補助金,圧縮記帳,メリット
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鈴木 まゆ子
鈴木まゆ子(すずき・まゆこ)
税理士・税務ライター。2000年中央大学法学部卒業後、㈱ドン.キホーテに入社。会計事務所勤務後、2009年税理士試験官報合格、2012年税理士登録。在日外国人の起業・経営支援に従事。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。東京税理士会王子支部所属。

企業は事業拡大のためには投資をしたいけれど、まとまった資金がないといった悩みを抱えることが多い。国は投資を支援すべく補助金制度を設けているのだが補助金にも課税される。課税されないためにはどうすればいいのか説明する。

補助金とはそもそも何か?

設備投資や事業拡大の際、企業を含め法人は国などから補助金を得ることができる。「もらえたらラッキー」という印象の強い補助金だが実際の給付は厳格なものだ。

補助金の定義とは?国の政策目標に沿った事業を支援する

そもそも補助金とはどういう定義なのだろうか。法律上の明確な定義はないが『補助金制度』(加藤剛一・田頭基典著)には次のように記述されている。

「補助金とは国が特定の事務、事業に対し、国家的見地から公共性があると認め、その事務、事業の実施に資するため反対給付を求めることなく交付される金銭的給付である」

「国による特定目的のための出資」のような性格を持つが、補助金として満たすべき要素として次の3つが挙げられている。

  • 特定の事務、事業に国家的見地において公共性があると認められること
  • その事務、事業の実施に資するためのものであること
  • 財政援助の作用をもつこと

つまり無目的に給付されるのではなく、国の政策目標に沿った事業を実施する事業者に対し、実施支援の意味で給付されるのが補助金なのである。

なお、国から支給される補助金については「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」の適用対象となっており、本来の給付の目的から外れた不正使用などについてはペナルティが科される。

補助金と助成金の違いとは?

補助金と助成金は、国や地方公共団体が民間企業や個人の事業支援のために給付する金銭という点では共通している。ただ「受けやすさ」という点において違いがある。

補助金の給付を受けるには、応募期間内(たいてい2月~8月頃)に応募して一定の審査にパスしなければならない。また、仮に審査にパスしたとしても、補助金が満額受け取れるとは限らない。

事業に必要な経費の一部しか支給されないため、不足分は企業自らが自己資金や融資で賄う必要がある。

一方、助成金は国や地方公共団体が提示した条件に合致していれば給付を受けることができる。応募期間が限定されていないものも多く、予算が消化されなければ1年中利用ができる。こういったことから一つの企業が複数の助成金を活用しているケースも珍しくない。

補助金にはどんなものがある?具体例を3つ紹介

では実際に補助金にはどんなものがるのだろうか。具体例を紹介しよう。

1. ものづくり補助金(革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金)

ものづくり補助金は経済産業省や中小企業庁が中小企業や小規模事業者に対して給付する補助金だ。国際的な経済や社会情勢の変化に対応すべく、日本も足腰の強い経済力を備える必要があるという見地から実施されている。

中小企業や小規模事業者が行う以下の取り組みが補助金給付の対象となっている。

  • 経営力向上に資する革新的サービス開発・試作品開発
  • 試作品開発や生産プロセスの改善などを行うための設備投資

対象経費は機械装置の購入費用、技術導入費、専門家への依頼費用、運搬費用に限定されている。補助金の給付上限額は500万円から3,000万円と幅が広いが、補助率は3分の2となっている。

2. 小規模事業者持続化補助金

経済産業省や中小企業庁が小規模事業者を対象に給付する補助金だ。持続的な経営計画に基づき、小規模事業者の販路開拓の取り組みやこれに併せて行う業務効率化の取り組みを支援し、円滑な事業承継を進めていくことがこの補助金の目的となっている。

補助金の支給上限額は50万円、補助率は補助対象経費の3分の2以内となっている。

3. 既存建築物省エネ化推進事業

建築物などの省エネ化を推し進めるため、国土交通省がその事業の一部を支援する補助金だ。民間事業者などが行う既存のオフィスビルなど、住宅以外の建築物の省エネ改修工事・バリアフリー改修工事が補助金の対象となる。

補助金の支給限度額は5,500万円(ただし設備改修に関するものについては2,500万円が上限)、補助率は3分の1以内となっている。

補助金に関する税金の注意点 消費税と法人税はかかる?

