仮払消費税
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内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

会社が商品や資材を購入したときに支払う消費税は「仮払い消費税」という科目で処理される。消費税には課税対象となる取引、非課税となる取引があり、納税者と負担者が異なるなどさまざまな決まりがあるため、処理が複雑だと感じている方も多いことだろう。今回は仮払い消費税について詳しく解説する。

仮払消費税はどのような場合に発生するのか

仮払消費税は、会計方針として「税抜経理方式」を採用している場合に使う勘定科目である。仕入や経費の支払を行った際、支払額に含まれる消費税部分を仮払消費税として計上することになる。反対に、「税込経理方式」を採用している場合には、仮払消費税という科目は使用しない。また、取引のなかには、消費税が課税されない「非課税取引」や「不課税取引」が存在する。これらの取引は消費税の収支がないため、仮払消費税や仮受消費税は計上しない。

消費税の課税対象となる取引

消費税法において、消費税の課税対象は、「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物等の引取り」と定義されており、この定義にあてはまらない取引を不課税取引という。

不課税取引には、給与・賃金、寄付金、祝金、見舞金、補助金等、無償による試供品や見本品の提供、保険金や共済金、株式の配当金やその他の出資分配金、資産の廃棄、盗難、滅失、身体又は資産について加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償金などがある。

筆禍税取引とは、消費税の課税対象にはなるものの「消費」という性質になじまないものや社会政策的な配慮から消費税が課税されないものをいう。以下のものがそれにあたる。

・土地の譲渡及び貸付
・有価証券等の譲渡
・支払手段の譲渡
・預貯金の利子
・保険料を対価とする役務の提供等
・日本郵便株式会社等などが行う郵便切手類の譲渡
・印紙の売渡し場所における印紙の譲渡
・地方公共団体などが行う証紙の譲渡
・商品券やプリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
・国等が行う一定の事務に係る役務の提供
・外国為替業務に係る役務の提供
・社会保険医療の給付等
・介護保険サービスの提供
・社会福祉事業等によるサービスの提供
・医師や助産師などによる助産に関するサービスの提供
・火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
・一定の身体障碍者用物品の譲渡や貸付け
・一定の要件を満たす学校の授業料や入学金等
・教科用図書の譲渡
・住宅の貸付け

注意が必要なポイント

特徴的なものは郵便切手と印紙である。郵便切手は、購入時には非課税取引であり、消費税が課されていないが、使用する際には、郵便局の役務提供に対する対価としての支払であるため、消費税が課税される。郵便局で切手を購入した場合と、郵便を直接出した場合で、消費税の表示が異なるので気づくこともあるかもしれない。

また印紙については、購入する場所で取り扱いが異なる。郵便局や、役所、コンビニ、たばこ店などの「印紙の売渡し場所」で収入印紙を購入する場合は非課税取引であるが、チケットショップなどで、誰かが処分した印紙を購入する場合は課税取引となる。どこで購入したかによって取り扱いが異なり、業種によっては影響が大きいため経理処理の際には注意が必要だ。

仮払消費税の計算方法

以下は、税抜経理方式の採用を前提とする。まず、仕入や経費の支払いなどを行った場合を考える。消費税10%の8万円の商品を税込8万8,000円で購入し、代金は掛とした場合を考えてみよう。その場合、仕訳は下の通りとなる。

(借)仕入 80,000円 /(貸)買掛金 万8,000円
   仮払消費税 8,000円

そして、その商品を10万円(税込11万円)で掛で転売した場合を考えてみると、
 (借)売掛金 110,000円 /(貸)売上 100,000円
                     仮受消費税 10,000円

消費税納税までの流れ

1年分の仮払消費税と仮受消費税の計上が完了したら、実際の消費税の納税額を計算していく。消費税は10%といわれているが、レシートなどをよく見ると、消費税「等」と書かれていることがある。これは、消費税等の正式名称が消費税及び地方消費税であることによる。普段、消費税といわれているのは、消費税7.8%と地方消費税2.2%の合算となっている。

仮払消費税が8,000円で仮受消費税が1万円計上されている場合、それぞれを相殺して未払消費税とすることになるが、理論的には、下記の計算プロセス(かなり簡略化してあるが)を経過することになる。

  1. 課税売上げに対する消費税の計算 10万円×7.8%=7,800円
  2. 課税仕入れに対する消費税の計算 8万円×7.8%=6,240円
  3. 消費税の納付額の計算 7,800円-6,240円=1,560円→1,500円(百円未満切り捨て)
  4. 地方消費税の納付額の計算 1,500円×22÷78=423円→400円(百円未満切り捨て)
  5. 消費税等の納付額合計 1,500+400=1,900円

そして、仕訳としては、下のようになる。
 (借) 仮受消費税 10,000円 /(貸)仮払消費税 8,000円
                       未払消費税 1,900円
                       雑益     100円

