法

初期に償却費を多くし、年が経過するに従って償却費の額が一定の割合で逓減し、更に逓減後の償却費が一定の償却保証額に満たなくなると、その後の償却費の額が同額となるように以下の計算式で計算する方法である。

前年末の未償却残高×耐用年数に対応する償却率(※)=定率法による償却費の額……A
取得価額×耐用年数に対応する保証率(※)=償却保証額……B

1 A≧Bのとき:定率法の償却率による償却費の額=その年分の償却費の額
2 A<Bまたは前年において改定取得価額を基に償却費の額を計算しているとき:
改定取得価額×耐用年数に対応する償却率=その年分の償却費額

※償却率、保証率については後述

定額法

毎年の償却費の額が同額となるように、以下の計算式で計算する方法である。

取得価額×耐用年数に対応する償却率(※)=その年分の償却費の額

生産高比例法

生産高比例法は、もっぱら鉱業関係のみに用いられるので、ほとんど目にすることはないが、計算式を示すと以下のようになる。

取得価額/採掘予定数量×その事業年度の採掘量=その年分の償却費の額

リース資産定額法

リース資産定額法は、以下の計算式で求められる。

 (取得価額―残価保証額)/リース期間月数×その年のリース資産のリース期間月数
  =その年分の償却費の額

残価保証額とは、リース期間終了時に、リース資産の処分価額が所有権移転外リース取引にかかわる契約において、事前に決まっている保証額に満たない部分を、賃借人が賃貸人に支払う場合の保証額のことである。

減価償却方法の選定と届出

法定償却方法によらない場合には、以下の表に掲げる区分に応じて、決められた提出期限までに減価償却資産の区分ごとに償却の方法を選定し、「減価償却資産の償却方法の届出書」を所轄の税務署に届け出なければならない。

一般的には、法定償却方法によるので、届出書を出すケースは少ないと考えられる。

区分償却方法の届出期限
新たに設立した法人設立の日の属する事業年度又は年分の確定申告の提出期限
新たに不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずる業務を開始した個人事業者その業務を開始した日の属する年分の確定申告の提出期限
設立後、すでに償却の方法を選定している減価償却資産以外の減価償却資産を取得した法人又は個人事業者その資産を取得した日の属する事業年度又はその年分の確定申告の提出期限
新たに事業所を設けた法人又は個人事業者で、その事業者に属する減価償却資産と同一の資産区分と異なる資産について既に選定している償却方法と異なる方法を選択しようとするもの、又は既に事業所ごとに異なる償却の方法を選定しているもの新たに事業所を設けた日の属する事業年度又はその年分の確定申告の提出期限

減価償却の期間と計算方法

  減価償却は、その減価償却資産を使用した日から開始することになる。したがって、事業年度の途中から事業に使用した場合には、その事業年度に償却できる限度額は、使用日からその事業年度の末日(決算日)までの月数で按分をする。

1ヵ月に満たない端数が生じたときは、切り上げて1ヵ月と計算する。例えば、3月決算の法人で前年の10月25日に使用開始した場合、期間は5ヵ月と6日なので、6ヵ月で計算する。

耐用年数

  耐用年数とは、通常の維持や補修を加えた場合に、減価償却資産が本来の用途または用法による効用を持続できる期間のことである。

当然、使用する事業者ごとに減価償却資産の使用頻度が異なるので、一律に定めるのは現実的ではないかもしれないが、事業者ごとに耐用年数を見積もるのは煩雑であるし、また税の公平性の観点から合理的ではない。そこで、省令によって「法定耐用年数」として一律に年数が定められている。

なお、減価償却資産が技術の進歩、や陳腐化などによって、法定耐用年数よりも使用可能期間が著しく短くなった際には、所轄の国税局長の承認を受けることで耐用年数の短縮を行うことができる。

また、耐用年数の全部又は一部を経過した中古資産のうち、一定のものを取得して業務に使用した場合には、使用開始した時以降の使用可能期間の年数を見積もって耐用年数とすることができる。

