全国の学校向け卒業記念品を取り扱う会社が、取引情報のサーバー一元化と全国拠点との常時接続でいつでもWeb会議を可能へ 日本コーイン(山梨県)

目次

  1. 学校向けに販路を絞って印鑑を販売し、卒業記念品の取り扱いへと規模を広げることで経営を維持・発展させた
  2. 印鑑やモバイルバッテリー、ボールペン、時計など多彩な卒業記念品を取り扱って学校のニーズに応えている
  3. デジタル化したデータをサーバーに保管して共有しスムーズに閲覧できるようにして顧客対応力を強化
  4. 遠隔地の拠点とは常時接続をして、いつでもWeb会議でコミュニケーションをとれるように準備
  5. ホームページを見やすくわかりやすく使いやすいものへとリニューアルして、業務内容を知ってもらおうと検討を始めた
  6. 得意先の学校向けに防災用品を提供して大きな災害に備えてもらう
中小企業応援サイト 編集部
全国の経営者の方々に向けて、経営のお役立ち情報を発信するメディアサイト。ICT導入事例やコラム、お役立ち資料など「明日から実践できる経営に役立つヒント」をお届けします。新着情報は中小企業応援サイトてお知らせいたします。

山梨県甲府市に本社を置いて、北は北海道から南は九州・沖縄にいたる全国の学校を対象に、卒業記念品などを販売している会社が株式会社日本コーインだ。印鑑や卒業証書を入れるケース、校章入りのモバイルバッテリーにマグカップといった多彩なアイテムをそろえて、寄せられる注文に応えている。最近は、データ共有を行って過去のデータをスムーズに参照できるようにしたり、東京と大阪にある営業拠点と常時接続し、いつでもWeb会議での打ち合わせを可能にして、顧客サービスの充実を進めている。(TOP写真:日本コーインのTシャツのオンライン販売サイトより)

1952年創業の日本コーインは、2027年に75年という節目を迎える。その先は100年。そこへと向かうために最近、Tシャツ制作のノウハウを生かした自社向けのTシャツをデザインして従業員に着てもらった。目標に向かう意識を持たせて未来へと進む原動力にして、来る100周年に向けて動き始めた。

全国の学校向け卒業記念品を取り扱う会社が、取引情報のサーバー一元化と全国拠点との常時接続でいつでもWeb会議を可能へ 日本コーイン(山梨県)
Tシャツ制作のノウハウを生かした自社向けのTシャツ着用(ホームページより掲載)

山梨県では、産出する水晶の加工を源流とする印鑑の製造が重要な地場産業になっている。日本コーインは、全国の学校を回って卒業の記念となる印鑑を販売する仕事を足がかりにして、学校向け用品全般を取り扱う会社へと発展していった。

学校向けに販路を絞って印鑑を販売し、卒業記念品の取り扱いへと規模を広げることで経営を維持・発展させた

全国の学校向け卒業記念品を取り扱う会社が、取引情報のサーバー一元化と全国拠点との常時接続でいつでもWeb会議を可能へ 日本コーイン(山梨県)
全国の学校に卒業記念品や学校用品、防災用品を提供している株式会社日本コーインの小宮山貴彦代表取締役

「先代にあたる父親が創業した当時から、学校向けに卒業記念品を扱っていたようです」と振り返る小宮山貴彦代表取締役。全国津々浦々の家庭や企業を回って印鑑を行商する人が多くいた時代にあって、「学校が相手なら、確実に続くお取引先になると考えたようです」(小宮山社長)と、その先見性を指摘する。

印鑑は生活の様々な場面で必要不可欠なものだった。銀行口座を開く時や公的書類を提出する時には、必ずと言っていいほど印鑑を押していた。企業内での書類の決裁にも印鑑が使われていて、誰もが机の中に1本くらい印鑑を入れていた。そういう時代だけに、人生の転機となる卒業の時に印鑑を作る人も多かったようで、学校を相手にしていた同社にとっても、印鑑は重要な取扱品目となっていた。