実際には非課税取引が混入していたり、消費税率8%の軽減税率の取引があったりして、より複雑である。その後、消費税を現金にて納付した場合は、以下のような仕訳となる。

(借) 未払消費税 1,900円 /(貸)現金 1,900円

税抜経理方式と税込経理方式

消費税の経理の方法には、税抜経理方式と税込経理方式がある。

税抜経理方式と税込経理方式の違い

税抜経理方式とは、本体価格と消費税を分けて計上する方式である。仕入や経費の支払などで消費税を支払ったときは仮払消費税を計上し、売上などで消費税を預かったときは仮受消費税を計上する。

決算の際は、上述のように仮払消費税と仮受消費税を相殺し、納付額を未払消費税に計上(還付の場合は未収還付消費税に計上)する。仮払消費税と仮受消費税の差額と未払消費税の計上額に差額が生じた場合は、雑益、雑損、租税公課などの勘定科目にて調整を行う。

税込経理方式は、本体価格と消費税を区別せずに総額で計上する方式である。税込経理方式は、消費税を支払ったときも受けとったときも取引金額に含めて仕訳を行い、決算時に納付額を「租税公課」などの勘定科目で計上する方式だ。

税込経理方式のメリット、デメリット

税抜経理方式と税込経理方式のどちらを採用するかは任意であるが、それぞれメリット、デメリットがある。税込経理方式のメリットは経理処理が簡単なことであり、デメリットとしては、消費税の現状の金額の把握が容易ではなく、黒字だと思っていたのにいざ決算を組んでみたら赤字であったというような事態が起こる可能性があることだ。

税抜経理方式のメリットデメリット

税抜経理方式のメリットは、試算表作成時点での消費税の納付額が容易に計算できること、消費税が損益に影響せず正しい損益状況が把握できることがあり、デメリットとしては経理処理に手間がかかることがあげられる。

正確な損益把握という意味では税抜経理方式は税込経理方式よりも優れている方法であり、特に課税事業者で正確な経理が求められる場合や、輸出取引を行っていて消費税の還付がある場合には税抜経理方式を採用するほうが無難である。

税抜経理方式~交際費計上の際のメリット

交際費の課税について、資本金1億円以下の中小企業に対しては、800万円以下の交際費を損金(経費)にできることが法律によって認められている。つまり、800万円を超える部分の交際費については、損金とできないため、法人税の課税の対象となる。そして、その判定の際に有利となるのが、税抜経理方式である。

なぜなら、税抜経理方式ならば交際費は税抜で計上されるため、実際に支払った金額より、交際費に計上される金額が低くなるからだ。税込経理方式で計上してしまうと、消費税を含めた金額で800万円のラインが判定されてしまうのである。また、交際費の多い会社においては、1人あたり5,000円以下で会議費として交際費から除外できるかどうかは思いのほか大きな影響がある。

そのような局面においても、5,000円を超えているかどうか判定をする際には、税抜経理方式の場合は税抜の金額で、税込経理方式の場合は税込で判定する。微妙な金額、たとえば1人あたり税抜4,800円などの場合には、損金に計上できるか判断が分かれてしまうことになるため、注意が必要であろう。

税抜経理方式~固定資産税計上に際してのメリット

固定資産においても、税抜経理方式にメリットがある。ある資産を、一定の金額を支払って購入した際、その金額が10万円以下であれば全額を損金算入できるということはよく知られている。

たとえば、税抜経理方式で9万9,000円の備品を購入した際、税抜経理方式であれば、10万円以下であるため、損金として処理が可能である。税込経理方式では計上額が10万8,900円になってしまい、10万円を超えるため固定資産に計上しなければならない。30万円以下の少額減価償却資産の判定の際にも、同じ理由で税抜経理方式のほうが有利となる。

消費税が還付になる場合とは

消費税は納付をするばかりではない。場合によっては、消費税の還付として、消費税の申告をすることによって、税金が戻ってくることがある。主には、以下のようなケースが考えられる。

1.大幅な赤字になった場合

取引先の倒産などで売上が大きく減少したり、創業当初などで売上よりも仕入などの経費の方が多くなったりすると、消費税額は支払った金額のほうが大きくなり、マイナスで計上されることになるので、還付金を受け取ることになる。ただし、経費がかさみ赤字になってしまったからといって必ず消費税還付を受けられるわけではない。

国外取引をはじめとする不課税取引や、給与や租税公課、保険料などの非課税取引のような消費税の課税対象とはならない取引を除いてもなお赤字の場合に、消費税の還付を受けられる。特に給与や社会保険料はどの会社においても影響が大きいので、必ず考慮に入れる必要がある。

