ECサイトの運用やコンテンツ制作に人工知能(AI)を活用して、さらなる業務効率化と売上アップを図りたい。
EC事業者さまからのそういったご要望を受け、株式会社フューチャーショップは「AI×EC」をテーマとしたオンラインセミナーを2024年8月から全4回で開催しています。今回のセミナーレポートでは、第1回の「AI×心理学で導くLP・コンバージョン最適化戦略」で解説した内容の一部をお伝えします。
講師を務めたのは、ECサイトやWEBサイトの構築から運用、マーケティング支援まで手がけている株式会社デザインファミリーの桃谷雅美さん。心理学の理論を踏まえ、コンバージョンが取れるランディングページの作り方を説明した上で、生成AIツール「ChatGPT」を活用してコンテンツを効率的に作る手順をワークショプ形式で具体的に解説してくださいました。
150人以上にご参加いただき、ご好評をいただいたオンラインセミナーです。次のような課題を感じているEC事業者さまは、ぜひ参考にしてください。
・コンバージョン率が高いランディングページの作り方を知りたい
・ランディングページの制作業務を効率化したい
・ECサイトの運用やコンテンツ制作にAIを活用していきたい
この記事は2024年8月22日に開催したオンラインセミナー「AI×心理学で導くLP・コンバージョン最適化戦略」をもとに構成しています。 |
【講師紹介】
WEBマーケティング事業部 係長
桃谷 雅美(ももたに まさみ)氏
保有資格:WACA認定ウェブ解析士マスター、WACA認定上級SNSマネージャー、心理学/米国NLP協会認定コーチ、心理学/全米NLP協会認定トレーナー
目次
心理学を応用してユーザーの興味をひくランディングページを作成
桃谷さんはセミナーの冒頭、ランディングページの制作に心理学を応用する方法論について、いくつかの理論を挙げながら解説してくださいました。
ランディングページの構成を考える際に桃谷さんが活用している理論の1つは、米国の学習理論家バーニス・マッカーシー氏が考案した「4MAT(フォーマット)システム」です。
4MATシステムは、授業やプレゼンテーションなどを行う際に相手の興味を引きつける伝え方のモデルであり、ECの分野においては「ランディングページや広告の構成にも応用できる」(桃谷さん)と説明しました。
4MATシステムは、米国の教育者バーニス・マッカーシー氏が、子どもたちへの教育の経験をベースに開発したモデルです。
伝えたい情報をWHY(なぜ)、WHAT(何を)、HOW(どのように)、WHAT IF・WHAT ELS(他の活用法、可能性)という4つに整理した上で、WHY→WHAT→HOW→WHAT IF・WHAT ELSの順番で伝えると、相手の興味をひいてインパクトを与えることができます。
このモデルはECサイトのランディングページや広告の構成にも応用することが可能です(桃谷さん)
また、4MATシステムをECサイトのランディングページに応用した場合のWHY、WHAT、HOW、WHAT IF・WHAT ELSEの役割について、桃谷さんは次のように解説しました。
WHY:興味をひきつける
ユーザーに対して、ランディングページの内容が自分にとって重要である理由を示す。これにより、訪問者の関心をひき、ページから離脱することなく読み進めてもらうことができる。
WHAT:明確な情報提供
製品やサービスの具体的な情報を提供する。これにより、訪問者は「何を提供されているのか」を明確に理解でき、信頼感が醸成される。
HOW:具体的な行動を促す
製品やサービスの使い方を訪問者が理解できるようにする。ECサイトにおける購入方法の説明もHOWにあたり、例えばCTAボタン「購入はこちら」などが該当する。
WHAT IF・WHAT ELSE:エンゲージメント
商品やサービスが、訪問者の生活にどのように影響を与えるのかを示す。口コミやコミュニティの紹介などもWHAT IF・WHAT ELSEに含まれる。これにより、訪問者が製品やサービスをより深く理解し、興味を持つようになる。
情報を絞り込んでユーザーの認知負担を軽減する
桃谷さんはランディングページの情報量を絞り込むことの重要性についても、心理学の理論を応用して説明しました。人間の短期記憶に関する心理学の理論「マジカルナンバー」などに言及しながら「人間が記憶できる情報量はそれほど多くない」と指摘。ランディングページの内容を覚えてもらうには「記憶に残りやすい情報量を提供し、ユーザーの認知負担を軽くすることが重要」と強調しました。
現代人は日々、膨大な情報に触れています。WEBサイトやテレビ、SNSなど、さまざまなチャネルからたくさんの情報が脳内に流れ込んできますが、人間が一度に記憶できる情報量はそれほど多くありません。例えばマジカルナンバー理論によると、短期記憶で保持できる情報は7±2と言われています。
ランディングページの内容をユーザーの記憶に残すには、ランディングページの情報量を絞り込み、コンテンツの順番を工夫するなど、ユーザーの認知負担を軽くすることが重要です(桃谷さん)
ChatGPTでランディングページを効率的に作る手順とプロンプト
続いて桃谷さんは、4MATシステムやマジカルナンバーといった心理学モデルを応用したランディングページの制作にChatGPTを活用する手順について、プロンプト(AIに対する指示文)の具体例を挙げながらワークショップ形式で解説しました。
セミナーでは新規のランディングページを作成する手順や既存のランディングページをブラッシュアップする方法、顧客アンケートの結果を集計する方法など、ChatGPTの活用法を幅広く解説していただきました。本稿では、その中から「新規のランディングページを作成する手順」に絞って紹介します。
ChatGPTで文章を作る5ステップ