しかし、一般的には、減価償却資産の残存耐用年数を見積もることが困難なので、法定耐用年数を基準にして、以下の計算式で算出した年数に減価償却の期間を設定することができる。

・法定耐用年数の全てを経過したもの…法定耐用年数×0.2
・法定耐用年数の一部を経過したもの…法定耐用年数―(経過年数)×0.8

なお、1年未満の端数に関しては端数を切捨てる。その年数が2年未満のときは2年とする。

償却率

減価償却費の計算は、法定耐用年数から得られた償却率を元に行う。定額法、定率法それぞれについて国税庁のホームページで償却率が公表されている。なお、この10数年の間に、2007年(定額法と定率法)と2012年(定率法のみ)の2回、償却率について改正があった。

2007年の改正では減価償却が大きく変わり、2007年3月31日まで存在していた「償却可能限度額」及び「残存価額」が廃止され、耐用年数を経過した後は残存価額1円まで償却できるようになった。また、定率法の計算には、改定取得価額、償却保証額、改定償却率などといった、それまでの計算方法にはなかった新しい計算方法が導入された。

なお、2007年3月31日以前、2007年4月1日以降、2012年4月1日以降に取得し、使用を開始した減価償却資産の償却率については、下記のサイトを参照されたい。
http://tool.yurikago.net/644/yurikago/2012shokyakuritsu.html

定率法の改定取得価額、償却保証額、改定償却率

償却率の項目で説明したように、2007年4月1日以降に取得、使用を開始した定率法の計算は少々複雑となった。これは、残存価額が廃止されたことによって、1円までの償却を「保証」するための措置である。

計算の詳細は後述するが、初年度以降通常の償却率で償却していき、償却額が償却保証額(取得価額×保証率で計算)を下回ったとき、それまで用いていた償却率に代えて改定償却率を用いて1円になるまで償却を行う。

定額法は毎年同額を償却するので、定率法のような改定が不要であるのと対照的である。

定額法と定率法の具体的な計算例

ここでは、定額法と定率法を用いた具体的な減価償却の計算事例を紹介する。

1 定額法の計算例
3月決算の法人が2019年4月1日に陳列ケースを80万円で購入。耐用年数は8年、償却率は0.125であるときの減価償却の流れは以下のようになる。

事業年度償却限度額未償却残高
2020.03.3800,000×0.125×12/12=100,000700,000
2021.03.3800,000×0.125×12/12=100,000600,000
2022.03.3800,000×0.125×12/12=100,000500,000
2023.03.3800,000×0.125×12/12=100,000400,000
2024.03.3800,000×0.125×12/12=100,000300,000
2025.03.3800,000×0.125×12/12=100,000200,000
2026.03.3800,000×0.125×12/12=100,000100,000
2027.03.3前年末未償却残高100,000円から備忘価額1円を除いた99,999円が限度になる。1

2 定率法の計算例
3月決算の法人が2019年4月1日に陳列ケースを80万円で購入。耐用年数は8年、償却率は0.250、改定償却率0.334、保証率は0.07909であるときの、減価償却の流れは以下のようになる。

事業年度償却限度額未償却残高
2020.03.3800,000×0.250×12/12=200,000600,000
2021.03.3600,000×0.250×12/12=150,000450,000
2022.03.3450,000×0.250×12/12=112,500337,500
2023.03.3337,500×0.250×12/12=84,375253,125
2024.03.3253,125×0.250×12/12=63,28189,844
2025.03.389,844×0.250×12/12=22,461<償却保証額63,272(800,000×0.07909)となるので、189,844(改定取得価額)×0.334(改定償却率)×12/12
=63,408
94,638
2026.03.3189,844×0.334×12/12=63,40831,230
2027.03.3189,844×0.334×12/12=63,408 → 31,230
前年末未償却残高31,230円から備忘価額1円を除いた31,229円が限度になる。
1

