ブランディング戦略
(画像=AngieYeoh / Shutterstock.com)

ブランディング戦略は、テレビCMや雑誌などの広告に莫大な予算を投入できる大手企業が取り組む仕事だと思われがちだ。しかし、SNSが発達した今、すべての企業に自社をPRする機会が与えられている。今回は重要性が増すブランディング戦略について解説していこう。

目次

  1. ブランディング戦略とは?
  2. ブランディング戦略の3つのステップ
    1. ステップ1.市場調査とポジショニング
    2. ステップ2.ターゲティング
    3. ステップ3.コンセプトデザイン
  3. ブランディング戦略の最新成功事例
    1. 成功事例1.ハズキルーペ
    2. 成功事例2.マツダ
    3. 成功事例3.スターバックス
    4. 成功事例4.スーパーホテル
    5. 成功事例5.スノーピーク
  4. ブランディング戦略の最新失敗事例
    1. 失敗事例1.カゴメ
    2. 失敗事例2.トロピカーナ
  5. ブランディング戦略の成功法則

ブランディング戦略とは?

あるメーカーの名を耳にしたとき、「品質がよい」「環境に配慮した会社」など、消費者はさまざまなイメージを抱く。

化粧品であれば特定のメーカーを思い浮かべるように、すでに歴史のある大手であれば少なからず企業に対するイメージが湧く。

ブランディング戦略では消費者に抱かせるイメージを追求する。特に、名前や製品が広く知られていない中小企業の場合、ブランディング戦略が与える影響は無視できない。

ブランディング戦略がもたらす効果は、単に製品の販売促進という面だけにとどまらず、企業のイメージアップによる企業価値の向上が期待できる。

ブランディング戦略の3つのステップ

ブランディング戦略を立てるには3つのステップを踏む。

ステップ1.市場調査とポジショニング

市場調査では、販売製品の市場規模や購買層の年齢・職業・性別などのデータを集計し、分析する。ポジショニングでは同業他社を位置づけする。

具体的には、縦軸に性能の高低、横軸に価格の高低を定めたグラフに類似製品を販売するライバル企業の各社を表示していく。

ステップ2.ターゲティング

次は顧客となるターゲットを絞る。その際、すでに実施した市場調査やポジショニングを有効活用する。

市場調査で顧客層の中心が判明したら主要となる顧客層に訴求するのか、手薄な顧客層を開拓するのかについて判断する。また、ポジショニングで他社と差別化しながら独自路線でターゲットの顧客にPRする。

ステップ3.コンセプトデザイン

コンセプトデザインの定義の一つはデザイナーの狙いや意図などの概念を視認できるデザインに落とし込むことだ。

具体例としては、3R(Reduce Reuse Recycle)のキャンペーンマークが挙げられる。このデザインは、3つのRに異なる色を配色している点が特徴的だ。オレンジは人間、グリーンは大地、ブルーは空を表現している。

2本の足になぞらえたRの文字には、3R活動を前進させる狙いが込められている。3Rを視認できるデザインにすることでブランドアイデンティティを築いたといえる。

ブランディング戦略の最新成功事例

ブランディング戦略の理解を深めるために、企業の取り組みや成果を最新事例で紹介しよう。

成功事例1.ハズキルーペ

印象的なテレビコマーシャルでブランディングに成功したのがハズキルーペである。メガネ型拡大鏡の販売で知られる企業だ。

世間では、高齢者がルーペを片手に新聞を読むイメージが定番であり、必然的に顧客となる高齢者をターゲットにするため、起用されるCMタレントもその年齢層に合わせられた。

一方、ハズキルーペのCMに登場するのは、武井咲や小泉孝太郎など拡大鏡のターゲットにならない若者である。しかし、その起用からは隠された意図が読み取れる。

今まで拡大鏡は視力の低い高齢者が新聞などを読む際に必要とされたが、スマホ老眼という症状に悩む若年層も拡大鏡を求めるようになった。

ハズキルーペは時代の潮流を適格に読み、若いタレントの起用で新たなターゲット層の獲得に成功した。

成功事例2.マツダ

企業のブランディング活動を評価する「Japan Branding Awards 2019」では、自動車メーカーのマツダが最高賞を受賞した。

同社はブランド価値に焦点を当てて経営を推進している。そのブランド理念は、カーライフを通した人生の輝きの提供や、地球・社会と永続的に共存する車の提供などを掲げている。

