一代で築き上げた植木職人企業 ハワイへの進出を機にデジタル化を強力に推進 一流職人の植栽移植に、ホームページで大きな反響 長谷川植木(神奈川県)

目次

  1. 植木屋の親方の元で修業を重ね、造園業でも技術を磨き、生まれ育った川崎市宮前区で独立開業
  2. 価値ある植栽や石を、伐採や廃棄処分ではなく移植を進め、大手ハウスメーカーからも、施主からも大きな評価を得る
  3. 若手社員たちに「庭を観る目」を養う事を教えているが、職人としての第一歩は、『安全確保』と『仕事に臨む基本』そして『人としての節度』」
  4. 長男を迎え入れハワイ進出の責任者に
  5. 今後のグローバル化をにらみ、アナログからの脱皮に一歩を踏み出す まずは電子保存サービスから実施
  6. 勤怠管理のICT化も一歩ずつ前進を図る
  7. 一流職人の植木や石を見抜く力と移植技術がホームページで大きな反響を呼ぶ ブログでも訴求を強化していく
中小企業応援サイト 編集部
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川崎市宮前区の地元で創業した株式会社長谷川植木は、長谷川眞一代表取締役が一代で築き上げた職人企業。培ってきた技術と良し悪しを見抜く慧眼で大手ハウスメーカー各社の信頼を勝ち取り、ついにはハワイへの進出も決定。若手のやりがいと未来への展望をにらみ、積極的にICT化を推進する。 (TOP写真:長谷川植木本社外観)

植木屋の親方の元で修業を重ね、造園業でも技術を磨き、生まれ育った川崎市宮前区で独立開業

中学・高校の同級生が大きな植木屋の息子だった縁で、中学生の頃からアルバイトをしていたところ、長谷川社長の父親がその近くに家を建てたので、アルバイトをしながらそのまま就職をしてしまったという。そこは自社で育苗した樹木や移植してきた樹木を育て、造園屋などに販売する会社。バブル期だったこともあり、北関東や名古屋からも注文が殺到するほどの忙しさだったという。

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植木について熱心に話す長谷川眞一社長

当時の親方に叱られながら仕事を覚え、その後縁のあった別の造園会社で修業を積んだ後、地元の宮前区で独立を果たし現在に至っている。

独立当初から近隣の植木組合や地元のコミュニティにも入らせてもらい、本格的な植栽業を開始した。当時は新参者だったが宮前地区の地主さんたちや地域の有力者の方々も応援してくれた。宅地開発が進んだ時期でもあり、仕事を始めてたまたま現在の土地を見つけた時も、先輩の父親が所有する土地を気持ちよく売ってもらえたという。この地は元々東急電鉄が開発したエリアで、育ててくれた植木屋の親方とも縁が深く、そのつながりで戸建やマンションも含め数千棟という物件の庭づくりに携わることができた。

2000年代になると東急のエリア開発も一段落し、その後は、ハウスメーカーによる東急沿線の駅周辺開発に移行するため売上が減ることになったが、長谷川植木の貢献を認めてくれていた東急電鉄の紹介もあり、大手ハウスメーカーと次々に取引を開始。数多くの開発物件や建て替え物件の造園に携わることができるようになった。

価値ある植栽や石を、伐採や廃棄処分ではなく移植を進め、大手ハウスメーカーからも、施主からも大きな評価を得る

一代で築き上げた植木職人企業 ハワイへの進出を機にデジタル化を強力に推進 一流職人の植栽移植に、ホームページで大きな反響 長谷川植木(神奈川県)
美しい石組みの本社階段

中でも古い邸宅の建て替え事案などでは、大きな樹木、由緒ある灯籠(とうろう)や石材など貴重な価値を持つものに出会うことがあったが、営業スタッフや設計スタッフがその価値に気づかないまま廃棄されることもあったという。

たまたまその頃、大口顧客の造園の仕事が来た際に、完成後の庭の管理を直接顧客と契約できる取り決めができた。長谷川植木は、価値ある植栽や石材などを引き取り、顧客の庭に移植したり、別の物件の庭造りに生かす方法を提案していった。

