国土交通省は、貸切バスの安全な運行のため、デジタル式運行記録計(デジタコ)の使用等に関する制度を改正。2024年4月1日から新制度がスタートしました。そこでこのコラムでは、デジタコの使用・記録の義務化を中心に、改正内容を解説。さらに、デジタコ義務化にあたって企業に求められる取り組みや、活用のポイントをお伝えします。
貸切バスの安全対策に関する制度改正の内容は?
国土交通省は、2022年に静岡県で発生し多くの死傷者を出した貸切バスの横転事故をふまえて、貸切バスの安全性向上対策を検討。旅客自動車運送事業運輸規則等の一部の改正を、2023年10月に交付、2024年4月1日に施行しました。
過去に重大事故を起こした貸切バス事業者の大半は、点呼を実施していなかったなど、運行管理に不十分な点がありました。そのため、改ざんや不正のない適切な運行管理が行われるよう、下記のような改正が行われました。
対象となる「貸切バス」とは |
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この法改正の対象となる貸切バス事業とは、「一般旅客自動車運送事業」です。国土交通省令で定める定員である「乗車定員11名以上」の自動車を使用して、一個の契約で、1台の自動車を貸し切って旅客を運送するバス事業を指します。
デジタル式運行記録計(デジタコ)の使用が義務化 |
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貸切バスの事業者は、その事業に使う自動車の運行距離などを運行記録計で記録して、それを保存する必要があります。今回の改正では、その記録をデジタル式運行記録計で行い、運行記録を電子データで3年間保存することが、貸切バス事業者に義務付けられました。
デジタル式運行記録計は、運行記録をデジタルで記録する装置で、デジタルタコグラフ(デジタコ)とも呼ばれます。自動車運転時の速度や走行時間、走行距離といった情報を、SDカードやクラウド等に記録する機器です。
点呼の記録を動画保存 |
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今回の制度改正で、録画や録音による点呼記録の保存も義務付けられました。乗務の前後等に行う点呼で、ドライバーの酒気帯びの有無や、疲労・睡眠不足の状況を確認する様子を、動画で撮影・記録する必要があります。天井に備え付けた監視カメラや、スマートフォンやパソコンのカメラなど、事務所にある機器を使って記録することが可能です。
記録には、点呼実施者とドライバーの映像と点呼時の指示事項などのやりとりがわかる音声、また、ドライバーの顔が識別できる映像が必須です。動画は、90日間、データで保存する必要があります。なお、電話点呼を行っている場合は、点呼実施者とドライバーのやりとりの録音でも対応が可能です。
アルコールチェックの様子を撮影して保存 |
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アルコール検知器を使って、ドライバーの酒気帯びの有無の確認している様子の写真も保存する必要があります。アルコールチェック中のドライバーの顔写真を撮影して、データで90日間、保管することが義務付けられました。ドライバーの顔が識別できるよう、前から撮影を行います。なお、点呼の動画内で、アルコールチェック時のドライバーの顔が確認できる場合は、改めての写真撮影は不要です。
記録の保存期間を3年に延長 |
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これまで、貸切バス事業者に対して、運送引受書、手数料等の額を記載した書類、点呼の記録、業務記録及び運行指示書について1年間の保存義務がありましたが、この期間が3年間に延長されました。また、点呼の記録は、デジタルでの保存が義務付けられました。運送引受書、手数料の額を記載した書類、業務記録、運行指示書の保存は、紙でも電子データでも可能です。
安全取組の公表内容の拡充 |
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貸切バス事業者に、インターネット等での公表が義務付けられている安全取組について、内容が追加されました。2024年4月1日以降の報告から、初任運転者に対して行う20時間の安全運転の実技指導(添乗付き)について、実施ルートや実施時期、車種区分、指導の具体的な内容、添乗者の指導歴などを、ホームページに掲載する必要があります。
デジタコ義務化のポイント
貸切バスの安全な運行管理のため義務化された、デジタコによる記録・データ保存。義務化開始の時期や対象車両に関して、一部、例外があります。そのルールのポイントは以下のとおりです。
新車以外の貸切バスはいつから? |
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2024年4月1日からデジタコ使用が義務化されるのは、2024年4月1日以降に新規登録を受けた新車です。2024年3月31日以前に登録を受けた既販車は、2025年4月1日からデジタコを使用する必要があります。既販車は、2025年3月31日までの間はアナログ式運行記録計による記録で問題ありません。
デジタコを装着できない場合の対応 |
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ボンネットバスなど、年式が古く、デジタコを装着できないバスは、今回の義務化の対象外です。その場合、複数の運行記録計のメーカーから、デジタコの装着が困難である旨の回答文書を、メールや書面で受け取り、保存する必要があります。
スクールバスや送迎バスは対象になる? |
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生徒が使うスクールバスや、会社の従業員送迎バスなどの特定バス(特定旅客自動車運送事業)に近い形のバスを運行している場合も、注意が必要です。運行の実態や車両の形状に関わらず、運行形態が貸切契約の場合は、デジタコの使用が義務付けられます。
デジタコ導入のメリット
今回の制度改正で、アナログ式運行記録計を使用している貸切バス事業者には対応が求められます。ただ、機器やシステムの導入コストはかかるものの、デジタコの導入は事業者にとってさまざまなメリットがあります。
最大のメリットは、バス運行の安全性向上や、事故の防止です。デジタコは、速度や加減速などの運転状況を正確に記録できます。データに基づいた運転の指導監督によって、ドライバーの運転の安全性や、スキル向上が実現できます。
また、運転時間の把握によってドライバーの労務管理ができます。デジタコや管理ソフトには、改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)に基づくチェックや、長時間連続運転を警告する機能を搭載した製品もあり、法令順守や働き方の改善に活用できます。また、デジタコは運行記録がデータで保存され、手書きの日報が不要になることから、作業時間の軽減にもつながります。運転の経済性を可視化できるデジタコもあり、燃費改善にも役立ちます。
デジタコ義務化で貸切バス事業者に求められる対応は?
では、今回の制度改正によるデジタコ義務化で、貸切バス事業者にはどのような対応が求められるのでしょうか。
アナログ式からデジタルへの切り替え |
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専用チャート紙にグラフで運行状況を記録するアナログ式運行記録計を使用している貸切バス事業者は、デジタル式に機器を切り替える必要があります。2024年3月31日以前から運行している貸切バスも、2025年4月1日からは、デジタコの使用が必須です。
デジタコは、記録できる情報や機能が多いものや、ドライブレコーダーと一体化した製品など、さまざまな機種があります。デジタコ活用の目的や予算に応じて、製品の比較・検討を進めましょう。
デジタコ管理ソフトの導入 |
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バス運行業務の効率化には、デジタコ管理ソフトの活用も不可欠です。運行情報の記録、保存、データ集計などができる運行管理ソフトは、法令への対応や労務管理にも役立ちます。管理ソフトは、クラウドサービスとしてデジタコ製品に付帯しているものや、日報作成や他のシステムとの連携など、業務を効率化する機能が豊富なものなど多岐にわたります。スムーズで安全なバス運行やドライバーの労働環境改善のため、自社に合った管理ソフトを導入しましょう。
業務効率化にもつながるデジタコを積極的に活用しよう!
デジタコや運行管理ソフトは、省力化や業務デジタル化による業務効率向上、燃料費などのコスト最適化にも役立ちます。乗客が安心して利用できるバス事業者として運行を続けるためにも、デジタコの活用を進めましょう。
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