桃谷さんは架空の商品「エンチャント・アップル(Enchant Apple)」のランディングページを制作する想定で、ChatGPTを活用する手順を次のように解説しました。
・ステップ1 商品やサービスについての情報を、できるだけ多く箇条書きにする
・ステップ2 ステップ1で作成した文章にプロンプトを追加して実行する
・ステップ3 ステップ2で生成された文章にプロンプトを追加して実行する
・ステップ4 キャッチコピーを作成する
・ステップ5 まとめ(締めくくり)の文章を作成する
【ステップ1】商品やサービスについての情報を、できるだけ多く箇条書きにする
商品やサービスに関する情報を、できるだけ多く書き出します。商品名、商品の特徴、価格、スペック、口コミなど、顧客に伝えたい内容を箇条書きにしてください(桃谷さん)
【ステップ2】ステップ1で作成した文章にプロンプトを追加して実行
ステップ1で作成した箇条書きの文章の末尾に、「上記内容をバーニスマッカーシーの4MAT理論で構成してください」というプロンプトを追加し、ChatGPTに貼り付けてください(桃谷さん)
ChatGPTを実行すると、元の文章が「WHY」「WHAT」「HOW」「WHAT IF」に整理され、4MATを踏まえた新たな文章が生成されます。生成された文章を確認し、もし口コミが削除されている場合には「WHAT IF」の項目に手作業で追記してください(桃谷さん)
【生成された文章】
【ステップ3】ステップ2で生成された文章にプロンプトを追加して実行
ステップ2で生成された文章に対して、「マジカルナンバー理論を使って情報を整理してください。その際に4MAT理論は踏襲してください。」というプロンプトを実行してください。
マジカルナンバー理論を踏まえて整理された文章が新たに生成されます。その文章を目視でチェックし、内容に齟齬がないことを確認したうえで、伝えたい情報が抜けている場合には手作業で追記してください(桃谷さん)
【ステップ4】キャッチコピーを作成する
「WHY」「WHAT」「HOW」「WHAT IF」の内容について、それぞれキャッチコピーを作成します。ステップ3で生成された文章に対して、「4MATそれぞれにキャッチコピーを入れてください。その際キャッチコピーは候補を3つ提案してください。」というプロンプトを実行してください。
キャッチコピーが生成されたら、表現を修正したり、トンマナをECサイトに合わせたりしてブラッシュアップしてください(桃谷さん)
【ステップ5】まとめ(締めくくり)の文章を作成する
最後に、ランディングページのまとめ(締めくくり)の文章を作成します。ステップ4で生成された文章に対して「WHAT IF(もしこうだったら)をユーザー視点で1つの文章にしてください」というプロンプトを実行してください。
生成された、まとめの文章が長すぎる場合には「メリットとベネフィットを端的にまとめて提案してください」というプロンプトを使用して文章を短縮してください(桃谷さん)
【ステップ5-2】応用の示唆
WHAT ELSE(応用の示唆)を追加したい場合には、「WHAT IFをWHAT ELSEで提案してください」というプロンプトを実行すると、商品の使い道をイメージさせる文章が生成されますので、まとめの文章に追記しても良いでしょう(桃谷さん)
ChatGPTが生成した文章をランディングページに落とし込み並べ替える
ステップ5まで完了したら、ChatGPTが生成した文章をランディングページに落とし込みます。ステップ2でChatGPTが生成した「WHY(なぜこの商品を選ぶのか)」をランディングページのファーストビューに配置し、それ以降に「WHAT」「HOW」「WHAT IF・WHAT ELSE」の順で文章やキャッチコピーを並べていきます。
なお、ChatGPTが生成した文章は機械的な言い回しになっていることもあるため、「顧客に伝えたいメッセージが入っているか確認し、情報の補完や余計な文書の削除など、人間による作業も必要」(桃谷さん)になります。
最後に桃谷さんは、ランディングページの制作にAIを活用するメリットについて、ページ制作にかかる時間を削減してリソースを他の仕事に振り分けることができることをあらためて強調し、セミナーを締め括りました。
ChatGPTなどの生成AIは、ランディングページの制作業務を効率化できる便利なツールです。ページの構成やキャッチコピーのアイデアなどを考える時間を削減し、その分、伝えたいメッセージや商品のベネフィットを考えるなど人間にしかできない作業に時間を使うことができます。ランディングページの制作に、ぜひAIを活用してみてください(桃谷さん)
まとめ
今回のオンラインセミナーは、講師の桃谷さんがChatGPTの管理画面を実際に操作しながらワークショプ形式でランディングページの作り方を解説するなど、実践的な内容でした。ChatGPTの活用法については、本稿で紹介した内容のほか、既存のランディングページをブラッシュアップする方法やアンケート結果を集計する方法など、すぐに使えるハウツーが満載でした。そして、心理学の理論を応用して顧客の態度変容を促すランディングページの構成を考える方法論など、コンバージョン最適化の手段について視野を広げるヒントも得られるものでした。
セミナーに参加したEC事業者さまからは「ランディングページがどうあるべきか漠然としていたので、存在意義や効果的な作成方法を学ぶことができ良かった」「新人がページ構成の作成に悩むことが多いので、この内容を共有して日々の業務に存分に生かそうと思う」といった感想(アンケートへの回答)をいただきました。
株式会社フューチャーショップでは、ECサイトの運用や制作へのAI活用をテーマとしたセミナーを定期的に実施しており、これまでに開催したセミナーのレポート記事も公開しています。ぜひこちらもご覧ください
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