目次
- 老朽化した道路を再生するコンクリート製品や工事方法の提案力に強み 発注者にとって良い意味での便利屋でありたい
- 日本一のコンクリート二次製品の卸売業者になるという決意を「ニッコン」の社名に込めている
- 老朽化した道路をコストや手間をかけずに改修する上で効果が高い4種類のオリジナル製品を独自に開発 雑草や水たまりの除去にも大きな成果
- ホームページ作成システムによる情報発信で、会社の優秀性が認知され、採用や自社製品の問い合わせが着実に増加
- 電子帳簿保存法の改正に対応するためクラウドシステムで証憑の電子データを一元管理 保存作業も短時間で完了
- 2024年に見積書作成のための新システムを導入 ICTやデジタル機器を使うことで従業員一人ひとりに時間の余裕を与える
- 脱炭素の取り組みにも関心 2021年12月、鳥取県日南町から二酸化炭素20トン分のJ-クレジットを購入
- 静かで快適な道路空間づくりのエキスパートとしての役割に期待が寄せられている
生コンクリートを原材料にした成型品として建設現場で使用されるコンクリート二次製品。鳥取県米子市の株式会社ニッコンは、主に道路の補修工事で使用されるコンクリート二次製品の卸売事業者として同県内で実績を積み上げてきた。ニッコンが調達した製品は同県内の様々な道路で使用され、人にとって優しい道路環境を整備する上で大きな役割を果たしている。独自で開発したオリジナル製品もそろえる。
持ち前の開発力を前面に押し出して、これからの会社を担う人材を募るため、ホームページでの情報発信や、従業員の負担を軽減してゆとりを生み出すことを目的にデジタル技術を活用している。(TOP写真:情報発信力強化のために開設したホームページの内容を確認する様子)
老朽化した道路を再生するコンクリート製品や工事方法の提案力に強み 発注者にとって良い意味での便利屋でありたい
1981年に鳥取県米子市で事業を開始した株式会社ニッコンは、老朽化した道路を改善する適材適所のコンクリート製品や工事方法の提案に強みを持っている。取り扱っているコンクリート二次製品は100点を超える。
「幼い子どもからお年寄りまですべての人々が安全に暮らせる地域づくりのために従業員一人ひとりの知力を結集し、社会資本整備への提案を通じて社会に貢献することを経営理念にしています。国、鳥取県、県内の市町村といった工事発注者、設計者、コンサルタントにとって、かゆいところに手が届く良い意味での便利屋であり続けたいと思っています」。米子市内の幹線道路沿いにあるニッコンの本社で中原洋平代表取締役専務は明るい表情で快活に話した。
日本一のコンクリート二次製品の卸売業者になるという決意を「ニッコン」の社名に込めている
コンクリート二次製品のメーカーに勤めていたニッコンの創業者は、「交通弱者にとって優しい地域を作る上で役立つコンクリート二次製品を世の中に提供していきたい」との思いから、ニッコンを立ち上げた。日本一のコンクリート二次製品の卸売業者になるという決意を社名に込めたという。中原専務も20代前半でニッコンに入社して以来、創業者の思いを受け継ぎ、発注者や取引先とのきめ細かなコミュニケーションを大事にしながらコンクリート二次製品の調達や開発に邁進(まいしん)してきた。
老朽化した道路をコストや手間をかけずに改修する上で効果が高い4種類のオリジナル製品を独自に開発 雑草や水たまりの除去にも大きな成果
高度成長期に構築され、老朽化したコンクリート構造物の修復は、全国各地の大きな課題となっている。傷んだ道路脇の側溝、子どもや高齢者がつまずきかねない段差が生じた歩道、視界を遮る雑草が生い茂った歩車道、大雨の際に路肩に大きな水たまりができる道路は各地の悩みの種になっている。
ニッコンは老朽化した道路をコストや手間をかけずに改修し、子どもや高齢者、障害者など交通弱者にとって優しい道路に再生する上で効果が高い4種類のオリジナル製品を独自に開発、販売している。いずれも特許登録、商標登録、意匠登録を行っている。