時代が移って徐々に印鑑を使う場面が減り、郵便物や宅配便の受け取りも印鑑を押す必要がなくなっている。企業内の書類のやりとりも電子化されて、認証の仕組みが印鑑から別の方法に置き換わっている。そうした時代になっても、卒業記念に印鑑を作っておく習慣は廃れていない。同社が取引先に配っているカタログには、さまざまな種類の印鑑が掲載されている。

印鑑やモバイルバッテリー、ボールペン、時計など多彩な卒業記念品を取り扱って学校のニーズに応えている

全国の学校向け卒業記念品を取り扱う会社が、取引情報のサーバー一元化と全国拠点との常時接続でいつでもWeb会議を可能へ 日本コーイン(山梨県)
卒業記念の印鑑作成を呼びかける電子カタログのページ

カタログには、「実印や銀行印など、重要な契約に使用する印章は今後も変わらず必要です。『印鑑証明』が必要とされる手続きは存続し、印鑑登録制度(実印)がなくなることはありません」と書かれている。

卒業記念印については、卒業生全員がいっせいに作るものではなく、学校を通して注文を受けている形だが、卒業記念品の方は、「校章や校名が入ったモバイルバッテリーやボールペンといったものを卒業生全員が手にするものとして提供しています」(小宮山社長)。卒業証書を入れるケースや筒も取り扱っていて、それぞれに校名を入れて納品している。設立の周年や閉校などを記念するオルゴールといったアイテムも用意して、学校の要望に応えようとしている。

デジタル化したデータをサーバーに保管して共有しスムーズに閲覧できるようにして顧客対応力を強化

取引先が全国に及び、取扱品目も多彩といった状況から、営業に携わる従業員は商談にあたって事前にデータをそろえておく必要がある。以前は、ファイルされた台帳やデータが記録されたオフィス内のパソコンを開いて確認していたが、「サーバーのデータ共有を実現したことで、これまで幾らくらいで見積を出していたとか、実際の取引金額や取引量はどれくらいだったのかといったことを、自分の端末から確認できるようになりました」(小宮山社長)。

データ共有は、データそのものがデジタル化されてサーバーに保存されている必要がある。同社では、社内で使っている書類についても、ペーパーレス化を進めており、OCR(光学的文字認識)を使ってデジタル化する取り組みを始めた。事務所内のパソコンも徐々に新しいものに切り替えており、よりスムーズにデータを取り扱えるようにして業務の改善を目指す。

「昔は営業スタッフが遠くまで出かけていって、1日10件くらいの取引先を回ることがありましたが、今は電話やメールでやりとりすることが増えています」(小宮山社長)。それでも、遠隔地にある学校へと営業に出かけることもある。そうした際に、手元のスマートフォンやタブレットでデータを参照し、その場で商談を進められるような環境作りも進めていきたい考えだ。

ただ、カタログなどは電子版も用意しつつ、紙のものも制作して配布していく。「ページをめくっていろいろなものを見ていくとなると、やはり紙のカタログの方に分があります」(小宮山社長)。必要なところはデジタル化に取り組むが、「アナログのままが便利ならそこは残していく“メリハリ”が大切です」(小宮山社長)と訴える。

遠隔地の拠点とは常時接続をして、いつでもWeb会議でコミュニケーションをとれるように準備

全国の学校向け卒業記念品を取り扱う会社が、取引情報のサーバー一元化と全国拠点との常時接続でいつでもWeb会議を可能へ 日本コーイン(山梨県)
従業員一人ひとりのデスクにパソコンが置かれデータ活用やコミュニケーションを取れるようにしている

甲府以外の拠点としては、東京と大阪に営業所があって、そこから取引先へと出かけていく従業員もいる。こうした拠点とのコミュニケーションをより密接なものとするため、同社ではWeb会議システム(Zoom)を導入して、「常時つなぎっぱなしの状況を作りました」(小宮山社長)。

古くは電話やFAXがあり、最近ではメールやチャットといった通信手段が存在しているが、それでも対面と同じコミュニケーションはできない。「Web会議システムで常時つながっていれば、同じ場所にいるような感覚でコミュニケーションできます。商品を確認する時も、実物を送らなくてもカメラに映して見せれば済んでしまいます」(小宮山社長)