この理念にもとづき、ブランド価値を明確にしたことなどが評価された。

成功事例3.スターバックス

スターバックスのカフェでコーヒーを飲むひと時には、お洒落で洗練されたイメージを抱くだろう。これはまさにスターバックスのブランディング戦略の成果である。

興味深いことに、スターバックスはブランディング戦略のためにテレビCMを一切実施していない。スターバックスのように世界中で名を馳せる企業になれば、ゴールデンタイムのCM契約も資金面では問題なさそうである。

しかし、広告に頼らず店舗に来客した顧客への満足度を上げることで、ブランド価値を向上させている。

スターバックスでは、快適な椅子、Wi-Fi、充電用コンセントなどが配備され、厳選された味わい深いコーヒーを片手に何時間でもくつろげる。

ターゲットの店内体験を重視することで、同業他社と一線を画したブランディングに成功した事例だろう。

成功事例4.スーパーホテル

スーパーホテルは、企業ロゴとコンセプトを一新させるブランディング戦略に成功した。

低価格ホテルとして支持を集めてきたが、「Natural Organic Smart」というコンセプトのもとで新たなブランディングプロジェクトに取り組んだ。

ホテルとして何を守り、何を変えていくのかが課題だった。その課題と向き合いながら、経営者や従業員、宿泊客などの意見をふまえて一新されたのがロゴマークである。顧客を元気にするという発想から、ロゴの文字はビタミンカラーである黄色を維持した。

また、「Natural Organic Smart」のコンセプト通り、客室やアメニティは天然素材にこだわり、提供する朝食も健康志向を意識した。

同社は自社の強みを取捨選択し、それを宿泊客に視覚化することでブランド価値を向上させた。

成功事例5.スノーピーク

「Japan Branding Awards 2019」では、ファッションブランドとしてスノーピークだけが受賞した。

「人生に、野遊びを。」というコーポレートメッセージを掲げ、顧客目線に立ったアウトドア製品の開発・製造・販売などを通じて、現代社会で希薄化する「自然と人のつながり」や、「人と人のつながり」を提案している。

こうしたガイドラインの策定や新規事業が評価され、受賞につながった。新潟県三条市に本社を構える従業員341人のスノーピークは決して大企業ではない。

スノーピークはブランディング戦略によって確固たる地位を築くのに成功したといえよう。

ブランディング戦略の最新失敗事例

ブランディング戦略で成功する企業が現れる一方、うまくいかなかったケースも散見される。教訓として活かすために失敗事例も紹介しよう。

失敗事例1.カゴメ

カゴメは、トマトジュースやトマトケチャップにおいて強固なブランディングを築いたが、そのブランドが危機にさらされた苦い経験もある。

過去に総合食品メーカーとしてのポジションを目指し、コーヒーや紅茶にも事業を拡大した。しかし、大量に在庫を抱え、たたき売りしてさばく事態になり、商品の値崩れによってブランドイメージを損ねる結果を招いた。

そこで取扱商品の数を減らし、1995年に野菜を手軽に補えるミックスジュース「野菜生活」の販売を開始し、主力に成長させた。

さらに、1998年には「トマトと野菜カンパニー」をコンセプトにブランディングを強化することで、起死回生の復活を果たした。

失敗事例2.トロピカーナ

ロゴの変更に失敗したのが果汁ブランドのトロピカーナである。商品のパッケージデザインを変更した結果、顧客からのクレームが殺到した。

結果として売り上げが減少し、デザインを戻すはめになった。中身のジュースは変わらないにも関わらず、売り上げが減少した理由は、消費者がパッケージに愛着を持っていたからと推測できる。

消費者の気持ちを尊重しなかったことがブランディング戦略の失敗要因だったに違いない。

ブランディング戦略の成功法則

企業規模に関わらず、ブランディング戦略が求められるのは明白だろう。成功例・失敗例から読み取れるように、戦略を立てる上でターゲットを見誤らないことが重要である。

自画自賛のブランディング戦略で顧客を置き去りにすると、これまで築き上げた顧客との信頼関係は一瞬で崩壊しかねない。

したがって、ブランディング戦略では顧客目線からブランド価値を発信する姿勢が求められる。

文・志方拓雄(ビジネスライター)

無料会員登録はこちら