上記のような実績からハウスメーカーは、何トンもある樹木の移植方法や庭の目利きで豊富な経験を持つ長谷川社長の能力を高く評価してくれた。その後、ハウスメーカーも価値ある植栽や石材などを再利用する事を重視し、建て替えや賃貸併用住宅などへの再利用を積極的に進める方向で動いてくれたという。

一代で築き上げた植木職人企業 ハワイへの進出を機にデジタル化を強力に推進 一流職人の植栽移植に、ホームページで大きな反響 長谷川植木(神奈川県)
植木の植栽には特別なノウハウが必要になる

ハウスメーカーの優秀なガーデンデザイナーであっても、江戸や明治の時代からある植栽や石組み、石灯籠や蹲(つくばい)などの価値を見分けることができる人は少ない。

そんな中で老木の移植や掘り出しの技術を持ち、石材や植栽の目利きにも長けた長谷川社長は、由緒ある住まいを建て替える顧客からも信頼を受け、様々な移植や樹木・石材の長期保存を委託されることも多くなったという。

その能力を高く評価してくれるハウスメーカーがいてくれるおかげで、長谷川植木では自社の樹木・石材用畑に一時保管して、移植する業務も増えた。今では年間100トンほどの古い石材を預かっても、次の年には全て再利用で出払ってしまうほどになっている。

若手社員たちに「庭を観る目」を養う事を教えているが、職人としての第一歩は、『安全確保』と『仕事に臨む基本』そして『人としての節度』」

一代で築き上げた植木職人企業 ハワイへの進出を機にデジタル化を強力に推進 一流職人の植栽移植に、ホームページで大きな反響 長谷川植木(神奈川県)
『安全第一』と仕事に臨む基本、そして人間としての節度の大切さを社員に常に伝えている

長谷川植木の若い社員たちは、「社長は仕事を教えてくれない」などと言ってくることがあるらしい。親方でもある社長に若い社員が不平を言うことなど昔では考えられないことだが、社長はその都度「いい庭を観るようにしなさい」と教えているという。

仕事で地方に出かけたりする時には「きれいなお屋敷の庭をのぞかせてもらったり有名な庭園を観るように」と伝えている。社長が若い頃から教えられてきた観る目を磨くことの重要さを伝えているのだが、若いうちにそれに気づくのはなかなか難しい。しかし一度観たものは記憶のどこかに必ず残っているもので、それが必ず未来の仕事に役立つことを長谷川社長は知っている。

長谷川社長が若い社員たちに目利きになること以上に伝えているのは、「決してけがをしてはならない」ということと、「お客様に対しては丁寧な言葉遣いで対応する」ということ。また「後片付けや掃除がちゃんとできない人間には仕事は教えない」とも伝えているという。人としてきちんとした仕事をするという基本を辛抱強く伝えているのだ。

長男を迎え入れハワイ進出の責任者に

2023年まで大手ハウスメーカーで働いていた長谷川社長の長男が2024年の初めに長谷川植木に入社。ちょうどその頃、長年バケーションで通い慣れたハワイで知り合ったハワイ在住の同業者から、造園業の跡取りがいないから息子を一人寄越さないかと言ってきていた。長谷川社長には二人の息子さんがあり、海外への進出などは考えてもいなかったが、大好きなハワイ在住の同業者との出会いも何かの縁と、自社に戻ってきていた長男をハワイへ派遣することを決めた。

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ハワイでも造園の技術は需要が高い

ハワイには古くからの神社仏閣もあり、高級リゾートでは日本庭園を模した庭づくりを好む層も多いという。日本と同じように造園業界の人手不足はハワイでも同じで、庭を造っても育成管理していく人材が不足しているようだ。

過去7〜8年の間、中国とも取引をしてきた経験のある長谷川社長だが、自身が何度も訪れて気心の知れたハワイは願ってもない場所。若い社員たちの働きがいや未来への夢づくりのためにもと考え、大きな一歩を踏み出そうとしている。