こうしたWeb会議システムが、取引先である学校ともつながれば、新商品のイメージを知ってもらったり、仕上がりを確認してもらったりすることがスピーディーに行える。ただ、「学校という場ではまだ、外部と直接つながるようなことを認めていないところが多くあって、今は難しいと思います」(小宮山社長)。状況が変わればそうしたコミュニケーションも一般化していく。そうした時代に備えたコミュニケーションのあり方を、一足早く実践していると言える。

ホームページを見やすくわかりやすく使いやすいものへとリニューアルして、業務内容を知ってもらおうと検討を始めた

全国の学校向け卒業記念品を取り扱う会社が、取引情報のサーバー一元化と全国拠点との常時接続でいつでもWeb会議を可能へ 日本コーイン(山梨県)
現在の日本コーインのホームページ。一覧性は十分だが見る人がわかりやすいデザインへと改善していく

今後取り組んでいきたい課題としては、運用しているホームページの刷新を挙げる。「今のホームページは、必要なことはしっかりと書かれていますが、アナログの会社案内をデジタルにしたようなところがあって、あまりおしゃれとは言えません」(小宮山社長)。学校行事の際に、生徒たちがクラス単位でそろえるようなTシャツやグッズ類のオンライン受注を行っており、デザイン性が高く使いやすいサイトにして、より広く関心を持ってもらえるようにしたいとう。

売上の4割近くを占めるようになって、同社にとって重要な商材となっている防災用品のアピールも、ホームページの刷新を通して強めてきたい考えだ。「1995年の阪神淡路大震災の時に、災害に備えておく必要を感じました。2011年の東日本大震災でさらに強く防災用品を準備しておく必要を感じて、本格的に取り扱いを始めました」(小宮山社長)

得意先の学校向けに防災用品を提供して大きな災害に備えてもらう

全国の学校向け卒業記念品を取り扱う会社が、取引情報のサーバー一元化と全国拠点との常時接続でいつでもWeb会議を可能へ 日本コーイン(山梨県)
日本コーインが扱う防災用品のカタログ

一般企業向けや家庭向けに防災用品をセットにして販売している会社はあったが、「学校向けはあまりありませんでした。当社にはそうした学校に対するネットワークがあるため、販路として広げていくことができました」(小宮山社長)。非常食や飲料水から簡易寝袋、カイロ、携帯トイレなどを1人分リュックにまとめたセットを用意。これを生徒が入学時に購入すれば、在学中の災害に備えることができる。

同社には防災士の資格を持った従業員がいて、全国の学校を回って防災の心得を講演する活動も行っている。自然災害の脅威が言われる中で、防災用品の需要は今後ますます高まっていくとみられるだけに、そうした防災用品を扱うホームページも作って購入希望者の要望に応えていきたい意向だ。

災害に備える防災用品の提供と共に、災害そのものの抑制につながる地球温暖化への対策も進めていこうとしている。エアコンの温度を26℃に保つといった日頃の活動もそのひとつ。また、2023年からは、使っている電力が100%、実質再生エネルギーになる電力プランを導入。このほど「リコー再エネ電力供給証明書」も取得した。今後は電灯のLED化や空調設備の刷新にも取り組んで使用電力の抑制に努めていくという。

全国の学校向け卒業記念品を取り扱う会社が、取引情報のサーバー一元化と全国拠点との常時接続でいつでもWeb会議を可能へ 日本コーイン(山梨県)
「リコー再エネ電力供給証明書」を持つ小宮山社長
全国の学校向け卒業記念品を取り扱う会社が、取引情報のサーバー一元化と全国拠点との常時接続でいつでもWeb会議を可能へ 日本コーイン(山梨県)
日本コーインの本社屋

企業概要

会社名株式会社日本コーイン
本社山梨県甲府市中町430-1
HPhttps://kooin.jp/
電話055-243-0151
設立1984年8月(創業 1952年4月)
従業員数15人(要確認)
事業内容  衣料・雑貨・卒業記念品・防災用品・各種学校用品の小売・卸売、衣料品のプリントサービス、印鑑の製造・販売