日系ブラジル人の人材確保に、ポルトガル語ホームページの内容充実 勤怠と給与のシステム一元化で大幅な業務改善も ジョイワーク(群馬県)

目次

  1. 日系ブラジル人を雇用するためにホームページでのポルトガル語版のページを併設して内容を日本語版より充実させた
  2. 日系ブラジル人の工場への労働者派遣業を引き継ぎ物流倉庫の入出庫管理の業務請負へとシフト
  3. ポルトガル語ページで日本語ページより詳しい情報を発信して就職希望者のニーズに応える
  4. 日本語ページでは教育の充実ぶりを紹介してクライアントの安心感を提供
  5. 勤怠管理と給与計算のシステムを一元化して本社側でスムーズに給与計算を行えるようにした
  6. 従業員の働き方を把握して評価につなげられるような仕組みを模索していく
中小企業応援サイト 編集部
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群馬県前橋市に本社を置き、茨城県や三重県、滋賀県などで大手企業からの業務請負事業を行っている株式会社ジョイワークは、140人ほどの従業員が主にブラジルから日本に働きに来ている日系ブラジル人の定住者たちという、他にない特徴を持った会社だ。日本の社会や文化になじみ、しっかりと仕事がこなせるように教育を行い仕事先へと送り出し、クライアントの事業を支えている。より多くの人材を確保するためにホームページを改良し、ポルトガル語による情報発信も拡充。勤怠と給与計算のシステムを一体化し、効率的な事業運営を行っている。(TOP写真:ポルトガル語ページへのボタンが置かれたジョイワークのホームページ)

「日本全国の大企業に人材サービス(アウトソーシング、コンサルティング、プレゼンテーション)、臨時労働者または委託労働者の採用と選定を提供してきた30年以上の経験を持つ会社です」。ジョイワークのホームページに掲げられたこの言葉は、実際にはポルトガル語で書かれたものだ。同社の日本語のホームページ右下に表示される「Portuguese Site」のバナーをクリックすると、ポルトガル語ページに飛んで読むことができる。

日系ブラジル人を雇用するためにホームページでのポルトガル語版のページを併設して内容を日本語版より充実させた

日系ブラジル人の人材確保に、ポルトガル語ホームページの内容充実 勤怠と給与のシステム一元化で大幅な業務改善も ジョイワーク(群馬県)
ポルトガル語ページに掲載された会社の事業紹介

同社が2ヶ国語でのホームページ構築を行っているのは、雇用している人材の多くが日系ブラジル人であり、求めている人材も日系ブラジル人を中心とした外国人労働者だからだ。「外国人労働者を多く派遣していた会社でブラジル人の明るい性格、勤労意欲、業務能力など働く姿勢に魅力を感じ設立しました」と、ジョイワーク代表取締役の須藤訓行氏は会社の成り立ちを説明する。以後、日系ブラジル人を中心に、各地の工場に働き手を派遣する業務を行ってきた。

日本では現在、約200万人の外国人労働者が働いており、ブラジル人は技能実習生を大勢送り出しているベトナム、中国、フィリピン、ネパールについで第5位となる17万3132人(厚生労働省調べ、2023年10月末時点)に達する。1990年に入国管理法が改正され、日系ブラジル人が「定住者」として工場でも働けるようになったことで、工業が盛んな北関東にある企業の工場に働きに来るようになった。

「以前は出稼ぎといった感じで、日本で何年か働いてお金を貯めてブラジルに戻る人が多かったですが、今は日系人として在留資格を取得して定住する人が増えています」(須藤代表取締役)。同社ではそうした定住者の日系ブラジル人を工場へと派遣してきたが、「今は派遣よりも業務請負事業の方をメインに行っています」(須藤代表取締役)。仕事の内容も工場での工員ではなく、物流センターでの出入庫に関する作業が中心となっている。

日系ブラジル人の工場への労働者派遣業を引き継ぎ物流倉庫の入出庫管理の業務請負へとシフト

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ジョイワークのfacebookに掲載された物流倉庫で働く外国人労働者の画像

「三重県にある大手住宅設備機器メーカーの工場に30人ほど派遣していましたが、1997年ごろに生産量の減少により人員削減が求められることになり、代わりに同じ三重県にある物流センターでなら働き続けられると紹介を受け、何人かをそちらに移しました」(須藤代表取締役)。ここから物流センター向けの仕事が増え、やがて一つの物流センターの入出庫に関する業務全般を、同社が請け負うようになった。現在は同じメーカーの滋賀県や茨城県、埼玉県などにある物流センターの業務を、雇用している日系ブラジル人を中心としたメンバーでこなしている。

「日本人の従業員は数人で、現場はほとんどが日系ブラジル人です」(須藤代表取締役)。長く勤めている日系二世や三世がリーダーとなってクライアント企業とやりとりし、一方で日本での仕事に早く慣れてもらえるよう、映像を使った教育も行って人材育成に努めている。新しい働き手も求めており、そのためにポルトガル語のホームページを併設して、日系ブラジル人が応募してくれるように詳細な情報を発信した。

ポルトガル語ページで日本語ページより詳しい情報を発信して就職希望者のニーズに応える

日系ブラジル人の人材確保に、ポルトガル語ホームページの内容充実 勤怠と給与のシステム一元化で大幅な業務改善も ジョイワーク(群馬県)
ポルトガル語ページに掲載された職種や条件の詳細な情報