ここで気になるのは補助金が給付された時の税金の計算だ。

消費税――補助金を受けた部分については仕入税額控除ができない

消費税の納税義務者である事業者が資産を購入したり経費を支払ったりすれば、非課税項目に該当するものでない限り、原則として仕入税額控除の対象となる。

つまり売上にかかる消費税から仕入にかかる消費税を差し引くことができるのだ。しかし補助金を固定資産の購入や経費の支払いに充てた場合には、補助金部分については仕入税額控除の対象から外さなければいけない。

なぜかというと、消費税法では仕入税額控除の対象となる資産の購入や経費支払は、あくまでも課税売上に対応するもののみとしているからだ。課税売上とはモノやサービスの提供の対価となるものに限られる。

補助金はこういった対価性を持つものではないため、補助金部分については仕入にかかる消費税額の計算から除外する必要がある。

法人税――国からもらう補助金でも課税

補助金は国などから給付されるため一見非課税にみえる。しかし法人税などは課税の対象となっているのが現実だ。

法人税法では原則として補助金であっても「補助金受贈益」として益金(法人税法上の「収益」の意味)に算入しなくてはならないとしている。

なぜかというと、法人税法第22条に「原則として資本取引以外のものにかかる収益はすべて益金の額に算入する」とあるからだ。資本取引とは増資や減資、利益配当など資本の部に関する取引に限られる。

補助金はこの資本取引に該当しないため、国からの補助金であっても原則として益金の額に算入され法人税の課税対象となる。

ただし、この原則に対し法人税法では次に解説する「圧縮記帳」という特例制度を設けている。

「圧縮記帳」とは?

補助金効果の低下や補助金の国策的な位置づけを考慮し、法人税法では特例として課税負担を一時的に減らす会計処理を認めていて、これが「圧縮記帳」だ。

圧縮記帳の意義

圧縮記帳では設備投資など有形固定資産の取得に際して補助金受贈益が計上された場合、その取得価額を減額(圧縮)して圧縮損を計上する。こうすることで補助金の益金の額が圧縮損の損金の額と相殺され補助金分の課税負担が低くなる。

「補助金であっても法人税を課すべし」という原則は、補助金の効果を下げるおそれがある。というのも受け取った補助金は益金の額に算入されても購入した固定資産は損金の額に計上されないからだ。

つまり「収益だけ増えて費用はゼロ」の状況になる。結果、益金の額はほぼ法人税課税の対象となる。

これは「国からお金をもらっても、一部は税金という形で国に返さなきゃいけない」という企業側の不満を膨らませ、投資意欲や事業拡大意欲をそぐ恐れにつながる。結果、補助金の効果が下がり、「経済の振興」といった国策が達成されない状況を生み出しかねない。

しかし、圧縮記帳という特例制度を使えば、補助金への課税を一時的に回避し、繰り延べることで企業としてはきちんと補助金を設備投資に生かすことができる。

圧縮記帳できる補助金などの条件

ただし補助金ならば何でも圧縮記帳の対象になるわけではない。法人税法では圧縮記帳の対象となる補助金や法人の条件を原則として次のように限定している。

  1. 国または地方公共団体から受け取る補助金、給付金、あるいはこれらに準ずるもので政令に定めるもの(法人税法上は「国庫補助金等」という)の交付を受けること
  2. 国庫補助金等をもって交付された事業年度に固定資産の取得や改良に充てたこと
  3. 国庫補助金等が交付された事業年度の末日までに国に返還不要が確定したこと
  4. 国庫補助金等を受け取った法人が清算中でないこと
  5. 法人税計算の基礎となる会計処理上も圧縮記帳を行っていること
  6. 法人税の確定申告書に圧縮記帳に関する明細書を添付していること

さきほど紹介した3つの補助金の中には、固定資産の取得に充てるためのものではなく、専門家への報酬など経費に充てるものもあったが、圧縮記帳を使えるのは固定資産の取得に充てた補助金のみとなる。実際に圧縮記帳を検討する場合には注意したいポイントだ。

また、一般的に補助金というと「金銭」をイメージするが、金銭の代わりに固定資産そのものが国などから給付された場合も圧縮記帳の対象となる。

圧縮記帳の税務上の会計処理とその効果

言葉で説明しても圧縮記帳の効果はわかりにくいため事例を挙げて説明しよう。実務では「直接減額方式」「間接減額方式」の2つの方法があるが、ここでは直接減額方式に限定して仕訳を使って説明する。

【事例】

事業年度初日に国庫補助金300万円を受け、同時に機械500万円を取得した。残額は自己資金を充てた。減価償却は定率法で償却率0.25、法人税などの実効税率は30%とする。

この事例において圧縮記帳をしない場合とした場合ではどのような違いが出るのだろうか。

圧縮記帳をしない場合

1.国庫補助金受取時
(借方)現預金300万円/(貸方)補助金受贈益300万円

2.機械購入時
(借方)機械500万円/(貸方)現預金500万円

3.期末の減価償却計上
(借方)減価償却費125万円/(貸方)機械125万円

減価償却費の計算は、500万円×0.25×12月/12月=125万円。法人税法上の会計処理として着目すべきは「補助金受贈益300万円(益金の額)」「減価償却費125万円(損金の額)」だ。