老朽化した側溝補修用のCRスラブⅡ型とかんたんグレーチング、歩車道に雑草が生える原因となる隙間を埋める防草型エプロンブロック、水たまりの発生を防ぐために集水機能を高めた多機能側溝。これら4種類のオリジナル製品は、工事コストやランニングコストの節減、工事期間の短縮、工事中の安全を実現する上で優れた機能を備えている。2011年から2024年のオリジナル製品の実績を調べたところ、補修工事費用の30%カットを実現した上で、側溝の集水量は1.3倍に上昇、雑草防止措置を行った場所で雑草を見ることはなくなったという。
「製品を販売するだけでなく、老朽化した道路の困りごとに真摯(しんし)に対応して解決策を提供することを重視しています。ニッコンで仕事をする醍醐味は、なんといっても地域のお役に立っていることを目に見える形で実感できることですね」と中原専務は話した。
ホームページ作成システムによる情報発信で、会社の優秀性が認知され、採用や自社製品の問い合わせが着実に増加
ニッコンは、総務部が担当する情報発信や基幹業務でデジタル技術を活用している。会社の実績や採用情報を多くの人に知ってもらうために2019年に導入したのが企業向けのホームページ作成システムだ。当時、ニッコンはコンクリート二次製品の卸売業という専門性の高さゆえに、豊富な実績を持っているにもかかわらず、業界関係者以外の知名度がそれほど高くないという課題を抱えていた。定年を間近に控えた従業員の仕事を引き継ぐ人材の募集を計画した際に、知名度向上のための情報発信の必要性を痛感したことが導入のきっかけになったという。
システムは会社案内や採用情報など企業ホームページに必要なページのテンプレート(ひな形)を多数搭載しているので、編集やプログラムの専門的な知識がなくても簡単にホームページを作成できる。パソコン向けのページをスマートフォン向けに自動変換する機能も備えているので、それぞれのページを個別に編集する手間と時間も節減できる。
ニッコンはホームページで、業務内容や施工事例、オリジナル製品の施工前と施工後を比較する写真などを掲載。レイアウトや配色にも気を配ったという。採用情報を掲載する専用ページも設けている。「Web閲覧やメールを使える程度のパソコンの知識があれば問題なく操作できるので、非常に助かっています。ホームページのおかげで取り扱っている製品や自社開発した製品が県内の至る所に使用されているにもかかわらず、そのことが浸透していなかった課題を改善することができました」と中原専務は話した。
ホームページの開設後、人材の採用活動は順調に推移。ホームページに掲載されている情報が、ニッコンを就職先として選択する大きな要素になった従業員もいる。全国の建設会社や設計事務所などからの問い合わせ件数も着実に増加した。今後、ホームページのリニューアルを検討し、施工事例の情報や動画コンテンツの充実を図りたいという。
電子帳簿保存法の改正に対応するためクラウドシステムで証憑の電子データを一元管理 保存作業も短時間で完了
事務処理の面でもデジタル技術を活用している。「あらゆる業界が人材確保で悩んでいます。地方の労働人口が減少する現状において、短期間で従業員を増やしていくのは容易ではありません。従業員の平均年齢が上昇する中で、定型的な仕事はデジタル技術を活用することで効率化し、時間をかけずにこなせるようにしていきたい」と中原専務は話した。
2022年1月の電子帳簿保存法の改正により、電子取引のデータ保存が2024年1月から完全義務化されたことに対応するために、様々な証憑の一元的な電子保存を手軽で迅速に行うことができるクラウドシステムを2023年4月から利用している。ニッコンがPDFなどの電子データで受け取る請求書などの証憑は月あたり30枚から50枚で、証憑全体の3割程度を占めている。システムは電子データを事前に設定したフォルダに格納すれば、電子帳簿保存法で定められた真実性や可視性の要件を満たしたクラウドストレージに自動的にアップロードされる仕組みになっている。アップロードした後は日時や相手先の名前、金額といった項目を検索するだけなので、短時間で作業を済ませることができる。