日本語のホームページでは、本社での事務スタッフ募集を掲載している程度の「お仕事の内容」のコーナーも、日系ブラジル人が読むポルトガル語ページでは、埼玉県深谷市や三重県津市、滋賀県水口町、茨城県下妻町といった業務を請け負っている物流センターごとに、業務内容や雇用条件を細かく記載した募集要項を載せて、関心を持ってもらえるようにしている。「更新は日系ブラジル人の幹部に任せて、必要な情報を適宜発信してもらっています」(須藤代表取締役)。誰に読んでもらいたいのかをしっかりと考え、誰が情報発信者として適切かも判断して運用を任せることで、充実したページになっていると言える。

日本語版を含めたリニューアルも2023年4月に実施。トップページを刷新して、下までスクロールするだけで業務請負事業、労働者派遣事業を行っていることがわかるようにした。また、「請負業務の流れ」や「派遣業務の流れ」やそうした業務に関わる人材をどのように育成しているのかがわかるページに簡単に飛べるようになっている。

日本語ページでは教育の充実ぶりを紹介してクライアントの安心感を提供

日系ブラジル人の人材確保に、ポルトガル語ホームページの内容充実 勤怠と給与のシステム一元化で大幅な業務改善も ジョイワーク(群馬県)
日本語ページに掲載された従業員教育の風景

「公的資格の取得、教育体制について」のページでは、入社時の新人教育から定時的教育、向上教育といった段階を踏んでの教育体制が整っていること、物流センターでの仕事に欠かせないフォークリフトの操縦を始めとした公的資格の取得支援を行っていることがわかる。外国人だからといった不安を抱くクライアントも、こうした制度の充実ぶりを見れば、安心して業務を任せることができそうだ。

結果として、現在は全国各地の物流センターで同社が出入庫作業を全面的に請け負うようになっている。ここで浮上したのが、工場ごとに分かれている従業員の勤怠管理の結果をもとに行う給与計算の作業に大変な労力がかかっていた問題だ。「それぞれの工場で、ICカードを使って出退勤の把握を行っています。そのデータを本社へと送ってもらい、個人個人の給与を計算していますが、以前は時間のチェックに大変な手間がかかっていました」(須藤代表取締役)

勤怠管理システムを導入する以前の、タイムカードに打刻された数字をExcelに入力した上で、時間を計算していた時に比べれば、はるかに楽になっていた。それでも、現場での打ち間違いなどを、本社で確認することができなかったため、事業所への問い合わせに時間をとられていた。「気になるところがあれば、それぞれの事業所にメールを送って確認してもらい、返事を待つ必要がありました」(須藤代表取締役)

勤怠管理と給与計算のシステムを一元化して本社側でスムーズに給与計算を行えるようにした

そうした手間が積み重なって、作業を終えるまでに相当な時間がかかり、残業することもあったという。こうした手間を、2023年にシステムを改善することで解消した。「本社の方で一括して、出退勤の情報を管理できるようになりました。打ち間違いなどがあってもその場で実態を把握できるため、問い合わせる必要なくなりました。勤怠データが来ればそれをもとに給与計算を行って明細を発行できます」(須藤代表取締役)

こうしたシステムの改善を主導したのは、ブラジルからの日系三世の幹部とのこと。「日系三世の幹部とは私が以前の会社で働いていた時に知り合いました。当時はまだ日本語もうまく話せませんでしたが、今はこうしたシステムの改善も、取引先とのミーティングも日本語でしっかりとこなしてくれます」(須藤代表取締役)。働きながら学べてキャリアアップも図れる会社といったイメージが広がれば、就職を希望してくれる外国人労働者も増えていくだろう。人手不足の中で外国人労働者は貴重な戦力となるだけに、これまでの実績とこれからも取り組んでいく業務の改善によって、選んでもらえる会社になっていこうとしている。

従業員の働き方を把握して評価につなげられるような仕組みを模索していく

日系ブラジル人の人材確保に、ポルトガル語ホームページの内容充実 勤怠と給与のシステム一元化で大幅な業務改善も ジョイワーク(群馬県)
SDGsにも取り組み社会に貢献しながら働ける環境作りを行っている

「今後取り組むとしたら、働いている人たち一人ひとりの生産性をしっかりと把握して、正しく評価できるような仕組みを作ることでしょう」(須藤代表取締役)。勤怠管理のデータだけでは働いた時間しかわからない。現場での作業がどれだけ進んだかはクライアントの側にデータとして記録されているが、それは全体についてであって一人ひとりの作業効率についてはわからない。

今は現場のリーダーが働き方を見てチェックし、個別面談を行って1年ごとに評価を決めている。ここに日々の一人ひとりの働いた成果わかるデータがあれば、より公平に評価できるようになって、従業員の意欲も高められる。「取引先企業からデータをいただく必要もありますし、チェックする方法も考えなくてはなりませんが、いつか実現できればと思っています」(須藤代表取締役)。少子高齢化で労働者人口がこれから確実に減っていく日本人に変わる貴重な働き手を、しっかりと確保しつなぎとめていくことで、会社の成長と日本経済の振興につなげていく。

日系ブラジル人の人材確保に、ポルトガル語ホームページの内容充実 勤怠と給与のシステム一元化で大幅な業務改善も ジョイワーク(群馬県)
ジョイワーク本社

企業概要

会社名株式会社ジョイワーク
本社群馬県前橋市天川大島町6番地1
HPhttps://www.kk-joywork.co.jp/ (日本語)、
https://www.kk-joywork.co.jp/br/ (ポルトガル語)
電話027-289-2020
設立1995年11月7日
従業員数約140人
事業内容業務請負事業、労働者派遣事業