今後のグローバル化をにらみ、アナログからの脱皮に一歩を踏み出す まずは電子保存サービスから実施

ハワイへの進出と機を同じくして長谷川植木のICT化も動き始めている。今後のグローバル化を考えている長谷川社長は、異業種から招いた担当者に、この業界では難しいと言われている原価管理から取引のICT化までを任せている。

担当者が長谷川植木入社当時、見積や請求書も全て紙帳票のやり取りで行われていた。帳票の分類整理もほとんどを税理士と会計士に任せた状態だった。担当者はICTが当たり前の大企業にいたため、ギャップに驚いたという。最初に取り組んだのは、建設業で重要な原価管理を行うため、証憑の電子保存サービスの導入から始めた。

セミナーや外部のサポートを受けながら何とか帳票の電子化が可能になったあと、原価管理のシステム化へ移行しようとしたところ、造園・植栽業独特の問題に阻まれた。単純に樹木や石材を個数でカウントできないばかりか、移植や再利用から庭の管理までとなると通算で2年以上もかかることもある業務。業界特有の問題に頭を悩ませているが持ち前の粘り強さで徐々に解決の方向に進んでいる。

今後ハワイでの仕事も含めたICT化を考えると、チェック機能を正常な方向へ移行するためにも、ここはどうしても算定基準を整理しておかなければならない。為替レートへの対応も含め、まだまだやるべきことはたくさんありますねと笑った。

勤怠管理のICT化も一歩ずつ前進を図る

決算が8月の長谷川植木で、来期から本格稼働させたいと思っているのが勤怠管理システムだ。現場ごとにスケジュールなども入力できる便利なもので、現状ではスタッフが現場ごとのデータを入力しているという。将来的に若手の社員たちが遠くの現場で働くようになることを考えると、試験的とはいえ今から導入しておいた方がいいという判断でシステム導入に踏み切った。少しずつ仕事の進め方にも改良を加えながら根付かせていこうと考えている。

一流職人の植木や石を見抜く力と移植技術がホームページで大きな反響を呼ぶ ブログでも訴求を強化していく

一代で築き上げた植木職人企業 ハワイへの進出を機にデジタル化を強力に推進 一流職人の植栽移植に、ホームページで大きな反響 長谷川植木(神奈川県)
植木や石の移植に関する問い合わせも多い

長谷川植木では数年前からホームページを開設し、インスタグラムへの投稿も行っているが、想定以上に反響があったのは植木や石の移植に関する問い合わせだったという。

ホームページ開設当初から移植に関する問い合わせが多いということは、それだけ建て替えや移転などに際して、大切にしてきた樹木をどうにか生かし続けたいという想いの表れと、その思いを引き受けてくれる会社の少なさだ。

建て替えを任せた工事業者などから庭の樹木を全て伐採するという提案を受けた人が、強い思い入れを持つ樹木を何とか生かしたいということで、知り合いの紹介やインターネットで一生懸命探して長谷川植木のホームページを見て問い合わせをしてきている。

そんな問い合わせに応じて出かけていき、立派な老木を預かって長谷川植木の樹木畑に移植し一時保管すると大変喜んでくれ、建て替え後の再移植を楽しみにしているという。職人冥利につきる。

反響の手ごたえもあり、今後ホームページでは移植に関する記事を全面に出し、ハワイでの事業展開も積極的に掲載していきたいという。また、社員たちからの要望もあり、インスタグラムとの併用も増やしながらアクセスを獲得していこうと考えている。

今回の取材を通して、改めて他社にない秀でた技術を持つオンリーワン企業は、インターネットとの相性が良い事が証明された。ホームページやインスタグラムを強化する事で長谷川植木への引き合いが更に増えると予測される。その時には、ICTによる業務の改善が大きな力を発揮する。魅力ある企業だからこそ、もっともっとICTを活用して本業に専念して欲しい。長谷川植木の今後が楽しみだ。

企業概要

会社名株式会社長谷川植木
所在地神奈川県川崎市宮前区東有馬5-27-3
電話044-870-6187
HPhttps://hasegawaueki.jp
設立1997年8月21日
従業員数10人
事業内容造園/設計/施工/管理/移植