2.大幅な設備投資をした場合

自動車や機械設備の購入、建物の建設といった高額の投資を行い、固定資産の金額が著しく増加した場合にも、支払った消費税のほうが多くなる可能性があるため、消費税の還付が受けられることがある。ただし、土地の購入に関しては、消費税の課税対象外となるので、消費税還付を受けられない。

また、不動産賃貸業を営んでいる場合の、住宅の家賃収入は非課税となり、対応する建物の建設費用・購入費用は還付の対象外となるため、消費税還付を受けられないことが多い。

3.輸出を行っている場合

消費税は、日本国内での消費に対して課せられる税金であるため、海外に輸出されるものについては、海外で消費されることから、消費税が免税となる。輸出の免税の場合は、上述の非課税の場合とは異なり、それに係る仕入については、還付の対象となる。

消費税還付の手続きについて

消費税の還付を受ける場合については、通常の消費税の申告書(消費税および地方消費税の確定申告書)以外にも、消費税の還付申告に関する明細書を作成し、事業年度終了の翌日から2ヵ月以内に税務署に提出する必要がある。

「消費税の還付申告に関する明細書」には、消費税が還付申告となった理由や、取引先ごとの売上、仕入れなどの明細を記載していく。還付金の支払いには、数週間~2ヵ月程度かかるのが通常なので、その間の資金繰りの手当てをしておくことも重要である。

また、多額の消費税の還付の申告を行う場合、その取引の実在性を含めて税務調査で調べられる可能性がある。1億円を超える多額の不正な還付申告を行ったとして検挙された事案もあり、特に還付の消費税の申告を行うにあたっては、慎重に申告書を作成しなければならない。

簡易課税制度と経理処理

消費税の計算方法は、通常のように支払った消費税と受け取った消費税を相殺して計算する「本則課税」のほかに「簡易課税制度」がある。

簡易課税制度とは

簡易課税制度とは、その課税期間の前々事業年度(基準期間)の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者が適用できる制度である。実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入税額控除の計算を行うことができる。

この制度は、仕入税額控除を課税売上高に対する税額の一定割合とする(みなし仕入率)ものである。売上を卸売業、小売業、製造業等、サービス業等、不動産業、その他の事業の6つに区分し、それぞれの区分ごとにみなし仕入率を適用する。みなし仕入率は、卸売業(第一種事業)は90%、小売業(第二種事業)は80%、製造業等(第三種事業)は70%、その他の事業(第四種事業)は60%、サービス業等(第五種事業)は50%、不動産業(第六種事業)は40%となる。

実際の仕入税額控除の金額の計算は、1種類の事業だけを営む会社の場合、課税売上に係る消費税に該当事業のみなし仕入率を掛けたものを課税売上にかかる消費税から控除することによって行う。複数の事業に渡る場合については、複数の計算方法があり、基本的には最も有利な方法で計算することになるが、非常に複雑であるため、ここでは説明を割愛する。

なお、2種類以上の事業を営んでおきながら、売上高を区分せずに記帳してしまっている場合については、一番不利なみなし仕入率が適用されることになってしまうため、注意が必要である。

簡易課税制度を適用するための手続き

簡易課税制度の適用を受けるためには、納税地を所轄する税務署長に原則として適用しようとする課税期間の開始日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出しなければならない。ただし、自ら選択して課税事業者となった場合(「消費税課税事業者選択届出書」を提出しているなど)など一定の場合では、この届出書を提出できないことがあるので、事前に確認しておく必要がある。

この「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者は、原則として2年間は実額計算による仕入税額の控除に変更することができない。また、簡易課税制度の適用をとりやめて実額による仕入税額の控除を行う場合は、原則としてやめようとする課税期間の開始日の前日までに「消費税課税制度選択不適用届出書」を提出する必要がある。しかも、とりやめる課税期間の初日から課税仕入れ関係の帳簿および請求書を保存しなければならない。

なお、簡易課税制度選択届出書を提出していても、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えるときには、その課税期間については簡易課税制度を適用できない。

そして、簡易課税制度を適用している事業者が税抜経理方式を採用していると、仕入や経費に関係なく未払消費税が計算されるため、通常仮払消費税と仮受消費税の差額から大きく差異が出る。この一致しない差額については、通常の消費税計算で生じた差額と同じく、雑益、雑損、租税公課で処理することになるが、金額に重要性がある場合は、独立した科目名で表示することも考えるべきだろう。なお、税込経理方式の場合は、通常の未払消費税計上の場合と同じである。

消費税の負担を減らすために適切な経理方式を選択しよう

税込経理方式を採用していると、消費税は仮払い消費税として処理する。しかし、採用している経理方式や課税制度、取引の内容や種類によって消費税の扱いは異なる。消費税は日ごろの取引や経費計上に影響を与え、事業者にとっては負担も大きいため、自社の事業内容や売上金額など総合的に見て、どの経理を採用するのが一番有利なのかを総合的に見て選択するのが良いだろう。

文・内山瑛(公認会計士)