「電子データで取引した証憑について、紙による保存が認められなくなる改正電子帳簿保存法への対応に当初は不安を感じていましたが、クラウドシステムを活用することで想定していたよりも短い時間で戸惑うことなく取り組めています。手間がかからないのが何よりうれしいですね。また、検索機能を使って必要な情報をすぐに引き出すことができるので非常に助かっています」と総務部の青木泰彦さんは話した。
2024年に見積書作成のための新システムを導入 ICTやデジタル機器を使うことで従業員一人ひとりに時間の余裕を与える
2024年には、見積書作成のための新しいシステムを導入した。誤字脱字や金額、数量の入力ミスが減り、見積作成や決裁が完了するまでの時間が減ったことで作業効率は大幅に上昇した。ICTやデジタル機器を使うことで業務効率を上げ、従業員が仕事と日々の生活を両立して家庭や地域と関わる時間をより多く持てるようにしていきたいという。
「情報を共有化して属人化した業務をなくし、従業員一人ひとりに時間の余裕を与えていきたい。時間に追われていては新しい発想は生まれません。新たに生み出した時間は、新製品の開発やニーズを汲み取るための取引先とのコミュニケーションといった創造的な取り組みに活用してほしいと考えています」と中原専務。以前、社員旅行のリラックスした雰囲気の中で新製品のアイデアが生まれたことがあり、仕事中とは異なる視点で考えることを大事にしたいという。
ニッコンの総務部はオリジナル製品関連などの特許40件をはじめ計60件にのぼる知的財産権の管理も担当している。2024年度から部内に経営企画室を設置し、5年先、10年先も継続的に発展していくことを目指した新しい経営戦略を練っている。「目まぐるしいスピードで移り変わっていく時代だからこそ、経営企画室のメンバーでアイデアを持ち寄ることで、より良い経営につなげていきたい」と中原専務は話した。
脱炭素の取り組みにも関心 2021年12月、鳥取県日南町から二酸化炭素20トン分のJ-クレジットを購入
ニッコンは、主要原料のセメントの製造時に二酸化炭素を排出するコンクリートに携わる企業の社会的責任として、脱炭素の取り組みにも関心を持っている。2021年12月には、森林の二酸化炭素吸収力の売買を可能にするJ-クレジット制度を導入して森林保全に取り組んでいる鳥取県日南町から二酸化炭素20トン分のJ-クレジット(17万6000円分)を購入した。
鳥取県の森林保全に貢献したいという思いで購入したという。本社では日南町の木材で製作したJ-クレジット購入契約締結の認定証とともに、鳥取県の「J-クレジットとっとりの森を守る優良企業」の認定証が飾られている。環境だけでなく、地域の高校の部活動やイベントへの支援を通じて地域活性化にも貢献していきたいという。
静かで快適な道路空間づくりのエキスパートとしての役割に期待が寄せられている
地域社会の安心と安全を実現するために先進的なコンクリート二次製品と解決策を提供しているニッコン。「私たちの製品を必要としている人たちのことを常に念頭に置いて日々の事業に取り組んでいます。地域の未来を思って開発したものが、この国の未来を支えることにつながっていけばうれしいですね」と中原専務は穏やかな表情で話した。快適な道路空間づくりのエキスパートとしてのニッコンの役割には大きな期待が寄せられている。持続的な成長を実現する上でデジタル技術の活用は大きな推進力になるはずだ。
企業概要
会社名 | 株式会社ニッコン |
---|---|
本社 | 鳥取県米子市安倍200番地1 |
HP | https://nikkon-co.jp |
電話 | 0859-29-2911 |
設立 | 1981年3月 |
従業員数 | 15人 |
事業内容 | コンクリート二次製品の製造および販売、土木、建築資材の販売およびリース業、石材の加工および販売、一般土木工事、建築工事、建具工事、ガラス工事、石工事の請負業、土木、建築に関する設計業務、不動産の売買および仲介業、不動産の賃貸および管理業、不動産に関するコンサルティング業務 |