民岡 良
SP総研 代表取締役
【PROFILE】1996年慶應義塾大学経済学部を卒業後、日本オラクルにてERPシステムの教育事業に従事。SAPジャパンにおいては人事管理システム(SAP ERP HCM)の導入、認定コンサルタント養成プログラムでの講師を担当。その後、人材エージェント業務を経て日本IBMに参画し、Kenexa/Watson Talentを活用したタレントマネジメント/採用・育成業務プロセス改革に従事。直近ではウイングアーク1stにて、日本企業の人事部におけるデータ活用ならびにジョブ定義、スキル・コンピテンシー定義を促進させるための啓蒙活動に従事したのち、2021年5月より現職。一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアムの理事も務め、「人的資本の情報開示」(ISO 30414)に関する取り組みについても造詣が深い。著書に「HRテクノロジーで人事が変わる」(2018年労務行政、共著)等がある。労政時報セミナー、HRテクノロジーカンファレンス等、登壇実績多数。 |
2023年は、わが国における「人的資本開示」が形式的には進んだ一年ではありました。ただ、その実態を直視すると、かなりおかしな方向にミスリードされた一年でもありました。
少しでも流れを変えるべく、「わが国の人的資本開示を正しい方向に引き戻すための一冊!」として本書を出版しました。また、「HRテクノロジー」と「キャリア論」の両方の要素がここまで具体的に含まれた書籍は、おそらく国内では初ではないかと思います。
さらに、一貫して「従業員視点」であることにもこだわりました。「人的資本経営」に関連する書籍は経営者視点に偏りがちな内容のものが多いと感じますが、従業員視点で「持続的に働くこと」を主題として展開された書籍は他には無いのではないでしょうか。
ここで、「人的資本経営」とは、「従業員が持つ知識や能力を『資本』とみなして投資の対象とし、持続的な企業価値の向上につなげる経営手法」のことであり、そうである以上は従業員それぞれが保有している(広義の)スキルの可視化を行なう必要があります。
人的資本経営を「人(そのもの)が大切」と定義するのではなく、「人が持つ知識、スキル、能力等々(広義のスキル)を大切にする経営」と再定義しているところが著者の最大のこだわりです。
また本書では、バラバラに語られることの多い、HRテクノロジー、サステイナブル経営、人的資本、ウェルビーイング、自律的キャリア、従業員エクスペリエンス、DEIといった流行りのワードを丁寧に定義づけるように努めました。そのうえで、それらを「スキル」という非常にシンプルな「ものさし」あるいは「共通言語」によって説明しています。
HRテクノロジーを導入しても、それらをうまく使いこなせていない日本企業がほとんどなのは、活用目的とゴール設定がないことが多くの原因です。
HRテクノロジーを、単に効率化のためではなく、人事戦略実現のために活用したいと考える、そして自律的かつ持続可能な組織づくり・人材育成を行いたいと考える日本企業にとっても本書は力強いガイドになるはずです。
2,500円+税
【関連記事】
・康管理センターを設置し、人事主導で人的資本経営に取り組む【応用地質】
・門家に聞く「人的資本経営の推進に向けた企業の課題や取り組み」
・的資本経営におけるパフォーマンスマネジメント