 上記の例の場合、償却保証額、改定償却率を設定しないと6年目の償却額は22,461円、未償却残高167,383円、7年目の償却額は41,846円、未償却残高125,637円、8年目の償却額は31,384円、未償却残高94,253円となり、8年で償却が終わらないことがお分かりいただけるであろう。

特別な減価償却の方法

これまで述べてきた減価償却は普通償却に該当する。いわば減価償却の原則であるが、政策的にいくつか特別な減価償却の方法があるので紹介しておこう。

少額減価償却資産の特例

少額減価償却資産の特例は、最も有名な減価償却の特例であり、中小企業対策という政策的な色合いが濃い。対象は中小企業で、しかも青色申告を実施している企業に限られる。

ここでいう中小企業とは、以下の4つに該当することが要件となる。
①資本金1億円以下
②資本金1億円超の大規模法人に株式の2分の1以上を保有されていない
③複数の大規模法人に株式の3分の2以上を保有されていない
④常時使用する従業員数が1,000人以下

上記に該当する中小企業であれば、取得価額30万円未満の減価償却資産は、その取得、使用した事業年度で全額損金処理ができる。ただし、このような減価償却資産の合計額は300万円までが対象となる。

少額減価償却資産の特例は、期の途中で取得しても月数で按分する必要はなく、全額を損金処理できるため、中小企業の節税対策に利用されることが多い。極端な例でいうと、期末に29万円の備品10個を購入して使用した場合、290万円全額を損金処理できるのだ。

なお、30万円未満かどうかの判定は税込経理をしている場合には税込価格で、税抜経理をしている場合には税抜価格で判定する。したがって、上記の29万円(税抜)の備品の場合、税抜経理ならば認められるが、税込経理だと31万9千円となるので認められないことになる。

少額減価償却資産の特例は時限措置で、現状では2020年3月31日までに取得、使用されることが条件となっている。したがって、特例の延長がなければ打ち切りとなるので、この特例を利用する際には注意していただきたい。

特別償却

一口に特別償却といっても、根拠法によって、

「中小企業投資促進税制」
「中小企業経営強化税制」
「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」
「地域未来投資促進税制」
「革新的情報産業活用設備を取得した場合の特別償却又は税額控除」
「環境関連投資促進税制」

などがある。

それぞれについて、対象法人、適用資産、償却割合などが細かく定められている。煩雑になるので、ここでは説明を省略する。個別に国税庁のホームページ(以下のサイト)を参照されたい。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/houji313.htm

割増償却

割増償却とは、普通に償却した限度額(上記の定率法の例では、初年度25万円)に割増償却率(例えば20%)を掛け算して、割増償却限度額(25万円×0.2=5万円)を普通償却に上乗せ(25万円+5万円=30万円)する制度である。

一方、特別償却の場合は、取得価額(上記の例では100万円)に特別償却率(例えば20%)を掛け算して、特別償却限度額(100万円×0.2=20万円)を、普通償却に上乗せ(25万円+20万円=45万円)する制度である。

減価償却の合計額は変わらないが、特別償却のほうが減価償却の期間が短くなるという特徴がある。

一括償却

減価償却資産は取得価額10万円以上の資産と定義されている。ただし、10万円以上20万円未満の資産に限っては一括償却資産という括りがあり、特別な償却が認められている。

前述の少額減価償却資産の特例には、中小企業、青色申告等の要件があるが、一括償却資産には適応に関する特例がないため大企業でも利用可能である。

一括償却資産は3年間の均等償却となるため、期中で取得しても取得価額の3分の1を償却することになる。

減価償却はうまく使えば節税もできる!

減価償却は、償却方法や特別な減価償却を利用することによって、償却額や減価償却の期間にもかなり差が出ることがお分かりいただけたであろう。もちろん節税対策にもなるので、日ごろから減価償却の期間や方法に関心を持ち、上手に経営に活かしていただきたい。

文・志磨宏彦(税理士)

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