国庫補助金だけが収益の場合の当事業年度の法人税
〔補助金受贈益300万円(益金の額)-減価償却費125万円(損金の額)〕×30%=52万5,000円

結果、実質的に受け取った国庫補助金は300万円-52万5,000円=247万5,000円となる。

圧縮記帳をした場合

1.国庫補助金受取時
(借方)現預金300万円/(貸方)補助金受贈益300万円

2.機械購入時
(借方)機械500万円/(貸方)現預金500万円
ここで受け取った補助金の分だけ圧縮損を計上(圧縮記帳)する。

(借方)圧縮損300万円/(貸方)機械300万円
圧縮記帳をした結果、機械の取得価格は500万円ではなく200万円(=500万円-300万円)になる。

3.期末の減価償却計上
(借方)減価償却費50万円/(貸方)機械50万円

減価償却費の計算は、200万円×0.25×12月/12月=50万円

法人税法上の会計処理として着目すべきは「補助金受贈益300万円(益金の額)」「圧縮損300万円(損金の額)」「減価償却費125万円(損金の額)」だ。

国庫補助金だけが収益の場合の当事業年度の法人税
〔補助金受贈益300万円(益金の額)-圧縮損300万円(損金の額)-減価償却費50万円(損金の額)〕=▲50万円

50万円の赤字となり、当事業年度の法人税の額は0円になり、名実ともに受けとった国庫補助金は300万円そのままということになる。

固定資産の取得事業年度と補助金の受給事業年度が違う場合の圧縮記帳

補助金を受け取り返還不要が確定したのが事業年度の末日近くだったため、補助金を使って固定資産を購入したのが翌事業年度になってしまったというケースもあるだろう。

この場合では補助金受贈益は仮勘定で処理し、固定資産の取得の時期にあわせて圧縮記帳を行う。

わかりにくいので先ほどの事例を使い、補助金受給および返還不要確定の事業年度の翌事業年度に固定資産取得が行われたとして説明する。

補助金の受給事業年度での経理処理

1.国庫補助金受給時
(借方)現預金300万円/(貸方)補助金受贈益300万円

2.期末
当事業年度末に返還不要は確定したものの固定資産取得ができていないため次の処理を行う。
(借方)補助金受贈益300万円/(貸方)未決算(仮勘定)300万円

固定資産の取得事業年度での経理処理

1.機械(固定資産)取得時
ここでは期首に機械を取得したとする。
(借方)機械500万円/(貸方)現預金500万円

2.期末
ここで前期末に未決算(仮勘定)に振り替えた補助金受贈益を再計上するとともに、圧縮記帳を行って益金の額と損金の額を相殺する。
(借方)未決算(仮勘定)300万円/(貸方)補助金受贈益300万円
(借方)圧縮損300万円(貸方)/機械300万円

さらに、減価償却費も計上する。

(借方)減価償却費50万円/(貸方)機械50万円

結果、補助金の受給と固定資産の取得が同一事業年度と同じ損益計算となる。

圧縮記帳のメリット

補助金分だけ収益を小さくする圧縮記帳には、次のようなメリットがある。

企業の投資意欲を課税で低下させない

補助金分だけ収益を小さくするということは、その分税金が課されないということだ。上記の事例で見た通り、受け取った補助金の効果は課税で減殺されることなく、そのまま生きている。つまり「どうせ補助金を受け取っても一部は税金で取られるわけだし…」などと企業の投資意欲や事業拡大意欲を低下させない効果を持つ。

圧縮記帳のデメリット

圧縮記帳にはメリットだけでなく、次のようなデメリットもある。

翌年以降は圧縮記帳分だけ課税が重くなる

圧縮記帳は一時的に課税を回避することだが、圧縮記帳をしても課税は免除されず、将来に繰延されるだけなのだ。この繰延が表面化するのは、翌期以後の減価償却費計上時と資産の除却・売却時である。

先ほどの事例で翌期の減価償却費がどうなるかを見てみよう。圧縮記帳をしない場合、翌期の減価償却費は次のようになる。

(500万円-125万円)×0.25=93万7,500円

一方、圧縮記帳をした場合の翌期の減価償却費は次のようになる。

(200万円-50万円)×0.25=37万5,000円

つまり、圧縮記帳をすると、翌期の減価償却額は56万2,500円少なくなる。税金ベースでみると17万円近く増税される。

「圧縮記帳をする」ことは「固定資産の取得価額が小さくなる」ことである。取得価額が減額されれば、その分減価償却額は小さくなるし、将来の売却益や除却益も大きくなるのだ。これらはすべて法人税などの増加に反映される。

圧縮記帳は節税になるものの、将来の節税を犠牲にするわけだ。

事務・経理処理が複雑で面倒くさい

これまでの事例を見ると圧縮記帳に伴う処理には手間がかかる。補助金を受け取り、固定資産を購入した事業年度だけでは終わらず、翌事業年度以後も常に注意しておく必要がある。

また、今回の事例では直接減額方式のみを使ったが、実務ではもう一つ間接減額方式というものがある。これは経理処理と法人税の申告書における別表での処理の両方が必要で非常に複雑だ。

補助金そのものについても、給付後の用途についての報告や審査が必要になる。結果「大変な思いをしてやっと受け取ったけれど、もらった後も大変さが付きまとう」のが補助金なのである。

繰り返しになるが圧縮記帳も免税ではなくあくまでも課税の繰り延べでしかない。これらを踏まえた上で、補助金活用を検討するとよいだろう。

文・鈴木まゆ子(税理士)